職場の人間関係を割り切るコツとは?メリットやストレスを軽くする考え方

パートナーや友人と違って、職場は自分で周りにいる人を選ぶことができません。公私に渡って仲良くする事ができる人もいれば、どうしても仲良くすることが難しい人もいるでしょう。プライドが非常に高くて、気を遣わないといけないとか、自分は仕事をしないで文句ばかり言っているなんて人もいるでしょう。

そういう人と仲良くやることは難しいかもしれません。けれども、例え人間関係がうまくいかないと感じても、仕事をする場所ですので、ある程度割り切っていく必要もあるのではないでしょうか。

職場の人間関係を割り切りたいけど、うまく割り切ることができなくてモヤモヤする。そんな時に使える割り切り方のコツがあります。ということで今回は、人間関係を割り切ることのメリットや、少しでもストレスを軽くするための考え方を解説します。

執筆者

臨床心理士・公認心理師

aiirococcoさん

公認心理師、臨床心理士として総合病院に勤めています。小児科外来をはじめ、緩和ケアチームやリエゾンなど幅広い年齢層の方の心理支援を行っています。また、webライターとして主に心理系の記事を執筆中。誰かに相談するほどではないけど困ったな、というときに役立つ情報を発信できるよう頑張ります。

目次

職場の人間関係で悩む人は多いという現状について

職場の人間関係に悩む人は、おそらくあなたが思っている以上に多いです。大なり小なり、職場の人間関係に対する悩みを抱えている人が大半ではないでしょうか。ではどうして、職場の人間関係で悩んでしまうのでしょうか。

①職場の対人関係で強い不安や悩みを抱えている人は全体の3割

厚生労働省の「職場におけるメンタルヘルスの状況」という調査によると、職場内でのストレスを感じている人は全体の6割弱で、そのうち職場内の対人関係にストレスを感じている人は3割弱でした。3割弱というと少なく感じるかもしれませんが、3〜4人に1人程度の割合で、強いストレスを感じているということです。

②人間関係が複雑

職場にもよりますが、結構複雑な人間関係が展開されているところは多いのではないでしょうか。同僚との関係、上司や部下との関係、社外の人との関係、顧客との関係などつながりがとても多く、その分関係が複雑になってしまいやすいかもしれません。人間関係は複雑になればなるほど難しく、良い関係をキープし続けることに困難さが出てしまいます。

③上下関係などパワーバランスが明確

パートナーや友人との関係とは違い、職場の人間関係には上下関係などがどうしても出てきてしまいます。上司には言いたいことが言えないなど、相手の肩書きによっては遠慮したり自分を抑えたりしなければならない場面が多くなります。そういう時に、相手がとても横柄だったり、自分勝手だったりすると、どうしてもストレスを抱えることになってしまうでしょう。

④距離を取ることが難しい

部署替えなどで環境的に距離を取ることがうまくできればいいですが、そうもいかないことが多いのではないでしょうか。距離を取りたいと思っても、仕事があるため、どうしても関わりを持たざるを得ないということがあります。思うように距離を取れないことで、余計にストレスを抱えてしまうということはあるでしょう。

⑤価値観が違う人の集まりだから

同じ職場を目指してきていますので、価値観が合うと錯覚してしまうかもしれませんが、実際価値観はバラバラです。仕事に対しての向き合い方も、何を大切にするかも違うため、どうしても相容れない部分は出てきてしまうのではないでしょうか。あなたが大切にしていることを大切にできない人との関わりは、ストレスになってしまって当然でしょう。

⑥評価されてしまう場だから

職場という場は、仕事のできるできないが結構はっきりと出てしまう場でもあります。そのため、自分に自信がなく承認欲求が強い傾向がある人は、周りの目を気にしながら働かなければなりません。言葉の裏を考えてしまったり、みんなの目線を気にしてしまうことで、人間関係にストレスを強く感じてしまう場合があります。

職場の人間関係を「割り切る」とはどういうことか

そんな縛りの多く、ストレスの強い職場の人間関係をうまく切り抜けるためには、割り切るということが大切になる場合もあります。では、人間関係を「割り切る」とは具体的にどういう行動を取れば良いのでしょうか?

①感情と切り離す

人間ですので、どうしても感情がついてまわります。この人のこういう考え方は好きではない、こういう言い方は許せないなどネガティブな感情を喚起されてしまう人もいるでしょう。そういう時は、これは仕事だからと感情を切り離してしまうのが、割り切るということです。

具体的には「この人のことは腹が立つけど、仕事だから仕方がない」と腹が立つという感情をとりあえず脇に置いておくのです。それが割り切るということです。

②人間関係は考慮しない

Aさんとの関係はいいけど、Bさんとの関係は良くないとなった時、Aさんに仕事をお願いしてしまいがちですよね。関係の良くないBさんとは関わらないようにするために避けるのではないでしょうか。しかし人間関係は考慮せず、平等に仕事を振っていくということも、割り切るということです。

具体的には、Bさんとはあまり関係が良くないけど、この仕事はBさんが得意だから頼むとか、今Bさんは手が空いているから頼むなど仕事と人間関係を混ぜこぜにしない、といったことです。

③仕事に集中する

人間関係の悩みを抱えて仕事をするのはしんどいですし、気持ちも滅入ってしまうものです。ただ、ここは仕事をする場であり、仲良く楽しくやる場ではないと考えることも、割り切るということでしょう。

具体的には、人間関係よりも、自分が良い仕事をすることに集中する、ということです。黙々と仕事をすることで、人間関係に振り回されることが馬鹿らしくなり、少し心の距離を取ることができるかもしれません。

職場の人間関係を割り切るメリット、デメリット

職場の人間関係を割り切ることで、得られるメリットもあるのですが、逆にデメリットになることもあります。メリット、デメリットをよく知った上で、割り切るべきなのか、別の手段を取るべきなのか、考えてみるといいかもしれません。

メリット①客観的に人間関係を見ることができる

職場の人間関係を割り切ってしまうことで、あなた自身が少し心の距離を取ることができます。そうすると、今まで渦中にいて見えなかったことが見えてくるようになるかもしれません。一方だけが悪いと思っていたのに、実は意外ともう一方にも悪いところがあって相乗効果で関係が悪くなっているなど、俯瞰的に関係を見ることができたりするようになります。

そうなると、関係を良くすることは難しいと諦めてしまうこともできるかもしれませんし、うまくいく方法を見出すこともできるかもしれません。また巻き込まれてストレスに感じるということが、かなり減ると思います。

メリット②うまく聞き流せるようになる 

職場の人間関係を割り切ってしまうことで、嫌な言動をうまく聞き流せるようになります。仕事だけの付き合いだからと思えば、相手があれこれ傷つくことを言っていたとしても、それほど傷つかずに済むのではないでしょうか。

例えば、とても威圧的で攻撃的な上司がいた時に、渦中にいるととてもつらく理不尽に感じてしまうことが多いでしょう。それを割り切ってしまうことで「こういう人だから仕方がない」とか「イライラをぶつけているんだろう」など、直接攻撃を受けない立ち位置で聞くことができるようになるのではないでしょうか。

メリット③ストレスが軽くなる

職場の人間関係が強いストレスになってしまう人は、割り切ることでストレスが確実に軽くなります。強いストレスになるのは、それだけあなたが真剣に職場の人間関係に悩んでいるからでしょう。割り切るということは、その悩みをプライベートに持ち込まないくてもいいということです。

仕事とプライベートをうまく切り離せることで、プライベートな時間まで楽しめなくなるようなことはなくなります。その分、趣味を楽しんだり友人と飲んだりするなど、ストレスを解消する行動をとることができるのではないでしょうか。

メリット④仲良くする必要性を感じなくなる

職場の人間関係を割り切ってしまえば、別に仲良くする必要性はないということに気づくことができます。仕事をする上で必要なコミュニケーションはありますが、最低限それが取れていれば、それ以上関係を良くする必要はないのです。

仲良くしなければならないと思ってしまうからこそ、うまくいかないことにストレスを強く感じてしまったりします。仕事は仕事なので、プライベートなことを話す必要もありませんし、雑談で盛り上がる必要もありません。あくまでも仕事上の関係だと思えば気も楽でしょう。

デメリット①仕事が楽しくなくなる

職場の人間関係がうまくいっていると、仕事をしていても楽しく、より頑張ろうという気持ちになれる人は多いでしょう。お互いにアイデアを出し合って、より良い仕事をしようとする、そんな関係の良い職場は憧れですよね。

割り切ってしまうということは、最低限の関わりになりますし、やはり楽しいという感覚からは遠ざかっていってしまうかもしれません。関係の冷えた家庭が居心地が悪いのと一緒で、関係の冷えた職場になるということです。仕事だから楽しくなくても仕方がないと思う反面、やはり物足りなさを感じる人もいるのではないでしょうか。

デメリット②業務がうまくいかなくなる

割り切ってしまうことで、時には業務がうまくいかなくなることもあるかもしれません。関係が良ければ、阿吽の呼吸で補い合えたり、協力し合えたりします。それがなくなるため、突発的なことにひとりで対応せざるを得なくなったりする場合があるでしょう。

また連絡や報告ミスがあったり、意思疎通がはかれていなかったりと関係があまり良くないことによる失敗はつきものです。普段は割り切っていても大して問題はないかもしれません。ただ、細かいやりとりが疎かになってしまうのは、どうしても避けられないでしょう。

デメリット③意欲的に仕事ができなくなる

職場の人間関係を割り切ってしまうと、どうしても仕事に対しての熱が下がっていってしまいがちです。モチベーションが低下し、必要最低限の仕事をこなせばいいような気持ちになっていってしまうでしょう。早く家に帰りたいがために、仕事が雑になることもありそうです。

積極的に仕事をこなそうという気持ちが減退し、効率の良さを求めたり、いかに仕事をせず楽をするかということに注力してしまいがちです。そうなると仕事の質も落ちますし、ますます意欲を失っていってしまうかもしれません。

デメリット④メンタル面の落ち込みにつながる

職場の人間関係をうまく割り切ることができる人もいれば、やはりなかなか割り切ることができず、余計にメンタル面の落ち込みにつながっていってしまう人もいます。相談相手がいなかったり、うまくいっていたはずの人との関係も希薄になってしまうようであれば、要注意でしょう。

割り切ってしまうことで、何のために仕事をしているのか、そういう疑問を持ってしまう人もいるのではないでしょうか。眠れなくなってしまったり、出社しようとすると腹痛や頭痛を起こすようになる場合もあるため、注意が必要です。

職場の人間関係を割り切るコツ

デメリットを見てもらうとわかる通り、職場の人間関係を割り切るためには、コツが必要です。そこを踏まえていないと、仕事自体に支障をきたしてしまったり、もっと落ち込んでしまう結果になってしまいます。ではどういうふうに職場の人間関係を割り切っていけばいいのでしょうか?

①相手に期待しない

仕事をしにきているわけですから、仕事をするのが当然で、できることが当たり前というふうに考えてしまう人は多いはずです。ただ、相手に期待してしまうと、その期待に応えてもらえないときに苛立ちを感じたりストレスを感じたりしてしまいます。

そのため、あまり期待はせず「うまくやってもらえたら嬉しい」程度の心持ちでいるといいかもしれません。人によって力量も違いますし、持っている能力も違います。価値観も当然違いますので、期待通りに動いてくれるなんて期待しない方がいいでしょう。

②仕事に必要な関係はきちんと誠実に

職場の人間関係を割り切るからといって、仲違いをしていいわけではありません。仕事以外の付き合いをする必要はないですが、仕事に必要な関わりはきちんと保つことが大切です。そうしないと、仕事もうまくいかなくなり、余計にストレスを抱えることになってしまいます。

報告・連絡・相談などはやはり誠実に行うことが大切でしょう。挨拶だってもちろん大事です。相手がそういうことをきちんとできない人だったとしても、あなたはきちんとしておくことが自分の身を守るためにもなります。

③仕事に集中する

人間関係も確かに大切な要素ではあります。ただ、そこにばかり目を向けてしまっていると仕事に集中することができなくなるのも事実です。仕事をする場であると割り切り、より良い仕事をするために資格を取ったり、研修を受けたりすることはいいかもしれません。

仕事だからと割り切り過ぎてしまうと、仕事に対する意欲が減退し、仕事自体も好きではなくなってしまうかもしれません。そうならないためには、人間関係は割り切っても、仕事は割り切らず集中して取り組むことが大切です。

④全員に好かれようとしない

うまく割り切るためには、やはり全員に好かれようとしないという考えを持つことは大切です。協調性が高く、人と仲良くやりたい気持ちが強い人は、どうしても全員から好かれようと頑張ってしまう傾向があります。ただ、どうしても相性が合わない人は一定数存在するものです。

中にはあなたのことを嫌ってくる人もいるかもしれませんが、逆に好感を持ってくれる人もいます。別に全員から好かれなくても、問題はありません。好かれようとすると、無理をしますし、うまく割り切ることができず、ずるずると職場の人間関係に振り回されることになります。

⑤自分でしっかりと線引きする 

職場の人間関係を割り切るためには、どこまで付き合ってどこからは付き合わないのかをきちんと線引きしておくことも大切です。職場全体の飲み会や旅行には参加するのか、同僚からの誘いには乗るのかなどを決めておくと、だんだんみんなも、あなたのスタンスを理解してくれるようになります。

大事なのは、そういう場には顔を出さなくても、仕事上のコミュニケーションはしっかりととること、そして仕事は集中して取り組むことが大切です。そこが欠けてしまうと、周りから浮いてしまい、仕事自体しづらくなってしまいます。

職場の人間関係を割り切れず、疲れたときの対処法

ここまでは職場の人間関係を割り切る方向で話をしてきました。ただ、どうしても割り切れない人もいるでしょう。それはあなたが悪いのではなく、割り切れないような環境に身を置いているせいなのかもしれません。

もし割り切ることができなかったり、割り切ったつもりがうまく割り切れていなかったりして、心が疲れてしまった時には、どうしたらいいのでしょうか?

①同僚や上司など職場内の人に相談する

疲れてしまった時には、まずはやはり職場内の人に相談することが大切です。同僚や上司など、あなたの置かれている人間関係の状況をある程度知っていて、話ができる相手がいませんか?もしいるのであれば、思い切ってその人に相談してみましょう。

職場内の人に相談することで、うまくいかない相手との距離がとれる環境に変わるかもしれません。そういう直接的な対処方法が取れるのは、職場内で相談したからこそできることです。人間関係のことを相談するのはどうかと思って躊躇する人もいるかもしれませんが、きっと話してみたら、もっと早く話せば良かったと思うはずです。

②カウンセリングを受ける

疲れてしまった時には、カウンセリングを受けることもお勧めできます。社内にそういう部署を持っているところもありますし、なければ心療内科や民間のカウンセリングルームなどで相談してもいいでしょう。割り切れないということは、心にたくさんの傷を負ってしまっているということです。

実質的な対処はできないかもしれませんが、あなたがつらかったこと、ストレスに感じていることを聞き取り、今後そのしんどさを解消するために何をしたらいいか、一緒に考えてくれるはずです。ひとりで抱え込むよりも、ふたりで考える方が視野も広がりますし、いい考えが浮かびます。

カウンセリングに出向くのに抵抗があったり、難しい場合は自宅で気軽に相談ができる「オンラインカウンセリング」という方法もあります。気になる方は活用してみてもいいでしょう。


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③転職を考える 

職場の人間関係がどうしても割り切れず、強いストレスを感じてしまうのであれば、転職を考えてもいいかもしれません。安易に決断できることではありませんが、これから長い時間一緒にいる人とうまくいかないのはしんどいものです。

どうにもならない中でもがき苦しんでいくよりは、思い切って職場を変えてしまうことで、うまくいく場合も往々にしてあります。転職までしなくてもいいと思うのであれば、部署異動を願い出たり、転勤を願い出ることもいいのではないでしょうか。自分で環境を変えてしまうことも、ひとつの立派な対処方法です。

まとめ

職場の人間関係はうまくいけば、とてもラッキーくらいに思っているといいかもしれません。もしうまくいかなくても、職場を出れば関係のない人も多いでしょう。とはいえ、仕事をする時間が長いため、どうしても職場の人と関わる時間は長くなってしまうものです。 

仕事上だけの付き合いだと割り切って、心の距離をしっかりと確保し、あまり振り回されないようにすることが大切です。それでもうまく割り切ることができず、しんどい思いを抱えているのであれば、相談したり転職を考えたりするといいのではないでしょうか。 

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