漠然とした不安はなぜ生まれる?解消に向けた具体的な対処法を紹介

現代社会を生きる多くの人が、漠然とした不安に悩まされていると言われています。年齢を重ねるにつれ、健康、仕事、家庭、老後の年金問題など、多岐にわたる問題が次々と浮上し、それが将来への不安へと繋がっていきます。
これらの不安は、特定の原因がはっきりせず漠然としたもののため、対処の仕方がわからないことも少なくありません。特に40代、50代という人生の中盤は、体調の大きな変化やライフスタイルの転換期に当たります。この転機は、これまでの自分の選択が正しかったのか、これからどのように生きていけばいいのかという迷いを生みやすく、心に漠然とした不安感を抱えることが多くなる時期でもあります。

そこでこちらの記事ではそんな方に向けて「漠然とした不安」について解説し、その原因や解消のための方法を詳しくお伝えします。

執筆者

藤原美保さん

公認心理師、介護福祉士、保育士、健康運動指導士の資格保有、療育支援に携わること20年以上。

放課後等デイサービスを運営する中で発達障害児童、そのご家族の悩みも含め相談やカウンセリング対応を10年以上行う。自己肯定感が低い、親から虐待を受けた過去に悩む方からの相談なども多数対応。

これまでに、『発達障害の女の子のお母さんが、早めに知っておきたい「47のルール」』(エッセンシャル出版社)、『発達障害の女の子の「自立」のために親としてできること 』(PHP研究所)と2冊の本を執筆。現在も出版に向け本の執筆をつづけている中、子育てのポータルサイトにて発達障害の子の子育てコラムを連載中。

目次

「不安」という感情の役割

まず、知っておくべき重要なことは、「不安」という感情は生存本能に基づく非常に基本的な第一次感情と呼ばれ無くす事が出来ない感情反応だということです。私たちが生きていくうえで、不安は危険を察知し、問題に対処するために必要な感情なのです。

しかし、問題は、この不安が明確な原因に基づいていない場合です。「漠然とした不安」とは、具体的な出来事や原因に基づかず、ただうつうつとした不安感を指します。こうした不安は、長く続くと日常生活に悪影響を及ぼすことが多くなります。そこで、このような漠然とした不安にどのように対処していけば良いのか、具体的な方法を考えていきます。

漠然とした不安を感じやすい場面とは?

① キャリアに関する不安

仕事やキャリアに対する不安は、特に40代後半から50代の人々にとって深刻です。若い頃には感じなかったキャリアの限界や、職場でのポジションに対する不安が出てくる時期でもあります。

将来のキャリアの行き詰まり

昇進やキャリアアップの限界が見えてくると、焦りが生じる事があります。「これ以上は望めないのではないか」と感じることが、キャリアの行き詰まりを感じさせ、漠然とした不安の原因となります。

時代の変化や技術の進歩についていけない不安

IT技術の急速な進化やグローバル化の進展により、自分が時代に乗り遅れているのではないかという不安も強まります。若い世代が急速に成長している中で、スピード感についていけないと感じることが、漠然とした不安を増大させます。

②お金に関する不安

経済的な不安も、この年代に特有の大きな悩みです。老後の資金計画や、年金問題など生活できるかどうかといった問題は、多くの人々に共通する課題です。

老後の経済的不安

特に定年退職後に十分な収入が得られるかどうかという懸念は、非常に大きな不安要素です。年金だけで生活が成り立たないと言われている中、医療費や介護費がどれくらいかかるのかといった将来の経済的見通しが不透明なために、不安が増幅されます。

子どもの教育費や独立後の支援に伴う負担

子どもが独立する時期には、教育費や結婚資金などで大きな出費が発生します。また、親としての責任感から、経済的な支援を続けることへの負担が、漠然とした不安を引き起こすことがあります。

③ 健康や身体の変化に対する不安

加齢に伴う身体の変化も、この年代に特有の不安です。若い頃には感じなかった疲労感や体力の低下や、病気に対する不安が増えていきます。

病気や体力の衰えに対する不安

年齢とともに、健康状態の悪化や病気のリスクが高まることは自然なことなのですが、これが漠然とした不安感を強めます。「もし大きな病気になったらどうしよう?」という不安は、些細な体調不良にも過敏に反応する原因となります。

④家族や人間関係に関する不安

家族や人間関係の変化も、不安の要因となります。特に親の介護や、子どもが独立した後の生活に対する不安が強まります。

「空の巣症候群」になりやすい

親の介護が終わった後や子どもが独立した後に感じる喪失感や孤独感は、「空の巣症候群」と呼ばれ、大きな心の負担となります。長年の間、家族のために尽くしてきた時間が急に失われ、人生の意味を見失う場合があります。

空の巣症候群に関する記事はこちら

漠然とした不安の原因と対処法とは?

このような漠然とした不安には、外的要因と内的要因が存在します。それぞれに対して、適切な対処法を見つけていくことが重要です。

自分で解決できる不安への対処法

不安の原因を明確にする

まずは、何に対して不安を感じているのかを明確にしましょう。漠然とした不安が具体的な問題に変わるだけで、少し気持ちが楽になることがあります。頭の中で考えるだけではなく、紙に書き出すことで、視覚的にも確認でき、より冷静に自分の状況を把握することができます。

問題解決に向けて行動する

具体的に解決可能な問題に関しては、小さなステップを踏んで行動を起こしましょう。例えば、キャリアの不安に対しては、新しいスキルを身につける勉強を始めることや、転職活動を検討することが有効です。経済的不安であれば、家計の見直しや将来の資金計画を立てることも一つの方法です。

自分で解決できない不安への対処法

外的要因に対する不安

自分ではコントロールできない外的要因、例えば社会情勢や自然災害、経済の変化に対する不安は、自分の力では解決できないため、気を紛らわせる方法を見つけることが有効です。

内的要因に対する不安

健康の衰えや年齢的な変化については、無理に抗おうとするのではなく、できる範囲で健康を維持する行動を心がけることが大切です。日々の生活の中で、バランスの良い食事や適度な運動、良質な睡眠を心がけることが、長期的には大きな効果をもたらします。

気の紛わせ方

漠然とした不安に振り回されないためには、自分に合った対処法を見つけることが大切です。以下に、効果的な方法をいくつか挙げます。

①リラクゼーション法の実践

瞑想・マインドフルネス

瞑想やマインドフルネスは、今この瞬間に集中することで、未来への不安を手放す効果があります。数分の瞑想を毎日の習慣にするだけで、心が落ち着き、不安感が軽減されることがあります。

深呼吸

腹式呼吸などの深い呼吸は、自律神経を整え、すぐに気持ちを落ち着かせるのに効果的です。数分間の呼吸法を実践することで、ストレスを感じたときにも冷静に対応できるようになります。

②運動を取り入れる

適度な運動は、ストレス解消や心身の健康維持に非常に効果的です。ウォーキングやヨガ、軽いストレッチを習慣化することで、身体を動かしながら心のバランスを整えることができます。

③趣味や創作活動に没頭する

趣味や創作活動に没頭することで、不安感を一時的に忘れ、心をリフレッシュさせることができます。絵を描く、料理をする、ガーデニングをするなど、手を使った作業は特に心を落ち着かせる効果が期待できます。

④周囲の人とのつながりを大切にする

信頼できる友人や家族と話すことで、漠然とした不安が和らぐことがあります。話を聞いてもらうことで、自分の考えが整理され、不安の原因が見えてくることもあります。

漠然とした不安が続くときに考えられる病気とは?

漠然とした不安が長期間にわたって続く場合、単なる気分の落ち込みやストレスだけでなく、何らかの心の病気が関係している可能性があります。こうした病気は、生活に支障をきたすほどの症状を引き起こすことがあり、早期に対処することが大切です。以下は、不安が続く場合に考えられる代表的な病気です。

①不安障害

不安障害は、強い不安や心配が過剰に現れ、日常生活に支障をきたす状態です。不安障害にはいくつかの種類があり、以下のものが代表的です。

全般性不安障害(GAD)

日常的な出来事に対して過度の不安を抱き、仕事や家庭生活に支障をきたすことが特徴です。例えば、健康やお金、家族関係に対する不安が極度に強まり、その不安がコントロールできない状態が続くことがあります。

パニック障害

突然、激しい不安や恐怖感に襲われる発作を繰り返す病気です。パニック発作中には、息苦しさ、心臓の鼓動が早くなる、めまい、汗をかくなどの身体的な症状が現れ、「死んでしまうのではないか」という強い恐怖感を抱くことがあります。

社交不安障害(SAD)

人前で話すことや、他者と接する場面で強い不安を感じる病気です。例えば、会議やプレゼンテーションなどで強烈な緊張感や不安感を抱くことがあり、避けたいと感じるようになります。

②うつ病

うつ病は、不安だけでなく、気分の落ち込みや興味・喜びの喪失、極度の疲労感、食欲や睡眠の問題が長期間続く病気です。特に漠然とした不安感が続く場合、うつ病が潜在している可能性があります。

③適応障害

適応障害は、ストレスの多い出来事(仕事の変化、家庭内の問題など)に適応できず、不安や抑うつが現れる病気です。具体的な原因がはっきりしている場合も多いですが、漠然とした不安感が続くこともあります。

④強迫性障害(OCD)

強迫性障害は、特定の考えやイメージ(強迫観念)が頭から離れず、それを中和するために特定の行為(強迫行為)を繰り返す病気です。

⑤更年期障害

40代、50代の女性に特有の、更年期障害もまた、漠然とした不安感を引き起こすことがあります。ホルモンバランスの乱れによって、イライラや不安、身体的な不調が現れます。

不安が続くときは専門家への相談がおすすめ

漠然とした不安は、特に誰かに話しづらいと感じることが多いかもしれません。「特別に大きな問題があるわけではないけれど、何かが心に引っかかっている」と思い、相談するほどのことではないと考える方もいるでしょう。しかし、このような不安を放っておくと、徐々に心身に影響を与える可能性があります。

専門家に相談するメリット

問題の早期発見と対処

漠然とした不安が長く続く場合、例えば、不眠や食欲不振、集中力の低下といった形で現れることがあり、最終的にはうつ病や不安障害といった深刻な問題に発展するリスクもあります。そういったケースの中には、実は心の奥に根深い問題が潜んでいることもあります。その場合、自分の力だけで解決するのは難しく、専門家の力を借りる事をおすすめします。
専門家は、そのような問題を早期に見つけ出し、適切な治療やサポートを提案してくれます。早めに対処することで、症状が深刻化するのを防ぐことができます。

客観的なアドバイスを得られる

専門家は第三者として冷静に状況を見てくれるため、より客観的なアドバイスを得ることができます。
第三者の視点から状況を見てもらうことで、自分では気づかなかった問題や感情を客観的に整理することができます。また、専門家は不安やストレスに対する具体的な対処法を教えてくれます。

不安の原因を明確にする手助けを得られる

専門家との対話を通じて、漠然とした不安の具体的な原因が明確になることがあります。自分が抱えている不安が漠然としているために悩んでいるケースも多いため、それを言語化し、整理するだけで気持ちが楽になることがあります。

適切な対処法やツールを学べる

専門家は、心理療法やカウンセリング技術に基づいた具体的な対処法を提供してくれます。例えば、認知行動療法やストレスマネジメントの方法など、日常的に実践できるテクニックを学ぶことができます。これにより、不安をコントロールしやすくなります。

どのような専門家に相談すべきか?

漠然とした不安に対処するために、どのような専門家に相談すればよいのか悩む方もいるでしょう。以下は、相談先の選択肢です。

オンラインカウンセリングの活用

オンラインカウンセリングサービスの「悩ミカタ相談室」は、専門家に気軽にアクセスできる選択肢のひとつです。悩ミカタ相談室では、心理カウンセラーや公認心理師など専門家が多数登録しており、不安やストレスに対するオンライン相談を行っています。自分に合ったカウンセラーを見つけ、対話を通じて不安の原因を明確にし、適切な対処法を学ぶことが可能です。

つらくて不安な気持ち、1人で抱え込まずにまずはお気軽に相談してみませんか?

40代50代のお悩み” は専門家に相談しよう「悩ミカタ相談室」

心理カウンセラーや臨床心理士

心理カウンセラーは、不安やストレスに対するカウンセリングを行い、話を聞きながら一緒に解決策を見つけていきます。カウンセリングでは、クライアント自身が自分の内面を見つめ、気づきを得るプロセスが大切にされます。

精神科医や心療内科

不安が日常生活に支障をきたすほど深刻な場合、精神科医や心療内科での診察を受け、お薬を処方してもらうことを検討するのも一つの手です。必要に応じて、薬物療法を組み合わせながら、症状を改善していくことができます。

不安を解消して、より良い日常へ

40代、50代の多くの人は、健康、仕事、家庭、老後資金などの問題から漠然とした不安を抱えることが多いです。こうした不安は特定の出来事によるものではなく、漠然と存在するため対処が難しいことが特徴です。特にキャリアや経済、健康に対する不安は、この年代で深刻化しがちです。不安に対処するためには、リラクゼーションや運動、趣味に没頭することが有効ですが、特に長期間続く場合は専門家への相談が推奨されます。専門家の助けを借りることで、不安の原因を明確にし、適切な対処法を学ぶことは不安を軽減させ日常生活をより快適に過ごすために有効です。

40代50代のお悩み” は専門家に相談しよう「悩ミカタ相談室」

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