厚生労働省の2019年度の調査※によると、日本の離婚率は約35%で、年間およそ20万9000組の夫婦が離婚しています。さらに2022年度の「人口動態調査」では、新たに結婚したカップルのうち、どちらか一方または双方が再婚というケースは全体の約3割にのぼりました。
結婚は「運命」と語る人もいますが、出会いや別れは人生のご縁であり、大きな決断です。その形は、世間の常識だけでは良し悪しを判断できないものです。
こうした背景から、最近では「初婚の男性」と「バツイチで年上の女性」との結婚に悩む相談も増えています。お互いの背景や価値観が異なるからこそ、結婚前にしっかり話し合い、考え方をすり合わせることが大切です。
そこで今回は、「バツイチ女性と初婚男性の結婚」について、私の考えをお伝えしたいと思います。
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心理カウンセラー・エグゼクティブコーチ・プロフェッショナルキャリアカウンセラー
下枝 三知与さん
心理カウンセラー・プロフェショナルキャリアカウンセラー・エグゼクティブコーチ・組織心理士・介護傾聴師。キャリアアップ、就職支援など、キャリアに関する相談実績が大変豊富で、研修講師や人事コンサルティングも行う。
離婚歴がある女性の結婚がうまくいく理由
離婚歴がある女性との結婚には、不安を感じる方もいるかもしれません。しかし、過去の経験を経たからこそ、より成熟した視点で結婚生活を築ける強みがあります。ここでは、離婚経験のある女性の結婚がうまくいきやすい理由を4つご紹介します。
①過去の経験が活かせる(相手とのコミュニケーションを良い形にできる)
一度結婚生活を経験した女性は、日々の暮らしの中で、喜びや苦しみを通じて多くのことを学んでいます。
本来、夫婦は育った環境も価値観もまったく異なる他人同士です。しかし、新婚生活が始まると、なぜかその違いを忘れてしまい、同じ考え方や感覚を持っていて当然だと錯覚してしまうことがあります。
特に男性の中には、妻のことを「自分のすべてを受け入れてくれる存在」、まるで母親のように甘えられる相手だと無意識に思っている人も少なくありません。新婚当初は、それを喜びとして受け入れる女性もいますが、現実には違う人間同士が一つ屋根の下で生活するのですから、些細な価値観のズレや行き違いが起きるのは当然のことです。
結婚生活とは、そうした日々の積み重ねの中で築かれていくものです。
離婚を経験した女性は、そうした現実を身をもって理解しています。夫婦関係をうまく築くにはどうすればよいか、どんな対応が必要か、そして同じ失敗を繰り返さないためにどうすればよいかを、実体験を通して感じ取っているはずです。
前の結婚生活で悩み、苦しみ、自分自身を見つめ直した経験は、決して無駄ではありません。むしろその経験こそが、これからの人生に活かせる大きな力となるのです。
②女性が年上の場合は特に、包容力に長けている

もちろん性格による差はありますが、年上の女性であっても「時には甘えたい」と感じるのは自然なことです。
それでも、多少の意見の食い違いや小さないざこざがあっても、「まぁ仕方ないか」と受け流せる包容力を持っている方が多いのも事実です。ただし、年上だからといって上から目線の言動をとるのは避けたほうが良いでしょう。多くの男性は年齢に関係なく「プライドを傷つけられること」を最も嫌う傾向があるからです。
自分の考えや気持ちは我慢せず、タイミングや言葉選びに気を配りながら、素直に伝えることが大切です。
③自立心が強い

離婚を経験した女性にとって、離婚後の生活を維持するためには経済的な自立が前提となることが多いでしょう。
離婚という決断には、長い時間と大きなエネルギーが必要です。簡単に出せる結論ではないからこそ、それを乗り越えた女性は、自然と精神的にも強くなるものです。
そうした背景から、離婚経験のある女性には、経済的にも精神的にも自立している人が多いのも納得できることです。
④結婚に対して現実的であり、毎日の生活の積み重ねであることを理解している
一般的に、男女ともに初婚同士の場合は「夢のような結婚生活」を思い描きがちです。
しかし、離婚を経験した女性はより現実的な視点を持ち、日々の生活をどうすればうまく回せるかという実感や知恵を身につけています。
そのため、もし初婚の男性が理想に偏った「バラ色の結婚生活」を思い描いていたとしても、冷静に手綱を引き締め、的確な判断やアドバイスができる頼もしい存在となるでしょう。
初婚男性との結婚で課題になることが多い点
もちろん、離婚経験がある女性との結婚には多くの魅力がありますが、一方で注意すべきポイントもあります。特に、相手が初婚の男性である場合、価値観や立場の違いからくるギャップに悩むこともあるかもしれません。
ここでは、実際に課題になりやすい点をいくつか挙げ、それぞれに対してどのように向き合えばよいかを考えてみたいと思います。
①男性家族に反対される懸念がある

男性側(息子)の親としては、「できれば初婚同士であってほしい」と考えるのが自然な感情です。そのため、バツイチ女性との結婚を告げられた際、すぐに賛成とはならない可能性があることは、ある程度覚悟しておいたほうが良いでしょう。そうした心構えがあれば、たとえ最初に反対されたとしても、大きなダメージにはならないはずです。
大切なのは、男性側がしっかりとした覚悟を持っていることです。「親を説得する」「理解されなくても自分が守る」という強い意志と行動があれば、そして女性側も「あなたを心から信じている」「一生ついていく覚悟がある」という思いを伝えることができれば、時間はかかっても必ず道は開けるはずです。
②婚前に築いた貯蓄などの自己財産があいまいになりやすい
経済的に自立している女性であれば、結婚前にある程度の貯蓄など、自己財産を持っている方も多いでしょう。こうした経済的な基盤は、将来を見据えるうえでも非常に大切です。
一般的に、結婚後に得た財産は「共有財産」とみなされることが多くなりますが、自分自身で築いた婚前の財産は、しっかりと管理し、明確に区別しておくことをおすすめします。
どんなに今が幸せでも、人生には予測できない出来事が起こる可能性があります。いざという時に備える意味でも、自分の資産を守る意識は大切です。
③前夫との関係を疑われる場合がある

個人差はあるものの、恋愛中の男性は、女性に対してとても優しく、何でも受け入れてくれるように見えることが多いものです。これは、相手を「どうしても手に入れたい」と思う時期には、よくある自然な姿ともいえます。
しかし、結婚して毎日一緒に過ごす生活が始まると、男性は意外にも嫉妬深くなることがあります。特に厄介なのは、自分の中にある嫉妬心を隠しながら、一見「物分かりのいい夫」を演じている場合です。表面上は理解を示していても、心の奥ではさまざまな感情を抱えている可能性も否定できません。
そのため、泥沼のトラブルを避けるためにも、前夫との関係は完全に切れていることを、結婚前にはっきり伝えておくことをおすすめします。小さな疑念が後々の大きな不安に発展しないよう、あらかじめクリアにしておくことが大切です。
初婚男性と結婚する前に考えたい・話し合いたいこと
離婚歴のある女性が初婚男性と再婚を考える際には、不安や戸惑いを感じる場面もあるかもしれません。ですが、だからこそ事前にしっかりと話し合い、理解を深めておくことが、安心できる結婚生活の第一歩になります。
ここでは、結婚前にぜひ考えておきたいこと、そしてパートナーと話し合っておくとよいポイントをご紹介します。
①離婚の原因について、正直に説明しておく

離婚の理由は人それぞれであり、多くの場合、一つの原因だけでなく複数の要因が重なって起きるものです。ただ初婚の男性にとっては、離婚の事情を具体的にイメージするのは難しく、聞くこと自体に戸惑いや不安を感じるのも無理はありません。
だからこそ、過去の出来事についてはできるだけ正直に、そして「自分にも至らない点があったかもしれない」という姿勢をもって、謙虚に伝えておくことが大切です。
それは、相手への信頼と愛情、そして誠意を示すことにもつながります。
②万が一のために、自己財産は共同財産とは別のものであることを理解してもらう
結婚を含めた人生において、将来何が起こるかは誰にも分かりません。いざというとき、自分の判断で自由に使えるお金があることは、大きな支えになるはずです。いわゆる「へそくり」は隠し事ではなく、“万が一に備える知恵”とも言えるでしょう。
「夫婦間に秘密は持つべきではない」という考え方もありますが、本当に困難な局面でお互いを支え合うためにも、自己財産は自分の意思で管理し、確保しておくことをおすすめします。
③前夫との関係はクリアになっていること、今後一切連絡などしないことを確約する
新しい結婚生活を始めるにあたっては、結婚相手である男性に対する愛情や誠意をきちんと伝えることが大切です。
その一つとして、前夫との関係がすでに完全に終わっていることを、あらかじめ伝えておくことをおすすめします。
④子作りに対して価値観をすり合わせておく

少子化が進む現代では、子どもを持つことに対する考え方も人それぞれで、男女問わず多様になっています。「結婚すれば子どもを持つのが当たり前」という価値観は、今の時代には必ずしも当てはまりません。
一方で、お互いの両親が「孫を抱きたい」と願う気持ちも理解できるものです。だからこそ、焦って答えを出す必要はありませんが、将来のためにも日常の中で少しずつ考えを共有し、すり合わせていくことが大切です。
子どもを持つかどうかは、ふたりの人生設計に深く関わる大切なテーマです。納得のいく選択ができるよう、丁寧に話し合っていきましょう。
⑤ライフサイクルへの考え方をすり合わせておく
初婚の男性は「新婚生活=バラ色」といった理想的なイメージを持ちやすいものです。一方、離婚を経験した女性にとっては、現実的な生活のイメージが強く、「夢」だけでは語れないことも多いでしょう。
とはいえ、男性の夢を否定するのではなく、自分の経験をもとに「伝えておいた方がいいこと」をやさしく共有することが大切です。たとえば、家事の分担について、「自分にできること」「相手にやってほしいこと」などを、思いやりと包容力をもって話してみましょう。
また、多くの男性は「プライドを傷つけられること」に敏感です。「私のほうが年上で経験もあるから」と、上から目線で話してしまうと、反発や不信感を招いてしまうこともあります。あくまで対等なパートナーとして、相手を尊重しながら対話する姿勢が大切です。
離婚歴への理解を得るには?相手の親との向き合い方
離婚歴があることで、相手の親にどう思われるか、不安に感じる方も少なくありません。特に初婚の男性と再婚する場合、「親に受け入れてもらえるだろうか」と悩むのは自然なことです。
ですが、大切なのは過去を隠すことではなく、誠実に向き合うこと。相手の家族も大切な存在だからこそ、きちんと説明し、信頼を築いていくことが、円満な関係づくりにつながります。
ここでは、相手の親に離婚歴を理解してもらうために、事前に考えておきたいポイントを紹介します。
①離婚歴があることとその原因について、相手の家族に事前に説明しておく
再婚にあたって、もし自分の離婚歴を「恥」や「傷」と感じているなら、まずはその気持ちを自分の中で整理しておきましょう。離婚という出来事は、さまざまな要因が重なった結果であり、その責任が一方にのみあることはほとんどありません(DVなどを除いて)。ですから、必要以上に引け目を感じることはありません。
離婚の事実については、隠さず、簡潔に堂々と男性のご家族に伝えることをおすすめします。あとから判明するよりも、誠実に向き合っていると受け取ってもらえる可能性が高いでしょう。
そして何より大切なのは、「この人と一生を共にする覚悟があります」「大切にしていきたいと思っています」という気持ちをしっかり伝えることです。それが、相手のご家族にとっても安心材料となるはずです。
②自分の家族関係や、再婚に対しての家族の考えを正直に伝える

ご自身の家族構成については、すでに相手に伝えている方も多いと思いますが、離婚時の家族の反応や理解度、再婚に対する考え方などについても、相手のご両親にあらかじめ共有しておくと安心感につながります。
「結婚は本人同士の問題で、家は関係ない」という考え方も現代では一般的になりつつありますが、それでも冠婚葬祭などの節目では「家と家」のつながりが重要になる場面は少なくありません。
親戚づきあいには多少のわずらわしさがつきものですが、そうした場面でも気持ちよく対応できるのは、人生経験を積み、家庭というものの複雑さを知っている離婚経験者だからこそできることなのではないでしょうか。
③子作りに関し、二人の価値観が統一していることを伝えておく
初婚男性の親にとって、「一日でも早く孫の顔を見たい」という気持ちは自然なものです。しかし、年上の女性にとっては、不妊や高年齢出産に対する不安もあり、自分からその話題を切り出すのはなかなか難しいものです。
だからこそ、子どもに対する考え方や今後の方針については、二人でしっかり話し合ったうえで、男性からご両親に伝えてもらうことをおすすめします。特に結婚の早い段階で男性から説明があると、相手の親御さんも安心しやすくなります。
もちろん、将来的に考え方が変わることもありますが、節目ごとに男性が自らご両親に伝えてくれる姿勢があれば、女性としても心強いでしょう。
離婚歴のある女性と初婚男性が結婚した実例紹介【相談者:初婚男性(31歳)】
以下は、筆者が離婚歴のある女性と交際中の男性から相談を受けた事例です。
相談内容
3歳年上の女性と交際中の男性からの相談です。相手の女性は、いわゆる「成田離婚」(新婚旅行後すぐに別居・離婚)を経験したバツイチ。男性は初婚で長男という立場から、両親にそのことをどう伝えるべきか悩んでいました。
両親とは仲が悪いわけではないものの、幼いころから寮生活が長く、家族との会話が少ないこともあり、「面と向かって伝えるのがとにかく怖い」とのことでした。女性の家庭事情についても、厳格な父親との不仲や、離婚によってさらに悪化した関係があることが背景にありました。
男性の思いと不安
男性自身は、「彼女に離婚歴があることは全く気にしていない。結婚する覚悟もできている」と語っていました。
しかし、自分の両親がそれをどう受け止めるかが心配で、なかなか切り出せずにいたのです。
相談の中で「ご両親の気持ちを思いやるその優しさが、あなたの魅力。きっとそのような息子さんを育てたご両親なら、理解してくれるのではないでしょうか」と伝えたところ、男性の表情が少し明るくなったのが印象的でした。
最終的な行動と結果

ある日、男性はお酒を飲んだ勢いを借りて、母親にこう伝えました。「実は結婚したい人がいる。離婚歴がある人だけど……やっぱり反対だよね?」
すると母親からは、思いがけずあたたかな言葉が返ってきたのです。「あなたの人生だから、あなたが思うとおりに進めばいい。あなたが選んだ人なら信じているよ。」
父親も一言、「一度会いたい」とだけ返し、それ以降は驚くほどスムーズに結婚の話が進んでいきました。
このエピソードが教えてくれること
親に話す勇気が出ないときこそ、完璧な説明をしようとせず、自分の率直な気持ちから伝えてみることが大切です。
たとえ不安を感じていても、自分の意思を持ち、誠意を込めて伝える姿は、親の心を動かす力を持っています。
まとめ

「自分の人生は自分で創っていく」この言葉は、私がカウンセリングを行う上で、最も大切にしている想いです。完璧な人がいないように、人生にも完璧はありません。山あり谷あり――それこそが、ごく普通の人生だと思います。人生の山にぶつかるたびに、私たちはもがきながら学び、そして少しずつ人として成長していくのです。
人は一日の中でも、さまざまな感情に揺れ動きながら生きています。心の中にある相反する思いに戸惑い、悩みながら日々を過ごしているのではないでしょうか。楽しい日もあれば、つらく悲しい日もある。好きと嫌い、後悔と忘却、怒りと平静、感情と理性――こうした揺れ動く気持ちは、すべてその人だけのものです。
他人は、その感情を想像することはできても、まったく同じ気持ちを“同感”することはできません。だからこそ、自分の感情を否定しないでください。感情を否定することは、自分の存在そのものを否定することと同じくらい重いことなのです。
離婚という経験は、その人の人生における大きな転機です。そこには、とても大きなエネルギーと勇気が必要ですし、簡単な決断ではありません。
だからこそ、その経験を「失敗」で終わらせるのではなく、次の成功へとつなげていってほしいと、私は強く願っています。離婚歴のある女性が、初婚の男性と結婚することは、とても素晴らしいことです。
夫婦の間で起こる出来事の多くは、外からは理解しがたいものばかりです。ですが、人の心は“相手の鏡”ともいわれます。夫婦は、常に「お互い様」です。
離婚歴があっても、なくても関係ありません。どうか、二人で知恵を出し合い、心を寄せ合い、言葉を交わしながら、人生の山を一緒に乗り越えてください。
そして――難しいことかもしれませんが、いつか、お互いを「許す」ことができたなら、本当の幸せを手に入れることができるでしょう。
「許し」は、最高の愛情の形だと、私は信じています。新しい人生に、どうか幸多からんことを。心からのエールを送ります。
この記事を執筆した下枝 三知与さんに相談してみませんか? 当サイト「悩ミカタ」ではミドル世代(40代50代)の悩みや不安・ストレスについて各分野の専門家/カウンセラーに相談できるオンラインカウンセリングサービス「悩ミカタ相談室」を展開しています。不安な気持ち、1人で抱え込まずにまずはお気軽に相談してみてください。