寝起きに不安感を感じるのはなぜ?主な原因と対処法を解説

「毎朝すがすがしい気持ちですっきり目が覚める」

誰もが理想とするさわやかな朝の光景です。しかし実際には「朝が来ることが怖い」「毎朝寝起きは漠然とした不安感に襲われる」など、全くすがすがしくない朝を迎えているという声も多く聞きます。「寝起き 不安感」で検索している人が多いというデータもあり、朝から不安な気持ちを抱えて悩んでいる人は少なくないようです。

多くの人が感じる寝起きの不安ではありますが、いったいなぜ寝起きの不安感は起こるのでしょうか?この記事では、寝起きに起こる不安感の原因と対処法について詳しく解説します。

執筆者

まりこさん

教育×産業の2つの領域で経験を積んだハイブリッドなカウンセラー。
教育領域では保育園・幼稚園・小学校・中学校などあらゆる現場を経験。
現在は私立小学校の教育相談スーパーバイザーを務める。
産業領域では、セルフケア・ラインケア・ハラスメントなど、メンタルヘルス系の研修講師を務める。
カウンセリングオフィスkahunaを運営。

目次

寝起きに感じる不安感の正体とは

目が覚めたときにふと起こる不安な気持ち、その正体はいくつか考えられます。例えばストレスによって、漠然とした不安を伴う早朝覚醒が起きているケースが考えられるでしょう。他にも「モーニングサージ」といって、朝目覚める前後に血圧が急上昇する現象により、体に負担がかかって不安感が引き起こされているケースもあります。

一過性のものから深刻なメンタル不調のサインである可能性まで、寝起きに感じる不安感には幅広い原因が考えられます。

寝起きに不安感が生まれる5つの要因

寝起きに不安な気持ちが生じる要因を5つに分けて見ていきましょう。

要因1:ホルモンバランスの乱れ

ホルモンとは、体の各種機能を整える役割を担う体内の分泌物のこと。眠くなる、目が覚めるといった睡眠機能もホルモンの影響を受けています。睡眠に関わるホルモンは主に3つです。

①セロトニン

セロトニンは、日中の覚醒と夜間の睡眠促進の両方の役割を担います。日中に日の光を浴びることでたくさん分泌されるのが特徴です。「幸せホルモン」と呼ばれ気分を安定させる効果もあり、リラックスした質の高い睡眠をサポートしてくれます。

②メラトニン

メラトニンは「睡眠ホルモン」と呼ばれ、体内時計を調整し、睡眠リズムを整えてくれる重要な役割を担います。実はメラトニンは、日中に分泌されたセロトニンが原料。夜に向けてセロトニンからメラトニンに変換されていき、寝るときに自然な眠気を生み出してくれるのです。

③コルチゾール

コルチゾールは「ストレスホルモン」と呼ばれ、ストレスに立ち向かうときに多く分泌されます。興味深いことに、コルチゾールは起床の約2時間前から自然と分泌量が増加し、それに伴い血糖値や血圧が上昇して、体が起きて活動状態に入る準備をしてくれます。自然な目覚めが迎えられるのはコルチゾールのおかげです。

3つのホルモンの役割を見ても分かるように、ホルモンは生活リズムと深く関係。夜更かしや昼夜逆転などで生活習慣が乱れると、適切なタイミングで適切な量のホルモンが分泌されなくなってしまいます。ホルモンバランスが乱れると、覚醒と睡眠のリズムが更に崩れていき、精神的な不安定さや寝起きの不安感といった負のスパイラルに陥ります。

要因2:自律神経の乱れ

自律神経とは、興奮系の「交感神経」とリラックス系の「副交感神経」の2つを指します。2つの神経はその場面や状況に合わせて自動的に切り替わります。例えば、運動するときは勝手に交感神経が優位に働き、寝る前は自然と副交感神経が優位になって体が休まる。このように自動的に切り替わるので自律神経と呼ばれるのです。

ストレスや疲労が溜まると自律神経はバランスを崩し、常に交感神経が優位に働き続ける「過緊張状態」が発生。過緊張状態が続くと心身に負担がかかり、精神面では不安感・イライラなど、身体面ではめまい・動悸・息苦しさなどが起こります。特に、寝付けない・夜間に何度も目が覚める・早朝に覚醒するといった不眠の症状はよく見られ、寝起きに不安感を伴うことが多いです。

要因3:心理的なストレス

仕事・人間関係・金銭問題・将来への不安など、大きな悩みを抱えているときは、ストレスを睡眠中に脳内で処理しきれず、寝起きに不安感として現れることがあります。常に悩みにとらわれ考え続けてしまっているので、深い眠りが得られにくく、脳の疲労回復が間に合わない状態に陥っているのです。

心理的ストレスから悪夢を見やすくなることもあり、目覚めたときに夢の内容を思い出して不安に襲われることも。また、既に抑うつ傾向が強まっていると、朝が来るたびに「また朝が来てしまった」「1日が始まるのか…」と気持ちが強く落ち込んで、それが不安感を強めている可能性があります。

要因4:睡眠関連疾患による睡眠の質の低下

ストレスの蓄積や生活習慣の乱れ以外にも、睡眠の質を低下させて寝起きの不安感を増大させる要因があります。それは【睡眠に関連する疾患】です。具体的にどのような疾患が関連するのか例を挙げました。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)

睡眠中に呼吸が一時的に停止してしまう疾患。

症状)ぐっすり眠れず、日中の強い眠気や疲労感が起こり生活に支障をきたす。

原因)肥満で呼吸をする気道が狭くなっていることや、加齢による気道周りの筋肉の衰えなど。

むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)

脚がむずむずして、じっとしていられなくなる疾患。

症状)脚に虫が這っているような感覚が生じ、特に夜に症状が現れやすいため、ぐっすり眠れなくなる。
原因)鉄分不足による栄養の問題や、脳内のドーパミン神経の機能障害など。

上記で挙げたような睡眠に関連する疾患は睡眠の質を著しく低下させるので、朝目が覚めたときにぐっすり眠れた感覚が乏しく、不安感が起こりやすくなります。

要因5:カフェインやアルコールの影響

カフェインやアルコールは誰もが気軽に摂取する嗜好品ですが、実は思っている以上に睡眠に影響を与え、朝方の不安感の原因を作り出している可能性があります。

カフェイン

カフェインは脳を刺激し覚醒状態を維持する作用があります。交感神経を刺激し副交感神経の働きが抑えられるため、リラックスして入眠する状態とは真逆の状態を作り出します。

覚醒効果の持続時間は一般的に4時間程度、体内から半減するのは8時間ほど。長時間に及ぶため、夕方や夜にカフェイン類を摂取すると、夜の睡眠の質に悪影響を及ぼします。夜間のコーヒーの飲みすぎ、エナジードリンクの多用には要注意です。

アルコール

寝る前にアルコールを摂取する人は多く、中には入眠がスムーズになるため睡眠の質を高めると誤解している人もいるほどです。しかし、実際は逆でアルコールは熟睡を妨げ、睡眠の質を下げています。

例えば、夜間にトイレに行きたくなって何度も目が覚めてしまう、いびきや無呼吸が起きやすくなり睡眠中の呼吸が不安定になるなどの問題が起こります。ぐっすり眠れていないことに加え、お酒が残っている状態で目が覚める場合もあり、すっきりさわやかな寝起きとはほど遠い状態の朝を迎えることになりかねません。

寝起きの不安感を解消するメンタルケア習慣

ここからは不安感を解消するための対策について見ていきましょう。日々の中にメンタルケアの習慣をうまく取り入れていくことがポイントになります。具体的にどんな習慣を取り入れればよいのか、5つ解説します。

習慣1:睡眠の質を高めるリズムと環境を整える

質の高い睡眠を実現するには、まず生活全般のリズムを整える必要があります。最低でも6時間以上の睡眠時間を確保するためには、何時に起床し何時に床につくのが良いのか、自分のリズムを明確にしてみましょう。何時に寝るのかを決めたら、スムーズに入眠するためにやることを逆算しておくのもポイントです。

例えば、寝る90分前にお風呂に入ると質の高い睡眠が得られやすいとか、入眠時間に向けて徐々に部屋の明かりを暗くしていくなどのテクニックがあります。

また、リラックスできる寝室環境作りにこだわってみることも大事です。寝室の湿度・温度、寝具の心地よさ、照明、身に付ける服の素材など。こだわるポイントはたくさんありますので、ぜひ意識してみましょう。

リズムや環境を整えてもなかなかスムーズに入眠できない方は、睡眠導入剤の使用を検討するのも一案。ただし、薬の服用は必ず医師に相談してからにしましょう。

習慣2:朝のルーティンで心を整える

実は、夜ぐっすり眠れるかどうかは、その日の朝や午前中の過ごし方によって決まっているという考え方があります。これは、朝目が覚めたら、カーテンを開けて太陽の光をしっかり浴びることで、セロトニンがたくさん分泌されることが影響しています。セロトニンは夕方以降に睡眠ホルモンであるメラトニンに変換されるので、不足していると質の良い睡眠が得られにくいのです。

朝から午前中にかけては、太陽の光以外にも、適度な運動やバランスの取れた朝食をとることで覚醒を高めておくと、その日の夜の睡眠の質が高まります。これらのポイントを押さえて、朝起きたらカーテンを開けて日光を浴びる、軽くストレッチをする、その後簡単な朝食を食べるなど、自分なりのルーティンを作ることが大切。自分にとって心地よい朝のルーティンが見つかれば、心の安定に繋がり不眠の症状も改善されやすくなるでしょう。

習慣3:ストレスと上手に向き合う

ストレスをため込んでしまうことが睡眠の質の悪化、朝方の不安感につながっている方は、ストレスとの付き合い方を見直すことが非常に効果的です。ストレスと上手に付き合う方法は、大きく分けて【ストレス源への対策】と【溜まったストレスの発散】の両面からアプローチをするとよいでしょう。

ストレス源への対策の例

  • ストレス要因を解決するための取り組みを増やす
  • ストレスとなっている出来事と距離をとる
  • ストレスを根本的に解決するために、専門機関へ相談する

溜まったストレスの発散の例

  • 趣味を全力で楽しむ
  • リラックスできる時間を積極的に作る
  • 信頼できる人に相談して必要なサポートを得る

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習慣4:食事の内容を見直す

食生活が偏り必要な栄養が不足していると、ホルモンバランスや自律神経など、あちこちに不調が現れ、結果的に睡眠の質を下げている可能性が高まります。バランスの取れた食事を日頃から心がけるだけでも、夜ぐっすり眠るきっかけになるでしょう。

特に、セロトニンの分泌を促す栄養素は積極的に食べるように心がけてください。セロトニンは【トリプトファン】【ビタミンB6】を材料に生成されます。

トリプトファン

必須アミノ酸の一種で、セロトニンの前段階の栄養素。体内で合成されないため、食事から摂取する必要あり。多く含まれる食べ物は、バナナ、赤身魚、乳製品、大豆製品、ナッツ類など。

ビタミンB6

ビタミンB群は神経機能の維持に重要な役割をはたすビタミン。中でもビタミンB6はセロトニンなどの神経伝達物質の生成に深く関与する。多く含まれる食べ物は、サバ、サケ、鶏肉、ごま、ピーナッツ、ブロッコリーなど。

習慣5:軽い運動を習慣化する

睡眠の質を上げるためには、適度な運動も非常に効果的です。運動といわれると苦手意識やめんどくさい気持ちを持つ方もいるかもしれませんが、ウォーキングや5分間のストレッチなど、軽い運動でも十分効果が得られるので、ある意味最も手軽な方法ともいえるかもしれません。

具体的には、朝の15分程度の散歩、音楽に合わせた軽いダンス・ヨガ・ストレッチなどがおすすめ。重要なポイントとして【リズムを感じながら体を動かす】ということを意識してみてください。一定のリズムで行うリズミカルな運動は、セロトニンの分泌を促す効果があるといわれています。ただの散歩でも、リズミカルに腕を振ることを意識するだけで、睡眠の質にプラスの影響をもたらすでしょう。

それでも寝起きに不安感が消えないときは…専門家のサポートを

5つの習慣を最低でも1か月は継続して取り入れてみてください。それでも自力での改善が難しい場合ももしかしたらあるかもしれません。その場合は、生活習慣の改善だけでなく、専門家にしっかりサポートしてもらう必要がある段階だといえます。

心療内科や精神科に通院して継続的な治療を受けましょう。中には睡眠の専門医がいる医療機関もあります。睡眠に特化した医療機関に相談することが、適切なケアを受けるためには重要です。参考に、睡眠障害に詳しい医療機関の情報を紹介します。

日本睡眠学会専門医療機関
睡眠障害外来|NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター

まとめ

本記事では「寝起きに感じる不安感」がなぜ起こるのか、その原因と対応策をまとめてきました。寝起きの不安感の要因は主に5つ、【ホルモンバランスの乱れ】【自律神経の乱れ】【心理的なストレス】【睡眠関連疾患による質の低下】【カフェインやアルコールの影響】について解説しました。

また、対策としては生活習慣の改善のポイントを5つ、【睡眠の質を高めるリズムと環境を整える】【朝のルーティンで心を整える】【ストレスと上手に向き合う】【食事内容を見直す】【軽い運動を習慣化する】を紹介しました。

自分の寝起きの不安感の原因を5つの中から突き止め、原因に応じた生活習慣の改善に取り組んでみてください。もしうまく改善できず自分の力では限界だと感じたときは、早めに睡眠外来など睡眠の専門医を頼ることも忘れずに。すっきりとしたすがすがしい寝起きを取り戻すために、できることから始めていきましょう。

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