物事を深く考えすぎてしまう人の特徴とは?対処法や病気との関連を解説

「考えすぎてしまう」という悩みを抱えている方は、日常生活や仕事において少なくありません。思い悩んでしまうことが習慣化し、頭の中がそのことばかりでいっぱいになり、疲れや落ち込みを感じることもあるでしょう。実際、こうした過度な考え込みが続くと、ストレスや不安が増加し、決断力が鈍ったり、集中力が切れやすくなり、行動を起こすのが難しくなります。この記事では、そうした考えすぎてしまう人の思考パターンに触れ、改善するための具体的なステップもご紹介します。

執筆者

藤原美保さん

公認心理師、介護福祉士、保育士、健康運動指導士の資格保有、療育支援に携わること20年以上。

放課後等デイサービスを運営する中で発達障害児童、そのご家族の悩みも含め相談やカウンセリング対応を10年以上行う。自己肯定感が低い、親から虐待を受けた過去に悩む方からの相談なども多数対応。

これまでに、『発達障害の女の子のお母さんが、早めに知っておきたい「47のルール」』(エッセンシャル出版社)、『発達障害の女の子の「自立」のために親としてできること 』(PHP研究所)と2冊の本を執筆。現在も出版に向け本の執筆をつづけている中、子育てのポータルサイトにて発達障害の子の子育てコラムを連載中。

目次

考えすぎてしまう人の特徴とは?

まずは、考えすぎてしまう傾向のある人がどのような特徴を持っているかを見てみましょう。物事を深く考えることが長所になることもありますが、それが負担になる場合もあります。自分自身の思考パターンに気づき、それに対処する方法を学ぶことで、心の負担を軽減し、日々の生活をより充実させることができるはずです。

小さなことでも考えすぎ、自分の中で悩みが巡り続け、解決策が見つからないまま時間だけが過ぎてしまう。こうした状態が続くと、気持ちが重くなり、心の健康にも悪影響が出ることがあります。私の相談に来る方の中にも、考えすぎる傾向が強い方が一定数います。今回は、そんな方々の特徴を大きく5つに分類して説明します。

不安が強い

失敗を恐れ、何度も考え込む傾向があります。「うまくいかなかったらどうしよう」「失敗したらどうしよう」という恐れから、なかなか行動に移せず、気づけば時間が過ぎてしまうことがあります。

固定観念が強い

過去の経験から生じた固定観念に囚われ、新しい視点を受け入れにくい傾向があります。
固定観念は私たちの日常生活や仕事において重要な役割を果たしますが、その影響が行き過ぎると成長を阻害し、創造性を低下させることになります。

気持ちの切り替えが苦手

過去の失敗や小さなミスを引きずり、気持ちを切り替えることが難しいため、同じことを何度も考えてしまい、マイナス思考に陥ると、なかなか抜け出せません。一度気になり出すと他のことに集中できず、日常生活に支障が出ることもあります。

他人の評価を気にしすぎる

周囲からどう思われているか、どう見られているかを過剰に心配する傾向があります。自分のやりたい事より、他人からの評価の方がウェイトが大きくなりがちです。承認欲求が強い傾向が見られます。

自己肯定感が低い

自己肯定感が低い: 自己肯定感が低いため、自分の決断や考えに自信を持てません。マイナス面に囚われがちで、ポジティブな面が見えにくくなります。その結果、他人に頼りやすくなり、依存的になってしまうことがあり、自分で決断することが難しくなる場合もあります。

考えすぎてしまう人の心理

考えすぎてしまう人の心理には、いくつかの複雑な要因が絡み合っています。その中でも自己肯定感が低いことは考えすぎる心理の一因です。自分の判断や行動に自信が持てないので「これで本当に良いのか?」と何度も自問自答してしまいます。こうした不安は、他者からの評価を過度に気にすることからも生じ、自分の行動や決断が正しいと周囲から評価されるかどうかを常に考え続けることになります。

さらに、過去に大きな失敗やトラウマを経験した人は、その記憶が影響し、新たな状況でも同じような失敗を避けようと過剰に考え込んでしまうことがあります。
このような心理的背景には、思考のパターンや習慣が深く関わっており、無意識のうちにネガティブな方向へと思考が流れてしまう場合があります。

物事を深く考えすぎてしまうことに関連する病気はあるか?

考えすぎる傾向がある人は、ストレスが心身に多様な影響を及ぼすことがあります。まず、同じことを繰り返し考える「反芻思考」に陥りやすく、これがストレスの蓄積と心の疲弊につながります。反芻思考が止められない場合は、精神的な健康に大きな影響を及ぼすことがあり専門家の助けを必要とする事があります。


また、起こっていないことを想像して不安になったり、物事を悪い方向に考えることで不安感が増大し、心の健康に悪影響を及ぼします。さらに、リスクばかり考えて行動に移せず、新しい経験やチャンスを逃して自己成長が妨げられることもあります。過去の失敗を引きずりやすく、自己嫌悪に陥ることも多く、このネガティブ思考がストレスを増幅させ、精神的健康を損なう可能性があります。こうした思考パターンは、身体症状も引き起こすことがあります。以下に考えすぎてしまう人が引き起こしやすい症状を挙げておきます。

不眠症

上手く寝つけない、何度も目が覚める、眠りが浅いといった状態が慢性的に続く睡眠障害の一つです。この状態は、身体的および精神的な不調を引き起こすことがあります。

不安障害

不安障害は、過度な不安や恐怖を感じる状態が続く精神疾患です。考えすぎる傾向がある人は、リスクや失敗を過度に心配し、結果として強い不安感を抱きやすくなります。このような状態が慢性的に続くと、不安障害に発展する可能性があります。

うつ病

うつ病は、持続的な抑うつ気分や興味の喪失を特徴とする精神疾患です。考えすぎる人は、過去の失敗やネガティブな出来事を繰り返し思い返す「反芻思考」に陥りやすく、これがうつ病の症状を悪化させる要因となることがあります。反芻思考は、自分でコントロールできないことを延々と悩み続けるため、気分の落ち込みや集中力の低下を引き起こします。

HSPの特性として考えすぎてしまうことも

HSP(Highly Sensitive Person)の特徴を簡単に説明すると、周りの環境や人の感情、音や光などに対して他の人より敏感に反応してしまう性質を持つ人のことです。HSPは診断名ではなく、気質を表す概念になります。つまり病気や障害として医療機関で診断されるものではなく、感受性が強い性質を持つ人々を表す概念で、その特徴を理解し、どのように日常生活でストレスを減らすかが大切になります。


例えば、友達が少し不機嫌な顔をしていると、その理由を深く考えすぎてしまったり、人混みにいると音や光に圧倒されて疲れてしまうことがよくあります。HSPの人は他の人が気にしないような細かい部分にも気づきやすいのです。そのためあまりに周りのことを気にしすぎてしまい、ストレスを感じやすくなることがあります。提唱者はエレイン・アーロン博士で、この特性は生まれつきのもので、人口の約15〜20%が該当するとされており、日本では「繊細さん」とも呼ばれています。

考えすぎの影響とは?

過剰な刺激による疲労感

考えすぎる人は、音や光、匂い、温度などに対して敏感に反応することが多いです。普通の人が気にしないような環境でも疲れやすく、特に人混みに長時間いると、身体的にも精神的にもエネルギーが消耗しやすくなります。

他人の感情に影響されやすい

他人の感情を敏感に察知するため、周囲の人がイライラしていたり、落ち込んでいたりすると、その感情を自分のもののように感じ取ることがよくあります。また、他人の期待に応えようとしたり、他人を失望させたくないという思いから無理をしたり、自分の気持ちを抑え込んでしまいストレスの原因になりやすいです。

自己批判や過度な反省

失敗やミスに対して過剰に自己批判をしてしまうことがあります。自分の言動や行動を繰り返し振り返り、「もっとこうすれば良かった」「あれは間違いだった」と悩むことで、無駄なストレスが生じやすくなります。

圧倒されやすい

短期間に多くのことを処理しなければならないと、圧倒されてしまいます。例えば、仕事で多くのタスクが重なったり、スケジュールが急激に変化したり、予定外の出来事が発生する事は他の人よりも強いストレスを感じやすくなります。

過剰な共感による疲労

他人の問題に共感しすぎると、精神的に疲れやすくなります。友人や家族の問題に深く関わりすぎて、自分自身が消耗してしまうことがあります。

休息が取れないことによるストレス

自分の心と体を守るために一人でリラックスする時間が必要ですが、それが確保できないと、ストレスが蓄積し、心身のバランスが崩れてしまいます。休息が取れない状況が続くと、慢性的なストレスや不安が強まります。

自己価値感の低下

周囲の人から「気にしすぎ」と言われることで、自分を否定的に捉えがちになり、孤立感を感じることがあります。それがさらなるストレスとなることもあります。

考えすぎてしまうのを直したいときの対処法

考えすぎてしまう傾向を改善したい場合の対処法の具体的な例を以下に示します。自分に合った方法を試しながら、習慣化していくことで、思考を整理しやすくなり、過度な考えすぎを減らすことができます。

考えを紙に書き出す

頭の中で考えを巡らせ続けると、混乱しやすくなります。考えていることを紙に書き出すことで、本当に自分が気になっている何なのか?を明確にすることで、考える必要があるのかどうなのかの問題を整理することができます。以下の手順で書き出すと行動に繋がりやすくなります。

【1】課題に焦点を当てる:「この問題の背景は何か?」や「本当に解決したい事は何か?」

【2】解決策を見つける:「この問題が解決したら、どんな未来が待っているのか?」や「どのように行動すれば理想的な結果を得られるか?」

【3】思考の有効性を評価:「この考えは前向きか?」や「この考え方は問題解決に役立っているか」

【4】実際の行動につなげる:「今すぐできる小さな事は何か?」や「この状況で最も効果的な行動は何か?」

考えを制限する「時間枠」を作る

一つの問題について考えすぎるのを防ぐために、「この問題については10分間だけ考える」など、考える時間を設けその時間がけは徹底的に向き合います。制限時間が過ぎたら、その問題について考えるのをやめ、別のことに意識を向けるようにします。

運動するなど身体を動かす

身体を動かす事で余計に考えすぎる時間を減らしましょう。体の血流を良くすることで酸素が身体をめぐり頭がさえます。体を動かすことに集中する事で心もリラックスしやすくなります。自然の中を散歩したり、短い時間でも良いので軽いジョギングや好きな音楽でダンスをするなどでも十分効果を得ることができます。

リラクゼーションを取り入れる

考えすぎているときは、心と体が緊張状態にあることが多いです。深呼吸や瞑想、ヨガや軽いストレッチなど、呼吸に合わせリラクゼーションの方法を取り入れて、過剰な考えをトーンダウンした状態を作ることで、過剰な思考を鎮めることができます。

行動や環境を変える

思考が過剰になっているとき意図的に今いる場所や今やっている行動を替えます。たとえば、ショッピングやカフェに行くなど外出したり、他の作業を始めるなど、意図的に環境を変え気持ちを切り替えます。

信頼できる人に相談する

考えが堂々巡りしている場合、信頼できる友人や家族に相談することが有効です。自分では気づけない視点を提供してもらえることがあり、考えすぎを解消する助けとなる場合があります。

専門家のサポートを受ける

考えすぎが生活に影響を与えている場合、カウンセラーや心理士など専門家のサポートを受けることも選択肢です。自分の考え方のパターンを見直す事が出来、問題の整理を手伝ってくれます。そしてより前向きで健康的な思考習慣を築くためのアドバイスを受けられます。

考えすぎに悩んだときの相談先

地域の保健所

お住まいのの地域の保健所では、こころの健康に関する相談窓口を設置しており、不安やストレスに関する相談を受け付けています。

保健所管轄区域案内(厚生労働省)

精神保健福祉センター

精神保健福祉センターは、各都道府県に設置されています。心の病気について幅広く相談できる支援機関です。

全国の精神保健福祉センター(厚生労働省)

よりそいホットライン

よりそいホットラインは、厚生労働省の補助事業として2011年に開始され、無料かつ匿名で利用できるのが特徴です。24時間対応で誰でも利用できる悩み相談窓口です。電話やSNSでの相談も可能で、様々な悩みに対応しています。

よりそいホットライン(厚生労働省)

心理師やカウンセラー

心理師やカウンセラーは、考えすぎに関する悩みを専門的にサポートしてくれます。

また「悩ミカタ相談室」では様々な専門家が登録しており、オンラインでも相談が可能なので自分の都合に合う日時で対応してもらうことが可能です。悩みの原因や課題を整理し、正しい知識や具体的なアドバイスを得ることができます。

40代50代のお悩み” は専門家に相談しよう「悩ミカタ相談室」

心療内科・精神科

考えすぎが原因で生じる日常生活に支障を来すような深刻な問題の場合は医療機関で診断と治療を受けることをおすすめします。場合によっては薬物療法が必要な場合があります。しっかりと治療し健全な日常生活を取り戻しましょう。

考えすぎは長所にもなる

「考えすぎること」は本人にとっては疲れる事かもしれませんが、客観的にみると実はデメリットだけでなく、大きなメリットがあるのです。

リスク回避がうまくなる

しっかり考えることで突発的な行動を避けリスクを十分に吟味する事ができます。これにより、大きな失敗を防ぎ、結果的に自分を守る事が出来ます。

計画性が高まる

物事を深く考えることで、分析しながら詳細な計画を立てることができ、正確で無駄のない行動が可能になります。

多角的な視点を持てる

色々考えることができる事で、物事を多角的に見ることができ、他の人が見落としがちな細かい点にも気づくことができるため、他の人が気づきにくい発見につながります。

共感力や洞察力に優れている

洞察力があり、共感力が高いため他人の気持ちや状況を深く考える事が出来ます。そのため他者とのコミュニケーションを上手くとることに長けています。
適切なコミュニケーションが取れるようになることで他者からの協力が得やすい場合があります。

クリエイティブなアイデアが生まれやすい

深く考えることで、独創的なアイデアや解決策を生み出す能力が高まります。

まとめ

考えすぎることは、日常生活や仕事でよく見られる悩みです。過度に考え込むと、ストレスや不安が増え、決断力や集中力が低下し、行動に移すのが難しくなることがあります。自己肯定感の低さや失敗への恐れ、他人の評価を気にしすぎることが、考えすぎの主な原因です。


ただし、深く考えることは、リスク回避や計画力、共感力などの長所につながることもあります。大切なのは、考えすぎをコントロールし、バランスを取ることです。具体的な対策として、考えを紙に書き出す、リラクゼーションや運動を取り入れるなどの方法が有効です。必要に応じて、専門家に相談することも選択肢の一つです。
適切に対処することで、心身のバランスを保ち負担を軽減し、考えすぎる長所を活かしながら、より前向きな日常生活を送れるようにしたいものです。

40代50代のお悩み” は専門家に相談しよう「悩ミカタ相談室」

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