起こってもいないことに不安になる…原因や対処法は?病気との関連性も解説

私たちの人生には、さまざまな不安がつきものです。しかし、なかには「起こってもいないこと」に対して強い不安を感じてしまう方もいらっしゃいます。

「起こるかどうかわからないことなのに、なぜ不安になってしまうんだろう」「自分は何かの病気?どのように対処すればいいの?」

そう悩んでいる方に向けて、この記事では、起こってもいないことに不安を感じてしまう理由や心理、効果的な対処法、関連する可能性のある病気や障害までを詳しく解説していきます。不安に悩む方々の心に寄り添いながら、前向きに生活するためのヒントをぜひ探してみてください。

執筆者

梅田ミズキさん

認定心理士、サービス介助士。大学で臨床心理学・産業組織心理学・発達心理学などを学び、卒業後は公的施設にて精神疾患の方のケアや介助業務、ご家族の相談対応などに従事しながら、ホームページ掲載用のコラムやミニ新聞を執筆。現在はフリーライターとして独立し、くらしにまつわるエッセイの執筆、臨床心理・発達支援・療育関連のコンテンツ制作および書籍編集に携わりながら、心理カウンセラーも務めている。趣味は読書、映画鑑賞、気まぐれで向かうプチ旅行。

目次

起こってもいないことが不安になる理由や心理とは?

起こってもいないことに不安を感じるのは、実は多くの人が経験する自然な心理反応です。ここでは、その背景にある心理メカニズムについて探っていきます。

生存本能からくる防衛反応

私たちの脳には、危険から身を守るための「生存本能」が備わっています。これは、潜在的な脅威に対して敏感に反応し、最悪の事態を想定することで私たちを守ろうとする本能です。つまり、起こっていないことに不安を感じるのは、ある意味で自己防衛の一種といえます。

過去の経験やトラウマの影響

「人間関係でトラブルがあった」「大きなミスをしたことがある」など、過去に辛い経験やトラウマを持つ人は、似たような状況や関連するできごとに対して強い不安を感じやすくなります。これは、脳が過去の痛みや恐怖を再体験しないように警戒しているためです。

この記事を読みながら「どうしても“またあのときと同じことが起きてしまったらどうしよう”と考えてしまう…」と心配な方もいらっしゃるでしょう。しかし、私たちの心配事が実際に起きる確率は13%、そのうちの80%は自力で解決できるものだということが、国際認知療法学会会長のロバート・L・リーヒ博士の研究で明らかになっています。つまり、私たちの考えている以上に、心配事は実際には起きないのです。

完璧主義や心配性などの性格

物事を完璧にコントロールしたいという欲求が強い人は、予測不可能な未来に対して特に不安を感じやすい傾向があります。「しっかりと事前に準備しておきたい」「すべて自分で管理してできるだけ間違えないようにしたい」との思いが、起こっていないことへの過度な心配につながりやすいのです。

メディアや周囲の影響

ニュースやSNSなどのメディアは、しばしばネガティブな情報や極端な事例を取り上げがちです。こうした情報に常にさらされることで、私たちの不安レベルが高まってしまうケースも少なくありません。また、周囲の人々の不安や心配の声に影響されることもあります。

起こってもいないことが不安になるときの対処法

起こってもいないことへの不安は、適切な対処法を身につけることでその影響を軽減し、より穏やかな心で過ごせます。ここでは、効果的な対処法をいくつか紹介します。

マインドフルネスの実践

マインドフルネスは、「いまこの瞬間」に意識を集中させる練習のことです。先入観や過去の経験にとらわれず、五感に意識を向けて自分の思考や感情を客観的に観察することで、未来への不安から注意をそらし「あれが起きたらどうしよう」というストレスを軽減する効果が期待できます。

また、頭に浮かんだことをノートやアプリへありのままに書き出す「ジャーナリング」もおすすめです。ジャーナリングは、その手法から「書く瞑想」とも呼ばれています。

リラックス法の活用

常に気持ちが張り詰めた状態では、不安をより一層感じやすくなります。そのため、リラックス法を生活に取り入れて心身的な緊張を和らげ、心の落ち着きを取り戻すのもいいでしょう。

不安を軽減するために活用できるリラックス法

  • 深呼吸
  • ヨガ
  • 漸進的筋弛緩法
  • 好きな香りや音楽を取り入れる

※漸進的筋弛緩法とは、体の各部位の筋肉に力を込めて意識的に緊張させ、その後ゆるめることを繰り返すリラックス法です。体の力が抜け、心身の緊張を解きほぐす効果が期待できます。

健康的な生活習慣の維持

十分な睡眠、バランスの取れた食事、適度な運動は、心身の健康維持に欠かせません。これらの基本的な生活習慣を整えることで、不安に対する耐性が高まり、より落ち着いた状態を保ちやすくなります。

とはいえ、いまの生活を一気に改善するのは難しい方もいるはず。「睡眠時間は必ず〇時間確保する」「1日〇分は絶対に運動をする」などと構えすぎず、「軽い運動を取り入れてみよう」「添加物の多い食材を減らしてみよう」など、小さなことから取り組んでみるといいでしょう。

社会的つながりの強化

信頼できる友人や家族と不安について話し合うことで、新しい視点を得たり、サポートを受けたりできる場合があります。

孤独は、不安を増幅させがちです。社会的なつながりを大切にして、普段口にできない不安や悩みを吐き出せる場所を作っておきましょう。

「自分の気持ちを声に出すのはなかなか難しいし、いざというとき忘れてしまう…」そんな方は、打ち明けたり共感して欲しかったりする項目をあらかじめメモに残しておくのもおすすめです。

趣味や創作活動への没頭

「好きなことに没頭していたら、つい時間が経つのを忘れてしまった…!」そのような経験はありませんか?趣味や創作活動に熱中すると、不安な思考から注意をそらしやすくなります。

また、達成感や充実感を得ることで全体的な幸福度が上がり、不安に対する耐性が高まりやすいのも魅力です。

起こってもいないことが不安になる症状が出る病気や障害はある?

起こってもいないことに対する強い不安は、精神疾患や障害の症状として現れるケースがあります。ここでは、強い不安症状が見られる可能性のある病気や障害について解説します。

ただし、自己診断は避け、心配な症状がある場合は必ず専門医にご相談ください。

全般性不安障害(GAD)

全般性不安障害は、日常生活のさまざまな側面について過度の心配や不安が半年以上続く症状です。起こっていないことに対しても強い不安を感じ、その不安のコントロールが難しくなります。

身体症状として、イライラ、睡眠不足、疲労感、集中力の低下なども現れるケースも珍しくありません。治療には、主に薬物療法と認知行動療法が用いられます。

パニック障害

パニック障害は、突然の激しい不安発作(パニック発作)を特徴とする症状です。パニック発作が起こることへの不安や、発作が起こった際の結果に対する過度の心配が、起こっていないことへの不安として現れる場合があります。

治療には、主に薬物療法と認知行動療法が用いられます。

社交不安障害

社交不安障害は、他人から注目される状況などで強い恐怖や不安を感じる症状です。将来の社会的状況に対する過度の心配や、起こっていない失敗への不安が特徴といえます。

治療には、主に薬物療法と認知行動療法が用いられます。

強迫性障害(OCD)

強迫性障害は、望まない侵入思考(強迫観念)と、それを打ち消すための行動(強迫行為)が繰り返し見られる症状です。起こっていない悪いできごとへの過度の心配や、それを防ぐための儀式的な行動が見られる場合があります。

治療には、主に薬物療法と認知行動療法が用いられます。

不安が大きいときの相談先

起こってもいないことへの不安が大きくなり、日常生活に支障をきたすようになった場合、専門家への相談が重要です。ここでは、不安に悩む方々が利用できるさまざまな相談先をご紹介します。

精神科・心療内科

精神科や心療内科の医師は、不安障害をはじめとする精神疾患の診断と治療を専門としています。必要に応じて薬物療法や精神療法(カウンセリング)を提供し、症状の改善を図れる場所です。かかりつけ医に相談して紹介状を書いてもらうか、直接予約を取れます。

臨床心理士・公認心理師

臨床心理士や公認心理師は、カウンセリングや心理療法を通じて、不安の軽減や対処法を得るサポートをしてくれます。認知行動療法など、エビデンスに基づいた治療法を得られるのが魅力です。医療機関や心理相談室などで相談できます。

電話相談サービスの活用

現在では、さまざまな団体が心の悩みに関する電話相談サービスを提供しています。匿名で相談できるうえ専門的なアドバイスを受けやすいため、自分では気づけなかった視点が見つかるかもしれません。

▼ 電話相談サービスの一例

オンラインカウンセリングの活用

近年、インターネットを通じたオンラインカウンセリングサービスも増えています。ビデオ通話やチャット、メールなどを介して自宅から気軽に専門家に相談できるのが魅力です。

ただし、利用する際は信頼できるサービスを選ぶようにしましょう。臨床心理士や公認心理士などの資格を持っているか、どの分野のカウンセリングを得意としているか、自分のライフスタイルや性格に合った形式か、サポート体制は整っているかなど自分の信頼できるサービスを選ぶことは、安心してカウンセリングを受けるうえで非常に大切です。

当サイト「悩ミカタ」でも、ミドル世代(40代50代)の悩みや不安・ストレスについて各分野の専門家/カウンセラーに相談できるオンラインカウンセリングサービス「悩ミカタ相談室」を展開しています。つらくて不安な気持ち、1人で抱え込まずにまずはお気軽に相談してみませんか?

40代50代のお悩み” は専門家に相談しよう「悩ミカタ相談室」

職場の相談窓口の活用

多くの企業では、従業員のメンタルヘルスケアの一環として、社内または外部の相談窓口を設置しています。仕事に関連する不安や悩みがある場合は、これらの窓口を利用してみるのも一つです。

セルフヘルプグループの活用

同じような不安や悩みを持つ人々が集まり、互いの経験を共有し支え合うセルフヘルプグループも、有効な相談先といえます。専門家の指導のもと、グループセッションを通じて不安への対処法を学んだり、孤独感を軽減したりできるのが特徴です。

専門家からのアドバイス

まず大切なのは、自分が感じている不安を否定せず、それを認識し受け入れることです。不安は人間の自然な感情の一つで、完全になくすことは難しいもの。むしろ、不安と共存しながら、それをコントロールする方法を学ぶのが重要といえます。

「白か黒か」「すべてか無か」といった極端な思考パターンは、不安を増幅させがちです。代わりに、グレーゾーンや中間的な可能性を考慮に入れる習慣をつけましょう。これにより、より柔軟で現実的な思考ができるようになります。

また、先ほどご紹介した対処法は、一朝一夕で効果が現れるものではありません。症状にもそれぞれ専門的な診断基準があり、程度や持続期間、日常生活への影響などを総合的に評価して診断されます。継続的に実践し、自分に合った対処法を見つけていくのが大切です。

なお、不安が非常に強く日常生活に支障をきたす場合は、専門家のサポートを受けることをおすすめします。自分で勝手に判断したり一人で抱え込んだりする必要はありません。

SNSシェア
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!