職場の人間関係に疲れた人へ。しんどさを抜け出す考え方と6つの対処法【専門家解説】

現代社会では、多くの人が職場や家庭、友人関係などさまざまな人間関係の中で疲れを感じています。特に仕事を中心とした人間関係は、生活の大部分を占めるため、その負担が重くのしかかることもしばしばです。本記事では、人が「人間関係に疲れた」と感じる背景や心理的要因を掘り下げ、その原因と対処法を具体的に解説します。人間関係のストレスを軽減し、より心地よい日々を送るためのヒントになれば幸いです。

執筆者

藤原美保さん

公認心理師、介護福祉士、保育士、健康運動指導士の資格保有、療育支援に携わること20年以上。

放課後等デイサービスを運営する中で発達障害児童、そのご家族の悩みも含め相談やカウンセリング対応を10年以上行う。自己肯定感が低い、親から虐待を受けた過去に悩む方からの相談なども多数対応。

これまでに、『発達障害の女の子のお母さんが、早めに知っておきたい「47のルール」』(エッセンシャル出版社)、『発達障害の女の子の「自立」のために親としてできること 』(PHP研究所)と2冊の本を執筆。現在も出版に向け本の執筆をつづけている中、子育てのポータルサイトにて発達障害の子の子育てコラムを連載中。

目次

人はどんなときに「人間関係に疲れた」と感じるのか

人間関係に疲れを感じる背景には、個人の心理的要因と環境的要因が複雑に絡み合っています。
特に職場での人間関係は、日常生活の大部分を占めるため、その影響は計り知れません。では一般的に人が「人間関係に疲れた」と感じる主な状況を挙げてみましょう。

過度な気遣いや自己抑制

他人に対して常に気を遣い、自分の本音や感情を抑え続けることは、心理的な疲労に繋がります。たとえば、上司や同僚に嫌われないように言動を慎重に選ぶことで、疲労感が蓄積します。

コミュニケーションの摩擦や誤解

意思疎通がうまくいかず、誤解やすれ違いが生じると、ストレスに感じます。相手の意図が読めない、自分の思いが伝わらない状況は、不安やイライラを引き起こし、疲れます。

期待や責任のプレッシャー

職場で高いノルマを課せられたり、重要な役割を担ったりすることで、プレッシャーが増大します。他者からの期待に応えようと無理を重ねると、人間関係そのものを負担に感じるようになる場合があります。

価値観や性格の不一致

自分とは異なる価値観(世代間やモラルなど)、の人と接することは、新たな視点を得る機会である反面、ストレスになる場合があります。特に、協調性が求められる職場では、この不一致が顕著になることがあります。

トラブルや対立の経験

過去に人間関係でトラブルや対立を経験すると、関係構築に消極的になり、人間関係そのものに疲れを感じてしまいます。

境界線の欠如

他人の要求にすべて応えようとする姿勢は、自己犠牲につながります。適切な境界線を設けないと、疲労感や不満が積み重なり、人間関係に疲れてしまいます。

「人間関係に疲れた」と感じる原因とは?

「人間関係に疲れた」と感じる原因には、職場環境や他人との関わり方、自分自身の思考や感情のクセが複雑に絡んでいます。その瞬間は個々の状況によって異なりますが、背景には共通する原因が存在します。特に職場での人間関係における疲れを引き起こす主な原因を以下に挙げて解説します。

感情労働の蓄積

感情労働とは、自分の本来の感情を抑え、期待される感情や態度を表現することです。職場では、顧客対応や同僚との関わりの中で「笑顔を保つ」「怒りを隠す」など、感情をコントロールする場面が多く、それが知らず知らずのうちにストレスを蓄積させます。

役割の過剰な負担

職場では「役割」を期待されることがあります。特に中間管理職にあたる人は役割を果たすために、他人のニーズに合わせたり、自分を犠牲にしたりすることで心身の負担が増大し、人間関係に疲れを感じる原因となります。

人間関係の複雑化

職場では上下関係や同僚間の力関係など、複雑な人間関係が絡み合います。特に、同じ職場にいる限り関係を断つことが難しいため、気の合わない人とのやり取りや、派閥や噂話に巻き込まれるといった状況は、強いストレスをもたらします。

自己主張の難しさ

自分の意見を適切に伝えることができず、相手の意向に流されてしまう人は、疲れを感じやすくなります。特に、「波風を立てたくない」「相手に嫌われたくない」という心理が強い場合、無理に妥協することで不満がたまり、人間関係の疲労感につながります。

他者からの過剰な期待や評価

他人から期待され、その基準に応えようと努力し続けることは大きなプレッシャーとなります。また、評価を気にするあまり失敗を恐れて過度に慎重になると、ストレスがさらに増大します。

ネガティブなコミュニケーション環境

職場の雰囲気や文化も、人間関係に大きな影響を及ぼします。たとえば、批判や指摘が多い環境、成果主義が強すぎる環境では、萎縮しやすく、疲れやストレスを感じる原因になります。

自分の限界を超えた他者への配慮

他人を優先しすぎるあまり、自分の感情やニーズを後回しにしてしまうことも、疲れの原因です。他人のために頑張りすぎる人は、自分の負担を自覚できずに疲労を溜め込みやすくなります。

社会的比較と劣等感

職場では、同僚とのパフォーマンスの差や評価の違いが目に見えやすいため、自分と他人を比較してしまうことがあります。この比較によって劣等感が生じると、自分を責める気持ちが強まり、人間関係全般が苦痛に感じられることがあります。

人間関係に疲れやすい人の特徴や心理

「人間関係に疲れやすい人」には共通する特徴や心理的な傾向があります。人間関係に疲れやすい特徴や心理を理解することは、自分自身を客観的に見つめ直し、対処法を見つける第一歩になります。「なぜ自分が疲れを感じやすいのか」を理解することで、人間関係におけるストレスの原因を掘り下げることができます。
以下では、その特徴や心理について具体的に解説します。

共感力が高い

他人の感情や気持ちを敏感に感じ取る共感力の高い人は、相手に気を遣いすぎたり、他人の感情に引きずられたりすることが多いです。

完璧主義な傾向がある

完璧主義な人は、職場での人間関係において過度に責任感を感じることがあります。このような思考が、自分を追い込む原因となり、人間関係に疲れを感じやすくします。

自己肯定感が低い

自分に自信がない人は、他人の評価や意見に過敏になりやすいです。不安から、相手に合わせすぎたり、自分の意見を抑えたりすることが多くなり、自分を偽ることが疲れの原因となります。

ノーと言えない

頼みごとや仕事を断れない人も人間関係に疲れやすい特徴を持っています。このような人は、自分のキャパシティを超えた負担を抱え込みやすく、結果的にストレスを蓄積してしまいます。

他人に認められたいという欲求が強い

承認欲求が強い人は、他人からの評価や感謝の言葉がないと不安や不満を感じやすいです。職場で「頑張りを認めてもらえない」「成果が正当に評価されない」と感じると、自己効力感を失い、人間関係が重荷に感じられます。

自分を責める思考が強い

人間関係でうまくいかないことがあったとき、必要以上に自分を責める傾向がある人も、疲労感を抱きやすいです。

極端に他者に依存するか、孤立を好む

他人に過度に依存するタイプの人は、相手の反応に一喜一憂して精神的な負担を感じやすいです。一方で、極端に孤立を好む人も、人間関係の必要性を感じつつ距離を取ることで矛盾したストレスを抱えることがあります。

人間関係の疲れを蓄積したときのリスクや問題点

人間関係における疲れを放置し、蓄積していくと、心身ともに大きな影響を及ぼすリスクがあります。職場など日常的に関わる環境でその疲れが解消されない場合、さまざまな問題に発展する可能性があります。そのため、自分の状態を早めに把握し、適切な対処を講じることが重要です。

精神的な健康の悪化

人間関係の疲れが慢性化すると、ストレスが蓄積し、精神的な健康に深刻な影響を及ぼします。以下のような状態に陥るリスクが高まります:

不安や抑うつ状態: 他人の目を過度に気にしたり、ストレスが続くことで、不安感や無力感が強まります。
バーンアウト(燃え尽き症候群): 特に職場での疲れが続く場合、仕事への意欲を完全に失い、心身ともにエネルギーが枯渇する状態になります。
睡眠障害:
人間関係のストレスが頭から離れず、夜も不安やイライラが続くと、睡眠の質が低下し、さらなる疲労を引き起こします。

身体的な健康への影響

精神的な疲れは、身体にも影響を及ぼします。ストレスホルモンが過剰に分泌されることで、次のような健康問題が発生する可能性があります。

免疫力の低下: ストレスが続くことで、睡眠不足や食欲不振などから免疫が低下し体調を崩しやすくなります。
消化器系の不調: ストレス性胃炎や過敏性腸症候群など、消化器系の不調を招くことがあります。
頭痛や肩こり: 慢性的な緊張が続くことで、身体に痛みなどを感じやすくなります。

生産性や仕事のパフォーマンスの低下

人間関係の疲れが影響するのは健康だけではありません。以下のように、仕事のパフォーマンスにも影響を及ぼします

集中力の低下: 人間関係のストレスが頭を占めると、業務に集中できなくなります。
判断力の鈍化: 精神的な余裕を失うことで、適切な判断や決断が難しくなります。
ミスの増加: 心理的なプレッシャーが原因でミスが増え、さらに自己否定感を強める悪循環に陥ることがあります。

人生全般への影響

人間関係の疲れが長引くと、生活全般に悪影響を及ぼします。以下のような問題が起こり得ます。

プライベートの質の低下: 職場での疲れを家に持ち帰ることで、家族や友人との関係に支障が出ます。
やりがいの喪失: 人間関係のしんどさが続くと、仕事だけでなく趣味や生活全般への意欲も低下します。
自己否定感の増加: 人間関係でうまくいかないことを自分の責任だと感じることで、自分を責める気持ちが強くなり、自己肯定感がさらに低下します。

人間関係の疲れを解消するための対処法

仕事をしている以上、人間関係の疲れを完全にゼロにすることは難しいですが、そのまま放置すると心身に悪影響を及ぼす可能性があります。まずは体調を整えることを優先しましょう。人間関係に疲れたと感じている場合、睡眠不足や日常的な緊張感から実は体も不調になっていることが多いものです。
心身ともに健康を保つことは、ストレス軽減するための基盤になります。まずは体調を整えることに重点を置き出来ることから始めましょう。

日常生活を見直す

デジタル生活から一日数時間はなれ、適度な運動をしましょう。ウォーキングやヨガなどの軽い運動は、気分転換になります。しっかり身体を動かすことで、程よく身体が疲れ、食事を摂り、ゆっくりお風呂につかり睡眠をとることで、体調を回復させることに集中しましょう。体調が整わないと次のステップアップにつながりません。

自分の感情に気づき、認める

体調が整ったなら、感情を否定せず自分が何に疲れるのか、どんな状況がストレスになるのかを考えましょう。原因を明確にすることで、対処を見つけることができます。
また自分の気持ちを書きだすことで感情が整理され、解消に向けたヒントが得られることがあります。

無理のない範囲で他人と関わる

人間関係の疲れは、相手に対して過度に気を遣うことから生まれることが多いです。適度な距離感を保ちながら、無理のない範囲で他人と関わることを意識しましょう。
すべての人に好かれる必要はありません。自分らしいペースで人と接することを大切にしましょう。

断る練習をする

断ることが苦手な人は、自分の負担を増やしてしまうことがあります。少しずつでも「ノー」を言える練習をすることで、自分の心を守ることができます。
まずは断る台本やシナリオを作りロールプレイをしてみることから始めてみましょう。台本やシナリオを作るだけでもストーリーの展開をイメージができ不安が薄れることがあります。

自分を楽しませる時間を持つ

人間関係に疲れたときは、他人と距離を置き、自分だけの時間を過ごすことは非常に有効です。自分の好きなことだけを考え、楽しむことに集中してみましょう。自分を楽しませる時間は心を癒し、エネルギーを回復させます。
ただし、幾ら好きなことでもリベンジ夜更かしなど、体に良くないことや負い目、罪悪感が残るような活動はかえって自分の心や身体を疲労させることになるため避けましょう。

専門家を頼る

一人で抱え込まず、信頼できる人に気持ちを打ち明けることも効果的です。話をするだけで心が軽くなり、新たな視点を得ることができるかもしれません。
家族や友人に話しづらい場合は、カウンセラーや心理士といった専門家に相談するのも一つの方法です。現在はオンラインなどでも気軽に専門家に相談できるサイトなども増えています。

当サイト「悩ミカタ」でも、ミドル世代(40代50代)の悩みや不安・ストレスについて各分野の専門家/カウンセラーに相談できるオンラインカウンセリングサービス「悩ミカタ相談室」を展開し、公認心理師など国家資格を保有する専門家が多く登録しています。つらくて不安な気持ち、1人で抱え込まずにまずはお気軽に相談してみませんか?

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人間関係のしんどさを解消する考え方のコツ

人間関係に疲れを感じるとき、考え方を少し変えるだけでも日常的なストレスを減らし、より柔軟に人間関係と向き合うことが可能になります。

他人との距離感を大切にする

人間関係では、適度な距離感を保つことがしんどさを減らす鍵です。相手との心理的な距離を調整することで、負担を感じにくくなります。

「全員と仲良くしなくていい」と割り切りましょう。すべての人と深く付き合う必要はありません。自分が安心できる範囲の関係性を築きましょう。

自分の固定観念を見直す

自分の価値観を再確認することは、人間関係の疲れを軽減する助けになります。「こうあるべき」という固定観念を見直し、柔軟に考えることが大切です。
自分の価値観や行動をすべての人に理解してもらうことは不可能です。自分が納得できれば十分だと割り切り、他人の評価や意見に振り回されるのではなく、自分が納得できる基準を明確にしましょう。

他人に期待しない

人間関係におけるしんどさの多くは、「もっとこうしてほしい」「こうあるべき」という期待や執着から生まれます。いい意味で「諦める」ことで、ストレスを手放すことができます。
他人を変えることはできません。他人の性格や行動を変えようとする努力はムダです。それよりも、自分の反応を変えることに注力しましょう。

感謝の心を持つ

相手に過剰な期待をするのではなく、小さな感謝の気持ちを持つことで、人間関係の見え方が変わります。期待値を低く設定することで、良い出来事があったときにポジティブな感情が生まれます。相手のちょっとした行動にも感謝することで、自分の気持ちが穏やかになりますよ。

人間関係を“役割”として捉える

職場の人間関係においては、個人的な感情に巻き込まれすぎず、「業務上の役割」として距離を取る考え方が役立ちます。
職場の人間関係において、親密な関係を築く必要はありません。仕事上のやりとりに集中し、職場での出来事を必要以上に家に持ち込まないようにしましょう。

まとめ

人間関係に疲れを感じる要因は、過度な気遣いや自己抑制、価値観の不一致、役割の負担など、多岐にわたります。これらの背景には、共感力が高い、自己肯定感が低い、他人の評価を気にしすぎるといった個々の心理的特徴も影響しています。
人間関係の疲れを解消するためには、自分の心と身体の健康を大切にし、他人との適度な距離感を保ちながら、他人に期待しない姿勢が重要です。また、自分の感情を認め、専門家の助けを借りるなど、柔軟に対処する方法を見つけることが求められます。自分にあった人間関係の構築の仕方を考え、ストレスを貯め過ぎないようにしていきましょう。

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