急に仕事のミスが増えた…これは病気の症状?ミスが多い原因や対処法を解説

最近、仕事で急にミスが増えたと感じていませんか。

もし、仕事上でのミスを繰り返すようなことがあれば、決して軽く見てはいけません。業務体制や環境の変化がミスを引き起こす場合がありますが、そのミスの背景には「抑うつ状態」や「適応障害」などの精神的な問題が潜んでいる場合もあるからです。

特に、30代後半から40代前半の年代は各職場のベテラン層になることも多く、様々な案件を任されて責任を持つことが増えてくる時期です。30代から40代の男性は、就業時間が多くなるというデータもあるほど。この年代層は、仕事や家庭上の責任が増し、体調に変化を来しやすい年代でもあるのです。

急に仕事のミスが増えた場合、「なぜミスをしたのか?」の要因を自己分析して考えてみることが大事です。ミスを繰り返し、少しでも違和感を持った場合には、早急に適切な対策を講じることが必要になるでしょう。

ここからは、急に仕事のミスが増えることについて深堀し、原因や適切な対策について解説していきます。

監修者

川北 輝さん

Teru Kawakita: 公認心理師、研究者、メディアアーティスト、松山東雲短期大学 助教。臨床心理修士 (専門職)、修士 (知識科学)。テクノロジーを活用した心理支援や感性工学の研究に従事。心や感性、地域をテーマに作品をつくる。研究/芸術関連の受賞多数。心の健康の保持増進を目指してSDGsに取り組む。日本感性工学会などの正会員。

目次

仕事でミスが増えやすい人の特徴

急に仕事でミスが増えたと感じる人の特徴について、3つご紹介します。
1つ目は、タスク課題が過剰すぎる「タスクの負荷による要因」、2つ目は、新人社員や転職社員などに多い「経験やスキル不足による要因」、3つ目は、年を重ねるごとに認知機能や体力の衰えによってミスが発生する「加齢による要因」です。

仕事のミスは個々の状況や環境、心理的・身体的な要因が関連しています。これらの要因を見極め、適切なサポートや調整を行うことがミスの減少につながります。

タスク過多による要因

現在、仕事でいつもタスクに追われていませんか?デスクが散らかっている、PCのデスクトップにはいつのものかわからないデータが散在している、未読のメールを読んだつもりになっている……。心当たりのある人は、タスク過多により集中力が低下している状態にあるかもしれません。

アメリカのソルトレイクシティにあるユタ大学の研究者Jason M. Watsonと David L. Strayerの研究によれば、マルチタスクをした際にパフォーマンスがまったく低下しなかった人はたったの2.5%であることが明らかになっています。

研究結果にもあるように、複雑なマルチタスクで成績が低下しない人は極めて少ないということがわかっています。つまり、複数のタスクにより脳に負担がかかると集中力が分散し、ミスが発生しやすくなるということになります。

例えば、Aという業務に取り組んでいるときに、頭の中で別のBという業務について考え続けていると、注意力が分散してしまい、Aの業務に集中できなくなることがあります。その結果、ミスにつながり、精神的なストレスがたまる可能性もあります。

対策としては、To Doリストを用いてタスクの優先度を決める、自分が1日にこなすタスクの量を減らしていき、自分にとってどのタスクの量が最も妥当なのかを探ることがポイントとなるでしょう。自分が余裕を持ってこなすことができるタスク量を見つけることができれば、ミス発生のリスクをより減らすことができます。

経験やスキル不足による要因

新入社員や異業種から転職した社員は、経験不足により判断力や問題解決能力が十分に発揮されないことがあります

ただ、新しい業務についたばかりのときに必要なスキルや知識が不足していることは、誰にでも起こりえることであり、決して落ち込むことはありません。スキルや知識が増えていけば自然にミスの数は少なくなっていきます。

また、企業側としてはこのような状況に陥らないように、新人社員に対してメンター制度や定期的なトレーニング、ストレスマネジメントの支援などを行うことが対策のひとつとなります。

加齢による要因

年齢を重ねると、認知機能の変化や体力の低下が影響し、仕事上のミスが増えることがあります。中央労働災害防止協会によれば、加齢によって、視力・薄明順応 ・聴力 ・筋力 ・記憶力 ・学習能力の低下が進むため、就業時には労働災害やミスの頻発に留意した対応が企業側に求められています。厚生労働省も、このような加齢によるミスを引き起こさないよう対策を示しています。

企業側でおこなう対策としては、加齢による身体・認知機能の衰えを加味した安全性の確保と心理的ストレスへの配慮が重要です。まず、年齢を重ねた方にとってゆとりある作業標準を設定した上で自己学習の機会を提供することや、彼らが自分のペースで作業できるように環境を整えて役割と責任を明確化することが求められます。

仕事で急にミスが増える原因

仕事で急にミスが増える人の特徴とは別に、ミスが増えたことに対して向き合わなければならない原因があります。仕事で急にミスが増えたという人は、精神的ストレスや過労、環境の変化などの要因が関連している可能性があります。これらは身体的な症状や感情の変化としてあらわれることもありますが、自分では気づかないことも意外と多いものです。

「今までは、こんなことなかったのに」「自分はどこかおかしいのかな?」など、今までに無かった違和感を覚えるときほど、ミスが頻発している可能性があります。

例えば、シンプルかつ慣れた作業の場合、注意を向けることが減り、ミスが起こりやすくなる傾向があります。これは、認知心理学の研究でも明らかにされており、「つい、うっかり」といったやり忘れなどのミスは、自分の行動を自分で見返さない結果起こってしまうものとされています。

あらゆる仕事の現場で使われている「呼称」や「指さし確認」、「チェックリスト」は、ミスを少なくするための対策のひとつです。ある慣れた業務を行っていたとしても、改めて「呼称」「指さし」を行うことで、その業務において自分のとった行動を再確認できます。

また、次の3つの要因もミスの発生に関連しています。

精神的ストレスの蓄積

過度な精神的ストレスは、個人の認知機能や判断力にネガティブな影響を与えることがあります。
ストレスが蓄積すると、注意力が散漫になり集中力が低下します。この結果、仕事や学業においてミスが増えることが多くなり、特にプレッシャーのかかる状況では、思考が混乱して重要な情報を見落とすことがあります。

したがって、ミスをしないためには、精神的ストレスを軽減することが重要であり、リラクセーションや適切な休息が効果的なのです。

疲労と過労

長時間労働をしたり、休息が不足していたりすると精神的に疲弊し、注意力が散漫になります。
疲労が蓄積すると、心理的余裕や作業の正確性さえも損なわれ、ミスが増えていきます。また、疲労や過労から回復する際に重要なのは睡眠ですが、寝る前に仕事や人間関係の悩みを考えすぎると、脳が過度に活発化し、睡眠の質が悪くなります。これにより、十分な休息が取れず、さらに疲労が蓄積してミスのリスクが増大します。その結果、睡眠不足を来しやすくなり、負のスパイラルに陥ってしまうこともあります。

また、過度なプレッシャーがかかる職場環境では、交感神経が優位な状態が続き、心身がリラックスできなくなります。したがって、万全の状態で仕事に取り組むためには、定期的な休憩と十分な睡眠時間の確保、ストレス管理が不可欠です。

健康的な生活習慣を維持することで、疲労と過労の蓄積を防ぎ、ミスの発生を抑えることが可能となります。そうした意味では、当事者だけではなく職場全体の協力が不可欠ともいえるでしょう。

人手不足による過労や人間関係など職場環境の問題で悩む方も少なくありません。しかし、職場環境を変えたいと思っても、自分一人で変えていくことは難しい場合も多いでしょう。そんなときは、専門家に相談してみるのも悩みの解決方法のひとつです。

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環境の変化

新しい環境や慣れない状況では、ミスが生じやすいです。新しい環境に適応する際、人は通常のルーチンや慣れた手順を離れる必要があります。これにより、注意力が分散しやすくなり、結果としてミスが増える可能性があります。

さらに、物理的な環境の変化、例えば騒音や温度の変化も、作業効率に影響を及ぼし、ミスにつながることがあります。

このようなリスクを軽減するためには、環境の変化に対する柔軟な適応力を養うことが重要です。新しい仕事の内容や環境に慣れるための時間を確保し、徐々に負荷を増やすことで、ミスの発生を防ぐことができます。個人だけでなく、組織全体でサポート体制を整えることが、ミスを減らし、スムーズな適応を促進する鍵となります。

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急にミスが増えた時には、病気の有無もチェック!

仕事で急にミスが増える場合には、精神的ストレスの蓄積、疲労や過労、環境の変化が原因として挙げられますが、ひょっとするとこれらの延長上には、うつ病や適応障害(適応反応症)、更年期障害などが潜んでいる可能性があります。自身の健康状態を振り返り、以下のような症状が見られる場合は要チェックです。不安を感じる場合は、専門家へ相談しましょう。

うつ病

うつ病は、精神的なエネルギーが極端に低下して、気分の落ち込みや憂うつさが続いたり、何をしても楽しいと感じられなくなったりして辛さを抱えている状態です。

うつ病では、睡眠障害や疲れやすさ・気力の減退、思考力や集中力の低下といった症状があらわれることがあります。こうした症状がミスにつながり仕事に支障をきたすケースが考えられます。

治療としては、休養、薬物療法、精神療法・カウンセリングが効果的とされています。

適応障害

特定のストレス源や環境に対してうまく対処できず、心身に様々な症状が現れて社会生活に支障をきたす状態を適応障害といいます。

うつ病との違いとして、適応障害では、ストレスの原因を除去すれば改善するケースもありますが、うつ病においてはストレスの原因を除去しても症状が続くことが挙げられます。特定のストレスが主な原因となって症状が現れるのが適応障害です。また、適応障害が長期化し、うつ病などの精神疾患が生じることもあります。

部署異動、転職といった職場環境や仕事内容の変化がきっかけで適応障害を発症するケースも珍しくありません。何とか日常生活や仕事を継続することは可能ですが、イライラ感や衝動的な行動があらわれるケースもあり、仕事でのミスが増加する可能性があります。治療方針としては、まずは特定のストレスを軽減させて心身共に回復を図ることが多いでしょう。

更年期障害

更年期障害は、ホルモンバランスの急激な変化によりさまざまな症状が出て、日常生活に影響が出ている状態です。

特に女性の場合は閉経を迎える前後の時期に経験する身体的・精神的な症状を指します。この時期、ホルモンバランスが変化し、エストロゲンの分泌が減少することで、さまざまな不快な症状が現れます。主な症状には、ホットフラッシュ(急激な発汗)、不眠、気分の変動、集中力の低下などがあります。

また、更年期障害は女性が罹患するイメージが一般的かもしれませんが、男性の場合もテストステロンの減少に伴い、身体的・精神的な不調が生じることもあります。

これらの症状は、生活の質(QOL)を低下させることがあり、日常生活だけではなく仕事にも影響を及ぼします。

ホルモンバランスの変化による身体的・精神的な症状によって仕事のミスが増えることがあります。特に、更年期障害の症状として多いとされる「集中力の低下」「イライラ感」「不安感」の影響が大きく、これらの症状は思考力や判断力を低下させ、仕事におけるミスの増加に繋がります。また、日本産婦人科医会によれば、ミスが増加したことによって、職場の同僚や上司に迷惑をかけてしまう、などの罪悪感を抱えたり気分の落ち込みを感じたりする人が多いとの調査結果も出ています。

厚生労働省によると、更年期障害は40歳以降の女性に多く見られ、適切なサポートや治療が重要です。生活習慣の改善や、必要に応じてホルモン療法などの医療的介入が推奨されています。

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自分で解決できない場合は専門家へ相談を!

急に仕事でミスが増えた場合、精神的なストレスや疲労が原因である可能性があります。早期に専門家の診断を受けることで、適切な治療やカウンセリングを受けられ、心の健康を回復する手助けになることでしょう。

また、精神的ストレスや疲労などが原因で発症する「適応障害」や「うつ症」は悪化する前に、医療的な早期介入によって症状の改善が期待されます。

ここでは、治療機関として挙げられる「心療内科」「精神科」の2つを解説します。

心療内科

心療内科は、身体的な症状が精神的な要因によって引き起こされる場合に特化した診療科です。例えば、ストレスが原因で頭痛や胃痛が生じることがありますが、心療内科では、こうした身体的な症状の背後にある心理的な問題を探り、治療を行います。

抱えている悩みや精神的ストレスをやわらげるサポートをしてくれるので、ストレスが原因で頭痛や胃痛などの身体的な症状がみられるときは、心療内科の受診をおすすめします。

精神科

精神科は精神的な疾患や障害を専門に扱う医療機関で、うつ病や不安障害(不安症)、統合失調症(統合失調スペクトラム症)など、さまざまな精神的な問題に対して診断と治療が行われます。

精神科医は、患者の症状を詳細に評価し、必要に応じて薬物療法を行います。薬物療法は、脳内の化学物質のバランスを整えることで、症状の軽減を図ります。また、精神科では心理療法も併用されることが多く、患者が自分の感情や思考を理解し、対処する手助けをします。

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うつやストレスによるミスへの対策方法

仕事において急にミスが増えると、自己評価が下がり、さらなるストレスを引き起こすことがあります。特に、うつやストレスといった要因が影響している場合、その原因を理解して適切な対策を講じることが重要です。

要因を把握することで、自分自身の状態を客観的に見つめ直すには、「日記を書く」「勤務先に相談する」「休職を検討する」「公的機関へ相談する」の4つが具体的な対策例として挙げられます。

日記を書く

自己分析の第一歩として、日記をつけることがおすすめです。
日々の業務や感情の変化を記録することで、自分自身の状態を客観的に把握することができます。特に、どのような状況でミスが増えたのか、どのような感情が影響しているのかを振り返ることが重要です。

日記を通じて、過去の出来事や感じたこと、思ったことなどを、書き留めて振り返ることができます。

また、日記を書くことそのものがストレスを軽減する手助けになります。心理的ストレスの研究論文によれば「疲労」「怒り」「抑うつ」といったネガティブな心理的ストレスは、日記筆記により有意に低下したとされています。

また、ポジティブ要因やネガティブ要因など書きたい事を自由に書くことは、ストレスを軽減するだけではなく、自己肯定感を高めるともいわれており、多くのメリットがあることがわかっています。

勤務先へ相談する

自己分析を行った後は、勤務先へ相談することが重要です。信頼できる上司や人事部門に自分の状況を話すことでサポートを受けることができるほか、多くの企業ではメンタルヘルスに関する相談窓口やカウンセリングサービスを提供している場合があります。自分一人で抱え込まず、専門家の意見を聞くことで、適切なアドバイスや支援を受けることができるでしょう。

相談する際は、自分の状況を具体的に説明することが大切です。どのような業務でミスが増えたのか、どのような感情が影響しているのかを明確に伝えることで、相手も理解しやすくなります。

また、相談を通じて、業務の負担を軽減するための具体的な対策を一緒に考えることができるかもしれません。職場のサポートを受けることで、心の負担を軽減し、業務に集中できる環境を整えることが可能になります。

休職を検討する

必要に応じて休職を検討することも選択肢の一つです。
心身の健康が損なわれている場合、無理をして働き続けることはさらなる状況の悪化を招く可能性があります。休職を通じて心身をリフレッシュし、治療による回復に専念するのも選択肢のひとつです。休職中には、必要に応じて医療機関での治療やカウンセリングを受けることも検討しましょう。

休職を決断することは簡単ではありませんが、自分自身の健康を最優先に考えることが大切です。心身の状態を整えることで、復職後にはより良いパフォーマンスを発揮できる可能性が高まります。また、休職中に自分のキャリアや今後の働き方について考える時間を持つことも、将来的な成長につながるでしょう。

公的機関へ相談する

もし、職場や家族に相談できない場合、ひとりで抱え込んでしまうことで状態を悪化させてしまう可能性があります。

そんな時は、公的な機関の相談窓口を活用してみてもよいでしょう。どんな機関にどんな相談をすればよいのかがわからない場合には、厚生労働省が開設している「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳」が相談窓口になってくれます。このサイトでは、電話はもちろん、SNSやメールでの窓口が設置されており、相談者が連絡をとりやすいシステムとなっています。

心療内科や精神科への受診に対してハードルが高いと感じる方は、「こころの耳」で相談し、サポートを受けるのも選択肢のひとつです。

▼悩ミカタ相談室でも、匿名のオンライン相談を受け付けています。各分野の専門家/カウンセラーの中からあなたに合う方を選び、夜間や休日など都合のよい時間に予約して相談できます。つらくて不安な気持ち、1人で抱え込まずにまずはお気軽に相談してみませんか?

まとめ

急に仕事のミスが増えたと感じる人の特徴として、「タスク過多による要因」「経験が不足していることによる要因」「加齢による要因」の3つをご紹介しました。自分が当てはまる要因を見分けることが重要です。

ミスが増える原因として、「精神的ストレスの蓄積」「疲労・過労」「環境の変化」の3つが挙げられます。また、これらが発生しないように、本人はもとより企業側も留意する必要があります。

また、急に仕事のミスが増えた場合は、適応障害やうつ病、更年期障害などの可能性も否定できません。気になったら精神科、心療内科などの専門機関を受診しましょう。もし抵抗がある方は、厚生労働省が設置している「こころの耳」や民間の相談サービスを利用してみましょう。

ここまで、急に仕事のミスが増えた場合の原因や対処法について紹介してきました。ミスの多さの原因は、個人により異なります。

自力でミスの多さに気が付いた方は、セルフマネジメントにて対策を講じることで、ミスを減少できる場合があります。ただし、ミスが多くなっているにも関わらず、自分で自覚がない場合は、注意が必要です。職場の同僚や上司などからの指摘を受けた場合はよいサインだと受け止め、専門機関を受診してみましょう。

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