女性の人生には、思春期や妊娠・出産など、心身に大きな変化をもたらすさまざまなステージがあります。その中でも、更年期は特に心の健康に影響を及ぼす重要な時期です。この時期に感じる不調や不安は、決して特別なものではなく、多くの女性が経験する自然な現象です。
この時期は「なんだか心や体の調子が良くない」「特に何かあるわけではないけど憂鬱」そんなふうに感じる人も多いのです。本記事では、更年期の定義や期間、現れやすい心身の不調、その原因、そして心のケアの仕方などについて紹介します。
更年期以降の人生をより豊かに過ごすためには、自分自身の心と身体のケアを大切にすることが欠かせません。日々の小さな積み重ねは、充実した毎日へとつながります。今回は、心のケアの重要性を中心に、更年期を健やかに乗り越えるための情報をお届けします。一緒に新たなステージを前向きに迎えるヒントを見つけていきましょう。
藤原美保さん
公認心理師、介護福祉士、保育士、健康運動指導士の資格保有、療育支援に携わること20年以上。
放課後等デイサービスを運営する中で発達障害児童、そのご家族の悩みも含め相談やカウンセリング対応を10年以上行う。自己肯定感が低い、親から虐待を受けた過去に悩む方からの相談なども多数対応。
これまでに、『発達障害の女の子のお母さんが、早めに知っておきたい「47のルール」』(エッセンシャル出版社)、『発達障害の女の子の「自立」のために親としてできること 』(PHP研究所)と2冊の本を執筆。現在も出版に向け本の執筆をつづけている中、子育てのポータルサイトにて発達障害の子の子育てコラムを連載中。
更年期とは?
更年期とは女性が閉経を迎える前後の期間を指しますが、一般的に言われているのが45歳から55歳頃までの約10年間です。この時期は、卵巣機能の低下によって女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が急激に減少します。それにより、身体的・精神的な不調が現れやすくなります。これらの不調は「更年期障害」と総称されますが、症状の現れ方や程度には大きく個人差があります。
なお更年期の症状は一人ひとり異なります。早い人では40代前半から体調の変化を感じることもあれば、50代後半になっても症状が続く場合もあります。遺伝的要因や生活習慣、ストレスレベルなどが影響を与えるため、自分自身の体調をしっかりと観察することが大切です。
更年期に表れやすい心身の不調とは
女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)は、月経周期の調節だけでなく、自律神経や骨密度、コレステロールの代謝など、全身の機能に関与しています。そのため、ホルモンバランスの乱れが全身に影響を及ぼし、多様な心と身体の不調を引き起こします。
なお以下は、更年期にあらわれやすい代表的な心身の不調です。
身体的な不調
ほてり・のぼせ(ホットフラッシュ)
突然顔や首が熱くなり、発汗を伴います。体温調節機能の乱れが原因とされています。
発汗異常
夜間の過度な発汗や、日中でも汗をかきやすくなります。
疲労感・倦怠感
十分な休息を取っても疲れが取れず、常にだるさを感じます。
睡眠障害
寝つきが悪い、途中で目が覚める、早朝に目覚めてしまうなどの不眠症状が現れます。
頭痛・めまい
緊張性頭痛や立ちくらみを感じることがあります。
動悸・息切れ
心臓がドキドキする、胸が締め付けられるような感覚を感じます。
精神的な不調
イライラ感・怒りっぽさなど、些細なことで感情が高ぶりやすくなります。
不安感・焦燥感
理由のない不安や焦りを感じることがあります。
抑うつ気分
気分が落ち込み、興味や喜びを感じにくくなります。
集中力・記憶力の低下
集中しにくくなり、物忘れが増えることがあります。
情緒不安定
涙もろくなったり、感情の起伏が激しくなります。
日常生活に支障をきたすほど症状が酷い場合には産婦人科を受診し、ホルモン治療を行うことで改善される場合もあります。症状が辛いときは受診されることをおすすめします。
女性ホルモンの変化とその影響
更年期においては、エストロゲンとプロゲステロンの減少が体内のホルモンバランスを崩し身体に変化を与えます。これが身体的・精神的な不調の主な原因です。特にエストロゲンは自律神経の調節や脳内の神経伝達物質にも影響を与えるため、その減少は多岐にわたる症状を引き起こします。
ライフステージごとのホルモン変化
思春期(12歳〜18歳頃)
ホルモン分泌が急増し、性的な成熟が進みます。
成熟期(18歳〜35歳頃)
ホルモンバランスが安定し、妊娠・出産が可能な時期です。
プレ更年期(35歳〜45歳頃)
卵巣の機能が低下し始めます。それによって軽度の不調を感じる人もいます。
更年期(45歳〜55歳頃)
ホルモンの減少が顕著になり、体調の変化が現れやすくなる人が増えます。
ポスト更年期(55歳以降)
ホルモンバランスは新たな安定期に入り、更年期の症状は徐々に落ち着きます。
女性の更年期の不調の原因とは?
自律神経の乱れ
ホルモンバランスの変化は、自律神経系にも影響を与えます。自律神経は体温調節や心拍数、消化活動などを司っており、その乱れが多様な身体症状を引き起こします。
脳内神経伝達物質の変化
エストロゲンの減少は、セロトニンやドーパミンなどの脳内物質のバランスを崩し、情緒不安定や抑うつ、不安感を招きます。これらの物質は精神の安定や幸福感に関与しているため、その変動は精神的な不調に直結します。
生活環境やストレス
更年期の時期は、人生の転換期とも重なります。子育ての終了や親の介護、仕事などでの社会的役割の変化など、生活環境の大きな変化がストレスとなり、不調を悪化させる要因となります。
個人差による影響
遺伝的要因や生活習慣、持病の有無などが症状の現れ方に影響します。例えば、ストレス耐性が高い人は症状が軽減される傾向があります。
心理師から見た更年期の心のケア
更年期の精神的な不調は、心のケアによって緩和される場合も多くあります。
自分の感情を認識し、受け入れる
不安やイライラ、落ち込みなどの感情が湧いてきたとき、それを否定せず「今、自分はこう感じている」と認識することで気持ちが安定することがあります。感情を押し殺すのではなく、適切に表現することで心の負担が軽くなるのです。
ストレス発散方法を見つける
絵を描く、音楽を聴く、ガーデニングなど、趣味の時間を持つことで自分がリラックスできる時間を積極的に作りましょう。
適度な運動
ウォーキングやヨガは心身のリフレッシュに効果的です。
リラクゼーション法の実践
深呼吸や瞑想、アロマテラピーなどは心を落ち着かせてくれます。
周囲とのコミュニケーション
家族や友人に自分の状態を伝えることで、理解とサポートを得られます。また、同じ悩みを持つ人々との交流も心強い支えとなります。
心理師など専門家への相談
心の不調が続く場合は、心理カウンセラーや精神科医に相談し、専門的な視点からのアドバイスや治療を受けることをおすすめします。なお「悩ミカタ相談室」では心理師などの専門家が多く登録し、オンラインで気軽に相談できます。
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男性の更年期障害とは?
男性にも「男性更年期障害」があり、テストステロンの減少により、疲労感やイライラ、性機能の低下などが現れます。主に40代から60代の男性に見られる症状です。
女性の更年期と同様に、ホルモンバランスの変化が原因で心身にさまざまな不調が現れます。ただ男性の場合、症状が緩やかで気づきにくいこと多いです。男性更年期外来もあるので自分自身の体と心の変化に敏感になり、無理をせず専門家に相談することが大切です。
身体的な症状
【疲労感・倦怠感】……常に疲れを感じ、エネルギーが湧かない状態になります。
【筋力・体力の低下】……筋肉量が減少し、体力が落ちてしまいます。
【睡眠障害】……寝つきが悪い、途中で目が覚めるなど、十分な睡眠がとれません。
【発汗やほてり】……急に汗をかいたり、体が熱く感じることがあります。
【性機能の低下】……性欲が減退したり、勃起が困難になることがあります。
精神的な症状
【イライラや不安感】……些細なことで怒りっぽくなったり、不安を感じやすくなります。
【気分の落ち込み】……憂うつな気分が続き、やる気が出ないことがあります。
【集中力・記憶力の低下】……物忘れが増えたり、集中しにくくなります。
更年期に心がけたい過ごし方や対策
バランスの取れた食生活
カルシウムやビタミンD、良質なタンパク質を積極的に摂取し、栄養バランスをとりましょう。また、腸内環境を整えるために、全粒穀物や野菜、果物をバランスよく食べて食物繊維を積極的に摂取しましょう。そして塩分や糖分、アルコールの過剰摂取を控え、カフェインも適量にとどめてください。
適度な運動習慣
筋肉量を維持し、基礎代謝を上げる筋力トレーニングや、柔軟性とバランスを向上させるヨガやピラティスで心身の調和をはかりましょう。また有酸素運動は心肺機能を高め、ストレス解消に効果的です。
良質な睡眠の確保
睡眠環境を整備して快適な寝室を作り、睡眠の質を高めましょう。
入浴や軽いストレッチで体をほぐし、心を落ち着かせ、就寝前にリラックスできるよう心がけてみてください。またブルーライトは睡眠の妨げとなるため、寝る前の使用は控えましょう。
生活習慣の見直し
起床・就寝時間を一定にし、規則正しい生活リズムにすることで、自律神経が整います。また禁煙・節酒をすることで健康状態が向上します。
定期的な健康チェック
婦人科検診や骨密度検査で体の状態を確認するなど、医療機関で定期的に受診をするようにしてください。また自身でも日頃から血圧や体重、気になる症状について日記をつけるなどして、健康状態をモニタリングしましょう。
その他にも…こんなことがおすすめ
【サプリメントや代替療法の活用】大豆イソフラボンやビタミン・ミネラルなど不足しがちな栄養素をサプリメントなどを利用し補います。
【代替療法の検討】漢方薬や鍼灸、マッサージなどで症状の緩和できる場合があります。始める際はかかりつけのドクターに相談しましょう。
【ポジティブなマインドセットの維持】新しい趣味や学習に挑戦し、自分の可能性を広げる事も有効です。
【過度な完璧主義を手放す】力を抜くことを覚え、自分を追い込みすぎないようにします。
【ライフステージの理解と受容】更年期を自然な変化と捉え、自分のペースを大切にします。
まとめ
更年期の症状は個人差が大きく、ほてりや発汗、疲労感、睡眠障害、頭痛、動悸、イライラ、不安感、抑うつなど多岐にわたります。ホルモンバランスの乱れが自律神経や脳内物質に影響を及ぼし、生活環境やストレスも不調を悪化させる要因となります。
この時期におすすめしたいのは、自分の感情を認識し受け入れること、ストレス発散方法を見つけること、周囲とのコミュニケーションを大切にすることです。また、心の不調が続く場合は専門家に相談することで、適切なサポートが受けられます。更年期は新たな人生のステージへの移行期です。自分自身をケアし、前向きな視点を持ち過ごしましょう。
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