夜、寝てスッキリしたいのに、嫌な夢ばかり見ることで疲れを感じていませんか。また悪い夢や怖い夢ばかりみている自分の精神状態、気になりますよね。この記事では嫌な夢ばかり見る原因から、睡眠の役割、そして安眠するための対処法や相談先についてわかりやすく解説しています。特に40代50代は自分に使える時間が少ない上に、心身の健康サインが現れやすいものです。まずはこの記事を読んで、嫌な夢ばかり見る原因はもちろん、自分に合う対処法をいくつか知ってみませんか。みなさんの気になるポイントを解消し、今日からすやすやと眠れますように。
佐々木ゆりさん
公認心理師、臨床発達心理士。保育士歴は20年。現在は療育スタッフとして発達障害を持つお子さんやその家族と関わっています。発達と保育を軸に、直接支援はもちろん、webライター、保育士になりたい人の支援、保育士さん支援など幅広いキャリアを展開中です。
嫌な夢ばかり見る原因とは?
嫌な夢ばかり見るのは精神状態に問題があるのでは、とほとんどの人が思いますよね。ここでは嫌な夢ばかり見る原因について主に3つ、取り上げてみました。
ストレスや不安といったモヤモヤする感情があるから
「今日会議でうまく発言できなかった」「この先の我が子が心配」といった、自分がしてきたことやこれから起こるかもしれないことについて考えることがあります。それらは今考えても対処しにくいため、答えがすぐにでない場合がありますよね? そういったモヤモヤした気持ちが残っていると、脳が気持ちをもう一度整理しようとするため、嫌な夢をみてしまうと考えられています。嬉しい気持ちを持っていても夢はみているのですが、なぜか嬉しい気持ちになるとでるドーパミンという脳内物質が、嫌な夢と関係しているそうです。感情が揺れ動くと、嫌な夢を見やすいのですね。
印象深い事故や事件を経験、もしくは目撃したため
大きな災害にあった、大切な人が事件に巻き込まれた、などこれまでの人生でそう多くない経験をすると、とても印象に残りますよね。それらはトラウマ体験とまではいかなくても、とてもショッキングなこととして記憶に残ります。すると脳内で記憶の処理がすぐにできず、何度も思い出してしまう場合があるのです。寝ているときや、日中でも思い出して仕事や生活に困っている人はストレス障害、1ヶ月以上辛い状態が続いている人はPTSD(心的外傷後ストレス症)と呼ばれるこころの病気になっているかもしれません。「自分のことかもしれない」と気になったときには、精神科などを受診するとよいでしょう。
睡眠の質が低下しているから
夢はレム睡眠と呼ばれる浅い睡眠のときによく見ると言われています。レム睡眠は脳が活発に動いている状態ですが、体は一番休まるとされています。その一方で、ノンレム睡眠と呼ばれる深い眠りの時に、脳が休息していることがわかっています。このレム睡眠とノンレム睡眠のバランスが取れていると「しっかり眠れた」と感じることが多いようです。睡眠の質が下がるとレム睡眠が多くなってしまうので、夢を見る回数も増えて、あまりよく眠れた感じがしないのでしょう。
睡眠の役割やメカニズムについて
夢は眠っているときに見るもの。そもそも、睡眠はどのような役割やメカニズムがあるのでしょうか。みなさんが聞いたことがあるレム睡眠・ノンレム睡眠についても説明していきますね。
睡眠は心身の健康と成長に関わる役割を持っている
睡眠は心身の健康に影響をあたえるとされています。不眠症などの「眠れない」と睡眠不足の「眠らない」で違いはありますが、睡眠に問題があると以下の影響が考えられます。
睡眠に問題があることで生じる健康リスク
- 心臓や血液の病気
- 糖尿病
- 肥満
- がん
- 認知症
- その他
- うつ病
- 不安症
- 精神病性症状
- アルコール乱用
- その他
(山本隆一郎他 対人援助職に知ってほしい睡眠の基礎知識 岩崎学術出版社より引用抜粋)
また子どもから大人に成長していくために、睡眠は重要な役割があるとされています。睡眠をとることで身体の疲れを回復、さらに骨などを成長させています。また、身体だけでなく心にも影響があり、睡眠の低下によって、考えたり処理したりする能力も低下すると言われています。
睡眠のメカニズムには浅い眠り(レム睡眠)・深い眠り(ノンレム睡眠)がある
睡眠は大きく2つの種類の眠り(レム睡眠とノンレム睡眠)が周期的に訪れるメカニズムになっています。夢はレム睡眠中に見られるものとされていましたが、最近の研究ではノンレム睡眠中にも夢をみていることがわかっています。ですが、ノンレム睡眠中に見る夢は思い出すのに時間がかかること、また深い眠りのときに見るため、ストーリー性がなく、ぼやっとした印象がうすい夢が多いとされています。夢にも覚えやすい夢とそうでない夢があるのですね。
睡眠時に見る夢の役割とは?
楽しい夢は嬉しい気持ちになりますが、悪い夢はあまり気分がよくないですよね。わたしたちの気持ちを変える夢ですが、夢には一体どんな役割があるのでしょうか? 夢についての研究は数多くされていますが、わかっていないこともたくさんあります。その中から研究を通して、いくつか知られている3つについて、ご紹介していきますね。
記憶の整理をしている
夢を見ることで記憶を整理し、大切な情報を長く覚えておけるようにしているとされています。これは夢を見るレム睡眠中に脳が活動しているためです。わたしたちは日々、たくさんのことをインプットしており、その中から大切な情報は長く覚えておけるところ(長期記憶)に記憶しています。そして長期記憶に残された情報は、また必要な時に思い出して使えるというシステムになっているのです。
気持ちを処理してくれる
夢は感情を処理するために役立っているともされています。わたしたちはなにかを経験すると、同時に感情も持ちますよね。人間はレム睡眠中に、さまざまな感情を処理することで心の安定を測っていると考えられています。最近では、レム睡眠中に感情を処理してくれることから、人の「眠れる力」に注目した研究が進められているそうです。夢はレム睡眠中に見るものですから、夢を見ているときに、脳が自分にある気持ちを処理してくれているのですね。
現実の行動を助けてくれる
夢を見ることで、記憶の処理や気持ちの整理をしてくれることがわかりました。それらは起きているときの行動に影響しています。記憶が処理されていれば、大切な情報を思い出したいときに思い出すことができますし、気持ちの整理がついていると安心して次の行動に移れます。必要以上に不安になってしまったり、感情がコントロールできていないときは、もしかすると夢を有効活用できていないのかもしれませんね。
嫌な夢・怖い夢ばかり見るときの対処法
夢には人間にとって必要な効果があるとはいえ、やはり嫌な夢や怖い夢を見るのはあまり気持ちのよくないものです。実は楽しい気持ちに出るドーパミンという脳内物質が、なぜか嫌な夢を見るのと関係があるそうです。寝る前にこころを穏やかにすることが、嫌な夢をみないコツとなりそうです。ここでは、悪い夢ばかりみてしまうときにできることをピックアップしています。みなさんの生活に取り入れやすい方法を集めてみましたので、気軽に試してみましょう。
安眠のためのコツを取り入れる
嫌な夢ばかりみてしまうということは、浅い眠りが多い可能性があります。浅い眠りと深い眠りがちょうどよくおとずれるように、以下のコツを取り入れてみましょう。
- なるべく起きる時間や寝る時間を一定にする
- 睡眠時間にこだわらないようにする
- 1日一回は日の光を浴びるようにする
- 布団やパジャマなどの寝具をここちよいものに変えてみる
- エアコンなどを使って、部屋の温度を調節する
- 寝る前のアルコールは控える
- 寝る前に気持ちが高ぶることは避ける(ゲーム・映画など)
- 夕方以降のカフェインやニコチンがなるべくやめる
お昼寝は15分が望ましいとされていますが、50代以降、年齢によっては30分ほどのうたた寝を日中にとることで、夕方寝てしまうことを防ぐ効果があるとされています。安眠の要素はいくつかのコツを掛け合わせることが大切です。自分にあったコツを1つではなく、日頃からいくつか取り入れていきましょう。
リラックス方法を取り入れて、体とこころの緊張をほぐす
自分にあったリラックス方法をお持ちでしょうか? 忙しい日中ではありますが、リラックス方法を取り入れて、嫌な夢ばかり見ることが気になっている精神状態を少しずつほぐしていきましょう。
例えば
- 軽い運動やストレッチをする
- 深呼吸をする
- 活動の間に漸進性弛緩法(ぜんしんせいしかんほう)を取り入れる
- 好きだけど最近していなかった趣味などを再開する
- 普段とは違うルーティンを取り入れてみる
といったことなどは、取り組みやすいでしょう。特に体の緊張をほぐす「漸進性弛緩法(ぜんしんせい しかんほう)」は簡単にできるリラックス方法として有名です。ぜひ一度、画面の前でやってみると良いでしょう。ポイントはしっかり緊張した後に、たっぷり体の力をぬくことです。やり方をいくつかご紹介します。
漸進性弛緩法(ぜんしんせいしかんほう)のやり方
【肩を使った方法】 ①力いっぱい両方の肩を上げて耳に近づける。
②そのあと、ゆっくり力を抜いて、肩を下がるところまで下げる。
【顔を使った方法】
①口と目を閉じ、顔全体にギューッと力を入れる。
②ゆっくり表情を戻していき、口がぽかんと開くまで力を抜く。
【手をつかった方法】 ①手のひらを上に向けて、 両手を前に伸ばしましょう。
②親指を包むように10 秒間ぎゅーっと力を入れます。
③手をゆっくりと広げ、膝の上に置きます。15〜20 秒間、じわーっと力が抜けた状態を味わいましょう。
※参考引用:一般社団法人 日本臨床心理学会 漸進性弛緩法について
生活習慣の見直しをする
夢は日中の出来事による記憶や感情に左右されているとされています。さらに40、50代はそもそも深い眠りが少なくなり、浅い眠りと中途覚醒が多くなる年代です。今までと同じ生活や睡眠では怖い夢をみる可能性が高い、と考えられるでしょう。これまで夜型の生活だった人も、もしかすると朝中心の生活にシフトチェンジすることで、日中の時間がうまく使えるようになり、睡眠の質もよくなる可能性があります。まずは睡眠日記など生活の記録をとって、今の自分にあった生活習慣を探してみてはいかがでしょうか。
ストレスや不安とうまく付き合う
仕事やプライベートでストレスや不安を抱えてしまったとき、みなさんはどうしていますか? これまで特に何もしてこなかった人や「寝たら忘れるタイプ」の人は、もしかすると気がつかないうちに睡眠によって処理されているのかもしれません。そのような人でも今までにないストレスや、小さな不安が積み重なると睡眠だけでは処理しきれない場合があります。起きているときにできる自分にあった、ストレスや不安への解消法をみつけておくのはどうでしょうか。
例えば
- 誰かに相談する
- 日記などを書いて、気持ちを言葉にする
- 自分が苦手なことや大変なことを伝えて、協力してもらう
- 相手の都合ではなく、自分の気持ちに焦点をあてて、考えるようにする
などがあります。性格上、ストレスとうまく付き合えていないと感じる人は、一度悩みやストレスを聞いてもらうことをまずはおすすめしています。以下の記事を参考に、話す機会をつくってみましょう。
悪夢ばかり見るときの相談先
脳の働きによって夢を見るのだとすると、悪夢ばかり見る時は病気ではないかと心配になりますよね。これから紹介するどの相談先でもよいので、自分の気になっていることを一度整理してみませんか? 40、50代のみなさんはいろいろと忙しいかもしれませんが、自分のからだを大切にしなければならない時期でもあります。家族や職場の仲間といった自分に関わると人を大切にするためにも、ぜひ誰かに相談する機会をもうけましょう。
かかりつけの医師に相談する
「最近嫌な夢ばかり見てよく眠れていない」「寝る前、悪夢を見るかもしれないと不安になって、うまく寝付けない」人は、かかりつけの医師に相談してみてはいかがでしょうか。まずは今の健康状態を知っておくことで、この先の自分にあった対処法につながっていきます。睡眠の改善方法として、医師から睡眠薬をすすめられるかもしれません。睡眠薬は依存など怖いイメージがあるかもしれませんが、実は日本成人の5%が不眠のために睡眠薬を使っており、現代ではメジャーな薬です。睡眠薬を提案されたら自分が気になること(依存性はないか? どれくらい飲み続けるのか? など)を確認しておくと、より安心できるのではないでしょうか。
精神科や睡眠外来を受診する
「かかりつけ医がいない」「他にも気になる精神状態がある」といった方は精神科や睡眠を専門に扱っている病院をたずねてみましょう。受診までに日数を必要とする場合もありますが、そのときは気持ちを割り切って、受診までに睡眠記録を書いておくことをおすすめします。睡眠記録を見ることで、医師とのやりとりがスムーズになりますし、自分にあった対処方法も見つけやすくなります。睡眠記録におすすめの項目は
- 布団にはいった時間
- 眠りについた時間
- 夜中起きた時間と理由(例:トイレに起きた、家族に起こされた)
- 起きた時間
- 起きたときの気分(例:すっきり・だるい)
- お酒の量
- カフェインの入った飲み物を飲んだ時間や量
- 運動や外出の有無
などがあります。気になる項目や日が空いてしまってもよいので、なるべく続けて記録していきましょう。
オンライン相談
「忙しくて病院にいく暇がない」「とにかく誰かに話して気持ちを落ち着けたい」といった人には専門家へのオンライン相談を考えてみてはいかがでしょうか。オンラインをつかったやりとりはすっかりメジャーになりましたが、自分の相談となると少しハードルが高く感じるかもしれません。「悩ミカタ相談室」は自分で相談相手を選べますし、メッセージでのやりとりも可能です。まずは一度、どんな専門家がいるのか検索してみましょう。
40代50代のお悩み” は専門家に相談しよう「悩ミカタ相談室」
まとめ
嫌な夢ばかり見るのはストレスや不安といった精神状態が原因の場合もありますが、その他にも、インパクトの強い出来事を体験したり、睡眠の質が低下していることが関係していることがわかりました。睡眠は体とこころに影響を与え、また身体の成長にも関わっています。ご紹介したリラックス方法や安眠のためのコツをいくつか取り入れ、また自分にあった相談方法で悪い夢ばかり見る状態から開放されることを願っています。
※引用・参考文献
山本隆一郎他 対人援助職に知ってほしい睡眠の基礎知識 岩崎学術出版社
ISBN978-4-7533-1245-0
e-ヘルスネット 眠りのメカニズム 厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-01-002.html