職場のモラハラに効く言葉とは?相手の心理を突く接し方のコツをプロが解説

仕事中、特定の上司や同僚から心無い言葉を投げかけられたり、理不尽な扱いを受けたりして悩んでいませんか?このような職場でのモラルハラスメント(モラハラ)は、被害者の心身を深く傷つけ、仕事への意欲も奪ってしまいます。

そこで本記事では、職場のモラハラに効果的な対処法や相手の心理を理解したうえでの具体的な言葉がけについて、詳しく解説していきます。

関連記事はこちら➡職場のモラハラの特徴とは?判断基準や具体例、当てはまるときの対処方法を解説

執筆者

梅田ミズキさん

認定心理士、サービス介助士。大学で臨床心理学・産業組織心理学・発達心理学などを学び、卒業後は公的施設にて精神疾患の方のケアや介助業務、ご家族の相談対応などに従事しながら、ホームページ掲載用のコラムやミニ新聞を執筆。現在はフリーライターとして独立し、くらしにまつわるエッセイの執筆、臨床心理・発達支援・療育関連のコンテンツ制作および書籍編集に携わりながら、心理カウンセラーも務めている。趣味は読書、映画鑑賞、気まぐれで向かうプチ旅行。

目次

職場におけるモラハラとは?

職場でのモラハラは、一見わかりにくい嫌がらせや心理的な攻撃によって、相手を追い詰めていく行為です。具体的な定義や特徴を挙げていくので、より効果的に対処をしていくための参考にしてみてください。

職場のモラハラの定義

職場におけるモラハラとは、上司や同僚などから受ける精神的な暴力のことを指します。具体的には、相手の人格や尊厳を否定したり退職に追い込ませたりするような言動、過度な叱責、無視、嫌がらせなどです。また、昇進・異動に関する不当な扱いなども挙げられます。

重要なのは、これらの行為が継続的に行われ、被害者の心身に深刻な影響を及ぼす点です。例えば「あなたには向いていない」「誰でもできる仕事なのに」といった言葉で相手を傷つけたり、必要な情報を共有しなかったりするケースがあります。

職場のモラハラのパターン

言葉による攻撃

「無能」「使えない」といった直接的な侮辱から「この程度もできないの?」といった間接的な否定まで、言葉を使って相手を精神的に追い込むパターンです。特に、人前での叱責や皮肉を交えた言葉は、被害者の自尊心を著しく低下させます。

過度なコントロール

些細な業務内容まで干渉する、不必要に報告を求める、私生活にまで介入するといった行為です。これにより、被害者は常に監視されているような圧迫感を感じ、自主性や創造性が失われていきます。

無視・排除

会議で発言を遮る、必要な情報を共有しない、職場の親睦会に誘わないなど、組織から意図的に排除するような行為です。このパターンは、被害者を孤立させ、職場での居場所を失わせる効果があります。

過剰な要求

実現不可能な目標設定や極端に短い締め切り、深夜までの残業強要など、過度な負担を強いる行為です。このような要求は、被害者の心身の健康を著しく損なう可能性があります。

モラハラは組織にも影響をもたらす

モラハラは個人の問題に留まらず、職場全体にも深刻な影響を及ぼすのが特徴です。例えば、モラハラが蔓延する職場では従業員の士気が低下し、生産性が著しく落ちやすくなってしまいます。

また、優秀な人材が離職したり、職場の雰囲気の悪化により新規採用が難しくなったりなど、モラハラは組織の持続的な成長を妨げる要因にもなります。さらに、モラハラを目撃した従業員の心理的負担も大きく、職場全体のメンタルヘルスにも影響を与えるといえるでしょう。

モラハラと他のハラスメントの違い

職場ではさまざまなハラスメントが存在しますが、モラハラには特徴的な点があります。例えば、パワハラが主に職務上の優位性を背景とした言動であるのに対し、モラハラは必ずしも職位や立場の違いを必要としません。

また、セクハラが性的な言動に関するものなのに対し、モラハラは相手の人格を否定するような精神的な攻撃が中心となります。もちろん加害者・被害者にならない環境が一番ですが、それぞれのハラスメントの特徴を理解するのは、自分だけではなくモラハラで悩んでいる人と適切な対処方法を考えるうえでも大切です。

モラハラしてくる人の心理や特徴とは?

モラハラ加害者には、特徴的な心理パターンや性格傾向が見られます。具体的には、主に以下のような特徴です。

支配欲が強い

モラハラ加害者の多くは、他者をコントロールしたいという強い欲求を持っています。自分の思い通りにならない状況に耐えられず、部下や同僚を思い通りに動かそうとする傾向です。この背景には、自己の不安や劣等感を、他者への支配によって補償しようとする心理が潜んでいる場合があります。

自己中心的に考える

自分の価値観や方法論を絶対的なものとし、他者の意見や考えを受け入れられない人も、モラハラの加害者になりやすいのが特徴です。相手の立場や感情を理解しようとせず「自分が正しい」という思い込みが強い傾向があるといえます。

完璧主義

細かいことにこだわって些細なミスも許せない性格の場合も、モラハラをしてしまう傾向が強くなります。完璧主義は、自身の不安や自信のなさが隠れている場合も多く、他者への過度な要求になって現れやすいのが特徴です。

承認欲求が強い

「他者から評価されたい」「価値のある人だと認められたい」との気持ちが強い場合、その欲求が満たされないと攻撃的になり、モラハラに繋がるケースも珍しくありません。特に、自分より優秀な部下や同僚に対して、嫉妬心から否定的な言動を取るケースがあります。

過去にモラハラを受けていたなどトラウマがある

実はモラハラ加害者の中には、自身も過去にハラスメントを受けた経験を持つ人が少なくありません。当時の苦しい経験が、現在の攻撃的な行動のきっかけになっている場合があります。

例えば、厳しい上司の下で働いた経験から「厳しく指導することが部下の成長につながる」と誤った信念を持つようになったり「自分もつらい思いをしてきたのだから」との意識が働いてしまったりするのです。

コミュニケーション能力の不足

過去にモラハラの加害者になってしまった人からは「適切なコミュニケーションがわからない」「コミュニケーションの方法を学ぶ機会を逃してきた」との声も聞かれます。自分の考えや感情を建設的に伝える術を知らないため、攻撃的な言動や威圧的な態度で相手に接してしまいやすいのです。

例えば「もっと早く終わらせられたはずだ」という思いを「こんな簡単な仕事も満足にできないのか」と否定的な表現で伝えてしまう場合があります。

職場でのモラハラに効く言葉や接し方・姿勢のポイントとは?

モラハラへの対処で大切なのは、感情的にならず、かつ毅然とした態度で臨むことです。以下では、実際の職場で使える具体的な言葉がけや、相手の心理を理解したうえでの効果的な対応方法について解説します。

冷静さを保ちながらの毅然とした対応

「理不尽だ」と感じても感情的にならず、事実に基づいた冷静な返答を心がけるようにしましょう。例えば、不当な叱責を受けた際は「具体的に何が問題だったのか教えていただけますか?」と、冷静に状況の確認を求める態度が効果的です。

また「申し訳ありません」「ご指摘ありがとうございます」といった中立的な言葉を使いながら、冷静さを保つ対応も有効といえます。相手の感情的な攻撃を和らげ、理性的な対話の可能性を広げていきましょう。

記録をとりながらの的確な返答

モラハラ行為があった際は、日時や状況、具体的な言動を記録に残します。そのうえで「〇月〇日にご指摘いただいた件について、このように改善しました」と具体的な返答をしましょう。相手の理不尽な要求や批判に対して明確に答えることで、客観的な事実を示せます。

また、相手に言われた内容をあえて「いま、〇〇とおっしゃいましたか?」と復唱するのも効果的です。相手が自分の不適切な言動を自覚し、自身を改めるきっかけになり得ます。

境界線を明確にする対応

過度な要求や不適切な介入に対しては、適切な境界線を設定しましょう。例えば「申し訳ありませんが、それは業務範囲を超えていると思います」「現在の業務量では対応が難しい状況です」と答えるなどです。

曖昧な態度を取ると、加害者は「言っても問題ない」と思いやすくなります。そのため、堂々とした態度を取り「この人には簡単に攻撃できない」と認識されるようにするのが大切です。

同調せずに距離を保つ

激しく責め立てられると、つい「自分に非があると認めたほうが話が早いな…」と感じてしまう方も多いのではないでしょうか。しかし、モラハラ加害者の不適切な言動に同調せず、適度な距離を保つほうが有効です。

「申し訳ありませんが、その話題についてはコメントを控えさせていただきます」と巧みに会話をかわす技術を身につければ、不要な対立を避けやすくなります。対立を避けるのは会社や加害者のためではなく、むしろ「自分のエネルギーを無駄に消費してしまわないため」とイメージしてみてください。

「事実」を味方につける対話術を使う

モラハラ加害者の感情的な攻撃に対しては、具体的な事実を示しながらの対話も効果的です。例えば「怠けている」という非難に対しては「先月の業務報告では目標の120%を達成しており、具体的な改善点があればお聞かせください」というように、客観的な事実を示しましょう。

事実をもとにした対話をすると、相手が曖昧な批判を続けにくくなり、根拠のない非難を防ぐ効果が期待できます。

加害者を攻撃しようとしない

「理不尽に責め立てられたり不当な扱いを受けたりして耐えられず、どうしても激しく言い返したくなってしまう…」そのように悩んでいる方もいらっしゃるはずですよね。しかしモラハラには、自分の権利を守りながらも相手を攻撃しない姿勢が重要です。

例えば「それは違います」ではなく「私の理解では~なのですが、違う視点があればお聞かせください」との表現を使うと、相手の反発を抑えながら自分の意見をはっきりと伝えられます。また「個人の責任を追及するのではなく、チームとしてどのように改善できるかを考えたいのですが」と、“個人間の対立ではなく組織としての成果や目標を意識した発言”を心がけると、発展的な意見交換につながりやすくなります。

モラハラの解決に向けてできる行動とは?

「モラハラに対する有効な態度や言葉は理解できたけど、とはいえ、解決するためにはどんな行動を起こしたらいいの?」と考えてしまいますよね。モラハラ問題の解決には、具体的な証拠の収集や適切な相談先の選択など、計画的な行動が必要です。

ここでは、状況改善に向けて実践できる具体的な行動と、それぞれの方法のメリットやデメリットについて詳しく説明します。

証拠の収集や記録をする

前述したとおり、モラハラを受けてしまったら、その旨をできるだけ詳細に記録しましょう。下記のような記録は、問題解決の際の重要な証拠になります。そのため、可能な限り明確に保存しておくのが重要です。

【モラハラを受けた際に記録する内容】

・具体的な内容
・日時
・場所
・目撃者の有無
・メールやメッセージのやり取り
・会議での発言内容 など

信頼できる同僚や上司へ相談する

「モラハラを受けて精神的に追い詰められ、自分の感じていることが正しいのか不安になってしまった」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。その場合、モラハラの事実を職場内で信頼できる同僚や上司に相談すると、状況の客観的な評価を得られ「やはり不当な扱いを受けている」と確信を持てるきっかけになります。

また、自分では気づきにくい視点を得られると、モラハラの程度や問題点を冷静に把握できるのもメリットです。「それはパワハラに該当する」「こう対処するといい」など、具体的なアドバイスをもらえる場合もあります。

ただし、相談相手は慎重に選び、職場の人間関係を悪化させないよう注意が必要です。

人事部へ報告する

モラハラは個人だけではなく、組織の問題でもあります。そのため、深刻なモラハラ被害を受けている場合は、人事部への報告も検討してください。

報告の際は「事実・影響・組織のリスク・協力的な姿勢」をセットで伝えるのがポイントです。組織として対応すべき問題だと冷静に伝えると、人事部が対応せざるを得ない状況を作れます。

【人事部へ報告する際の例】

「〇月〇日から現在に至るまで、○○さんから「お前は使えない」「無視される」「過度な業務を一方的に押し付けられる」などの発言・行動を受けています。これにより、業務遂行が困難になっています」

「このような状況が続くと、職場の健全な環境が損なわれるだけでなく、生産性の低下や離職率の増加にもつながると考えます。個人の問題ではなく、組織として対応すべき問題ではないでしょうか?」

「貴社の就業規則やコンプライアンスの観点からも、このようなハラスメント行為は放置すべきではないと考えます。適切な対応をお願いできますでしょうか?」

ストレス解消法を見つける

モラハラ被害による精神的なダメージは、第三者が想像する以上に深刻です。そのため、問題の根本的な解決とは別に、定期的な運動や趣味の時間確保などストレス解消法を見つけていきましょう。

睡眠時間の確保や規則正しい生活リズムの維持など、基本的な健康管理も欠かせません。モラハラの問題と向き合おうとしている自分自身を、日常的にたっぷりと労わってあげてください。

転職を視野に入れる

「モラハラにさまざまな対応法を実践してみたけど、状況の改善が見込めない…」
そのような場合は、転職も選択肢の一つです。あくまで感情的な決断は避け、スキルアップや資格取得、人脈作りなど、次のステップに向けた計画的な準備を進めていきましょう。

また、信頼できる転職エージェントやキャリアアドバイザーに相談し、現職の状況を踏まえた客観的なアドバイスを受けるのもおすすめです。転職活動を進めることで選択肢が広がり、精神的な余裕が生まれる場合もあります。焦らず、自分にとって最適な環境を見極めてみてください。

法的手段や制度の活用を検討する

深刻なモラハラ被害の場合、法的な対応を視野に入れることも必要です。まずは労働問題に詳しい弁護士に相談し、具体的な対応方針を検討しましょう。

しかし、裁判は時間や費用がかかるため、精神的・経済的にも負担が大きいものです。そのため、個別労働紛争解決制度を活用し、都道府県労働局での紛争調整委員会に間に入ってもらって問題解決の手助けをしてもらうのも一つといえます。

話し合いでの解決が期待でき、職場復帰や円満退職などの選択肢も広がりやすくなるでしょう。

専門機関へ相談する

職場内での解決が困難な場合は、外部の専門機関への相談も有効な選択肢です。会社専属の産業医への相談や、専門家によるカウンセリングを受けることも検討しましょう。

もしも産業医がいない場合は、精神科か心療内科で診断書をもらうのが適切です。労働基準監督署や都道府県労働局の総合労働相談コーナーでは、モラハラを含む職場のハラスメント問題について、専門的なアドバイスを受けられます。

また、オンラインカウンセリングサービスも、時間や場所を気にせず相談できる便利な選択肢です。心理的なサポートを受けながら、具体的な解決策を見出せます。

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職理不尽なモラハラから自分を守るために勇気ある一歩を

モラハラは、決して被害者の責任ではありません。あなたの感じている苦しみやつらさは、真剣に仕事に取り組もうとしているがゆえの自然の感情といえます。

モラハラは暴力などを伴わないため、周りだけではなく自分も、ハラスメントだと気付きにくいかもしれません。しかし、業務の範囲を超えた精神的な負担を強いる行為は、明確なハラスメントに該当します。

一人で抱え込まず、この記事で紹介した方法を参考に、まずは小さな一歩を踏み出してみてください。専門家への相談や、信頼できる人へのサポート要請も、勇気ある選択の一つです。あなたの職場での幸せと尊厳を守るため、できることから始めていきましょう。

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