結婚を後悔してつらい…結婚後悔症候群の特徴や5つの改善方法

「この人となら、人生を共にできる」――誰しも結婚を決意したときには希望や期待に胸を膨らませ、幸せな未来を思い描いていたはずです。
ところが、結婚生活が5年、10年と続くうちに、ふと気がつけば日々のため息が増えていく。「本当にこの人と一緒にいていいのだろうか?」「こんなはずじゃなかった」といった疑問や後悔が頭をよぎり、「どうして結婚なんかしてしまったのだろう」「なぜこの人を選んだのだろう」と、心がつぶやくのです。

そんな気持ちを抱えながら日常を過ごす人がいる一方で、現実のすれ違いや心の冷え込みから、離婚という選択に至る人も少なくありません。「結婚後悔症候群」とは、人生のパートナーとして共に生きることへの迷いや疲れが、心を揺さぶる状態です。
そうした心のざわめきの正体を丁寧にひも解きながら、その原因や対処法、そしてその中に隠された「二人の関係性を見つめ直すチャンス」について考えていきます。

執筆者

公認心理師

葉月ゆずはさん

相談実績15年以上の公認心理師、夫婦関係のスペシャリスト。海外のメソッドもいち早く実践し、対人関係トラブル・鬱やメンタルのあらゆる不調にも「愛着」の観点から本当に大切な部分にアプローチ◎

目次

統計データから見る結婚の後悔

全国の30歳~59歳までの既婚男女3,000人を対象に「結婚に関するアンケート調査」が行われた結果、じつに4割の既婚男女が「後悔したことがある」という質問に「はい」と回答しています※。

※参照元:今のパートナーとの結婚を「後悔したことがある」人の割合は?(マイナビニュース)

年齢別の傾向

  • 50代が最多
  • 40代、次いで30代

この結果から、「子育てが一段落した頃」に結婚生活の後悔を強く感じやすい傾向が見て取れます。子育てという大きなライフイベントが終わり、夫婦の関係性が改めて浮き彫りになる時期なのかもしれません。

男女別の傾向

  • 男性:女性  6:7 の割合で、女性の方が後悔を感じる傾向が強い

男女それぞれの後悔理由トップ3は以下の通りです。

【男性】

  1. セックスレスになった
  2. 大事にしてもらえない
  3. 行動を制限される

【女性】

  1. 自分ばかり我慢している
  2. 金銭感覚が合わない
  3. 大事にしてもらえない

男性では、「セックスレスになった」と答えている方が圧倒的に多く、女性の倍の回答がありました。男性にとってセックスは、夫婦関係維持にはとても大切な要素であるという傾向がわかります。

女性では「自分だけが我慢をしている」と答えている方が、男性の倍以上の回答になりました。

結婚後悔症候群の特徴

結婚を後悔している人の多くは、次のような状態に陥りやすいと考えられます。

  • パートナーとの会話が減り、ぎこちなく感じる
  • 独身時代の自由な環境にあこがれる
  • 幸せそうな他人と自分を比較してしまう
  • 日常生活のあらゆることに不満を感じる
  • 離婚を考えてしまう

これらの特徴を抱え続けることで、孤独感や疎外感が深まり、パートナーとの関係はますます悪化してしまいます。

結婚を後悔する心理的背景

これらのことを体験している方の心の奥では、どんなことが起こっているのかを見てみましょう。

まず「会話が減り、ぎこちない関係」の中に身を置いていると、人は相手との心理的距離を感じます。距離を感じれば感じるほど相手のことがわからない存在と感じてしまうのです。そうするとさらに距離をとってしまいます。なぜなら、わからない相手は気まずく感じますし、脅威に感じるからです。そして、大きく距離が広がると相手が見えなくなり、つながることができないので、自分はひとりぼっちだと感じてしまうのです。つまり孤独感や寂しさが心を占めている状態になるのです

私たち人間は人と人がつながり、その社会の中に身を置くことで心が安定し、安全を感じることができる生き物なのです。ですから夫婦関係の中で常に孤独を感じるということは、社会の仲間には入れない欠陥品だと自分のことを感じたり、誰からも愛されないダメ人間なのだと感じてしまうのです。

そうするとその環境から抜け出して、新しい環境に身を置きたくなります。つまり、自分のことを欠陥品だとかダメ人間だと感じてしまうのは、この環境がいけないのだ、ここから出ればそんな嫌な感情は感じなくてもすむようになるはずだ。このように思うことから、今の結婚生活を後悔してしまうのです。

では関係回復をしていくのにはどんなことが考えられるのでしょうか。まずはその原因や心の動きを、後悔する理由から考えてみましょう。

後悔の理由とその原因

「セックスレスになった」

セックスレスの背景には、心理的・身体的な「つながり」の欠如があります。セックスは、相手を最も近くに感じ、無防備な状態で愛情や思いやりを確かめ合う大切な行為です。しかし、心理的な距離が広がり、相手がよくわからない、信頼できないと感じると、脳はその無防備な状態になることを「危険」と認識してしまいます。それは犬や猫が警戒する相手には決してお腹を見せないことと同じなのです。


お互いの間に安心感と信頼がなければ、心から相手に身を委ねることはできないのです。また性欲だけや自分が抱く不安感からセックスをしても、行為の後には虚しさだけが残ってしまいます。それは余計に自分を惨めにし、孤独感が大きくなります。そんな気持ちは感じたくないと誰もが思いますから、自然とセックスからは遠ざかるということが起こってしまうのです。

「自分ばかり我慢している」

家事や育児、仕事との両立で自分だけが頑張っているという不満。お金の使い方についての不公平感、自分だけが時間を自由に使えないなど、このような思いは「我慢を強いられている」と感じてしまいます。またその我慢の裏には、「手伝ってもらえない」「感謝されない」「自分の努力を理解してもらえない」といった悲しさや虚しさが潜んでいます。

それを相手に伝えても喧嘩になったり、ニーズを聞いてもらえなかったりすることが重なると、「どうせ言ってもわかってもらえない」「言うだけ無駄だ」という諦めの気持ちが生まれます。そうするとニーズを言うと喧嘩になるのではないかという恐れが生じ、パートナーへの不満を心の中に押し込めてしまうのです。

こうした状態では、不機嫌さが無意識に表情や態度に現れます。自分では感情を隠しているつもりでも、人間は感情の動物です。表情、言葉、声のトーン、雰囲気などから、「怒っている」という気持ちは伝わってしまいます。しかし何に怒っているのかが明確に伝えられないため、パートナーには「ただ嫌な空気感」だけが伝わり、それが警戒心を生み、かたくなな態度や不機嫌な表情を作り出させてしまうのです。そのパートナーの態度を見て、さらに自分も不機嫌になるという・・・こうして悪感情だけが二人の間を行き来することになります。

「金銭感覚が合わない」

お金に関する問題には、さまざまな理由が考えられます。

  • 収入や支出の不均衡
  • お金の使い道に対する価値観の違い
  • 経済的な負担の不公平感
  • 将来設計に対する意識の違い
  • 借金や収入の隠し事など

これらの問題の根底にあるのは、夫婦間の協力体制の欠如です。どちらか一方が主導権を握りすぎることで、もう一方は我慢や犠牲を強いられ、不安や不満が募ります。

金銭感覚のズレは、「理解されていない」「努力が報われない」「将来が不安だ」という心の声に結びつきやすく、本来二人で築いていくはずの人生が、いつの間にか「一人で抱えている」と感じるようになります。このような孤独感や小さな不満が積み重なることで、信頼関係が損なわれ、「この人とは分かり合えない」「結婚しなければよかった」といった後悔や絶望感が強まります。結果として、心理的な距離が広がり、夫婦関係に深刻な影響を及ぼしてしまうのです。

「大事にしてもらえない」

私たちが「大事にされていない」と感じるのは、どのようなときでしょうか。それは、自分自身や自分が大切にしていることに対して興味を示してもらえなかったり、雑に扱われたと感じたときではないでしょうか。

たとえば、努力や頑張りを認めてもらえない、何をしても感謝の言葉がない、思いやりの気持ちを感じない――そんな状況では、心の中に虚しさや悲しさが広がっていきます。また、自分の気持ちやニーズを無視されたり、軽く受け流されてしまうと、「自分は取るに足らない存在」と感じ、愛されていないのではないかと孤独感や絶望感を抱くのです。
この状態が続くと、「自分は大切にされる価値がないのだ」と次第に自己肯定感が下がり、否定的な思いに囚われてしまうのです。

「行動を制限される」

この理由の背景には、主に2つのパターンが考えられます。

パートナーの束縛や干渉が強い場合

自分の意思で物事を決めることが難しく、何をするにもパートナーの意向が強く反映される状態です。結果として、自分の自由が奪われているように感じてしまいます。

独身時代の自由な感覚から抜けきれない場合

結婚によって役割や優先順位が変わることに、窮屈さやストレスを感じる状態です。独身時代のような自由な行動ができないことが、葛藤を生む原因となります。

いずれの場合も、やりたいことを主張すればパートナーとの間に軋轢や衝突が生まれがちです。そのため、揉めないように自分の気持ちを抑え込んでしまうこともあります。また制限されるほどに強い反発心や逃避の欲求が生まれます。そうした気持ちや我慢が積み重なると、次第に大きな不満へと変わっていくのです。

夫婦の関係を回復するためのステップ

①感謝の気持ちを伝える

私がカウンセリングをしていて感じるのは、多くの夫婦がパートナーに対して感謝の気持ちを表すことが少ないということです。
特に日本人は、国民性や文化的背景から「言わなくてもわかるだろう」「身内のことは謙遜するものだ」と考える傾向があります。しかし、感謝の気持ちは言葉にしなければ相手には伝わりません。パートナーは私に感謝しているはずだなんてことは想像もできないのです。

人は感謝されることで心が温かく前向きな状態になります。それは、「さらに役に立ちたい」という思いを生み、ポジティブな行動や親切が増えます。そうすると協力的な態度が強まり、二人の関係性に好循環を生み出すのです。
ですから、些細なことで良いので「ありがとう」と伝えることは関係改善には大切な一歩なのです。

実際にカップルカウンセリングで関係が改善された夫婦では、感謝の言葉が自然と交わされるようになります。日常の中の小さな「ありがとう」が、パートナーの心の中にある氷を溶かす役割を果たしてくれるのです

②パートナーを尊重する

関係が悪化すると、私たちは「自分を大切にしてくれない、気持ちを尊重してくれない」と不満を感じますが、さて、自分自身はパートナーを尊重してきたでしょうか?

  • パートナーが大切にしているものを同じように大切にしたり、共感したりしてきたか?
  • 忙しさや役割の重圧から、パートナーのことを後回しにしたり忘れていないか?

結婚前や新婚時代は、相手を喜ばせることに一生懸命だったはずです。しかし、結婚生活が長くなると、自分が担っている役割のストレスから「どうすれば楽になるか」と考えがちになり、意識が自分優先になります。パートナーのサポートがないと不満が募り、批判的な言葉や否定的な態度が増えてしまうのです。

ここで大切なのは、パートナーを尊重するために必要なことを考え直すことです。日常の中で、意識的にパートナーに目を向け、尊重する行動を心がけてみましょう。

③自分の気持ちを抑圧しない

関係を悪化させる要因の一つに、自分の気持ちを抑え込んでしまうことがあります。喧嘩を避けたいあまり、自分の気持ちを言わずに我慢してしまうと、不満が積み重なり、いずれ大爆発してしまうのです。

ただし、「抑圧しない」といっても、自分の不満をそのままぶつけるのではありません。大切なのは、自分の本当の気持ちを知り、それを伝えることなのです。

例えば、表面的には「怒り」を感じていても、その下には「悲しさ」や「寂しさ」が隠れています。さらに奥には、「もっと愛してほしい」「つながっていたい」という願いが潜んでいるのです。こうした心の奥底にある気持ちこそ、パートナーに伝えるべき言葉です。

例えば、最近パートナーと距離を感じるなら、次のように伝えてみてください。
「あなたが遠くに感じて寂しい」
「もうつながれないのではないかと不安になる」
このとき、主語はすべて「私」にします。相手に責任を押し付けず、「私がこう感じている」と伝えることで、自分の気持ちに責任を持ちながら、パートナーに理解を求めることができます。

④価値観をすり合わせ、率直に話し合う

結婚前に「どんな夫婦でいたいか」「どんな家庭を築きたいか」という価値観をすり合わせているカップルは、非常に少ないのではないでしょうか。多くの場合、なんとなく価値観が似ていると感じたり、そう思い込んで結婚を決めることが少なくありません。しかし、結婚生活が始まると、予想に反することが次々と起こり、期待が裏切られたように感じたり、失望や苛立ちを覚えることも多いのです。

その背景には、それぞれが「自分の育った家庭」を無意識にお手本にしているという事実があります。家庭ごとに異なるルールや常識があり、そこで育つことで「これが当たり前だ」という自分なりの「マイルール」が形成されているのです。結婚して二人の生活が始まると、その違いが浮き彫りになり、衝突が起こるのはごく当然のことなのです。

大切なのは、どちらか一方のルールに合わせるのではなく、二人の価値観を持ち寄って、新しいルールを一緒に作り上げることです。二人にとって良いと感じるものは残し、都合が合わない部分には新しいやり方を考えていく。こうして率直に話し合い、価値観をすり合わせることで、二人にとって居心地の良い関係や家庭が築けるようになります。
互いの違いを受け入れ、お互いが納得できる二人にとって心地の良いものは何か?を考えていく姿勢が何よりも大切なことなのです。

⑤カップルカウンセリングを受ける

自分たちだけでは解決が難しいと感じた場合、カップルカウンセリングを受けることは非常に有効な手段です。特にカップルに特化したエモーショナリー・フォーカスト・セラピー(EFT)に基づくカウンセリングでは、関係に生じた傷や距離を修復するための具体的なアプローチが提供されています。
カウンセリングの中で、第三者のサポートを受けながら安全な環境で対話を進めることで、パートナーの本当の気持ちを理解し、自分の気持ちも安心して表現できるようになります。お互いの気持ちに耳を傾け、真の感情やニーズを共有することで、愛情と信頼が回復し、関係が温かさを取り戻していくのです。
カップルカウンセリングは、単に問題を解決するだけでなく、お互いがより深く理解し合い、心からつながるための貴重な機会といえます。

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まとめ

ここまで様々な観点から結婚後悔症候群について考えてきましたが、最も重要なのは表面に現れる問題ではなく、その奥に潜んでいる「寂しさ」や「悲しさ」、「虚しさ」といった感情です。これらの感情が日々蓄積され、いつの間にか互いの心を遠ざける原因となっています。

そこには、それぞれの人生の歴史から生まれた「思い込み」や「価値観」、「自分なりのルール」があり、それがぶつかり合うことで思いやりが失われ、不満が大きく募っていくのです。しかし、仲の良いカップルはお互いの違いを認め、それぞれがお互いの安全基地であり、「困ったときには必ずパートナーが支えてくれる」という信頼感があります。
人生には、思いがけない困難やトラブルはつきものです。そんなときこそ、支えになってくれるパートナーの存在はかけがえのないものです。人生の荒波にさらされたときこそ慰め、寄り添い、力になってくれるその人を私たちは求めているのです。

結婚生活は、二人で築き上げる「関係性の旅」です。時には迷い、後悔し、立ち止まることもあるでしょう。しかし、その旅はいつでも新たな一歩からやり直せます。互いの違いや感情のすれ違いに気づくことは、関係をより深めるための大切な機会です。

もし今、心に孤独や悲しみを感じているのなら、それを一人で抱え込まず、パートナーと共に向き合い、言葉を交わし、心を通わせることで、その痛みは少しずつ和らぎ、やがて「理解された」という温かな安心感に変えることができるのです。

関係を見つめ直し、共に寄り添うことで、二人の間には再び信頼と絆が育まれます。そして、その絆こそが、人生のどんな困難にも立ち向かうための心の支えとなるのです。
大切なのは、諦めずに心の扉を開く勇気。そして、もう一度パートナーと手を取り合い、二人で未来を見つめることです。

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