寝ても寝ても眠いのはうつ病の症状?日中の眠気や過眠とうつの関係

「寝ても寝ても眠い」
「日中、仕事や家事がはかどらない」
「もしかしてうつ病?」

このような悩みや不安を感じたことはありませんか?

日中の強い眠気や過眠は、うつ病の一つの症状ではありますが、それが必ずしも「うつ病」であるとは限りません。

この記事では、眠気の原因が何なのかを判断するポイントや対処法について解説します。睡眠の問題に悩んでいる方や、うつ病かもしれないと不安に思っている方は、ぜひ参考にしてください。

執筆者

臨床心理士・公認心理師

あらいひさきさん

大学院修了後、「心穏やかに過ごせるように」という信念のもと企業にて研究員としてメンタルヘルスサービスの開発に携わる。認知行動療法を専門とし、精神科での心理相談にも従事する。うつや不安、職場でのメンタルヘルスや発達障害、不登校など幅広いケースのカウンセリングを担当。

目次

寝ても寝ても眠い「過眠」の原因は?

最近、十分に睡眠をとっているにもかかわらず、日中に強い眠気を感じていませんか?

「仕事が思うように進まない」「家事に手がつかない」といった状況が続くと、「もしかしてうつ病なのかも?」と不安になるかもしれません。確かに、過眠はうつ病の症状としてあらわれることがあります。

しかし、必ずしも過眠の原因がうつ病であるとは限りません。次のようなうつ病以外の疾患が原因となっている可能性もあります。

  • 睡眠時無呼吸症候群
  • ナルコレプシー

また、疾患ではなくても、次のような生活習慣によって眠気が強くなっていることもあります。

  • 睡眠時間が足りていない
  • 寝る前にスマートフォンやパソコンを使っていて睡眠の質が低い

このように様々な原因が考えられますので、まずは眠気の原因が何なのかを判断し、そのうえで適切な対処法を考えていきましょう。

これからそれぞれの原因について詳しく説明しますので、どれに当てはまるか考えてみましょう。

うつ病とは?症状と原因は?

うつ病とは、気分の落ち込みや興味の喪失、持続的な疲労感などが生じ、日常生活に支障をきたす疾患です。意欲が低下して何をしても楽しくないと感じたりするだけではなく、睡眠障害や食欲減退といった身体の不調があらわれることも多いです。

うつ病の症状

うつ病の症状は多岐にわたりますが、一般的には以下のような症状があります。

  • 食欲や体重の変動
    食欲が極端に減少または増加し、体重が減る、あるいは増える。
  • 睡眠障害
    夜眠れない、あるいは長時間眠ってしまう。
  • 思考力や集中力の低下
    仕事や家事に集中できない、ミスが増える。何事も億劫で動作がゆっくりになる。言葉がなかなか出てこない。逆にどこか落ち着かずじっとしていられなくなることもある。
  • 無気力、疲れやすい
    十分な休息を取っても、疲れが取れない、体がだるいと感じる。
  • 無価値観や罪責感
    「自分には価値がない」「自分は迷惑をかけてばかりいる」などと感じる。
  • 死について考える
    「死んでしまいたい」「消えてしまいたい」と繰り返し考える。

うつ病の原因

うつ病は以下のような複数の要因が複雑に絡み合い発症することが多いです。

  • 慢性的なストレス
    仕事や家事、学業の負担や人間関係のトラブルなどの慢性的なストレス
  • 過重労働
    長時間労働や休息が取れないような状況
  • 喪失体験
    親しい人との死別や離婚など、大切なものを失う経験
  • 状況の大きな変化
    結婚や昇進といった喜ばしい変化であったとしても、これまでの生活や仕事内容が大きく変化するような出来事はうつのきっかけとなることがある

これらの要因が単独でうつ病を引き起こすこともありますが、複数の要因が重なった場合に発症リスクが高まる傾向にあります。

過眠とうつ病の関係

うつ病の初期の症状として「日中に眠くてぼーっとしてしまう」といった睡眠に関する症状を訴える方は多いです。

夜に十分な睡眠を取っているにもかかわらず、日中に強い眠気があるような場合に過眠と呼ばれます。

また、「寝つきが悪い」といった不眠の症状があることも多く、夜は心配事が頭から離れずに何時間も眠りにつけず、昼間は頭がぼーっとして、夜になるとまた頭がさえてきて眠れないという悪循環に陥ることもあります。

うつ病の場合、睡眠の問題だけでなく「気分の落ち込み」や「興味や喜びの喪失」といった気分に関する症状が同時に現れることが特徴です。

過眠に関連する他の疾患は?

日中の眠気や過眠に関係する他の代表的な疾患について見ていきましょう。

睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に呼吸が断続的に止まることで、質の良い睡眠が取れず、日中の強い眠気や集中力の低下を引き起こす疾患です。

睡眠中に呼吸が止まるため、脳がしっかりと休まらず、「寝ているつもりでも実際には睡眠が不十分」という状態になります。

主な特徴は以下の通りです。

  • 睡眠中にいびきをかいている
  • 肥満傾向のある人に多い
  • 睡眠中に呼吸が止まることがある
  • 朝起きた時に頭痛や疲労感がある
  • 日中に強い眠気や集中力の低下がある

ナルコレプシー

ナルコレプシーは、日中に突然耐え難い眠気に襲われ、眠りに落ちてしまう疾患で日常生活に大きな支障を来すことがある睡眠障害の一種です。脳内の睡眠制御に関連する神経伝達物質の異常が関係しているとされています。

主な特徴は以下の通りです。

  • 日中に突然耐え難い眠気が現れ、眠ってしまう
  • うれしい時や悲しい時といった感情の起伏が激しい時に筋肉の力が抜ける
  • 眠りに入る直前や目覚めた直後に幻覚を見ることがある
  • 金縛りになることがある

日中の眠気を引き起こす生活習慣

日中の強い眠気や過眠は、必ずしも疾患に起因するとは限りません。次は、日中の眠気を引き起こす生活習慣について解説します。

睡眠が足りていない

現代人の多くが直面している問題の一つが、慢性的な睡眠不足です。仕事や家事、趣味、さらには育児などに追われて、ついつい睡眠時間が削られてしまうことは少なくありません。

睡眠が不足すると、脳が十分に回復できず、翌日の日中に強い眠気や集中力の低下を引き起こします。「自分は大丈夫」と思っていても、知らず知らずのうちに「睡眠負債」として蓄積され、体に大きな負担をかけることになります。

寝る直前のスマートフォンの利用

寝る前のスマートフォンやパソコンの利用は、睡眠の質を低下させる原因となります。

画面から発せられるブルーライトには、睡眠をコントロールするホルモンである「メラトニン」の分泌を妨げる作用があるため、寝つきに問題が出ることがあります。

またSNSや動画視聴に夢中になり就寝時間が遅れることも、結果として日中の眠気を引き起こす原因となります。

寝酒をしている

寝る前にアルコールを摂取すると寝つきやすいと感じるかもしれませんが、実際には睡眠が浅くなっており、十分な休息が取れなくなってしまいます。その結果、翌日に強い眠気や倦怠感が残ることがあります。

また、コーヒー、エナジードリンク、緑茶といったカフェインを含む飲み物も、就寝前に摂取すると自律神経に影響を与えて質の良い睡眠を妨げてしまいます。

日中の眠気を改善させるために自分でできる対処法は?

眠気を改善するためのいくつかの具体的な方法をご紹介します。

寝だめは睡眠不足のサイン

寝だめをする、つまり休日にたくさん寝てしまう場合、平日に十分な睡眠が取れていない可能性が高いです。寝だめをしても睡眠負債は解消されませんし、睡眠のリズムも乱れてしまいます。日々の睡眠をしっかりと確保することが大切です。

まずは、平日の睡眠時間を見直してみましょう。休日の朝に起きるのがつらい場合は平日の夜にいつもより早めに寝てみたり、日中に30分未満の仮眠を取ることで、日々のリズムを整えることができます。

寝る前はスマートフォンの使用を控える

寝る30分前にはスマホやパソコンの使用を控え、ブルーライトの影響を減らす工夫をしましょう。画面の色味を調整できるブルーライトカット機能や、ブルーライトカット眼鏡を活用するのも有効です。

寝る前にリラクゼーションを取り入れる

早い時間にベッドに入っても、心配事をしていたり緊張しているとなかなか身体を休めることができません。深い睡眠を得るためには、心身をリラックスさせることが効果的です。リラックスの方法には次のようなものがあります。

  • ストレッチ
  • 深呼吸、腹式呼吸などの呼吸法
  • ゆったりとした音楽を流す
  • 部屋の照明を暗くする

アルコールやカフェインを控える

就寝の3〜4時間前からはアルコールを控えるようにしましょう。

また、カフェインが含まれる飲み物も覚醒作用があるため夕方以降は控える方が睡眠の質が上がりやすくなります。寝る前には白湯やハーブティーなどリラックスできる飲み物を選ぶと良いでしょう。

寝ても寝ても眠い「過眠」が続く場合は専門家に相談しよう

寝ても寝ても眠い「過眠」の原因として、うつ病や睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシー、生活習慣の問題が考えられます。日中の眠気を改善するためには、まず原因を特定し、それに応じた対策を講じることが重要です。

それでも改善がみられず過眠が続く方や、自分では判断が難しいと感じる方は、専門家に相談することで適切な対処法を知ることができます。

医療機関で医師の診療を受ける際には、内科や耳鼻科、心療内科、精神科の他、睡眠に関する幅広い症状に対応できる睡眠外来などが選択肢となります。

また、「いきなり病院やクリニックを受診するのは、なんとなくハードルが高い」と感じる方にはオンライン相談サービスも相談先の候補になります。

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<参考文献>
・高橋三郎・大野 裕(監訳)(2014).DSM-5:精神疾患の診断・統計マニュアル 医学書院
・厚生労働省. (2023). 健康づくりのための睡眠ガイド2023.
・Dauvilliers, Y. (2006). Differential diagnosis in hypersomnia. Current neurology and neuroscience reports, 6(2), 156-162.
・Dewi, R. K., Efendi, F., Has, E. M. M., & Gunawan, J. (2021). Adolescents’ smartphone use at night, sleep disturbance and depressive symptoms. International journal of adolescent medicine and health, 33(2), 20180095.
・Dauvilliers, Y., Lopez, R., Ohayon, M., & Bayard, S. (2013). Hypersomnia and depressive symptoms: methodological and clinical aspects. BMC medicine, 11, 1-9.

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