「仕事の集中力が続かない」そう感じるときはありませんか?
仕事や勉強に取り組んでいるのに、どこか頭がぼんやりしている、作業が進んでいない。それは集中力の低下が原因かもしれません。
結論として、集中力が続かない理由には、環境や疲労、さらには病気などが関係していることが多いです。正しい対策をすることで集中力を取り戻し、作業効率を改善できます。
仕事や勉強に集中できるように、この記事では集中力が続かない原因から解決策、さらには病気の可能性まで幅広く紹介しています。この記事を参考に集中力を取り戻し、仕事や勉強の効率をアップさせましょう。
川北 輝さん
Teru Kawakita: 公認心理師、研究者、メディアアーティスト、松山東雲短期大学 助教。臨床心理修士 (専門職)、修士 (知識科学)。テクノロジーを活用した心理支援や感性工学の研究に従事。心や感性、地域をテーマに作品をつくる。研究/芸術関連の受賞多数。心の健康の保持増進を目指してSDGsに取り組む。日本感性工学会などの正会員。
集中力が続かない主な原因6つ
まずは集中力が続かない根本的な原因を6つ解説します。
疲労や睡眠不足
パンクした自転車が速く走れないように、疲労や睡眠不足の状態だと、人は集中力が続きません。仕事や勉強に長時間取り組むと脳が疲れてしまいます。そのまま無理に集中しようとしても、気合だけではどうにもなりません。
睡眠不足も脳の疲れがとれていないため、疲労がたまったままの状態だといえます。こうした状態が続くと、最終的には注意散漫になり「仕事に時間を割いたのに全然進んでいない」ということになってしまいます。
疲れたら休み、睡眠の時間はしっかり確保する、睡眠の質を向上させるという意識を持ちましょう。毎日の休息はサボりではありません。集中力を上げるという意味では、むしろ仕事の一環なのです。休むのも仕事と考えて自分を労り、まずは集中できる状態を作りましょう。
ストレスがたまっている
適度なストレスは集中力を高めますが、過度なストレスは集中力を低下させます。ストレスの影響は個人差が大きく、必ずしも全ての人に同じ影響を与えるわけではありませんが、慢性的なストレスは精神疾患の原因や悪化要因になります。
なんらかのプレッシャーでストレスがかかると、副腎皮質からストレスホルモンのコルチゾールが分泌されて、一時的なストレスから身を守ってくれます。しかし、慢性的なストレスによるコルチゾールの過剰分泌は、前頭前野の機能を低下させ、集中力だけでなく、記憶や意思決定能力にも悪影響を及ぼすことがあります。
特に、ストレスが長期間にわたって蓄積されると、うつ病や不安症などの病気につながることもあります。大きな影響が出る前に適度な運動やリラックスできる時間を設け、心身のケアを行いましょう。
集中できない環境
環境も、集中力が続かない原因になります。例えば、騒がしい場所や散らかったデスクでは、意識があちこちに向いてしまい集中できません。仕事や勉強に集中するために、静かで整理された環境を整えましょう。周囲の音や視覚的なノイズを最小限に抑えることで、集中力を持続しやすくなります。
特に人はスマホが視界に入るだけでも集中力が落ちるという研究結果もあるので、スマホは見えないところに置きましょう。
マルチタスクをしている
一般的には、マルチタスクをしている人は、シングルタスクをしている人に比べ集中力が長続きしづらいです。2つ以上の作業を同時に行うと、脳が一度に複数のことに注意を払わなければならず、結果的に集中力が落ちてしまいます。
「二兎を追うものは一兎も得ず」ですね。これは仕事でも勉強でも同じです。本来やるべきことに絞ってタスクをひとつずつこなすことが、集中力を維持する最も効果的な方法です。仕事の優先順位をつけて最も重要なタスクに集中することで、効率的に作業が進みます。
仕事や勉強において、マルチタスクは「効率が良いようで実は悪い」と覚えておきましょう。
心身の不調や病気
身体の不調や病気も集中力が続かない原因のひとつです。例えば、風邪などで体調を崩しているときは体が疲れている・疲れを感じている状態であり、集中力は低下します。また、うつ病などの精神的な病気が影響することもあります。
集中力が続かない原因が心身の不調にある場合は、まず体調を整えることを優先しましょう。そして病気が原因のときは必要に応じて医師の診察を受け、適切な治療を行いましょう。
長時間続けて作業している
長時間の作業も、集中力が続かない要因です。脳は一定時間ごとに休憩を必要とします。しかし、休憩を取らずに作業を続けると、疲労の蓄積やエネルギー不足により集中力は急激に低下するのです。
特に、長時間同じ姿勢でいると身体的な疲労を引き起こし、集中力が奪われます。適度な休憩を挟むことで、脳と身体をリフレッシュでき、再び集中できる状態を作れます。
集中力が続かない時の対処法6選
続いて、集中力が続かない時の対処法を6つ解説します。
適度に休憩を取り入れる
集中力が続かないとき、多くの場合に最も効果的なのは適度な休憩をとることです。特に、仕事や勉強に集中しすぎていると、気づかないうちに脳が疲れてしまいます。
一定時間ごとに短い休憩を挟むことで脳をリフレッシュさせることができます。例えば、ポモドーロ・テクニックという時間管理の考え方を活用して、「25分作業して5分休むことを繰り返す」など作業のスタイルを工夫しましょう。
さらに、休憩中に軽いストレッチや深呼吸を行うことで血流が良くなり、より効率的に疲労が回復するのです。休憩を上手に取り入れ、集中力を上げましょう。
仕事環境を整える
集中力を高めるためには、仕事環境を整えることが必要です。周囲に余計な物があると、それだけで注意が散漫になってしまいます。デスクの上を整理し必要な物だけを残すことで、集中しやすい環境が作れます。
また、騒音が気になる場合は、耳栓やノイズキャンセリング機能がついたイヤホンを使用するのがおすすめです。その他には快適な椅子や照明など、環境を整えることで集中力を高めることができます。
タスクを細分化する
すぐには終わらない仕事や勉強に取り組む際は、タスクを細分化することで集中力を維持できます。一度に多くの作業を行おうとすると、どこから手をつけていいのかわからなくなり、思考がぼやけて集中力が途切れやすくなります。
タスクを小さな目標に分け、ひとつずつ着実にクリアしていくことで達成感が得られ、集中力を保ちやすくなります。さらにToDoリストを活用するとタスクが可視化・リマインドされるので効果的です。
ただし、創造的な作業や複雑な問題解決が必要なタスクでは、タスクを分けるよりも全体像を見ながら長い時間をかけて取り組むことが良い場合もあります。
また、気分が乗らない日はまず簡単なタスクから始めることで、気分が乗り仕事がスムーズに進むのでおすすめです。
スマホやデジタルデバイスの通知をオフにする
スマホやPCの通知は、集中力を削ぐ大きな原因となります。特に、SNSやメールの通知が頻繁に届くと、そのたびに集中が途切れてしまうのです。作業中はスマホやデジタルデバイスの通知を必ずオフにしましょう。作業に集中したい時間帯には、スマホを見えない場所に置くなど、環境を整えることが大切です。
30分だけ睡眠をとる
集中力が続かない時は、短時間の仮眠が効果的です。特に、30分程度の短い睡眠は脳をリセットし、集中力を取り戻すことができます。ただし、長時間の昼寝は身体にだるさが残り逆効果になるため、時間を決めて仮眠を取るのがポイントです。夕方以降の仮眠は夜の寝つきが悪くなるなどの悪影響を及ぼす可能性があります。そのため、日中に働かれている方で、集中力が続かないときは、昼間に短時間の仮眠が効果的です。
仮眠後は、頭がすっきりして作業に集中しやすくなります。「どうしても集中できない!」というときも短い仮眠を取ることで嘘のように頭がすっきりすることもあります。
集中力を高める音楽やBGMを活用する
音楽やBGMを活用するのも、集中力を維持する手段のひとつです。特に、リラックス効果のある自然音や、落ち着いたリズムの音楽は、仕事や勉強に集中しやすい環境を作ります。
音楽を選ぶ時のポイントは、歌詞が入ってない曲を選ぶことです。歌詞があるとそのワードが気になってしまい、思考の妨げとなります。歌詞なしのBGMや自然の音を選ぶようにしましょう。
とはいえ、音楽の影響は個人によって異なるため、全ての人に同じように効果があるわけではありません。あなたなりの集中できる音楽を探してみましょう。また、複雑なタスクを行う場合は、むしろ音楽がないほうが集中できる場合もあります。自分の好みや取り組むタスクに合わせて調整することが重要です。
集中力と病気の関連について
「なぜか集中力が続かない」と思っていたら、実は病気や発達障害 (神経発達症) が原因だった、ということもあります。ここでは集中力の低下に関連する病気や発達障害について解説します。いずれも専門家の診断と治療が必要なものです。心当たりのある方は、専門医の診察を受けるようにしましょう。
うつ病
うつ病になると、集中力が続かなくなる場合があります。また、症状が進行すると何事にも興味や意欲を失ってしまいます。特に、仕事や勉強に対してやる気が出なくなり、何も手につかないということも珍しくありません。
うつ病が疑われる場合は、早期に専門医に相談し、適切な治療を受けることが大切です。治療には、薬物療法や認知行動療法、カウンセリングが含まれ、生活習慣の改善指導も受けられます。うつ病の症状がある方は、一度病院を受診してみることをおすすめします。
注意欠如多動症(ADHD)
注意欠如多動症(ADHD)は、発達障害の一種です。ADHDの症状として、注意散漫や多動性、衝動的な行動が挙げられます。個人差がありますが、ADHDの方は注意の持続や切り替えが苦手な傾向があります。ADHDが疑われる場合は専門家による判断を仰ぎましょう。「昔からミスが多い、忘れ物が多いと思ったらADHDだった」という大人になってからADHDが判明するケースは意外と多いものです。
発達障害は病気ではなく生まれつきの特性なので完治を目指すものではありませんが、生活療法や薬物療法を受けることで集中力が高まったり、うっかりミスを少なくしたりできます。
家庭や学校、職場での支援も重要な役割を果たします。小児期においては、家族や教師の協力による環境調整が治療効果を高めるという研究の報告もあります。一方で、大人の発達障害のケースは、子どもの頃と比べて周囲の理解を得ることが難しいため、悩みを抱えている方も多いかもしれません。
▼「悩ミカタ相談室」には、大人の発達障害の悩みを相談できる心理士などの専門家が多数在籍しています。仕事や日常生活での困りごと、不安やストレスについてオンラインから匿名で相談できるのが特徴です。ひとりで抱えている悩みがあれば、まずは相談してみませんか?
睡眠障害
睡眠障害も、集中力が続かない原因となります。十分な睡眠が取れていないと、脳が休まらず、日中の集中力が低下するためです。睡眠障害は単なる睡眠不足とは異なるため、心当たりのある方は、軽く考えずに医師に相談しましょう。
特に、不眠症や睡眠時無呼吸症候群などがある場合、睡眠の質が悪くなり、集中力がガクッと下がります。睡眠時無呼吸症候群は、軽症の場合は生活習慣を改善することで治ることもありますが、中等度以上になると専門的な治療が必要です。慢性的な睡眠不足 (疲労感) や家族からの指摘があるときは、医師に相談することをおすすめします。
慢性疲労症候群
慢性疲労症候群は、その名のとおり疲労状態が続くものです。重い疲労感やその他の身体の不調が重なり、集中力にも悪影響を及ぼします。慢性疲労症候群は原因不明の疲労が長期間続き、通常の休息では回復しません。そして日常生活や仕事、勉強に支障をきたします。
いくら休んでも疲れがとれない、という方は一度専門医の診断を受けてみてはいかがでしょうか。慢性疲労症候群の治療には、生活習慣の改善やリハビリテーションが含まれます。ただし、慢性疲労症候群は診断や治療法について議論されてきた背景があり、現在も研究が続いています。診断基準はできましたが、確立された治療法はなく、症状に応じた対症療法が中心となっています。
甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症によって、甲状腺ホルモンは不足状態になります。甲状腺ホルモンの不足は新陳代謝の低下やエネルギー供給の不足を引き起こし、結果として集中力の低下につながります。
ホルモン補充療法によって症状が改善し、集中力も回復が期待されます。甲状腺機能低下症の場合は、治療を続けることが集中力を維持する鍵となります。甲状腺機能低下症は高齢の女性によくみられる病気ですが、どの年代でも発症する可能性があるため、注意が必要です。気になる方は専門医に相談してみましょう。
アルツハイマー病などによる認知症
アルツハイマー病などによる認知症は、特に高齢者に多い疾病です。しかし、65歳以下で発症する若年性認知症を患うケースもあり、働き盛りの年代にとっても無関係なものではありません。
これらの病気は、記憶力や思考力の低下と共に、集中力の低下も引き起こします。今までできていた簡単な作業ですら集中できない状態になることもあります。
早期に診断を受け治療を始めることで、症状の進行を遅らせることができます。認知症に対しては、薬物療法やリハビリが効果的です。心当たりのある方は、早めの受診を心がけましょう。
不安症
不安症になると、精神的な緊張が原因で集中力が続かなくなります。過度の不安や心配事が頭に残り、仕事や勉強に集中できなくなってしまうのです。こうした状態が続くとストレスがたまり続け、精神的な疲労状態が継続してしまいます。不安障害が疑われる場合は、カウンセリングや医師のサポートを受けたり、瞑想や呼吸法を取り入れたりして心を落ち着かせることが大切です。
<関連記事>
集中力が続かないとき、どこを頼ればいい?
集中力が続かないと感じたときには、まずは自分の生活習慣や健康状態を見直してみましょう。疲労やストレスが原因であれば、休息を取ったり環境を整えたりすることが効果的です。しかし、身体や精神的な病気が原因だと思われる場合は、自己判断せずに専門家に相談しましょう。
また、「気になる症状はあるけれど、いきなり医療機関にかかるのはハードルが高い」と感じている場合には、心理士など心の専門家によるオンライン相談の利用も検討してみましょう。「悩ミカタ相談室」ではさまざまな悩みや心身の不調をサポートしています。どうすれば現状をよくできるかアドバイスがほしい、という方は気軽にご相談ください。