憂鬱な気分から抜け出せないのは病気のサイン?気分の落ち込みが続く原因や対処方法

「憂鬱な気分が続いていてつらい」「気分の落ち込みで仕事や家事がままならない」「憂鬱な気分を解消したい」こうした悩みを抱えていませんか?

憂鬱な気分になると、やるべきことが手につかず、これまで楽しめていた趣味や好きなことへの意欲も失われてしまうことがあります。

そこでこの記事では、憂鬱な気分から抜け出せないときの原因や自分でできる対処法について解説しますので、ぜひ参考にしてください。

執筆者

臨床心理士・公認心理師

あらいひさきさん

大学院修了後、「心穏やかに過ごせるように」という信念のもと企業にて研究員としてメンタルヘルスサービスの開発に携わる。認知行動療法を専門とし、精神科での心理相談にも従事する。うつや不安、職場でのメンタルヘルスや発達障害、不登校など幅広いケースのカウンセリングを担当。

目次

憂鬱な気分から抜け出せない原因とは?

①未解決の問題を抱えているから

解決の目処が立たない問題を抱えていると、心が休まらず憂鬱な気分が続いてしまいます。

例えば抱えている仕事やキャリア、将来について悩みがあると、不安な気持ちやネガティブな思考が頭から離れなくなることも少なくありません。寝る前にそのような悩みについてぐるぐると考え、心がますます疲れて気持ちが落ち込むという悪循環になっていきます。

②ストレスがたまっているから

私たちの日常生活は、様々なストレスであふれています。仕事、家庭、人間関係のトラブルなどで、ストレスが積み重なると、憂鬱な気分が長引きやすいです。

③疲れがたまっているから

心と体は密接に関係しています。身体的な疲れがたまっていると、精神的にもストレスを感じやすくなり、気分の落ち込みが慢性化することがあります。

特に仕事が忙しい時期や、子どもの受験やトラブルなどがあるときは、つい自分の休息を後回しにしがちです。

心身の疲れが取れない状態が続くと、気分の落ち込みから抜け出せなくなってしまいます。

憂鬱な気分から抜け出すために自分でできる対処方法

憂鬱な気分を和らげ、負のスパイラルを抜け出すための具体的な対処方法を8つ紹介します。

①休息をとる

つい無理をして頑張りすぎていませんか?時には休みを取ってゆっくりと心身を休めることが大切です。
「ここで休んでしまったら後でもっと大変なことになる」と考えてしまうこともあるでしょう。しかし、休息をとることで思考がクリアになり仕事や家事の効率が上がるという効果も得られます。

どうしてもゆっくり休む時間がない場合は、数分の瞑想や15分程度の仮眠など、短い休息を意識的に取り入れるだけでも、気分をリセットさせることができます。

②質の良い睡眠をとる

睡眠の質を高めることも重要です。睡眠の質が低下していると、ネガティブな思考や反芻(同じことをぐるぐると考え続けること)が増え、憂鬱な気分や不安感が強くなってしまいます。
以下の質の良い睡眠をとるためのポイントを参考に、できそうなものから試してみてください。

質の良い睡眠をとるためのポイント
・寝る前にはカフェインやアルコールを控える
・スマートフォンやパソコンの使用は寝る1時間前までにする
・お風呂で湯船にゆっくりとつかって体を温める
・寝る前にストレッチをして心と体をリラックスモードに切り替える
・毎日できるだけ同じ時間に起きるようにする

③ストレスに対処する

憂鬱な気分が続く大きな原因はストレスです。効果的なストレスへの対処法は人それぞれ異なりますが、以下の方法を試して、自分に合った対処法を探していきましょう。

・好きな趣味に没頭して気分転換を図る
・信頼できる人に話を聴いてもらい、気持ちを整理する
・腹式呼吸をしてリラックスする
・気になることを紙に書き出して頭をスッキリさせる

④マインドフルネス瞑想をする

マインドフルネス瞑想は「今この瞬間」に意識を集中させ、気持ちを落ち着ける方法です。簡単に行えるので、毎日の習慣に取り入れてみましょう。1日に数分行うだけでも気分が落ち着き、ストレスが軽減しやすくなります。

マインドフルネス瞑想の3ステップ

①静かに座り、リラックスできる姿勢をとります。椅子に座っても、床に座っても構いません。

②目を閉じて、自然な呼吸に意識を集中させます。
具体的には、息を吸うときと吐くときの感覚に意識を向けましょう。鼻の中を冷たい空気が通っていく感覚や、お腹が膨らんだりへこんだりする感覚に集中します。

③呼吸に意識を集中することを通して、「今この瞬間」にいる自分を感じます。雑念が浮かんでも、「雑念はダメ」と否定して無理に追い払おうとするのではなく、「こんな雑念が浮かんでいるな」とありのまま受け入れ、再び呼吸に意識を向けましょう。雑念が出るのは自然なことですので、あまり気にせずに継続していくことが大切です。

⑤筋弛緩法でリラックスする

筋弛緩法とは、特定の筋肉を緊張させてからリラックスさせることで、身体と心の緊張をとるリラクゼーション方法です。マインドフルネス瞑想と同様に、特別な道具は不要で、簡単に行えます。

筋弛緩法の2ステップ
①椅子に座るか、仰向けに横になります。
②深呼吸をしてリラックスします。こぶしをぎゅっと握り、5秒間その状態を保ったら、ストンと一気に力を抜きます。筋肉から力が抜けリラックスする感覚を味わいましょう。
こぶし以外の腕、肩、顔、足でもやってみましょう。

⑥体を動かす

軽いジョギングやヨガやストレッチなどで体を動かすことも有効です。運動している間は体の動きに注意が向けられるため、不安や落ち込みから一時的に離れることができ、精神的にもリフレッシュすることができます。

⑦栄養を取る

忙しくて食事がおろそかになっていませんか?栄養バランスの良い食事も心の健康には大切です。気分が落ち込んでいるときは食欲がなくなってしまうこともありますので、そのような場合は野菜スープやゼリーなど、食べやすいものを少しずつ取り入れてみましょう。

⑧問題解決を考える

憂鬱な気分を発生させている原因が解決できそうな問題であれば、その解決に向けて行動することも方法の一つです。

例えば、仕事に関する不安がある場合は上司や同僚に相談したり、職場で導入される新しいツールの使い方が心配な場合は詳しい人にサポートを頼んだり、キャリアに関する悩みがある場合には副業などの新しい選択肢を考えたり、健康に不安がある場合は病院の受診や生活習慣の改善をするなど、少しずつ解決に向けて動くことで気分が軽くなります。

すぐに解決できることの方が少ないかもしれませんが、解決へ向けて前進したということが感じられるだけでも、精神的にプラスの効果があります。

憂鬱な気分が続くときに出ることある、注意が必要な症状とは?

①不眠

憂鬱な気分が続いているときによく見られるのが「眠れない」という症状です。

不眠の症状にもいくつか種類があり、横になってもなかなか寝付くことができないことを入眠困難、途中で目が覚めてしまうことを中途覚醒、朝早くに目が覚めてしまうことを早朝覚醒と呼びます。

質の良い睡眠は心身の回復に欠かせませんが、不眠が続くとその回復力が低下し、さらに気分が落ち込む悪循環に陥りやすくなります。

②過眠

不眠と相反するように見えますが、「寝すぎる」症状も憂鬱な気分が続いているときによく見られる症状です。

過眠の場合、たくさん眠っても日中に眠気を感じやすかったり、朝起きられないといったことがよく見られます。また、たくさん眠っている割には熟睡した感覚がなく睡眠の質が低いという方も多いです。

③希死念慮

「消えてしまいたい」「死んでしまいたい」という考えが浮かぶことを希死念慮と呼びます。強いストレスや心身の負担がかかっているサインですので、無理をせずすぐに医療機関を受診するようにしましょう。

④身体症状

精神的な症状だけでなく、身体症状にも注意が必要です。憂鬱な気分が続いているときによく報告される身体症状には以下のようなものがあります。このような身体症状が気分の落ち込みと同時に生じている場合は、休息が必要なサインかもしれません。

・頭痛や腹痛
・食欲の低下や増進
・動悸や頻脈
・のどが詰まる感覚や息苦しさ

憂鬱な気分から抜け出せないことに関連する病気とは?

憂鬱な気分が長期間続き、自分で改善しようとしてもなかなか抜け出せない場合、以下のような病気が隠れている可能性があります。

①うつ病

うつ病は、憂鬱な気分や無気力感が持続的に生じることが特徴です。普段の活動に興味が持てなくなり、集中力や意欲が低下してしまいます。憂鬱な気分や無気力感に加えて次のような症状が2週間以上続く場合、うつ病が疑われます。

・食欲や体重の変化
・不眠または過眠
・疲労感、またはエネルギーの低下
・自分を責める思いや無価値感
・希死念慮

治療としては、心理療法や薬物療法が用いられます。早期の治療によって症状を改善することが可能ですので、自己判断は避け、専門家に相談することが大切です。

②適応障害

適応障害は、仕事や人間関係の特定のストレスが原因となり、憂鬱な気分や不安が生じ、日常生活に支障をきたす疾患です。ストレス要因が続いている間に悪化し、ストレス要因がある環境から離れると症状が改善されるという特徴があります。

ストレスの原因が発生してから数か月で症状があらわれ、不安感や気分の落ち込み、無気力などがあります。

うつ病と同様に、ストレス要因への対処法を学ぶカウンセリングなどの心理療法や薬物療法が効果的です。

③更年期障害

更年期障害とは、特に女性の閉経前後におけるホルモンバランスの急激な変化によって、身体的および精神的なさまざまな症状が現れる状態を指します。女性に多く見られますが、男性にも起こることがあります。

主な症状には、以下のようなものがあります。

・のぼせや発汗(ホットフラッシュ)
・動悸や息切れ
・気分の落ち込みやイライラ
・疲れやすい

治療法としてはホルモン補充療法や漢方薬が効果的とされています。また、カウンセリングを通じて気持ちを整えることも症状の緩和に役立ちます。

④双極性障害

双極性障害は、憂鬱な気分が続く「うつ状態」と気分が高まり活動的になる「躁状態」が交互にあらわれる疾患です。このように極端な2つの状態を繰り返すことから、双極性障害と呼ばれます。

躁状態の主な特徴は以下の通りです。

・あまり寝なくても元気に活動できる
・話が止まらない
・アイデアが次から次にわいてきて実行が追い付かない
・なんでもできるような自信がわいてくる
・ギャンブルや買い物に散財する

また、双極性障害には次の2つのタイプがあり、それぞれ躁状態のときの様子が異なります。

双極Ⅰ型障害

躁状態が激しくあらわれ、日常生活や仕事に大きな影響を及ぼします。夜も眠らずに動き回る、話が止まらない、大きな声で話し遮られると怒るなどの突飛な行動を引き起こすことがあります。

双極Ⅱ型障害

躁状態は軽躁状態と呼ばれる比較的軽いもので、日常生活や仕事に大きな支障をきたしません。周囲から見ると普段とは違うことがわかっても、本人は自身の状態を「とても調子が良い」「これが本来の自分だ」ととらえ、見過ごされがちです。

このように憂鬱な気分が続く時期と、気分が良くなって活動的になる時期が交互にやってくるような場合は双極性障害である可能性があります。治療法としては、薬物療法や心理療法が有効です。

⑤統合失調症

統合失調症は、現実と自分の考えの区別が難しくなり、考えや感情、行動にさまざまな変化が生じる精神疾患です。症状は大きく以下の陽性症状、陰性症状、認知機能の障害に分かれます。

陽性症状

実際にはないものが「ある」と感じる状態です。たとえば、監視されていると感じる被害妄想や、存在しない声が聞こえる幻聴などがあります。

陰性症状

意欲が低下し、日常生活への興味が薄れる状態です。気分が落ち込んで感情表現が乏しくなり、趣味や人付き合いを避けるようになることもあります。

認知機能の障害

考えがまとまりにくくなる症状です。会話に脈絡がなくなり、集中力や計画力も低下し、仕事や生活に影響が出る場合もあります。

憂鬱な気分が続く場合、統合失調症の初期症状と見分けがつきにくくなります。現実との境界がぼやけたり、幻聴などがみられる場合は、統合失調症の可能性があります。

治療法としては、薬物療法や心理療法、リハビリテーションを組み合わせることで症状を安定させていくことができます。

憂鬱な気分が続くとき、専門家への相談も有効な対処法。その理由とは?

憂鬱な気分が続くと、心身への負担が増していき、日常生活にも悪影響を及ぼします。このような場合には、専門家への相談も有効な対処法です。理由は以下の2つです。

①自己診断の危険性と早期発見・早期治療の重要性

先述のように、憂鬱な気分の背景には疾患が潜んでいることがあります。専門的な診断や治療を受けずに放置すると、症状が悪化したり慢性化するリスクが高まります。特にうつ病や双極性障害といった精神疾患では、早期発見と早期治療が症状の改善において重要です。

憂鬱な気分に関連して頭痛や腹痛などの身体的な不調が出てくることも多いため、このような症状が重くなる前に専門家に相談しましょう。専門的なアセスメントのもとで、薬物療法などの治療も選択肢に入れることで、早期に症状のコントロールができるようになります。

②カウンセリングは心強い味方

カウンセリングは、憂鬱な気分に悩む人にとって大きな心の支えとなります。専門家である臨床心理士、公認心理師などのカウンセラーが親身に話を聴き、個別の対処法を提案してくれます。カウンセリングの主な効果は以下の通りです。

悩みや感情の整理

話を聴いてもらうことで、自分の気持ちを整理し、心が軽くなる効果が期待できます。

自己理解の促進

自分を深く理解することで、気分のアップダウンに振り回されないようになり、安定した気持ちを保ちやすくなります。

自己管理能力の向上

リラックス法の実施などによって、日々の不安や気分の落ち込みに対処する力が高まり、心の健康維持に役立ちます。

忙しくて病院を受診したりカウンセリングを受けに行く時間がとれない場合はオンライン相談サービスも選択肢の一つです。

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まとめ

この記事では、憂鬱な気分から抜け出せない原因やその対処法について解説しました。

憂鬱な気分から抜け出せない原因としては以下の3つが挙げられます。

①未解決の問題を抱えているから
②ストレスがたまっているから
③疲れがたまっているから

憂鬱な気分から抜け出すために自分でできる対処法として、以下の8つを試してみましょう。

①休息をとる
②質の良い睡眠をとる
③ストレスに対処する
④マインドフルネス瞑想をする
⑤筋弛緩法でリラックスする
⑥体を動かす
⑦栄養を取る
⑧問題解決を考える

憂鬱な気分が続くときに出ることがある症状として、以下の4つに注意が必要です。

①不眠
②過眠
③希死念慮
④身体症状

憂鬱な気分から抜け出せないことに関連する病気としては、以下の3つがあります。

①うつ病
②適応障害
③更年期障害
④双極性障害
⑤統合失調症

憂鬱な気分が続くときは、以下の2つの理由から専門家への相談も有効な対処法です。

①自己診断の危険性と早期発見・早期治療の重要性
②カウンセリングは心強い味方

憂鬱な気分は誰にでも生じるものですが、それが長く続く場合は病気の可能性もあります。また気分の落ち込みは意欲や集中力の低下を引き起こすため仕事や家事など日常生活への影響も大きいものです。ここで紹介した内容を参考に、憂鬱な気分を解消していきましょう。

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【参考文献】
・高橋三郎・大野 裕(監訳)(2014).DSM-5:精神疾患の診断・統計マニュアル 医学書院
・厚生労働省. (2023). 健康づくりのための睡眠ガイド2023.

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