仮面夫婦とは?5つの特徴や関係の修復方法を解説【事例あり】

夫婦関係に違和感を覚え、「私たち、もしかして仮面夫婦なのかも…」と不安を感じていませんか?表面上は普通の夫婦を装いながらも、心の中ではお互いに距離を感じ、将来への不安を抱えている方も少なくありません。本記事では、仮面夫婦の定義や特徴、関係修復のための具体的な方法について詳しく解説していきます。

執筆者

梅田ミズキさん

認定心理士、サービス介助士。大学で臨床心理学・産業組織心理学・発達心理学などを学び、卒業後は公的施設にて精神疾患の方のケアや介助業務、ご家族の相談対応などに従事しながら、ホームページ掲載用のコラムやミニ新聞を執筆。現在はフリーライターとして独立し、くらしにまつわるエッセイの執筆、臨床心理・発達支援・療育関連のコンテンツ制作および書籍編集に携わりながら、心理カウンセラーも務めている。趣味は読書、映画鑑賞、気まぐれで向かうプチ旅行。

目次

仮面夫婦とはどのような状態か

近年、夫婦関係の形は多様化しつつあります。しかし「仮面夫婦」と聞くと、なんとなくネガティブなイメージを持つ方が多いのではないでしょうか。まずは、この状態について正しく理解することから始めましょう。

仮面夫婦の定義

仮面夫婦とは、表面上は通常の夫婦生活を送っているように見えながら、実際には心の繋がりが希薄になっている夫婦を指します。家事や育児、社会的な付き合いなど、日常生活の役割分担は続けているものの、夫婦としての精神的な絆や親密さが失われている状態です。

厚生労働省が発表している「令和4年度 離婚に関する統計」によると、離婚した夫婦は昭和59年から昭和63年にかけて一時減少したものの、平成14年には約29万組になりました。その後、平成15年以降は減少傾向が続いており、令和2年は約19万3千組の夫婦が離婚を選択しています。

最終的に別々の道を進む決心をした方に話を伺うと「仮面夫婦の期間を経て離婚に至った」との声も少なくありません。しかし、これは必ずしもネガティブな状態と捉える必要はなく、場合によっては「夫婦関係の一つの形態」として理解することも重要です。

現代社会での仮面夫婦の増加

近年、仮面夫婦は増加傾向にあるとされています。その背景で考えられるのが、以下のような社会的要因です。

  1. 共働き世帯の増加による生活リズムの不一致
  2. 個人の価値観や生き方の多様化
  3. SNSの普及による他者との比較機会の増加
  4. 晩婚化による価値観の確立後の結婚
  5. 核家族化による子育ての負担増加
  6. 長時間労働による夫婦の時間の減少

上記の要因が複雑に絡み合い、夫婦関係に影響を与えています。特に、新型コロナウイルスの影響による在宅勤務の増加は、これまで表面化していなかった夫婦間の問題を顕在化させるきっかけとなりました。

仮面夫婦に至るプロセス

多くの場合、ある日突然仮面夫婦になるわけではありません。一般的に以下のような段階を経て、徐々に関係が変化していきます。

【第1段階】些細な行き違いや誤解が積み重なり始める時期

お互いの考えの違いに気づき始める
・小さな不満が蓄積し始める
・まだ話し合いで解決できる段階

【第2段階】コミュニケーションが減少する時期

・深い会話を避けるようになる
・お互いの趣味や関心事を共有しなくなる
・感情的な繋がりが薄れ始める

【第3段階】心理的な距離が開く時期

・無関心や諦めの感情が強くなる
・個別の生活が増える
・表面的な付き合いだけが残る

実はこれらの変化は、何気なく進行してしまいがちです。そのため「気がついた際には既に大きな溝ができていた」との声も少なくありません。

仮面夫婦の特徴

夫婦関係に違和感を感じているものの、それが本当に仮面夫婦の状態なのか判断に迷う方も多いでしょう。仮面夫婦の典型的な特徴に挙げられるのは、以下のような要素です。

会話の質や量の変化

仮面夫婦の場合、1日の会話時間が著しく減少し、内容も表面的なものになりがちです。例えば、子どもの話題や家事に関する用件以外の会話をしなくなり、感情や考えの共有が少なくなります。

また、雑談や冗談が減少するのも仮面夫婦の特徴です。相手に話し掛けられたとしてもお互いに反応が希薄で、会話が事務的になります。

身体的な接触の減少

スキンシップやアイコンタクトが減少し、自然な身体的接触が失われていくのも、仮面夫婦の大きな特徴の一つです。寝室が別々になっているケースも多くみられます。

また、物理的な距離を保つため「お互いにどこで何をしているか知らない」あるいは「興味がない」のも特徴です。他にも、アイコンタクトを避けたり、並んで歩く際に距離が開いたりなどの行動がみられます。

共有時間の減少

仮面夫婦の場合、休日でも別々に過ごすことが増え、共通の趣味が減少します。食事の時間もズレが生じやすくなり、家族として過ごす時間が自然と少なくなっている傾向がみられがちです。

また、家事の分担が機械的になったり、金銭管理が完全に別になったりもします。親族付き合いも個別に行うなど、一緒に生活する者同士の一体感が失われていくのが特徴です。

感情的な距離がひらく

仮面夫婦では、お互いの喜びや悲しみに共感する機会が減るため、必然的に感情的な繋がりが薄れていきます。相手の気持ちを考える時間が少なくなり、無関心や諦めの感情が強くなっている状態です。

また、間近の予定や将来の計画を共有しなくなったり、相手への期待が薄れていったりするのも特徴といえます。

表面的には仲がよさそうに振る舞う

家庭では徹底して別行動な一方で、外では仲の良さそうな夫婦を演じるのも、仮面夫婦の大きな特徴です。地元のイベントや学校行事にあえて夫婦そろって参加したり、2人で近所のスーパーに買い物へ出たりなど、周囲から「夫婦円満」とみられるように振る舞います。

仮面夫婦を続ける理由とは?

一見すると否定的に捉えられがちな仮面夫婦ですが、この状態を選択する理由があったり、ときには自分たちの状況を客観的に見つめ直せたりと、決して悪いことばかりではありません。仮面夫婦を続けるうえで主に考えられるのは、以下のようなメリットです。

子どもへの配慮

子どもの成長や教育環境を考慮して、表面的にでも夫婦関係を維持するケースが多く見られます。

例えば、乳幼児期は安定した家庭環境が成長の基盤になりやすく、学童期は家庭環境が学業にも影響しやすい時期です。また、思春期になると精神的な安定が特に重要なうえ、受験期には学習環境を維持させてあげたいがゆえに「家庭問題に巻き込みたくない」との声も少なくありません。

他にも「両親の揃った家庭環境を維持してあげたい」「PTA活動など社会的活動の継続のため」「子どもの友人関係へも配慮したい」との理由で仮面夫婦という形を選ぶ方もいらっしゃいます。

経済的な負担が少ない

「学費や教育費を安定して確保しておきたい」「共働きで世帯収入を維持したい」「住宅ローンを継続的に返済したい」など、経済的な負担を考慮して仮面夫婦を選択するケースもあります。特に、一人で生計を立てるのが困難な場合「生活水準を保ちたい」と考えて離婚しない方もいらっしゃいます。

また「税制上の優遇措置の継続をふまえると、仮面夫婦でいるほうがよいのではないか」と考える場合もあります。

世間体を守れる

職場や地域社会での立場、親族関係など、周囲への配慮から離婚を避けるケースもあります。特に、社会的に影響力のある立場の場合、この要因は無視できません。

職場関連では「キャリアへの影響回避」「職場での評価維持」「昇進・昇給への影響考慮」が挙げられます。また、社会関係では「親族関係の維持」「地域社会でのステータス保持」
「子どもの学校関連の人間関係」「共通の友人関係の維持」も、仮面夫婦を継続する理由に大きく関わっているといえるでしょう。

将来的な安定性を確保できる

仮面夫婦と聞くと子育て世代を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、実は、高齢で仮面夫婦を続けている方も少なくありません。例えば「愛情は冷めているものの、老後生活を一人で送りたくない」「介護時に支えてくれる人が欲しい」などの理由が挙げられます。

また「将来的に年金を夫婦一緒にもらって暮らすほうが安定するから」という考えの方もいらっしゃるようです。

仮面夫婦を続けるリスクとは?

平穏に見せつつ仮面夫婦を長期間継続しても、どこかでほころびが出てしまいます。具体的に挙げられるのは、以下のようなさまざまなリスクです。

子どもへの悪影響

前述したとおり「子どものために離婚を避け、表面的な関係を維持しよう」という選択をする夫婦は多くいらっしゃいます。しかし、子どもたちは驚くほど敏感に家庭の空気を読み取っているものです。そのため、皮肉にもかえって子どもに精神的な負担や悪影響を及ぼしてしまう結果になりかねません。

例えば、子どもは両親が二人きりになった際の緊張感や距離感に気づき「いつか別れてしまうのではないか」と不安を抱えがちです。さらに、両親の冷えた関係の原因が自分にあるのではないかと自責の念に駆られ、必死に親の関係修復を試みようとする子どももいます。

子どもにとってこのような心理的負担は、大きなストレスです。さらに、両親の不自然な関係は、恋愛観や結婚観へ影響したり自己肯定感の低下や家庭内での居場所の喪失を招いたりするおそれもあります。

精神的な負担の蓄積

表面的な関係を演じ続ける精神的ストレスは、うつ病などの心の健康問題につながる可能性があります。また、自己否定感や孤独感が深まり、生きがいや人生の充実感が失われていく危険性も否定できません。

精神的な負担が蓄積すると、不眠や食欲不振、免疫力の低下、生活習慣病のリスク増加など身体的な負担にも繋がるおそれもあります。

関係修復の機会損失

仮面夫婦を長く続けていると、どうしても生活スタイルが固定化してしまいます。そのため「いつか仮面夫婦の状態を改善できれば」と考えていても、問題を先送りにすると、関係修復のタイミングを逃してしまう可能性があります。

時間の経過とともに価値観の乖離が拡大し、心の溝が深まって修復が一層困難になるケースも少なくありません。新しい関係構築の困難になったり将来的な後悔や喪失感を避けたりするためには、早めに問題解決へ着手するのが大切です。

経済的なリスク

「経済的な安定を考慮して仮面夫婦でいる方も多い」と前述しましたが、見かけ上の安定が、リスクを高める可能性もあります。共通の金銭管理の欠如による浪費や、将来的な離婚時の財産分与の複雑化がその例の一部です。

また、投資や資産形成が効率的に実践できないのも仮面夫婦の懸念点といえます。

夫婦関係の修復方法や対処法

仮面夫婦の状態から関係を改善するためには、具体的な行動と継続的な努力が必要です。ここでは、実践的な修復方法について解説します。

仮面夫婦に至った原因を考えてみる

日々の生活で徐々に積み重なった小さな誤解や不満、コミュニケーション不足が、仮面夫婦の原因となっている場合があります。関係の改善には、まずは「いつ頃から、どのような出来事をきっかけに関係が冷めていったのか」の振り返りが大切です。

また、仕事や育児のストレス、価値観の違い、経済的な問題など、外部要因が夫婦関係に影響を与えているケースもあります。これらの原因を客観的に見つめ直せば、お互いの立場や気持ちを理解し、具体的な改善策を見出すきっかけになるかもしれません。

共有時間の創出

意識的に二人の時間を作ることも、関係改善の契機につながります。まずは、日常的な会話から始めることが重要です。相手を責めるのではなく、自分の気持ちは「私は〜と感じる」「すれ違いの原因はこうだと思うけど、あなたはどう感じてる?」と伝える意識をしてみましょう。

また、週末の食事時間を固定したり、散歩や趣味の活動を共有したりなども有効といえます。普段なかなか時間が取れない夫婦の場合は、週1回「夫婦会議」を実施したり、家事を協同で行ったりしてもよいでしょう。

「新しいことを一緒に始める」のはハードルが高いかもしれませんが「日常で共に過ごす時間を共有する」というイメージです。

別居を検討する

どうしても一緒に暮らすのが難しい場合は、別居をしてみるのも手段です。別々に暮らす生活がお互いに快適だと感じれば、そのままの状態を続けるのも一つでしょう。

「別居は離婚も同然では」と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし実は、時間の経過とともに離婚に至る場合もあれば、距離を置いたことで改めて夫婦の絆を大切にしたいと感じ、再び同居を始めるケースもあるのが現状です。

一時的に生活の場を分けると、双方とも心の余裕を持って今後の関係を考えることができます。

専門家への相談

自分たちだけでは関係を改善できそうにない場合、悩みを抱え込まず、専門家への相談も検討しましょう。夫婦関係の修復を図る夫婦カウンセラーをはじめ、弁護士など法的な観点から悩みを解決してくれる専門家へ打ち明けてみるのも一つです。

「カウンセリングに夫婦で行く時間が取れない」「専門家に対面で相談するのは緊張してしまう」という方は、オンラインカウンセリングも活用してみてください。時間や場所の制約なく専門家に相談でき、自宅から気軽に相談可能なため、リラックスしながら相談ができます。


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仮面夫婦の事例

ここでは、仮面夫婦を経験した方がどのように関係改善を図ったのか、実際の事例からみていきましょう。

事例1. 共働きの40代夫婦の改善例

夫婦ともども管理職で多忙だった40代のご夫婦は、休日も仕事で生活リズムが不一致で、会話も徐々に家事と子どもの要件のみでした。10年以上スキンシップもなかったとのことです。

しかし、オンラインカウンセリングを利用して以下のような適切なアドバイスを得たところ、新しい夫婦関係の構築に成功しました。

【実践した対応】

  • 週末の朝食は夫婦揃って摂る
  • 月1回の外食デートの実施
  • 共通の趣味(料理教室)の開始

【得られた結果】

  • コミュニケーションの質が改善された
  • お互いの仕事への理解が深まった
  • 精神的な繋がりが回復した

事例2.価値観の違いに悩む50代夫婦の改善例

子どもの独立後に価値観の違いが顕在化した50代のご夫婦は、退職後の生活設計で意見が対立したのをきっかけに、別々の部屋で生活するように。共通の話題が完全に消失してしまっていましたが、夫婦カウンセリングを利用したところ、夫婦間での価値観の共有と理解に成功しました。

【実践した対応】

  • お互いの生活スタイルの尊重
  • 本音で話し合う
  • 共通の活動や趣味を見つける努力をする
  • 適度な距離感を保つ

【得られた結果】

  • お互いの価値観を認め合える関係になった
  • 「喫茶店巡り」という新しい共通の趣味が見つかった
  • より成熟した関係性を構築できるようになった

仮面夫婦はあなたらしい関係性を見つけるためのステップ

仮面夫婦は、夫婦だけの問題ではありません。多くのカップルが同様の課題に直面し、それぞれの方法で乗り越えようと努力しています。大切なのは「理想の夫婦像」に縛られるのではなく、二人にとって心地よい関係を見つけていくことです。

関係の改善には時間がかかる場合もありますが、必要に応じて専門家のサポートを受けながら、焦らず前に進んでいきましょう。そして何より、自分自身を大切にしながら、パートナーとの新しい関係づくりに取り組んでください。

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