長かった子育ても、ようやくひと段落。本当にお疲れさまでした。今、あなたはどんな未来を思い描いていますか?
「子どもが独立して時間ができたはずなのに、なんだか心がぽっかり空いたように感じる…」「これから先、何を目標に生きていけばいいんだろう」——そんな気持ちになったことはありませんか?
ずっと家族のために頑張ってきたからこそ、そう感じるのは自然なこと。夫婦二人の時間が戻ることに、少し不安を覚える方もいるでしょう。
でもこのタイミングは、「これからどう生きたいか」を考えるチャンスでもあります。ただ、いきなり何かを始めなくても大丈夫。焦らずに、自分を大切にする時間を、少しずつ充実させていきましょう。今回は、そんな第二の人生を楽しく過ごすための秘訣について紹介します。

社会福祉士、家族相談士
妹尾 有里さん
家族関係の改善や、自己理解を深めるワークショップなど実績豊富。学校や家庭支援センター・スクールソーシャルワーカーなどの公的機関での相談実績が豊富。人生が豊かになる心強い支えに。
子育て終了後に多い悩みとは?
子育てを終えた安心感の一方で、心や体に思わぬ変化があらわれたり、それまで見えてこなかった問題が顕在化することがあります。ここでは、そんな子育て終了後に多い悩みを挙げてみます。
体調やメンタルの不調

子育てが一段落すると、それまで我慢していた疲れが一気に出て、体調を崩す人も少なくありません。ホルモンバランスや年齢的な変化が重なり、更年期の兆候が出ることもあります。
また、子どもの巣立ちによって、「空の巣症候群(Empty Nest Syndrome)」と呼ばれる喪失感に悩まされることもあります。長年子育てに注いできたエネルギーの行き場がなくなり、急な生活の変化に心がついていかないのです。
「役割を失ったように感じる」「会話が減って孤独」「何にやる気を出せばいいのかわからない」といった気持ちになるのは、いたって自然な反応です。そんなときは無理にがんばろうとせず、気持ちを話せる相手を見つけたり、必要があれば専門家に頼ることも、自分を守るための大切な一歩です。
時間のもてあまし
自由な時間が増えたのは嬉しいことではありますが、とにかく忙しかった子育て期とのギャップに戸惑うこともあるでしょう。全力で子育てに向き合ってきた人ほど、やるべきことが急になくなったように感じるかもしれません。ずっと子ども中心で自分のことを後回しにしてきたことで、「自分のための時間の使い方を忘れてしまった」「ありあまる時間をどんなふうに埋めていけばいいんだろう」と自由時間をもてあましてしまうこともあるようです。
パートナーとの関係の見直し
子どもたちが巣立った後、夫婦の会話や関係性が希薄になっていたことに、ふと気づくということもあるかもしれません。子育てに集中していたときには特に気にならなかったパートナーとの関係に、改めて向き合わざるをえなくなり、戸惑う人もいるでしょう。
第二の人生を楽しむための考え方のポイント
子育てを終えた今、自分のための時間がようやく持てるようになった方も多いのではないでしょうか。でも、「何から始めたらいいのか分からない」と戸惑うのも自然なこと。そんなときにヒントになる、心の持ち方や考え方のポイントをご紹介します。
「役割が終わった」のではなくて「役割が変わった」と考える
子どもが巣立っていくと、「親」としての役割がなくなってしまったように感じるかもしれません。
確かに、子どものために時間を使うことは激減するかもしれませんが、人生の先輩として見本になったり、見守ったり、何かあった時には相談相手になったりという「精神的な支えとしての親」の役割は続いています。
しかし「役割が終わった」のではなく、ただ「役割が変わった」だけと考えれば、自分の存在価値はちゃんと続いていくと自然に思うことができます。だからといって、いつまでも子どものことを心配していなくていいのです。子どもを信頼して、そっと見守るスタンスでいましょう。
一方で、役割に捉われず、「何者でもない自分」を楽しむ勇気をもつことも大事です。「お母さん」でも「奥さん」でもない自分、自分自身を再発見できる機会でもあります。子どもや家族を優先してきたからこそ、「これからは自分のために時間やエネルギーを使っていい、自分のために生きていい」と自分に許可を出してくださいね。
「今が一番若い日である」ということを心に刻み。毎日を楽しむ

過去の自分と比べるのではなく、「今」と「これから」の自分を大事にしましょう。年齢を重ねたからこそできること、挑戦してみたかったことを始める絶好のタイミングです。新しいことを始めるのに「遅すぎる」はありません。
「やってみたい」と言う気持ちを、年齢を理由に封じるのはもったいないですよね。「年齢は関係ない」という視点を持って、これからの人生の中で一番若い「今」を大いに楽しみましょう。今のあなたは、何にワクワクしますか? どんな時間が心地いいですか?
自分のペースで、少しずつ動き始める
キラキラしたSNSや楽しそうな周囲と比べて、焦ってしまうこともあるかもしれません。けれども、自分らしい時間の使い方ができれば、それがベストです。
「いつかやりたい」と思っていたのは、どんなことでしょう? すぐに答えは見つからないかもしれませんが、ちょっとしたこと、ささやかなことからでも始めてみると、人生が動き始めます。自分のペースで少しずつ動きだしてみましょう。
子育て終了後に何をすればいい? おすすめの時間の使い方
「子育てが終わり、何をすればいいのか分からない…」そんな方におすすめの時間の使い方を紹介します。
自分を取り戻す・深める時間の使い方
- 子育てで中断してしまっていた趣味を再開する
- やってみたいと思っていたけれど、忙しくてできなかったことをやる
- オンライン講座やカルチャーセンターでの学びに参加する
- 資格取得にチャレンジする
- 身体を動かす(ヨガ、ウォーキング、スイミングなど)
- 日記やエッセイを書く(SNSやブログで発信するのもいいかも)
- 瞑想やマインドフルネスで心身のバランスを整える
人とのつながりを広げる時間の使い方

- ボランティア(子育て支援、地域イベントの手伝いなど)に参加して、人生経験を活かして誰かの役に立つ喜びを感じる
- 地域の活動や趣味のサークルなどに参加して、新しい人間関係を築く
- 友人との時間を大切にする(同じ境遇の仲間と話すことで心が軽くなったり、属性の違う友と語り合うことで視野が広がることがあるかも)
外の世界にふれる時間の使い方
- 芸術に触れて感性を刺激する(美術館、コンサート、映画・演劇鑑賞、読書など)
- 行ってみたかった場所を訪れる(一人で、夫婦で、友人と、など)
住環境を整える時間の使い方

- 思いきって断捨離をする
- 空いた子ども部屋の活用法を考える
- 「住み替え」や「縮小」も視野に入れる(2拠点生活も人気)
子育て終了後、夫婦の時間を楽しく過ごすためのポイント
ここからは、子育てがひと段落して夫婦だけの時間が戻ってきた今、ふたりの時間をより心地よく過ごすためのポイントを紹介します。
「会話」を少しずつ取り戻す
①まずは雑談から始めてみる
まずは無理に深い話をしようとせず、雑談から始めてみましょう。完璧な会話を目指す必要はありません。相手の話を途中で遮ったり評価したりせず、最後まできちんと聞いて、「そうだったんだね」と受けとめるだけでも、安心して本音を話せる雰囲気が生まれます。
②自分の感情を伝える
自分の感情を言葉にして伝えることも大切です。たとえば「うれしかった」「さみしかった」「ちょっと不安だった」など、率直な気持ちを伝えることで、相手に自分を知ってもらうきっかけになります。
話すことで、自分自身の気持ちにあらためて気づけることもありますし、感情を共有することで、夫婦の間に安心感や信頼が生まれやすくなります。
③感謝や労いの気持ちを言葉にする

日常の中で、感謝や労いの気持ちを言葉にするのも効果的です。ちょっと照れくさいかもしれませんが、気持ちを伝えることが、夫婦の関係にあたたかさをもたらします。
長年一緒にいると、つい「言わなくてもわかるはず」と思いがちですが、言葉にしなければ伝わらないこともたくさんあります。たとえ小さなことでも、「洗い物してくれて助かったよ」「今日も一日お疲れさま」など、日々の中で気づいたことに対して、感謝やねぎらいを伝えてみてください。
④仕事、趣味、興味あることなど、お互いに聞き合う
さらに、仕事や趣味、関心のあることについてお互いに聞き合うことで、相手の「今」を知ることができ、意外な一面に新鮮さを感じられることもあるでしょう。
会話を重ねるうちに、「一緒に○○してみようか」と共通の趣味が生まれたり、「それ面白そうだね」と興味の幅が広がることも。お互いをもっとよく知ることが、これからの夫婦の関係をより豊かにしてくれます。
⑤未来の話を一緒にする
過去を振り返るよりも、「これから」の未来の話をすることで、お互いの今の気持ちや価値観を確認でき、より前向きで建設的な会話につながります。
たとえば、「いつか行ってみたい場所」「これから挑戦してみたいこと」「老後にどんな暮らしがしたいか」など、具体的でも漠然としていても構いません。未来に目を向けることで、夫婦としての共通の目標や楽しみを再発見できたり、「一緒に歩んでいくパートナー」としての絆を再確認するきっかけにもなります。
共通の趣味・楽しみを見つける
①二人で出かけてみる

まずは気軽なお出かけから始めてみましょう。近所の散歩やランチ、映画鑑賞、スポーツ観戦など、無理のない範囲で「二人だけの時間」を持つことが大切です。旅行など、少し遠出をしてみるのも、新鮮な気持ちを取り戻すきっかけになります。
②家で一緒にできる楽しみをもつ
お出かけが難しい日には、家の中で一緒に楽しめることを見つけてみましょう。料理を一緒に作ってみたり、DIYにチャレンジしてみたり、ふたりの「得意」や「興味」をシェアすることで、自然と会話も増えていきます。
③「やりたいことリスト」を作って交換する
お互いに「やってみたいこと」をリストにして交換してみるのもおすすめです。思いもよらなかった相手の興味を知れたり、新しい共通の趣味が見つかることもあるでしょう。共有することで、会話のきっかけにもなります。
④二人とも初心者というジャンルに一緒に飛び込む

あえてどちらも未経験のことに一緒にチャレンジしてみるのも、刺激的で楽しい体験になります。対等な立場で試行錯誤することで、自然と協力し合う空気が生まれ、関係性もよりフラットに、温かくなっていくでしょう。
⑤「一緒に何かをやる日」を決める
毎日でなくても、「この日は一緒に何かをする」と決めておくことで、楽しみが生まれます。近所を散歩したり、ドラマを一緒に観たり、ちょっとしたことで構いません。ふたりで過ごす時間が日常にあることで、安心感や絆も深まります。
家事を分担する
①家事の見える化を一緒にする
まずは、お互いがどんな家事をしているのか、どんな家事があるのかを一緒に「見える化」してみましょう。書き出すことで、「これはできそう」「これなら得意かも」と話しやすくなります。何もしてくれないように見えるのは、実は「何をやればいいのかわからない」「やり方がわからない」だけ、というケースも多いもの。まずは情報を共有することから始めてみましょう。
②完璧を求めない

やり方が少し違っても、「まあ、OK!」と受け入れる余裕も大切です。完璧を求めすぎると、相手もプレッシャーを感じてしまいます。「やってくれるだけでありがたい」と思えると、家事分担もうまく回りやすくなります。
③好き・嫌い、得意・苦手で分ける
家事を分担するときは、どちらが「好きか/得意か」または「嫌い/苦手」かを基準にしてもOK。無理して苦手なことを押し付け合うよりも、お互いの特性に合わせて役割分担することで、ストレスがぐっと減ります。
④「二人で暮らす場所を快適にしよう」という視点をもつ
「誰がやるか」にこだわるよりも、「どうしたらもっと快適に暮らせるか」という視点を持つと、会話も家事も前向きになります。ふたりで一緒に家を整えるという意識があると、家事が単なる作業ではなく、「暮らしづくり」の楽しい共同作業になります。
時には「ひとり時間」も大切にする
①一緒に過ごすことにこだわらない
夫婦関係を良好に保つためには、常に一緒にいることが必ずしも必要ではありません。むしろ、適度な距離感がある方がうまくいくことも多いものです。
②「ひとり時間=リフレッシュの時間」と捉える

お互いのひとり時間は、「距離を置く」のではなく、「リフレッシュして、より良い関係に戻るための時間」と前向きに捉えましょう。ひとりで好きなことをする時間があるからこそ、パートナーと過ごす時間がより尊く、楽しく感じられるようになります。
③短時間&定期的に取り入れてみる
ひとり時間が苦手な人も、まずは「短時間」で「定期的」に取り入れてみると無理なく始められます。たとえば「土曜の午前中だけカフェで読書する」や「夜に30分だけ散歩する」など、小さな習慣としてスタートすると、自然と心が整ってきます。
まとめ

子育て終了後の第二の人生の魅力は、何と言っても「時間に縛られず、自分がやりたいことを自由に選択できること」ではないでしょうか。やりたかったこと、後回しにしていた夢に一歩踏み出だして、人生をあなたらしく、もっと豊かにしていってください。これからの人生は、自分のために時間を使っていいんです。子育てをがんばってきたからこそのご褒美時間を大いに楽しみましょう。
この記事を執筆した妹尾 有里さんに相談してみませんか? 当サイト「悩ミカタ」ではミドル世代(40代50代)の悩みや不安・ストレスについて各分野の専門家/カウンセラーに相談できるオンラインカウンセリングサービス「悩ミカタ相談室」を展開しています。不安な気持ち、1人で抱え込まずにまずはお気軽に相談してみてください。