「現実逃避したい」心理的な意味や効果は?逃げたいときの対処方法を解説

このコラムでは、現実逃避がどのような状況で生じやすいのか、そのメリットやデメリットを紹介しつつ、健康的な現実逃避の方法、避けるべき不健全な逃避行動、そして専門家の助けを得ることの重要性について解説していきます。現実逃避について正しい知識を持ち、バランスよく活用することは、より良い日常生活の基盤となることと思います。それでは、現実逃避についてじっくり考察していきましょう。

執筆者

藤原美保さん

公認心理師、介護福祉士、保育士、健康運動指導士の資格保有、療育支援に携わること20年以上。

放課後等デイサービスを運営する中で発達障害児童、そのご家族の悩みも含め相談やカウンセリング対応を10年以上行う。自己肯定感が低い、親から虐待を受けた過去に悩む方からの相談なども多数対応。

これまでに2冊の本を執筆、現在も出版に向け本の執筆をつづけている中、子育てのポータルサイトにて発達障害の子の子育てコラムを連載中。

目次

現実逃避の定義とは

現実逃避とは、私たちが日常生活の中で無意識のうちに経験する心理的な反応の一つです。ストレスや不安、あるいはプレッシャーに直面すると、誰しも時折、現実から目を背け、別のことに意識を向けたくなる衝動に駆られます。例えば、仕事の締め切りが迫っているにもかかわらず、ネットサーフィンや趣味に没頭してしまうといった行動は、典型的な現実逃避の例です。
しかし、現実逃避は単に「悪いもの」ではありません。やらなくてはいけない何かから一時的に逃れることが、私たちの心のバランスを保つための重要な手段であることも事実です。
実際、現実逃避は多くのメリットを持ち、適切に活用することで、心の健康を守り、ストレス管理や問題解決の力を高めることができるのです。

現実逃避したくなる主な場面とは?

現実逃避は特定の状況下で起こりやすいとされています。その代表的な場面をいくつか紹介し、それぞれの背景にある心理を掘り下げてみましょう。

ストレスフルな状況に直面したとき

ストレスや不安に直面すると、人はその場から逃げたいと感じやすくなります。この心理的な反応は、私たちが自分を守ろうとする自然な防衛メカニズムの一部です。例えば、仕事で大きなプロジェクトを抱えているとき、プレッシャーを感じすぎて集中できなくなり、あえて関係のない作業や趣味に没頭してしまうことがありますが、これも現実逃避の一つの形です。
こうした状況では、脳が負担を軽減するために「一時的な回避」を選択することが多く、これが結果的に私たちの心を守っています。しかし、これは短期的に利用することがおすすめで、長期的に続くと、問題の解決が遅れたり、更に問題が大きくなるリスクもあります。

自己評価が低下しそうな場面

自己評価が下がる恐れがある場合、人は不安を感じ、その状況から逃げたくなることがあります。たとえば、重要なプレゼンテーションが迫っているにもかかわらず、その準備に自信が持てないと感じたとき、仕事を休んでしまったり、他のことに気を紛らわせる行動に出ることがあります。
自己評価が低下する恐怖は、私たちの心理に深く根付いています。人は社会的な存在であり、他者からの評価を気にせずにはいられません。このため、自己評価が低下しそうな場面に直面すると、無意識にそれを避けたいという感情が働きます。

適応が困難な状況に直面したとき

環境や状況にうまく適応できないと感じると、現実から逃げるための行動が現れます。例えば、引っ越しや転職、新しい学校への進学といった大きな変化に直面したとき、環境の変化に対して不安を感じ、現実逃避を選択することがあります。こうした状況では、新しい環境に順応することへの恐怖やプレッシャーが、現実逃避を引き起こす要因となります。
このような適応困難な状況では、現実逃避が一時的に心の安定を保つ手段となることがありますが、いずれは問題に向き合う必要があるでしょう。

自分の責任問題に向き合いたくないとき

自分の選択の結果、思いもよらぬ問題に突き当たる場合があります。その問題があまりにも大きく感じられると、現実から目を背けることで心の平穏を保とうとします。例えば受け入れがたい現実に直面したとき、その現実を否定するかのように別の活動に逃げ込むことがあります。これは、現実に対する無意識的な防御反応であり、感情的な痛みやストレスから自分を守るための一時的な逃避手段です。
根本的な問題解決にはなりませんが、現実逃避は一時的には有効かもしれません。しかし最終的には自分の選択による社会的な責任逃れは出来ません。

現実逃避のメリットとは?

現実逃避はネガティブに捉えられがちですが、実際には適切に活用すれば多くのメリットがあります。現実逃避には心をリフレッシュさせ、創造的な思考を促進し、問題解決に役立つなどの効果があることが、心理学的な研究でも示されています。

ストレス軽減と気分改善

現実逃避は、ストレスフルな状況から一時的に距離を置くことを可能にし、心理的な負担を軽減する手助けとなります。例えば、忙しい仕事の合間に映画を観たり、趣味に没頭することで、一時的に心をリフレッシュさせ、気分を改善させる効果があります。短期的な現実逃避は、感情の調整に役立ち、再び問題に向き合う力を取り戻すための重要なステップです。

問題解決能力の向上

現実逃避は、直接問題に取り組むのではなく、問題から少し離れることで新たな視点を得るチャンスを与えます。これは「インキュベーション効果」と呼ばれ、問題に対してあまりに深く関与しすぎると視野が狭くなりがちなところを、一時的に離れることで新しい解決策が見つかる可能性が高まるという現象です。実際、短期間の休息を挟むことで、気持ちが切り替わり、仕事の効率が上がり、創造性が発揮されるケースもあります。

自己制御の回復

現実逃避は、自己制御能力を回復させる効果もあります。日々のタスクやストレスに耐え続けると、心理的なエネルギーが枯渇し、次第に自己制御が効かなくなることがあります。ここで短期間の気晴らしや休息を取り入れることで、自己制御を回復させ、再び効率的に行動できるようになるのです。

レジリエンスの向上

適度な現実逃避は、レジリエンス、すなわちストレスに対する回復力を高める効果があるとも言われています。ストレスフルな状況から一時的に離れることで、心理的な負担が軽減され、その後の困難な状況に対処する力を養うことができます。長期的なストレスに対処するためのリフレッシュ手段として、現実逃避は有効です。

現実から逃げたい…そんな時の上手な現実逃避の方法とは?

現実逃避を上手に行うことで、日常のストレスを解消し、心身のバランスを整えることができます。ここでは、健康的かつ効果的な現実逃避の方法をいくつかご紹介します。

創造的な活動に没頭する

絵を描く、楽器を演奏する、文章を書くなどの創造的な活動は、現実逃避の良い手段です。自分の好きな安心できる活動は、自己表現の機会を提供し、同時にストレスを解消する手助けとなります。たとえば、日記を書いたり、自分の感情を詩や絵に表現することで、内面の葛藤を整理することができます。

マインドフルネス瞑想を実践する

マインドフルネス瞑想は、現実逃避の一種ではありますが、実は非常に健康的な逃避法です。瞑想を通じて、現在の瞬間に意識を集中させることで、過去や未来への不安を手放し、心の平穏を保つことができます。

自然の中で過ごす時間を持つ

自然の中で過ごすことは、心身のリフレッシュに非常に効果的です。森林浴やビーチでの散歩、あるいは山登りといった活動を通じて、心を落ち着けることができます。自然との触れ合いは、私たちの精神に安らぎをもたらします。

ボランティア活動に参加する

他者の状況を助ける手伝いをすることで、自分の問題から一時的に目をそらしつつ、新たな視点を得ることができる場合があります。ボランティア活動は、自己価値感を高め、社会とのつながりを感じることができるため、非常に健康的な現実逃避の一形態と言えるでしょう。

新しいスキルを学ぶ

新しいスキルを学ぶことは、現実逃避として有効です。たとえば、新しい言語を学んだり、料理の技術を磨いたりすることで、日常の問題から一時的に逃れつつ、自分自身を成長させることができます。学習を通じて得られる達成感は、現実に向き合うためのエネルギー源となります。

避けたほうがよい現実逃避の方法とは?

ただし、すべての現実逃避が良いわけではありません。過度な現実逃避は、問題の解決を先送りにしたり、状況を悪化させたりするリスクがあります。特に以下のような現実逃避は他の問題を発生させるリスクが高いため避けるべきです。

問題から目を背け続ける逃避

問題に向き合わず、ただ逃げ続けることは、問題の根本的な解決にはなりません。例えば、仕事のストレスから逃れるために無意味な買い物をしたり、余分な出費を繰り返す行動は、短期的には快楽を得られるかもしれませんが、最終的には経済的な問題やさらなるストレスを引き起こす可能性があります。

自分や他人を傷つける逃避

暴飲暴食やギャンブルといった行動は、一時的な快楽のために心身を傷つけるだけでなく、他人にも迷惑をかけるリスクがあります。このような逃避は、長期的には身体的・心理的な悪影響をもたらし、問題を深刻化させることが多いです。

現実逃避に依存する

現実逃避が習慣化すると、現実世界での生活が疎かになり、仕事や人間関係が破綻する恐れがあります。たとえば、オンラインゲームにのめり込み、現実の責任を放棄するようになると、生活全般が崩壊してしまうことがあります。現実逃避が日常生活の中心にならないよう、注意が必要です。

責任から逃避する

仕事や家庭での責任から逃れるために、現実逃避を繰り返すことも避けるべきです。短期的にはストレスを軽減するかもしれませんが、長期的には信頼を失い、さらに大きな問題を引き起こす可能性があります。たとえば、仕事などの約束をドタキャンしたり、家族の問題から目を背けることで、最終的には信頼が低下し、自分自身を追い詰める結果に繋がります。

現実に耐えきれないと感じたときの相談先

現実に耐えきれないと感じるときは、信頼できる友人や家族、あるいは専門家に相談することが重要です。以下に、いくつかの相談先を紹介します。

信頼できる友人や家族

まず、最も身近な存在である友人や家族に話を聞いてもらうことが有効です。信頼できる人に支えられることで、問題に対処するための力が湧いてくることも少なくありません。

職場の上司や人事部門

仕事の悩みが原因で現実逃避している場合、職場で信頼できる上司や人事部門に相談することが大切です。問題を共有することで、現実に向き合うためのサポートが得られることもあります。

カウンセラーや心理師

心理的なサポートを求める場合、専門のカウンセラーや心理師に相談することが有効です。あなたの感情や思考を整理し、問題解決のための具体的なアドバイスを提供してくれます。

精神科医やメンタルクリニック

精神的な問題が深刻化し、日常生活に支障をきたす場合は、精神科医やメンタルクリニックでの診療が必要です。うつ病や不安障害などの症状が見られる場合、医療的なサポートが重要となります。

ホットラインやオンライン相談

悩みを抱えているとき、ホットラインやオンラインでの相談も利用可能です。たとえば、悩ミカタ相談室では、経験豊富なカウンセラーや心理師が多く登録されており、簡単に予約を取ることができます。必要に応じて、専門家の助けを借りることをためらわないようにしましょう。

当サイト「悩ミカタ」でも、ミドル世代(40代50代)の悩みや不安・ストレスについて各分野の専門家/カウンセラーに相談できるオンラインカウンセリングサービス「悩ミカタ相談室」を展開しています。つらくて不安な気持ち、1人で抱え込まずにまずはお気軽に相談してみませんか?

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専門家に相談するメリットとは?

専門家に相談することで、現実に対処するための具体的なサポートを受けられます。ここでは、専門家に相談することの利点について説明します。

問題の整理と明確化

カウンセラーや心理師は、あなたの抱える問題を傾聴し、適切な質問を通じて整理します。これにより、漠然とした不安やストレスの原因が明確になり、具体的な対策が見えてくるでしょう。

新たな視点の提供

専門家は、第三者として客観的な視点を提供してくれます。これにより、自分では気づかなかった問題の側面や、新しい解決策が浮かび上がることがあります。

感情の表出と受容

カウンセリングの場では、安心して自分の感情を表現することができます。ネガティブな感情を言葉にすることで、感情が整理され、ストレスが軽減される効果があります。

具体的な対処法の習得

専門家は、あなたの状況に応じた具体的なストレス対処法を提案してくれます。たとえば、リラクゼーション技法やアサーティブなコミュニケーションスキルなど、実践的なスキルを学ぶことで、問題に対処する力が向上します。

サポート体制の構築

専門家との信頼関係は、心理的なサポート体制の一部となります。困難な状況に直面したとき、頼れる存在がいることが大きな安心感をもたらします。

自己理解の促進

カウンセリングを通じて自己理解が深まり、自分に合ったストレス対処法を見つけることができます。自己理解を深めることは、今後の人生においても重要な資源となるでしょう。

まとめ

現実逃避は、適切に活用することで心の健康を保ち、問題解決に向けたエネルギーを蓄えるための手段となります。有効な現実逃避には、適度なバランスと時間管理が必要です。一時的に逃避することで得られるリフレッシュ効果を現実の問題解決に活かし、長期的な目線でストレスと向き合う姿勢が大切です。

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