うつ病のパートナーと共倒れしないためには?家族のサポートに疲れたときの対処法や相談先

うつ病のパートナーや家族を支えることは、想像以上に大きな負担を伴うものです。支援方法に明確な指針がないため、家族は自己流で対応することが多く、不安や疲労を感じやすくなります。励ますべきか、そっと見守るべきかと迷いながら関わることで、支える側も精神的に疲弊しやすくなります。

そこで本記事では、うつ病の家族を支える中で生じる疲労の原因や注意したいポイントについて解説します。

執筆者

藤原美保さん

公認心理師、介護福祉士、保育士、健康運動指導士の資格保有、療育支援に携わること20年以上。

放課後等デイサービスを運営する中で発達障害児童、そのご家族の悩みも含め相談やカウンセリング対応を10年以上行う。自己肯定感が低い、親から虐待を受けた過去に悩む方からの相談なども多数対応。

これまでに、『発達障害の女の子のお母さんが、早めに知っておきたい「47のルール」』(エッセンシャル出版社)、『発達障害の女の子の「自立」のために親としてできること 』(PHP研究所)と2冊の本を執筆。現在も出版に向け本の執筆をつづけている中、子育てのポータルサイトにて発達障害の子の子育てコラムを連載中。

目次

うつ病について

うつ病は、気分の落ち込みや無気力、興味や喜びの減少などが長期間にわたって続く精神疾患です。うつ病の特徴として、気持ちが沈んで元気が出ない、日常の楽しみが感じられなくなるだけでなく、集中力の低下、疲れやすさ、不眠や過眠、食欲の変動など、さまざまな身体的・心理的な症状が見られます。

うつ病のパートナーや家族を持つ人が疲れてしまう原因とは?

うつ病のサポートは家族が自己流で対処する場合が多いです。例えば、「無理にでも外に連れ出した方がいいのか」「そっとしておいた方がいいのか」など、手探りでの対応が続くため「自分の対応が正しいのか」と不安になりやすいなどがあげられます。ここでは、うつ病のパートナーや家族を持つ人が感じやすい疲れの原因と、気を付けたいポイントについて解説します。

コミュニケーションの難しさ

うつ病の家族とのコミュニケーションは、思うように意思疎通が図れない場面が多く、支える側がどう関わるべきか悩む原因になります。

会話が成り立たない・意思疎通がうまくいかない

うつ病の方は、無気力や絶望感から他者と話すこと自体が負担になり、会話を避ける傾向があります。
気分が落ち込みがちで、自分の感情をうまく表現できないことがあり、家族は何を考えているのか分からないと思うことがあります。

ポジティブな言葉が逆効果になる

励ましの言葉は、プレッシャーに感じられ、相手が「自分はダメだ」とさらに思い込んでしまう場合があります。善意のつもりでかけた言葉でも、相手には重く受け止められてしまう場合があり、家族は「どう言葉をかけるべきか」悩む原因となります。

②生活の変化がもたらすストレス

うつ病の家族を支えることで、支える側も生活全般にわたる変化を経験し、それが慢性的なストレスとなって蓄積されやすくなります。

家事や生活の負担が増える

うつ病の家族は日常的な家事を行う気力が低下することが多く、掃除や洗濯、料理といった役割を他の家族が代わりに担わざるを得ない状況が増えます。これまで分担していた家事を引き受けることで、支える側の負担が増え、結果として自分の生活に余裕がなくなるため、慢性的な疲れやストレスを感じやすくなります。

通院や治療の付き添いが増える

うつ病の治療には薬物治療など定期的な通院が必要になることが多く、支える側がその都度、病院への付き添いをすることが求められます。このため、予定を調整しなければならず、自分の時間や仕事に影響が出ることも少なくないため、ストレスの原因になります。

経済的な負担

治療費や通院にかかる交通費、場合によっては薬代などが積み重なることで、家計に影響を与える場合があります。うつ病の家族が働けない状況になると、世帯収入が減少することもあり、支える側が経済的な負担を抱えることになります。これにより、生活全般への不安が増し、経済面でのストレスが大きくなります。

自由な時間の減少

支える側が家事や通院付き添い、ケアの時間を増やすと、自分の時間や自由な活動の時間が減少します。趣味や
友人や親戚との交流の時間が制約されることもあります。社会的なつながりが減少し、孤独感やストレスを感じるようになります。
リフレッシュのための時間が取れず、自分の心身を休める余裕がなくなることで、徐々にストレスが蓄積され、疲労感が高まります。

③抱えすぎてしまう

「自分の力不足」を感じる

うつ病の家族がなかなか回復せず、療養生活が長引く場合、自分のサポートが不足しているのではないかと責任を強く感じてしまう場合があります。
「自分の対応が悪いせいで、相手をもっと追い詰めてしまったのではないか」と悩むようになり、支える側が責任を感じてしまう場合があります。

何をしても改善が見えない絶望感

支える側は、治療や支援に全力で取り組んでいるにもかかわらず、うつ病の症状が一進一退で進展が感じられないことも多々あります。この場合、支える側が絶望感を抱き、支える意欲を失いかけることがあります。

④長期間によるサポート疲れ

家族がうつ病になると休ませることが良いのか、どれくらい休んでも大丈夫なのか、など判断が難しく、間違った対応をしていないかという不安が、支える側の家族の負担をさらに増やす原因になります。
対応のコツとしては励まさない、焦らせないことです。長期的なサポートをしていけるよう支える家族自身もある程度の距離を保ちながら自分自身のペースをかき乱され過ぎないようにしましょう。

症状の変動による迷い

うつ病の症状は日によって良くなったり悪くなったりと、予測が難しいものです。ある日は穏やかに過ごしていると思っても、次の日には急に落ち込みが激しくなることがあります。この変動に対して「今日はどのように接したらいいのか」「どんな声かけが正しいのか」と支える側が不安に感じます。

関わり方の難しさ

うつ病の方を支える際には、寄り添うことが大切である一方、必要以上に距離を詰めると相手にプレッシャーを与えかねません。適切な距離感を探ることは支える側にとって試行錯誤の連続であり、時にはストレスも増してしまいます。また、相手が「自分なんて価値がない」などの自己否定的な発言をした際、励ましの言葉をかけたくても、相手にプレッシャーを与えない言葉選びが難しく、不安が募る要因にもなります。

うつ病の家族がいる場合に知っておきたいこと

家族の誰かがうつ病になると、その影響は家族全体にも広がります。特に40代、50代は、家族やパートナーの健康を支える役割が増えることが多く、うつ病の理解とサポートは重要です。以下に、うつ病の家族がいる場合に知っておきたいポイントと実践的な対策をまとめました。

うつ病は「病気」であり、甘えではない

うつ病とは、気分の落ち込みや無気力、興味や喜びの減少などが長期間にわたって続く精神疾患です。脳の機能や化学的なバランスが崩れることで発症する「病気」であり、決して本人の意志や「気の持ちよう」だけで治るものではありません。うつ病の特徴として、気持ちが沈んで元気が出ない、日常の楽しみが感じられなくなるだけでなく、集中力の低下、疲れやすさ、不眠や過眠、食欲の変動など、さまざまな身体的・心理的な症状が見られます。家族として「努力すれば元気になれる」という期待は持たず、本人が専門的な治療を受ける重要性を理解することが一番重要です。

サポートする家族も自己ケアを大切にする

家族のサポートは大切ですが、自分の心身の健康を犠牲にしてはいけません。支える側も、適度な自己ケアを心がけ、睡眠、趣味、リラックスする時間を確保することが、長期的に支援するために欠かせません。うつ病の家族に付き添うと同時に、自分自身の健康も守りましょう。

「共感」するけれど入り込み過ぎない

うつ病の方が話を聞いてほしいと思うとき、共感して寄り添うことは重要ですが、相手の気持ちに深く入り込みすぎると、支える側も一緒に感情的に疲れてしまいます。冷静になり、必要な距離感を保ちながらサポートをすることで、双方にとって健全な関係を長期的に維持することができます。

専門家への相談も視野に入れる

うつ病の原因は一つではなく、心理的要因や身体的要因、生物学的要因など複数の要因が組み合わさって発症すると考えられています。うつ病は、専門の医師による診断と治療が必要です。
治療にはお薬が必要になる場合も少なくありません。必要に応じて、専門の医師やカウンセラーなど第三者に相談することはおすすめです。サポートの方法や自分の負担を軽くする方法についても、プロからの助言を受けることで心が軽くなります。

うつ病の家族のサポートに悩んだときの相談先

精神科・心療内科の医師

うつ病の治療を行っている医師は、家族も含めてサポート方法のアドバイスをしてくれることが多いです。治療に関する具体的な説明を受けたり、家族としてどう対応するのが効果的かについて助言をもらうことができます。また、治療経過に合わせて適切な接し方も教えてもらうこともできます。

臨床心理士・公認心理師

カウンセリングを受けることで、家族が抱えるストレスや不安を話しながら整理することができます。臨床心理士や公認心理師は、家族が抱えている心理的な負担や、具体的な対応についても相談に乗ってくれるため、自分自身の心のケアも可能です。

地域の保健所や保健センター・精神保健福祉センター

自治体の保健所や保健センターでは、家族の相談に応じる専門職がいる場合があります。精神保健の担当者がうつ病に関するサポートについてアドバイスをしてくれることもあります。家族としての対応方法や地域のサービスについて相談できます。

福祉サービスの利用相談窓口

福祉サービスの窓口では、訪問介護やショートステイなどのサービス利用について相談できることもあります。うつ病の家族を一時的にケアできるサービスを利用することで、支える側も自分の時間を確保するための工夫ができます。地域の福祉課や福祉相談窓口が相談に応じています。

精神障害者家族会

各地域で活動している家族会では、うつ病の家族を支えるための情報交換やサポートが行われています。経験を持つ家族の助言が得られたり、悩みを共有できる場となり、長期的に支え合うネットワークが築かれることもあります。

オンライン相談窓口

最近では、インターネット上でのメンタルヘルス相談窓口も増えており、チャットやオンライン電話で専門家に相談できるサービスもあります。地域のサービスは数が限られアクセスしづらい場合があるため、気軽に利用できるオンラインサービスを活用するのも一つです。手軽に相談を始めたい方にとって便利な方法です。

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まとめ

うつ病の家族を支える人が感じる疲れには、コミュニケーションの難しさや生活の負担、そして適切な距離感がつかめないことなど、さまざまな原因があります。支援のためには、うつ病が「病気」であることを理解し、サポートする側も適度に距離を置き、無理をせず自己ケアも大切にすることが重要です。また、悩んだときは専門家への相談や地域のサポートを活用することも、心の負担を軽くする方法の一つです。

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