承認欲求がない人はいる?弱い人の特徴や承認欲求を解消する6つの方法

誰かに自分のことを褒めてもらいたい、認めてもらいたい、そういう欲求のことを承認欲求と言います。承認欲求は本来誰にでも備わっている欲求のひとつです。ただ、それが強すぎてしまうことで、自分や周りの人をつらくさせてしまう場合があります。

周りの人を見た時に、承認欲求をほとんど感じない人がいるはずです。そういう人を見ると、羨ましく感じたりするのではないでしょうか。やはり承認欲求がない人はいるのでしょうか?弱い人の特徴や承認欲求を解消するための方法を解説していきます。

執筆者

臨床心理士・公認心理師

aiirococcoさん

公認心理師、臨床心理士として総合病院に勤めています。小児科外来をはじめ、緩和ケアチームやリエゾンなど幅広い年齢層の方の心理支援を行っています。また、webライターとして主に心理系の記事を執筆中。誰かに相談するほどではないけど困ったな、というときに役立つ情報を発信できるよう頑張ります。

目次

承認欲求とは何か

承認欲求とは何か、その正体や仕組みがわからないと、自分を変えることは難しいものです。あなたを苦しめている承認欲求とは、一体何なのでしょうか?

①人間に備わっている欲求のひとつ

承認欲求とは、人間に備わっている欲求のひとつです。アメリカの心理学者であるマズローが提唱している欲求五段階説という理論の中に出てきます。睡眠欲、食欲、性欲といった生きていく上で必要な欲から始まり、ピラミッド状に5段階になっています。下へ行くほど必要最低限の欲求になり、承認欲求は上から二番目の欲求です。

生理的な欲求が満たされ、安全で安心できる生活が営むことができ、社会にも所属している状態で、初めて承認欲求が生じます。つまり、餓死しそうなほど空腹の状態であったり、戦争などで身の安全が担保されない環境にいたりする場合は、承認欲求は湧かないのです。

②承認欲求には二種類ある

承認欲求というと、大抵の人は「他人から認められたい欲求」であると想像するのではないでしょうか。世の中一般的に使われる場合は、その意味で捉えられていることが多いです。そういう他人から認められたい欲求は、承認欲求の中でも低位の承認欲求と呼ばれています。

実は承認欲求にはもう一種類存在しており、それは高位の承認欲求です。これは他人から認められたいという欲求ではなく「自分を認めたい」という欲求になります。他人がどう評価するかではなく、自分が自分をどう評価するかということがメインになってくるのです。

③具体的な行動

承認欲求の高い人に見られる具体的な行動を例に挙げてみましょう。例えば、SNSの更新が頻回で、毎日のようにアップしては「いいね」の数を気にしてしまいます。また、フォロー者数が少ないことも気に病んでしまうことが多く、とにかくフォロー者を集めることに躍起になりがちでしょう。

仕事では、自分以外の人が褒められたり認められたりすることで、気持ちが落ち込みがちです。自分が認めてもらえなかったような気持ちになってしまうからでしょう。また、自分のやった仕事をアピールし、とにかく周りの人からの褒め言葉を引き出そうとしがちだったりもします。

承認欲求がない人はいるのか

では、承認欲求がない人はいるのでしょうか?先ほど、人間には必ず備わっている欲求であると言いましたが、いろいろな条件によって承認欲求がない状態でいる人も、いるにはいます。取り巻く環境によるところが大きいでしょう。

①自分自身の状態や環境が不安定であれば承認欲求はなくなる

承認欲求は、生理的な欲求や安全欲求より優先されるということはありません。つまり、空腹で明日食べるものも不確定な状態の時に、承認欲求を満たしたいという気持ちになることはないということです。

また、家の中がギスギスして居心地が悪く、また外にも所属する場がなく、つながりが持てていない人も承認欲求は湧きません。つまり、承認欲求があるということは、そういった部分がきちんと満たされた状態になっているということなのです。

②ないように見える人はいる

承認欲求はあるのですが、それが低位の承認欲求ではなく、高位の承認欲求であれば、おそらく周りから見ても、承認欲求が高いようには見えないでしょう。承認欲求は、あくまでも他人に認めてもらいたい気持ちが強まり、周りに対してアクションを起こすことで認識されます。

高位の承認欲求が強い人は、とにかく自分に自信を持つために、自分を磨こうとしたり変わろうとしたりします。そして自分の中で自信をつけることで欲求が満たされるのです。つまり、周りに対してのアクションがない分、他人からは承認欲求を感じることができないのです。

③さらに上の欲求を持つことで、ないように見える人もいる

承認欲求は五段階になっているピラミッドの上から二番目だと言いました、つまりさらに上の欲求があります。それが自己実現の欲求です。高位の承認欲求よりもさらに上のレベルの欲求です。承認欲求が満たされることで、次の欲求が湧いてきます。

理想の自分になれるよう、自分にとっていい生き方ができるよう、努力したり学んだりしようとする欲求です。この欲求を持つ人は、他人から認めてもらうこと自体、特に必要としていません。認められることは嬉しいと感じますが、それがなくても自分を肯定する気持ちが揺らがないのです。この場合、承認欲求はないと言えるのかもしれません。

承認欲求がない・弱い人の特徴や傾向

では、承認欲求がない、もしくは弱い人は具体的にどういう特徴や傾向を持っているのでしょうか?もし自分を変えたいと思うのであれば、お手本となるような人を見つけて真似をすることが近道になります。

①他者評価を気にしすぎない

承認欲求がない・弱い人は、他者評価を気にしすぎないという特徴があります。承認欲求が強い人は、他者評価をとても気にするのではないでしょうか。少しでも批判されると気持ちが落ち込み、褒められると嬉々とした気持ちになる、その振り幅が大きいでしょう。

逆に承認欲求がない・弱い人は、そこまで大きく振り回されることはありません。相手の考えや意見も尊重しますが、それで自分の価値が下がったとは思わないはずです。聞き流せる部分は聞き流し、聞き入れて参考にした方がいいところは聞き入れる、そういう取捨選択が自然とできるのが、承認欲求がない・弱い人でしょう。

②SNSを自分の記録のために使っている、もしくは利用していない

承認欲求がない・弱い人というのは、SNSを自分の記録のために使っている、もしくは利用していない人が多いです。自分の趣味の記録にしていたり、日記帳がわりにしている人もいるでしょう。また、使う必要自体感じていない人もいます。

そのため「いいね」の数などはほぼ気にしておらず、コメントは貰えば嬉しいものですが、特にもらえなくても気にしていないでしょう。承認欲求の強い人とは、SNSの使い方自体が違っているのです。

③自分がどうしたいのかが明確

承認欲求がない・弱い人は、基本的に自分がどうしたいのかが明確です。こういう夢がある、こういう生き方をしたい、そういう前向きでまっすぐな想いを心の中に抱いています。また、それが周りから見てどういうものかは気にしていません。あくまでも、自分の気持ちを大切にしているのです。

承認欲求が強いと、周りから見て映える自分を意識してしまいがちでしょう。憧れられるような自分、すごいと言われるような自分を求めてしまいがちです。そのせいもあって、周りの人のタイプによって、自分がどうしたいのかがブレてしまい、明確になっていないことが多いです。

④嫌われても落ち込みすぎない

承認欲求がない・弱い人は、他人から嫌われることに対して、それほど強く落ち込むことがありません。確かに関係が悪くなってしまったり、険悪なムードになることは望んではいないでしょう。落ち込むことはあるかと思います。

ただ、そこで自分の存在が否定されたかのような気持ちになり、ひどく落ち込むところまではいかないのではないでしょうか。好かれることもあれば嫌われることもあると、ある程度割り切ることができるはずです。それは自分を自分で肯定することができているからかもしれません。

承認欲求がないことにデメリットはあるの?

では承認欲求がないことにデメリットはあるのでしょうか?もしかしたら、承認欲求があることが、プラスの方向に働く場合もあるのかもしれません。

①他人からの評価を聞かなくなる場合がある

承認欲求がないと、他人からの評価をあまり聞かなくなってしまう場合があります。自分の気持ちや自己評価だけに注目してしまうのです。そうなると、場合によっては自己評価と他者評価に大きなずれができてしまうことがあります。

他人の意見を全て聞く必要はなく、時には聞き流したりすることも必要です。ただ、完全に耳を塞いでしまうのは問題かもしれません。承認欲求があるということは、他者評価に目が向くということです。聞きすぎは良くないものの、聞いて得るものはあるでしょう。

②所属感がない場合がある

承認欲求の土台となる社会的欲求、つまり社会とのつながり、所属感を感じられていなくて承認欲求がない場合があります。社会の中に居場所がなく、孤独を強く感じることは、とてもつらいものでしょう。

承認欲求があるということは、少なくとも社会の中に何かしらの居場所があるということです。承認してほしいと思える相手がいるということは、居心地の良さは別として、何かしらの居場所やつながりは持てているということでしょう。

③向上心に欠けてしまう

承認欲求がないということは、自分が周りからどう見られるのか、そういったことを気にしないということです。人は、他人からよく思われたい、期待に応えたいということが原動力となり頑張ることができたりするものです。

やりたくないことはやらない、という方向に向かってしまう可能性もあり、努力不足で能力を活かしきれない場合もあるでしょう。承認欲求がある程度あることで、周りに褒めてもらいたいと頑張って向上していくことができる場合もあります。

承認欲求を手放すための方法や考え方

承認欲求が高くて、苦しくなってしまっている人にとっては、どれだけメリットがあっても、手放したくなるものでしょう。承認欲求を手放して、もう少し自由になるためには、どういう方法や考え方をとると良いのでしょうか。

①過去を振り返ってみる

承認欲求が高い人は、過去に、何かしらの心の傷を負っている場合があります。褒めてほしい、認めてほしい人から認めてもらうことができなかったのかもしれません。自信をなくすようないじめなどを経験している場合もあるでしょう。

そういう満たされなかったものが、今も尾を引いてしまっている可能性があります。どこで傷を負ったのかを振り返ることで、自分がどうして承認欲求を強めてしまっているのかが理解できるでしょう。本当は誰に認めてほしいのか、誰に褒めてほしいのかがわかることは承認欲求を手放すための第一歩になります。

②高位の承認欲求を会得する

承認欲求が高い人は、おそらく低位の承認欲求に振り回されている状態です。それが高位の承認欲求に変われば、今よりはるかに落ち着いた気持ちで過ごせるようになるでしょう。高位の承認欲求のミソは、自分で自分を認めることです。

 なかなか最初は不安で、うまくできないという気持ちになるかと思います。じゃあ、どうなれば自分を認めてあげられるのか、そこを考えてみることも大切でしょう。高すぎるハードルを自分に課す人もいますが、それはお勧めできません。最初は低いハードルから、越えられたら自分を褒める、ということを繰り返すことで、少しずつ感覚を掴めるはずです。

③SNSは思い切ってやめる

承認欲求が高い人は、どうしてもSNSに振り回されてしまいがちです。気にしないようにしようと意識しても、つい「いいね」の数やコメントの数を気にしてしまうでしょう。不安になってきてしまい、また投稿して余計に不安を掻き立てられるという悪循環になりがちです。

なかなか思い切ることは難しいかもしれませんが、やめてしまったら、意外とスッキリする場合もあります。本当に承認欲求を手放したいと思うのであれば、トライしてみる価値はあるかもしれません。

④自分を好きになる努力をする

承認欲求が高い人は、周りに受け入れられるということを常に念頭に置いてしまいがちです。そうでなく、あなたが自分を好きになるためには何が必要なのか、そういう視点に立って考えてみると良いのではないでしょうか。

どんな自分なら好きになれるかがわかったら、そこへ向かって努力をしてください。他人によく思われるためではなく、自分が満足するために努力をするのです。そして満足できるくらいになったら、思い切り自分を褒めると良いでしょう。

⑤他人の評価は様々だと考える 

同じ人を見ても「人当たりが良い人」と言う人もいれば「八方美人な人」と言う人もいます。きっと、あなたも人によって評価は様々だということはわかっているはずです。そのため、誰かひとりがあなたに対してあまり良くない評価をしても、それがイコールあなたの評価ということにはならないのです。

そういう面もあれば、別の面もあります。また、良いように捉える人もいれば悪いように捉える人もいます。ひとりの人の承認を得ることは、それほど重要なことではないのではないでしょうか。あなたにとって大事だと思う人から褒めてもらうことができれば、意外とそれで満足できるのかもしれません。

⑥別のところに居場所を作る

承認欲求が高いのは、もしかしたら、居場所がないと感じているせいかもしれません。社会的な居場所はあるけれども、そこのつながりが希薄だったり、周りから見下されたりと居心地のよい関係が築けていないのではないでしょうか。

仕事をしていると、どうしてもそこが自分の居場所であり、そこで頑張らなければならないように感じてしまうかもしれません。でもそこにこだわる必要はなく、もっと別のところに居場所を作ることだってできるのではないでしょうか。習い事や趣味などを持ち、仲間を作ることで承認欲求が抑えられる可能性もあります。

まとめ

承認欲求が高いことで、一番苦しい気持ちになってしまうのは、誰よりもあなた自身です。承認してもらえないことで気持ちが焦ってしまったり、寂しくなってしまったりと、なかなか安定した気持ちで過ごすことができないでしょう。 

承認欲求を上手に抑えることができたら、今よりももっと人生が楽しく感じられるようになるはずです。他人から「いいね」と言ってもらえなくても、自分が「いいね」と思える時間の過ごし方を、少しずつ習得していきましょう。 

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