自意識過剰を治す方法はある?原因や特徴、対処方法を専門家が解説

「周りの目が気になって仕方がない」「人の視線が怖い」「自分のことばかり考えてしまう」——。そんな自意識過剰な状態に悩んでいませんか?電車の中で、カフェで、職場で、常に誰かに見られているような気がして落ち着かない。何気ない会話の後で「あんなことを言わなければよかった」と後悔する、などといったことです。もしかしたら、あなたもそんな経験があるかもしれません。

そこでこの記事では、自意識過剰の特徴や原因、そして改善方法について詳しく解説していきます。

執筆者

梅田ミズキさん

認定心理士、サービス介助士。大学で臨床心理学・産業組織心理学・発達心理学などを学び、卒業後は公的施設にて精神疾患の方のケアや介助業務、ご家族の相談対応などに従事しながら、ホームページ掲載用のコラムやミニ新聞を執筆。現在はフリーライターとして独立し、くらしにまつわるエッセイの執筆、臨床心理・発達支援・療育関連のコンテンツ制作および書籍編集に携わりながら、心理カウンセラーも務めている。趣味は読書、映画鑑賞、気まぐれで向かうプチ旅行。

目次

自意識過剰とはどういう状態か

自分自身を意識することを、心理学では「自己意識(または自意識)」と呼びます。自己意識は「公的自己意識」と「私的自己意識」に分けられるのが特徴です。

公的自己意識

周囲からどう見られているかを気にする意識

私的自己意識

自分の感情や行動、価値観などに注目する意識

一般的に自意識過剰とは、公的自己意識が高すぎる状態です。適度な公的自己意識は、良好な人間関係を築くうえで重要な要素といえます。

しかし、公的自己意識が高すぎる場合は「拒否されたくない」という気持ちが大きくなりすぎて、周りの目を気にしがちです。そのため、自分の気持ちや意見をなかなか出せず、人間関係の問題を抱えやすくなると考えられています。

自意識過剰には、具体的に以下のような特徴が挙げられます。

周囲の目や気持ちを過剰に気にしてしまう

前述したように、自意識過剰は自分の言動や外見、他人からどう思われているかということに強い関心を持っている状態です。

例えば、電車の中で携帯を見ているときも「誰かに画面を覗き込まれているのではないか」と気になったり「歩く姿を周りの人に見られている」と感じたりします。レストランで食事をする際も「箸の持ち方は正しいだろうか」「食べ方が汚くないだろうか」と気になってしまい、食事を純粋に楽しめません。

また、会議での発言も、言い方や表現を慎重に選びすぎるあまり本来伝えたかったことが十分に伝えられない場合があります。

自意識が日常生活に支障をきたす

適度な自意識は他人への配慮や自己改善のモチベーションにもなるため、社会生活を送るうえで必要不可欠です。

例えば「プレゼンテーションの前に入念な準備をする」「重要な会議の前に服装を整える」「友人との会話で相手の気持ちを考えながら話す」は健全な自意識の表れといえます。問題なのは、それが過度になり、日常生活に支障をきたす場合です。

前述した例でいえば「プレゼンテーションの準備に必要以上に時間をかけて睡眠時間を削ってしまう」「服装を決めるのに何時間もかかって予定に遅れる」「友人との会話で言葉を選びすぎて自然な会話ができない」など、これらは自意識過剰の状態といえるでしょう。

「自意識過剰」と「ナルシスト」は似ているようで異なる

自意識過剰とナルシストは、一見似ているように見えますが、本質的に異なります。ナルシストは自己愛が強く、自分に対して肯定的な評価を持つ傾向がありますが、自意識過剰な人は必ずしもそうではありません。むしろ、自分に対して否定的な評価を持ちやすく、他人の目を過度に気にする傾向があります。

ナルシストが「自分は特別な存在だ」「周囲の評価は当然のもの」と考えるのに対し、自意識過剰な人は「自分は周囲から否定的に見られているのではないか」「もっと完璧にしなければ」と考えがちです。また、ナルシストは他者への共感性が低い傾向にありますが、自意識過剰な人は他者への気遣いや配慮が強すぎるくらいの場合も多いといえます。

自意識過剰な人の特徴

自意識過剰と呼ばれる方には、主に以下のような特徴がみられます。

常に周囲の視線を気にする

電車の中での振る舞い、レストランでの食事の仕方、会議での発言など、あらゆる場面で他人の目を意識し過ぎてしまう…そんな経験はありませんか?自意識過剰の方は、自分に向けられている視線を過度に気にしてしまう傾向があります。

例えば、カフェで一人で過ごす際も「一人でいる姿を寂しそうだと思われないだろうか」と気になったり、歩いているときも「歩き方がおかしくないだろうか」と意識してしまったりします。

また、SNSへの投稿も慎重になりすぎて、ちょっとした日常の出来事も共有できなくなってしまいがちです。「この投稿は面白くないと思われるのではないか」「誤解を招く表現があるのではないか」と考えすぎて、結局投稿を諦めてしまう経験をしたことがある人も多いでしょう。

些細なことを深く考えすぎる

自意識過剰には、いわゆる「優しすぎる」一面があります。「あのときの一言で相手を怒らせてしまったのではないか」「この服装は場違いだったかもしれない」など、日常の些細な出来事を何度も振り返り、考え込んでしまう傾向のことです。友人との何気ない会話の後で自分の発言を一つ一つ思い返し「あの言い方は失礼だったかもしれない」「もっと違う返事をすべきだった」と後悔する場合もあります。

また、上司からの「お疲れさま」という一言に含まれる語調の微妙な違いを気にして「仕事の進め方に不満があるのではないか」と心配になるという方もいらっしゃいます。このような思考の悪循環は、本来必要のないストレスを生み出し、心身の疲労につながりやすいため、対策が必要です。

完璧主義的な傾向

自意識過剰の方は、自分の言動や行動に対して高い基準を設定し、少しでも失敗すると強く落ち込んでしまいます。例えば、仕事のプレゼンテーションで99%うまくいっても、残りの1%の小さなミスが気になって眠れなくなってしまったり、些細な文法の間違いを指摘されただけで、自分の英語力全般を否定的に捉えてしまったりなどです。

この完璧主義的な傾向が、さらなる自意識過剰を生む悪循環を生む場合も少なくありません。完璧を求めるがゆえに行動を躊躇し、そのことでさらに自己否定的になり、より一層完璧を求めるようになってしまうのです。

自意識過剰になる原因

成育環境や経験、そして現在の生活環境など、自意識過剰になる原因はさまざまです。「きっかけや環境はどんなものか」を考えるのは、自意識過剰の改善への第一歩となります。

幼少期の環境による影響

両親や教師から過度な期待をかけられた経験や、失敗を強く叱責された経験などが、自意識過剰の形成に影響を与える場合があります。「周りの子に恥じないようにしなさい」「あなたはもっとできるはず」といった言葉を頻繁に浴びせられた場合、常に他人との比較や評価を意識するようになりやすいのです。

また「人の目を気にしすぎる」親の影響で、子どもも同様の傾向を身につけてしまうケースも少なくありません。親が「近所の人が見ているわよ」「人に笑われるわよ」といった言葉を頻繁に使う環境で育つと、自然と他人の視線を過度に意識するようになってしまいます。

さらに、学校生活における成績至上主義的な環境も、自意識過剰の一因となる場合があります。常に成績や評価を気にする環境で育つと、自己価値を外部からの評価と結びつけて考えるクセがついてしまうのです。

トラウマ的な経験

人前で失敗して笑われた経験やいじめられた経験など、過去のネガティブな出来事が自意識過剰の引き金となる場合があります。例えば、学校の授業中に間違った答えを言ってクラスメイトに笑われた経験が、その後の発言に対する過度な慎重さにつながるケースも少なくありません。

また、容姿や言動を理由にいじめられた経験は、特に強い影響を及ぼします。このような経験から、自分の外見や行動に対して必要以上に敏感になり、些細な反応にも過剰に反応してしまいやすくなるのです。

社会的プレッシャー

現代社会では、SNSの普及により、常に自分を演出して他人からの評価にさらされる機会が増えています。反応の数やコメントの内容に一喜一憂してしまったり、投稿する内容を必要以上に吟味してしまったりすることも、自意識過剰を助長する要因です。

また、就職活動や職場での評価など、現代社会特有のプレッシャーが大きな影響を与えるのも珍しくありません。「自己PR」や「個性の表現」が求められる場面が増えるなかで自分をどう見せるべきか、過度に意識してしまう人も増えています。

自意識過剰であることによって起こる影響

自意識過剰は、以下のように日常生活にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。

社会生活への支障

過度な自意識で新しい出会いを避けたり必要以上に距離を置いたりすると、本来得られるはずの機会や人との関係性を失ってしまうことがあります。

例えば、職場での昼食時に「一緒に食事に行こう」と誘われても、「食事中の自分の姿を見られるのが怖い」という理由で断ってしまい、結果的に同僚との関係構築の機会を逃してしまうなどです。また、友人との飲み会でも「つまらない人だと思われるのではないか」という不安から自分の意見や冗談を言えずに、表面的な付き合いに終始してしまう場合があります。

メンタルヘルスへの影響

常に他人の目を気にし完璧を求め続けることは、大きな精神的ストレスとなり得ます。そのため、不安障害やうつ病などの精神疾患のリスクが高まる可能性も否定できません。具体的に現れやすいのは、以下のような症状です。

  • 慢性的な疲労感や睡眠障害
  • 食欲不振や過食
  • 頭痛や胃痛などの身体症状
  • 集中力の低下
  • 意欲の減退

特に、自意識過剰が長期間続くとこれらの症状が慢性化し、日常生活に深刻な影響を及ぼす場合があります。

キャリアや自己実現への影響

自意識過剰から、チャレンジを避けたり自分の意見を主張できなかったりすると、キャリアの発展や自己実現の機会を逃してしまうケースがあります。例えば、昇進の機会があっても「自分にはまだ早い」と躊躇してしまったり、興味のある部署への異動を申し出られない、起業のアイデアがあってもリスクを過度に恐れて実行に移せないといったケースなどです。

また、資格試験や新しいスキルの習得にも二の足を踏んでしまい、結果として自己成長の機会を逃してしまうこともあります。

あがり症や被害妄想など似た言葉との違いや関係性とは?

自意識過剰は「あがり症」や「被害妄想」と部分的に重なる部分がありますが、それぞれ異なる特徴を持つものです。

「あがり症」は、人前でのスピーチや発表など特定の状況下で手の震え、声の震え、冷や汗など身体的な反応が主な症状といえます。自意識過剰な人が必ずしもあがり症ではありませんが、自意識過剰がベースにあることで、あがり症の症状が強く出やすくなるのです。

「被害妄想」は、他者からの悪意を過度に感じ取る傾向を指します。例えば、「周りの人が自分の悪口を言っている」「同僚が自分を陥れようとしている」といった考えに取り付かれてしまう状態です。

自意識過剰は被害妄想の一因となる可能性がありますが、すべての自意識過剰な人が被害妄想を持つわけではありません。重要なのは、これらの状態が相互に影響し合う可能性があることです。

例えば、自意識過剰な傾向があることで人前での緊張(あがり症)が強くなり、その経験が更なる自意識過剰を生むという悪循環に陥る場合があります。また、自意識過剰から他者の視線を必要以上に気にすることで、些細な態度の変化を「自分に対する悪意」と解釈してしまい、被害妄想的な思考に発展するケースもあります。

自意識過剰と病気との関連はある?

自意識過剰そのものは、病気ではありません。しかし、以下のような精神疾患と関連する可能性があります。

社交不安障害(SAD)

社会的な場面で強い不安を感じ、他者からの評価を極端に恐れる症状です。自意識過剰が重症化すると、社交不安障害に発展するケースがあります。会議での発言を極度に恐れる、人混みに出られない、電話やビデオ通話に強い抵抗を感じるといった症状が現れた場合は、治療が必要な場合もあります。

自己愛性パーソナリティ障害(NPD)

自分の能力を過大評価し「自分は優れている・独特だ・特別だ」と考える症状です。「自分の利益のためなら他人を利用して犠牲にしても問題ない」と感じ、対人関係でトラブルに陥りやすい傾向があります。

しかし、他者からの批判や失敗に非常に敏感なゆえに、自尊心を守れない状況に陥ると引きこもりがちになることも少なくありません。

うつ病

自意識過剰は、継続的な自己否定や過度な自己評価の低下を伴います。そのストレスから、うつ病を発症するリスクが高まるのも特徴です。

特に完璧主義的な傾向が強い場合、理想と現実のギャップに苦しみ、自己否定的な思考に陥りやすくなります。

これらの症状が見られる場合は、早めに専門家に相談するのがおすすめです。適切な治療やカウンセリングを受ければ、症状の改善が期待できます。

自意識過剰を治すための方法や考え方

自意識過剰を治すためには、以下のような方法や考え方が有効です。

認知の歪みを修正する

自分の考え方のクセを認識し、より客観的な視点を持つことを心がけましょう。例えば「自分は常に注目されている」という思い込みを「他人は自分のことをそれほど気にしていない」という現実的な認識に修正していきます。

具体的な方法としては「思考記録」を付けることが効果的です。不安や心配を感じた場面で、以下のような項目を書き出してみましょう。

  • どんな状況で不安を感じたか
  • そのとき、どんな考えが浮かんだか
  • その考えは、どれくらい現実的か
  • 別の考え方はできないか

例えば「会議で発言したとき同僚が顔を見合わせた」という状況で「私の意見は的外れだと思われた」と考えたとします。この考えを「単に意見に興味を持ってもらえた可能性もある」「そもそも、そこまで注目されていなかったかもしれない」など別の視点で捉え直してみると、過度な不安を和らげられるのです。

他人と自分は違うことを認識する

「周りと同じでなければならない」という思考をやめてみましょう。全ての人から好かれる人はいません。人間は、一人ひとり個性が異なるのが自然です。

「完璧な人間はいない」「人と自分は違って当然」との考えを持てれば、他人の目を気にしたりネガティブな言葉を使ったりしていた自分を少しずつ変えていけます。

段階的にチャレンジの幅を広げて自信をつける

小さな目標から始めて徐々にチャレンジの範囲を広げて、自信をつけていきましょう。例えば、以下のようなステップが有効といえます。

第1段階:安全な環境での練習

  • 家族や親しい友人との会話で、普段言えないような意見を言ってみる
  • オンラインでの意見交換から始める

第2段階:やや困難な状況へのチャレンジ

  • 少人数の会議で積極的に発言する
  • カフェで一人で過ごす時間を作る

第3段階:より大きなチャレンジ

  • 大人数の前でプレゼンテーションを行う
  • 新しいグループやコミュニティに参加する

重要なのは、各段階で成功体験を積み重ねることです。一度に大きな変化を求めるのではなく、少しずつ 快適な範囲を広げていくアプローチが効果的でしょう。

専門家のサポートを受ける

カウンセリングや認知行動療法など専門家による支援を受けると、より効果的に自意識過剰の改善を図りやすくなります。特に以下のような場合は、専門家への相談を検討しましょう。

  • 日常生活に支障が出ている
  • 不安や落ち込みが長期間続いている
  • 一人では改善が難しいと感じる
  • 身体的な症状が出ている

専門家は、あなたの状況を客観的に評価し、個々の状況に合わせた効果的なアプローチを提案してくれます。また、必要に応じて薬物療法を組み合わせることで、より確実な改善が期待できるのも魅力です。

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自意識過剰から「自分らしさ」を取り戻すために

「自分が思い込んでいるほど、周りは自分のことを見ていない」「他人も自分と同じように不安や悩みを抱えている」そう考えると、少し気持ちが楽になりませんか?

とはいえ「周りの目をまったく気にしない」のは難しいものです。「周りをよく見ることができる」「他人の気持ちを敏感に感じ取ろうとする」など、あえて自分の長所にして活かす方法を考えてみましょう。

「日常生活に支障が出るほど人からの評価が気になる」「不安で人と話せない」そんな場合は、専門家への相談もご検討ください。一人で抱え込まず、周りの人や専門機関のサポートも活用しながら、自分のペースで前に進んでいきましょう。

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