近年、カウンセリングに来る30代40代女性の中に、自身について「更年期かも…」と話す方が一定数います。しかし、産婦人科を受診しても「更年期」の診断は下りないのだそうです。とはいえ30代後半から40代の女性が、更年期に似た症状を訴えるケースが多いのは確かで、これらは一般的に「プレ更年期」と呼ばれているようです。個人差はありますが、早い人では30代後半頃から減少し始める女性ホルモンの影響や現代社会のストレスや生活環境の変化が影響していると考えられます。
そこで今回は、「プレ更年期」とは何か、その症状や心との関連性について詳しくお話ししていきたいと思います。
藤原美保さん
公認心理師、介護福祉士、保育士、健康運動指導士の資格保有、療育支援に携わること20年以上。
放課後等デイサービスを運営する中で発達障害児童、そのご家族の悩みも含め相談やカウンセリング対応を10年以上行う。自己肯定感が低い、親から虐待を受けた過去に悩む方からの相談なども多数対応。
これまでに2冊の本を執筆、現在も出版に向け本の執筆をつづけている中、子育てのポータルサイトにて発達障害の子の子育てコラムを連載中。
プレ更年期とは何か?
卵巣機能の低下の始まり
プレ更年期は更年期に入る前の段階で、卵巣機能の低下が徐々に始まる時期を指します。30代後半から40代にかけて、エストロゲンの分泌量は大きく減少していないものの、月経周期や日数に変化が現れることがあります。具体的には、月経周期が短くなったり、月経期間が以前よりも短縮する女性が増えているそうです。それにより心の状態も不安定になりやすくなります。
一般的に40代前半から始まり、閉経を迎えるまでの約10年間を指しますが、最近では30代後半から症状を感じる女性も増えています。また、プレ更年期については正式な医学的定義が存在するわけではなく、症状の出現時期や程度には個人差があります。
視床下部と自律神経の関係
卵巣は脳の「視床下部」からの指令を受けて女性ホルモンを分泌しています。しかし、卵巣機能が低下すると、視床下部からの指令通りにホルモンを分泌できなくなります。視床下部は自律神経のコントロールも行っているため、ホルモンの変動が自律神経の不調を引き起こす可能性があります。これにより、ホルモンバランスの乱れが心身の様々な不調と深く関係していることがわかります。
ストレスと生活環境の影響
自律神経の乱れは年齢に関係なく起こり得ますが、特に30代後半から40代の女性は、仕事や子育て、家庭の事情などで多忙な生活を送っていることが多いです。これらのストレス要因が自律神経のバランスを崩しやすい環境を作り出しています。そこに卵巣機能の低下が加わると、自律神経の乱れが一層深刻になることもあります。
心理的サポートの重要性
この時期に女性が抱える不安やストレスに対して、精神的なサポートを提供することが非常に重要です。適切なサポートがないと、心身の不調が長期化し、生活の質が低下する可能性があります。
プレ更年期の症状とは?
身体的な症状
プレ更年期の症状は、更年期と比べると比較的軽度で、不定期に現れることが多いです。しかし、以下のような身体的な症状が見られることがあります。
月経不順…月経周期が不規則になったり、経血量が変化することがあります。
ほてり・急な発汗…突然体が熱くなったり、汗をかくことがあります。
疲労感・頭痛…慢性的な疲れや頭痛を感じることがあります。
めまい・動悸…立ちくらみや心拍数の増加を感じることがあります。
精神的な症状
精神的な面でも、以下のような変化が見られることがあります。
気分の変動・イライラ感…感情の起伏が激しくなり、小さなことでイライラすることがあります。
不安感・集中力の低下…漠然とした不安や集中力の低下を感じることがあります。
うつ症状…気分が落ち込み、何をしても楽しめない状態になることがあります。
睡眠障害…寝つきが悪くなったり、夜中に目が覚めてしまうことがあります。
プレ更年期の不調の原因
1. ホルモンバランスの乱れ
エストロゲンやプロゲステロンなどの性ホルモンの分泌が不安定になることで、身体的な症状が現れます。例えば、ほてりや発汗、睡眠障害などが挙げられます。30代でも女性ホルモンの分泌が低い方は一定数存在し、その場合は産婦人科でホルモン剤の治療を行うことで、個人差はありますが2か月ほどで症状の緩和が見られることもあります。
2. ストレスの増加
この年代は仕事や家庭、社会的な役割が増えるため、ストレスが蓄積しやすくなります。ストレスはホルモンバランスにも大きく影響し、心身の不調を悪化させることがあります。
3. 心理的要因
うつ病や不安障害が原因で、更年期のような気分の変化が起きている場合があります。うつ病は心と体の両方に影響を及ぼし、イライラや焦燥感、倦怠感、不眠などの症状が現れます。
4. 生活習慣の乱れ
この年代の方は社会的役割が大きく子育てや仕事で忙しい方が多いです。自分の身体を労わる事を後回しにしがちな時期でもあります。そのため睡眠不足や食生活の乱れ、運動不足が見られることが多いです。これらは身体の機能をさらに低下させ、不調を引き起こす要因となっています。
プレ更年期の身体と心にあらわれる変化とは?
身体にあらわれる変化
月経周期の乱れ…生理の周期や経血量の変化が見られます。
軽度のほてり・発汗…突然の熱感や汗をかくことがあります。
肌や髪の変化…肌の乾燥やシワの増加、髪のハリ・コシの低下、クセが出てくるなどの変化があります。
体重増加・代謝の低下…代謝が低下し、体重が増えやすくなる傾向があります。
心にあらわれる変化
気分の浮き沈み…感情のコントロールが難しくなり、急に悲しくなったりイライラしたりします。
不安感・焦燥感…漠然とした不安や焦りを感じ、日常生活に支障をきたす場合があります。
集中力や記憶力の低下…集中できず、物忘れが増えることがあります。
自尊心の低下…自己評価が下がり、自信を失うことがあります。
プレ更年期に心がけたい過ごし方や対策
プレ更年期を感じ、産婦人科に行っても特に大きな問題が見られない場合、まずは生活習慣の見直しから始めてみましょう。中にはカウンセリングで話を聞いてもらうだけでも気持ちが楽になったという方もいます。更年期とは違い、生活改善や認知行動療法によって体の不調が改善するケースも多く見られます。
1. 健康的な生活習慣の維持
バランスの良い食事
忙しい世代ではありますが、食事を簡単に済ませることが増えていませんか?丼物や麺類などで食事を済ませてしまうと、栄養が偏りがちです。栄養バランスのとれた食事はホルモンバランスを整える助けになります。特に、カルシウムやビタミンD、オメガ3脂肪酸を含む食品を積極的に摂取しましょう。これらの栄養素は骨の健康を維持し、心の安定にも寄与します。
睡眠をしっかりとる
日中忙しく、自分の時間が取れず、夜遅くにやっと自分の時間が確保できるという方も多いでしょう。しかし、睡眠不足はホルモンバランスや自律神経に悪影響を及ぼします。就寝前にリラックスできる時間を設け、質の良い睡眠を心がけましょう。
2. ストレスマネジメント
適度な運動
定期的な運動は、代謝を促進し、心身の健康をサポートします。スキマ時間のウォーキングやヨガ、ストレッチなどは、ストレス解消や体調維持に効果的です。運動によってエンドルフィンが分泌され、気分の向上にもつながります。
リラクゼーション法の実践
深呼吸や瞑想、マインドフルネスなどのリラクゼーション法を日常に取り入れることで、心の安定を図れます。これらの方法は自律神経のバランスを整える効果もあります。
3. サポートネットワークの構築
家族や友人とのコミュニケーション
自分の感じていることを周囲に話すことで、心理的な負担が軽減されます。信頼できる人に気持ちを打ち明け、サポートを求めることは大切です。
同じ経験を持つ人との交流
プレ更年期を経験している人々との情報交換は、有益なアドバイスや共感を得る機会となります。オンラインコミュニティやサポートグループに参加してみるのも良いでしょう。
4. 自然や動物と触れ合う
自然と触れ合うことや動物との交流は、ストレス緩和や心理的な安定に大いに役立ちます。キャンプや山登りなどもおすすめです。自然環境は心を落ち着かせ、ストレスホルモンであるコルチゾールの分泌を減少させる効果があります。また森林浴や海辺の散歩は、心拍数や血圧を下げ、リラクゼーションを促進します。
さらに、ペットや動物との触れ合いは、オキシトシンと呼ばれる「愛情ホルモン」の分泌を促します。これにより、安心感や幸福感が高まり、孤独感や不安感を和らげます。
5. 専門家への相談
医療機関の受診
身体的な症状が気になる場合は、まず婦人科医や内科医に相談しましょう。必要に応じて、ホルモン療法やサプリメントの提案など、適切な治療やアドバイスが受けられます。
心理カウンセリングの活用
治療をしても心理的な不調の改善が見られない場合はうつや不安障害などが背後にあるかもしれません。その場合は心理カウンセラーや公認心理師に相談することも効果的です。専門家との対話を通じて、ストレスの原因を明らかにし、対処法を見つけることができます。なお「悩ミカタ相談室」では心理師などの専門家が多く登録し、オンラインで気軽に相談できます。
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まとめ
プレ更年期は、多くの女性が経験する可能性のある重要な時期です。身体的・心理的な変化が生じることがありますが、その原因や症状を正しく理解し、適切な対策を取ることで、この時期を健やかに過ごすことができます。
健康的な生活習慣の維持、ストレスマネジメント、適度な運動やバランスの良い食事、十分な睡眠、そして自然や動物との触れ合いなど、自分に合った方法で心身のバランスを整えましょう。また、家族や友人とのコミュニケーションや、同じ経験を持つ人々との情報交換も大切です。
身体症状が気になる場合は、まずはかかりつけの産婦人科に相談しましょう。それで改善しない場合は、もしかしたら背後にうつや不安障害などがあるかもしれません。心理カウンセラーなどの専門家に相談することをためらわないでください。自分を労わり、無理をせず、周囲のサポートを活用することで、プレ更年期の不調を乗り越え、健康的な日常を取り戻しましょう。
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