【夫婦関係改善】バカにするのをやめてほしい!結論を求める議論ではなく対話で相手を理解しよう

「隣の芝生は青い」ということわざがありますが、周りの夫婦の関係性をうらやましいと感じたことはありませんか。しかし、夫婦は千差万別。「夫婦の数だけ“普通”があり、どの夫婦も特殊」というのが、コンサルタント・コーチとして企業や夫婦の関係性向上に取り組む白土詠胡さんの持論です。今回は夫婦関係を送る中で生じる不満への向き合い方について、実際に読者から寄せられた悩みに回答します。夫婦のパワーバランスを見て、子どもにはどのような影響があるのでしょうか。

読者のお悩み

妻は、普段から私に対してキツい言い方やバカにするような言い方をします。もちろん全てに悪意があるわけではなく愛のあるイジりという場合もありますが、最近は娘も私に対する態度が妻と似てきました。私がまじめな話をしていてもふざけたり、軽くあしらわれたり。家族でリビングで過ごしている時は妻と娘はソファに座り、私は床に座るなんてことも…。妻にはもう少し“夫を立てる”気持ちを持ってもらいたいし、娘にも父親の威厳を示したいのですが、どうすれば良いでしょうか。(夫39歳、妻40歳、長女12歳)

新型コロナの影響で自宅でリモートワークをする妻/夫が増え、家事の分担や子どもの勉強のサポートなど普段とは異なるイレギュラーな生活にストレスがたまっている夫婦も多いのではないでしょうか。

今回の悩みは、夫婦のパワーバランスから生まれる不満やすれ違いについて。夫婦といえど、育ってきた環境が違えば夫婦の関係性に対する考え方も異なるものです。自分の考え方が間違っているとは、互いに思ってもみないことなのかもしれません。

目次

夫婦関係改善のために①:自分の本当の願いを理解する

パートナーに対してモヤモヤとした気持ちが発生した場合、皆さんはどのような行動を取りますか。おそらく、次のパターンのどちらかではないでしょうか。

  1. 相手に、自分の不満や怒りを直接ぶつける。
  2. 不満や怒りを我慢して、自分の心に留めておく。

しかし、私がおすすめしたいのは“自分が家族に対して何を求めているか”、“どのような家族にしたいか”を考えること。

組織であればどのようなチームにするかの目標を設定した上でビジョンを構築します。組織作りをする際、メンバーの欠点を考えて目標を立てることはしませんよね。

マサチューセッツ工科大学教授を務めた経営学者のピーター・センゲは、自身の著書『最強組織の法則』の中で次のように述べています。

「人々がたゆみなく能力を伸ばし、心から望む結果を実現しうる組織、革新的で発展的な思考パターンが育まれる組織、共通の目標に向かって自由にはばたく組織、共同して学ぶ方法をたえず学びつづける組織」を「学習する組織」と呼び、組織には個人ではなくチームとして学習する必要がある。

家庭も一つの組織、家族員それぞれが組織のメンバーです。個人ではなく組織(家族)として学習するという視点に変えてみましょう。

相手(個人)に抱く不満に焦点を当ててしまうと、“相手が悪い”という思いや思考ばかりが強くなり、止まりません。

もめ事が起こると、私たちは相手の欠点に焦点を当て自分の“見立て”を正当化し、“相手に変わってほしい”、“変わるべきだ”という気持ちにとらわれます。そんな気持ちを一度、脇に置きまずは自分がどのような家族(組織)を望んでいるのか、家族(組織)に何を求めているのかを考えてみませんか。

そして、自分は何に対してイライラしているのか、何を欲し何が満たされないと思っているのかに向き合ってほしいのです。人よりも自分い焦点を当てることが、結果的に不満解消への近道となります。

おそらく、相談者は妻に「もう少し、自分を夫としてリスペクトしてほしい」と感じているのではないでしょうか。でも、本人が強く思えばそれが顔に出てしまうもの。不思議なもので、相手があまりにも露骨にそれを欲していると反発したくなりませんか? もしかしたら、そうすると相手は反発したくなるんです。自分の望みとは異なるシチュエーションを、自分自身で作り出している可能性もあります。

また、パートナーに向ける視点についても冷静に考えてみましょう。例えば「うちの妻は気が強くて僕のことを絶対に尊重しない」と感じていると、実は尊重している部分があるのにその部分しか見えなくなっているということもあり得ます。

私は企業研修で論理的思考力研修などの講座をすることが多いのですが、必ず受講者に“前提を疑う”ことを勧めています。人はどうしても、自分の都合の良いように“現実を認知”してしまう。だからこそ、大切な意思決定や夫婦喧嘩といったもめ事の際は、必ず「本当にそうかな?」と疑ってほしいのです。

夫婦喧嘩やパートナーへの不満が生じた時、その原因を相手に求めがちです。しかし、誰かを自分の思うようにコントロールすることは不可能ですし、すべて自分の思い通りにしたい人はいないでしょう。

相談者の妻は、男性との関係において一般的に言われるような“女性よりも男性を立てる”という価値観に重きを置かないタイプであると感じます。良いか悪いかの話ではなく、彼女の人生の中で培われてきた価値観を変えるとなると、これまでの彼女の人生を全否定することにもなってしまいます。

相手を何とかしたいと考えるのではなく、自分の本当の願いは何なのかを考えてみましょう。

自分が家族に対して求める願いを探索した上で、次に行ってほしいのがその願いを実現する手段を考えることです。

夫婦関係改善のために②:願いを実現する手段を考える

パートナーに何かを求めるのではなく、“自分は家族とどんな時間を持ちたいのか?”といった不満の背景にある願いを言葉にしてみてください。その上で、それを満たすための手段を再検討してほしいのです。願いの実現を即座に、家族やパートナーに求めるのはNG。相談者の場合は「尊重してほしい」という思いがあると感じます。しかしそれを妻に求めることは、妻を尊重しないということになるかもしれません。だとしたら、他の部分で“尊重されたい”という思いを満たす手段がないか考えてみましょう。

例えば仕事で後輩や部下に尊重してもらえているのであれば、「尊重してほしい」というニーズは職場においては満たされるかもしれません。人生はある側面が充実していると、もう一方の側面に抱く不満が和らぐ場合が多いもの。何か一つに固執するのではなく、仕事やプライベートの趣味など、家族から離れた時間に不満を和らげるヒントがあるかもしれません。

とはいえ、相談者の夫婦関係は決して悪いものではないと感じます。愛情があるから妻に願いをかなえてほしいという思いがあり、理解し合うことでこれからも仲良くやっていきたいと考えているのではないでしょうか。

夫婦の着地点が“調和”であるならば、次に行いたいのが“対話”です。どの夫婦に対しても言えることですが、対話の習慣はパートナーシップ改善にかなり有効なんです。

夫婦関係改善のために③:対話を習慣化する

講座やコーチングを行う中でも、「口を開けば文句や愚痴ばかりだから、会話したくない」という夫婦は少なくありません。また、子どもの前だからと自分もしくは相手が折れる場合も夫婦間の気持ちのすれ違いは解消できないのです。

夫婦関係にとって、もっとも大切なツールとなるのが“対話”です。

対話を避けていては、相手のことがますます理解できなくなり二人の距離が縮まることはありません。「夫婦なんだから、察してよ」という浅いコミュニケーションではなく、一歩踏み込んだコミュニケーションを取る習慣をつけることが大切です。

対話をする上で気を付けたいのが、“相手のコントロール”を目的にしないこと。「あなたが悪い、謝って」というのは永遠の平行線をたどることになります。

対話は議論ではありません。議論の場合、結論を出すことが目的となるため互いが自分の正当性を主張し合い夫婦喧嘩になってしまう可能性があります。議論のように“AかBか”のどちらかに結論を出さず“AもあるけどBもあるよね”と互いの違いを知ることが対話の目的、ゴールになります。

対話をすることの目的さえ頭に入っていれば、自分の考えを包み隠さず伝えても問題ないでしょう。なかなか対話のきっかけがつかめないというのであれば、「家族会議」を夫婦のルーティンに組み込んでみると良いですよ。

自分のニーズやニーズを満たす手段が分からない、夫婦間の対話もうまくいかない…というのであれば、環境を変えるというアプローチもあります。次章で詳しく解説しましょう。

夫婦関係改善のために④:環境を変える

夫婦間トラブルにおいて多くの場合、互いの言動に原因を求めがちですが実は環境がその状況を生み出している可能性もあります。

相談者であれば“3人で座れるソファに買い替える”という手が考えられます。乱暴なアドバイスに受け取られてしまうかもしれませんが、意外と効果的な手法なんです。

例えば、夫婦間トラブルになりがちな家事分担においても同じことが実践できます。夫婦ともにフルタイムでも、家事負担はいまだに妻の方が圧倒的ですよね。そうすると、夫に対しての不満が蓄積されると予測されます。しかし、食洗機の購入や家事代行サービスを利用することでその不満度はグンと下がるはず。これが、夫婦間を取り巻く環境を変えるということなんです。

相談者だけがソファに座れないことで“自分を尊重してもらえていない”と感じる部分もあるはずなので、環境を変えることでこの部分が解消されることは大いに考えられます。

人をコントロールすることはできません。しかし、環境をコントロールすることはできます。

“尊重されていない”と感じるのがどういう状況なのか、環境からも分析してみてください。

夫婦関係も親子関係も家族の数だけ個性がある

さて、相談者夫婦はいわゆる“かかあ天下”ですが皆さんは夫婦のパワーバランスはどういうかたちが理想だと考えますか?

ステレオタイプな夫婦の理想型はあるかもしれませんが、夫婦によってその良し悪しは変わります。つまり、夫婦のパワーバランスについての正解はないのです。そして、パワーバランスは日々変動するものだと私は考えます。

ちなみに、わが家の場合は夫主動。私は、夫を応援する側にいます。私たち夫婦の今の環境がそうさせているのですが、夫婦合意の上で決めたことなので、衝突が起こることはありません。妻/夫が大事な時期、悩んでいる時期にはどちらかがサポート役に回り、互いに寄り添い協力し合うことのはとても自然なことのように思います。

最後に子どもとの関係性についてですが、家庭での父親像をコントロールできないのであれば仕事をしている姿を見せるのも効果的です。わが家では、親の仕事を見せるようにしています。「お父さんはこういう仕事をしているよ」と仕事の話を親子でする時間を持つのも良いでしょう。父親の家庭では見せない違った面を見せることで「お父さんって、すごいんだな」など、感じるものは絶対にあるはずです。

相談者は「真剣な話をしても子どもに届かない」と心配していますが、届いていないとは言い切れません。思春期に差し掛かる時期ですから照れ隠しでそういう反応をしているのかもしれないし、父親の言っていることが正論だからあえて反発してしまうという可能性もあります。ご自分の思春期をぜひ思い出してほしいと思います。

もちろん、夫婦の関係性が影響していないとは言い切れません。しかし、相手の反応はパートナーであれ子どもであれ、コントロールはできないものです。私は子育てのプロではありませんが、どんな子どもになってほしいかと同じくらい自分はどんな親でありたいかを考えることは大切ではないかと思います。

子どもの反応の良し悪しではなく、多感な思春期の子どもにどうかかわる親でいたいかを考えることの方が有意義な気がします。その上で、親としてブレない姿勢が親子関係を構築する核になるのではないでしょうか。

  • パートナーに対して自分が求める“願い”を考える
  • 自分の願い(欲求)を満たす手段を考える
  • パートナーとの未来に向けて、本音で対話をする ※原因追及NG
  • 相手をコントロールするのではなく環境にアプローチする

この4つの手法をぜひ実践してみてください。正解を求め合うのではなく理解し合うことを目的にすることで、夫婦関係は少しずつ良い方向に進んでいくはずです。

<構成・執筆>濱岡操緒

白土詠胡先生とのコラボレーション

白土先生がナビゲーターを務めるレインボータウンFMのラジオ番組(FMラジオ 88.5MHz)『いかす パートナーシップ』。今回の記事内容は、『いかす パートナーシップ』のYouTubeからもご視聴いただけます。ぜひご覧ください!

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