身近な人に相談しづらいお金の不安。誰に話していいか分からなければ、独立系ファイナンシャルプランナーがいいと知っていますか?今回は、お金の相談先や共働きを始める主婦のカウンセリングの様子を紹介します。
お金、将来に不安・悩みがある
円安や物価上昇が続く中、子どもたちの教育費や老後資金など、お金の不安はなくなりません。しかも、じゃあとにかく働いて稼げばいいのかというと、稼ぐほど所得制限によって、児童・子ども手当をはじめとするさまざまな制度から適用外になってしまう心配もあります。
実際にお金のオンライン相談サービス「お金の健康診断」が、全国の265人を対象に行った調査「円安・物価上昇による家計意識(2022年7月実施)」によると、約87%の人が今後の家計に不安を抱えており、不安だと回答したのは特に30~50代の子育て世帯が多かったそう。
ですが、多くの人が不安を感じていても、そのうちの大半は具体的な対策を立てるのは難しいですよね。「どうお金の不安と向き合えばいいか分からない…」そんなときは、お金の専門家に相談をしてみるのはどうでしょうか。
お金の悩みへ3つの相談先
では、お金の専門家とはどのような人なのでしょう。悩み別にお金の相談ができる3つの相談先を紹介します。
保険会社・保険ショップ
学資保険や医療保険、生命保険など、保険の加入や見直しをする保険会社や保険ショップ。保険商品の紹介だけでなく、人生の危機に備えた家計やライフプランの相談ができます。ただし、保険商品を選ぶ前提の相談になります。
市(区)役所・社会福祉協議会
「生活保護になるかもしれない」「借金が返せない」「家賃が払えない」「社会保険料、健康保険料が払えない」がなど、生活が困窮したときに相談できるのが、各自治体の役所や社会福祉協議会などに設置されている相談窓口です。家賃の支給を受けたり、就労、家計の見直しの相談をすることができます。
独立系(中立系)FP
お金の専門家といえば、税理士、会計士など、いろんな資格や職業がありますが、家計の相談をするのに適した専門家といえばファイナンシャルプランナーです。
FPは、税金や年金など金融全般に専門的な知識をもつお金の専門家。家計の見直し、夢や目的を叶えるためのプラン設計など、お金を切り口に人生全体を一緒に考えてくれます。中でも、金融機関や会社などに所属していないFPは、販売ノルマなどもないため、望まない限り金融商品の紹介などは行わず、中立的な立場で相談に乗ってくれます。
また、独立系FPは転勤などもないため、1回だけの相談だけでなく、ホームドクターのように健康的に家計を維持するために継続して相談し続けることができます。
中立的な立場のFPはどこにいる?
では、中立的立場でお金の相談にのってくれる独立系FPは、自身で相談窓口を設けているほか、日本FP協会を経由して紹介してもらうことができます。
また、相談マッチングサイトなどを利用すると、複数のFPから自分に合いそうな人を選ぶことが可能。「悩ミカタ」や姉妹サイト「ソクたま相談室」にもファイナンシャルプランナーが所属しており、オンラインを経由して匿名で教育費やローン返済をはじめとする家計の相談をすることができます。
【実例】独立系FPにお金の悩みを相談
お金に対して漠然とした不安を抱えていても、実際に家計の相談をしたことない人も多いことでしょう。そこで、今回は、共働きのお金の稼ぎ方に不安を抱えている石原さんが、相談している様子を紹介します。
- 石原ゆきこさん(仮名)
- 家族構成:夫と小学生の姉妹
- 夫の年収:650万(額面)
- 家族構成:夫と小学生の姉妹
下の子が小学生3年生になり、再就職をしようと考えています。ですが、所得制限で児童手当が受け取れなくなったり、税金が増えたりしないか心配です。税金のことを考えて、得をする・損をする世帯年収ってあるのでしょうか?節税対策も教えてください!
今回、石原さんは「悩ミカタ」の姉妹サイト「ソクたま相談室」に登録しているFPの中から、年間100件以上の相談経験がある佐藤房子さんに相談をすることにしました。
ファイナンシャル・プランナー
佐藤房子さん
ファイナンシャルプランナー歴17年。毎年100件以上の相談経験がある「家計ダイエットのプロ」。家族関係、夫婦の立場、障害児を持つご家族など、さまざまな問題が複雑に絡むケースの将来設計も得意としている。
相談前に基本的な情報を提出
佐藤さんに相談を依頼すると、個人の状況に合わせた的確なアドバイスをするためということで、事前の相談シートが送られてきました。
- 相談者氏名、家族構成、年齢
- 世帯主の収入
- お住まいの状況(持ち家、賃貸)
- 現在の不安の材料(働き方、貯蓄がなかなかできない、子供の教育費 保険の見直し、住宅購入計画など)
- 将来の夢
- 支出の内訳
- 基本生活費
- 教育費、保険料、車関係、趣味・教養娯楽費、レジャー費、貯金額など
実は、家計簿をつけたこともなく、家計についても細かく把握していないという石原さんでしたが、「書ける範囲で大丈夫」という言葉を信じて分かる範囲で記入して佐藤さんへ送付しました。
【相談①】共働きで知っておきたいお金の知識は?
まずは、共働きになるということで、配偶者控除、特別配偶者控除、社会保険料、住民税・所得税などについて分かりやすく説明する佐藤さん。
「一般的に配偶者の収入が130万円を超えると、扶養から外すというケースが多いですので念のため会社に扶養の金額を聞いておくことも大事ですね、ご主人が面倒だと言うかもしれませんが、扶養の場合「家族手当」がでます。会社によって金額が違いますし、健康保険などで付加給付など特典もあります」(佐藤さん)
【相談②】税金や社会保険料はいくらになるの?
佐藤さんの話を聞き、納得した上で「扶養から外れて働くことにしました」と話す石原さんですが、気になるのは自分が支払う税金や社会保険料がいくらになるのかということです。
「所得税を算出するには、収入から該当する控除額を引き、課税所得を出し、所得税額をかけて算出します。また、所得税率は5~45%の7段階に区分されており、 年収(課税所得金額)が増えるほど税率も高くなります。
住民税の額は、1月1日から12月31日までの1年間の収入を基に算出し、翌年の6月からの1年間に納付します。前年の収入がなかった場合は、
地方自治体によっても収入の基準に違いがありますが、石原さんが在住の東京都は、100万円以上の収入に対して住民税がかかるため、働き始めた年の翌年から発生します」(佐藤さん)
また、目安として考えられるように、想定報酬で石原さんの社会保険料を事前に計算してくれていた佐藤さん。
- 健康保険料:2万9550円(40歳未満)
- 健康保険料(+介護保険):3万4470円
- 厚生年金保険料:5万4900円
「健康保険料と厚生年金保険料は、会社と折半になるので本人負担は半分+雇用保険料になります。雇用保険料は業種により、働く本人と雇用主との負担割合が違います。
令和4年10月から保険料の料率が変わり、一般の業種の場合労働者5/1000、事業主8.5/1000となります。
実は、健康保険料も厚生年金の保険料も増加傾向にあり、税金の負担よりも社会保険料の負担がすごく大きくなっているんです。ですが、厚生年金保険料は将来の年金の原資となりますので自分の為でもあることも知っておいてくださいね」(佐藤さん)
負担になるのは税金だと思っていた石原さんは、意外な様子で佐藤さんの話を聞いてます。
【相談③】所得制限でもらえなくなりそうなのは?
もうひとつ石原さんが気になっていたのが所得制限です。2022年10月以降に受け取る児童手当は、所得制限上限額が設けられ、所得制限上限額を超えている世帯は児童手当を受け取れなくなります。
「児童手当の所得制限は世帯年収ではなく、世帯主の収入によるので、石原さん夫婦のどちらかの収入が上限額(1200万円)を越えなければ受け取れます。また、子育て世帯だと高校授業料の無償化などもありますが、こちらは世帯年収で計算します。子供の数や年齢でも違いますが、石原さんの場合、奥さんが働いたとしても、世帯年収が1070万円未満であれば支給されますよ。」(佐藤さん)
【相談④】節税対策を教えて
最後に再就職し、共働きするにあたってできる節税対策を聞いた石原さん。
「例えば、節税対策といわれるもののひとつに『ふるさと納税』がありますが、『ふるさと納税』の対象は支払っている税金に対してなんですよね。自分の支払っている税金以上の節税にはなりませんので確認が必要です。
ただ、故郷や居住地以外で応援したい地域を応援できたり、地方のおいしいものが食べられたりというメリットはあると思います」
大切なのは、自分が税金や保険料にいくら支払っているのかを知ることだと話す佐藤さん。
「まずは社会保険や税金の仕組みを知りましょう。すると、医療費控除などサラリーマンでも確定申告をすれば控除を受けられるものがあることが分かります。もちろん、『自分では考えられなさそう』ということであれば、さまざまな明細などの詳細を教えて頂ければ、あなたが受けられる控除を一緒に考えていきますよ」(佐藤さん)
ほかにも、家計の見直しも大事だと佐藤さんは続けます。
「例えば、光熱費や食費は減らすのは、簡単そうでとても大変なんです。体の健康を考えると後で影響が出そうですしね。
一方、保険や通信費は見直すことで定期的な支出を抑えることができます。ただ、どちらも業者さんに所属しているFPに相談してしまうと、“商品を売ること”が前提なので、ほかの商品を契約することに話がすり変わったり、不要なコストを抱え込まされたりすることも多いです。有料でも的確なアドバイスをしてくれる中立な立場のFPに相談したほうが損はないと思います」(佐藤さん)
また、「家計の見直し」と聞いて「家計簿をつけたことがないんです」と不安そうな石原さん。
「細かく書き出さなくても分かる範囲でいいですよ。どの家にも何に使ったか分からない使途不明金があり、それが収入の8%ぐらいなら”しょうがない”の範囲内です。ただ、家庭によっては、それが15%ぐらいになっているケースもあります。そこを明快にするだけで、収入を増やさなくても使える金額は増えますよね。使っているお金をしっかりと意識するだけで随分違うと思います。ダイエットと同じ感覚ですね」
これまでに数多くの主婦の相談を受けてきた佐藤さん。
「共働きはどうしても女性に負担がかかりがちです。だから迷いがあるのなら、子どもが小さいうちはフルタイムではなく、パートにとどめて、子どもが大きくなったら改めて働き方を考えるという方法もあると思います。今の収入支出を見直すことで、“お金のために働く”のではなく、“自分を磨くために働く”ことのお手伝いをしたいです。ひとりで抱えている不安をぜひ話してくださいね」(佐藤さん)