吐き気で目が覚める原因とは?対処法や病院に行くタイミングも紹介します

「眠りたいのに吐き気がする」「実際に吐いてしまったらどうしよう」

吐き気で目が覚めてしまうのは、意外にも多くの方に経験がある不快な症状です。この症状は単なる体調不良だけでなく、ストレスや自律神経の乱れ、さらには潜在的な病気のサインかもしれません。

本記事では、吐き気で目が覚めてしまう原因や対処法、そして病院に行くべきタイミングについて詳しく解説します。健康的な朝を迎えるためのヒントを見つけてみてください。

執筆者

梅田ミズキさん

認定心理士、サービス介助士。大学で臨床心理学・産業組織心理学・発達心理学などを学び、卒業後は公的施設にて精神疾患の方のケアや介助業務、ご家族の相談対応などに従事しながら、ホームページ掲載用のコラムやミニ新聞を執筆。現在はフリーライターとして独立し、くらしにまつわるエッセイの執筆、臨床心理・発達支援・療育関連のコンテンツ制作および書籍編集に携わりながら、心理カウンセラーも務めている。趣味は読書、映画鑑賞、気まぐれで向かうプチ旅行。

目次

吐き気で目が覚めてしまうのはどうして?

朝の吐き気は、さまざまな要因が複雑に絡み合って引き起こされる症状です。主な原因としてストレスや自律神経の乱れが挙げられますが、生活習慣や潜在的な病気が関与している場合もあります。

ストレス

ストレスは現代社会を生きる多くの人々が抱える問題で、身体にさまざまな影響を及ぼすものです。特に慢性的なストレスは、心身ともに負荷がかかった状態といえます。そのため、身体面にも大きな影響を与え、朝の吐き気の原因となるケースがあります。

慢性的なストレスだけではなく、過度な緊張感が吐き気などの身体症状として現れる場合も珍しくありません。例えば、大事な試験前や仕事のプレッシャーなど、重要な場面で吐き気を感じた経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

さらに、ストレスによる不眠や睡眠の質の低下も、朝の吐き気につながることがあります。十分な休息が取れていない状態で目覚めると、体調不良を感じやすくなるのです。

自律神経の乱れ

呼吸や心拍、消化など、体のさまざまな機能を無意識のうちにコントロールしているのが自律神経系です。この自律神経とストレスは密接に関係しており、バランスが崩れると、朝の吐き気を含む多くの体調不良を引き起こす可能性があります。

人はストレスを感じると、コルチゾールやアドレナリンなどのストレスホルモンが体内で分泌されます。コルチゾールやアドレナリンは、胃酸の分泌を促進したり、胃腸の動きを変化させたりするホルモンです。

自律神経には交感神経と副交感神経があり、通常は日中は交感神経が、夜間は副交感神経が優位になります。しかし、ストレスや不規則な生活習慣によってこのバランスが乱れると、コルチゾールやアドレナリンが分泌され、交感神経が優位になり続けます。

その結果、消器系の機能に影響を与え、朝起きたときに吐き気や胃の不快感を引き起こす可能性があるのです。

病気が原因で吐き気を感じることも

吐き気が長期間続く場合や他の症状を伴う場合は、何らかの病気が原因である可能性があります。ここでは、吐き気を引き起こす可能性のある主な疾患について説明します。

機能性ディスペプシア

機能性ディスペプシアは、腹部の膨満感や不快感、痛み、吐き気などの症状が出現する機能性胃腸症のひとつです。胃自体に異常がみられないにもかかわらず、症状が持続します。

この疾患は、ストレスや不眠、アルコール摂取、喫煙などが関与しているといわれています。胃が十分に動かず食べたものを十二指腸へうまく送れないことや胃酸過多、胃の知覚過敏、ピロリ菌への感染などが引き起こすと考えられていますが、明確な原因は特定されていません。

治療には、食生活など生活習慣の改善や、症状に応じた薬物療法が用いられます。胃酸の出過ぎを抑える薬や消化器官の運動機能を調整する薬、ピロリ菌除菌のための薬などがありますが、ストレスがかかり過ぎないように睡眠や休息を十分にとるのも重要です。

胃腸炎

胃腸炎は、胃や腸の粘膜に炎症が起こる疾患です。ウイルスや細菌による感染が主な原因と考えられています。

特にノロウィルスなどの感染性胃腸炎に罹患すると症状の発現が比較的早く、食べてから数時間で症状が出る場合もあるのが特徴です。例えば、夕食時に食べたものが原因の場合は夜間に症状が悪化し、朝起きたときまで強い吐き気を感じる可能性があります。

なお、脱水症状を引き起こす可能性もあるため、十分な水分補給が重要です。

胃腸炎は、通常数日で自然に回復します。ただし、症状が長引く場合や重度の場合は、医療機関を受診して整腸剤を内服するとよいでしょう。

逆流性食道炎

逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流することで引き起こされる炎症性疾患です。主な症状は胸焼けですが、吐き気や喉の違和感、咳などの症状を伴う場合もあります。

食道と胃の接合部にあるのが、食べ物の逆流を防ぐための括約筋と呼ばれる筋肉です。何らかの理由で括約筋が緩んだり、食後すぐに横になったりすると、食べ物や胃酸が食道に逆流しやすい状態になります。そのため、吐き気や胸焼けを感じやすくなるのです。

夜遅い時間の食事や、脂っこい食べ物、アルコール、カフェインなどは、逆流性食道炎の症状を悪化させる要因となります。生活習慣の改善や制酸薬の内服など、適切な治療が重要です。

便秘

便秘は、腹痛などの不快な症状だけではなく、朝の吐き気の原因にもなり得ます。便が長時間滞留することで腸の働きが鈍くなり、胃や十二指腸などが押し上げられて食後に膨満感が出やすいため、吐き気を感じやすい仕組みです。

これらの状態が続くと、全身の不調やさらに強い吐き気を引き起こす可能性があります。特に朝起きたときに、胃の不快感や吐き気を感じることがあるのです。

便秘の改善には、十分な水分摂取、食物繊維の摂取、適度な運動が効果的といえます。比喩用に応じて、便秘改善の薬や整腸剤を内服しましょう。また、規則正しい生活リズムを保つことも重要です。

脳の疾患

まれですが、脳の疾患が朝の吐き気の原因となるケースも否定できません。例えば、頭を強く打った後、打撲部や頭全体の痛みとともに吐き気がある場合は危険です。

また、外傷を伴わない吐き気に加えて麻痺症状がみられる場合、吐き気と頭痛があれば脳出血、頭痛がなく吐き気のみの場合は脳梗塞の疑いがあります。麻痺症状がないものの発熱と吐き気・嘔吐が続きだんだんと意識障害がみられる場合は、脳腫瘍や危険な脳炎を疑ってください。

脳の疾患による吐き気は、通常、頭痛や意識障害、麻痺などの他の神経症状を伴います。このような症状がある場合は、すみやかに医療機関を受診しましょう。

精神の疾患

うつ病やパニック障害、不安障害などの精神疾患も、朝の吐き気の原因となることがあります。これらの疾患では、心理的なストレスが身体症状として現れる場合があり、その一つが吐き気です。

先に述べたように、人はストレスを感じると自律神経が乱れてしまいます。自律神経の乱れは、吐き気や嘔吐を引き起こしやすくなるのです。

また、強い緊張や過労なども胃腸の機能に影響を与え、吐き気を引き起こす可能性があります。精神的な問題が原因と思われる場合は、精神科や心療内科での相談が適切です。

高血糖

食事後の血糖値上昇は通常、インスリンというホルモンで正常範囲内に保たれます。しかし、重度の糖尿病患者ではインスリンの分泌不足や効果の低下がみられ、食後の血糖値が異常に高くなる場合があります。

特に夕食を食べ過ぎてしまった際、就寝時に強い吐き気を感じやすくなる傾向です。これは深刻な症状で、入院による治療が必要となります。

糖尿病患者は、食事量の管理と定期的な血糖値チェックが重要です。異常を感じた場合は、すみやかに医療機関を受診することが望ましいでしょう。

虫垂炎

虫垂炎は、一般的に「盲腸」と呼ばれる症状です。この疾患は、特徴的な2段階の痛みを伴います。

まず、虫垂の炎症による内臓痛がみぞおち付近に現れ、吐き気を伴うこともあります。次に、炎症が腹膜にだんだんと広がり、右下腹部に鋭い痛みが生じる段階です。

この痛みは、圧迫やちょっとした動作で感じやすくなります。副交感神経が活性化するとき、特に就寝時に吐き気が悪化する傾向です。

治療には、抗生剤の投与や手術が用いられます。虫垂炎は早期発見と適切な治療が大切なため、典型的な症状が現れた場合はすみやかに医療機関を受診するのがおすすめです。

急性心筋梗塞

急性心筋梗塞は、一般的に胸の痛みが主症状の疾患として知られています。しかし実際は、その症状は非常にさまざまです。

例えば、肩や歯の痛み、胸部圧迫感、さらには吐き気のみを訴える患者も少なくありません。特に長期糖尿病患者や高齢者では痛覚が鈍化し、吐き気が唯一の症状となる場合があります。

心筋梗塞は、症状が突然発症するのも大きな特徴です。しかし、胸部の不快感を伴い、腹部膨満感はあまりみられない傾向があります。

心筋梗塞は一日中どの時間帯でも起こり得ますが、特に発症しやすいのが入浴中です。入浴後に「なんとなく気分が悪いな」と感じながら就寝し、次第に症状が悪化して救急搬送されるケースも珍しくありません。

思い当たる症状がみられた場合はすみやかに医療機関を受診し、適切な治療を受けるのが極めて重要です。

吐き気で目が覚めるときの対処法

吐き気で気持ちが悪くて目が覚めてしまう方や朝の吐き気に悩まされている方のために、効果的な対処法をいくつか紹介します。症状の原因や程度に応じて、適切な方法を選んでみてください。

十分な休息をとる

十分な休息は、体調回復の基本です。特に吐き気で目が覚めてしまう場合は、無理をせずにゆっくりと体を休めましょう。

できれば、起床後しばらくはベッドで横になり、ゆったりと深呼吸をしながらリラックスするのがおすすめです。急に起き上がると吐き気が悪化する可能性があるため、ゆっくりと体を起こすようにしましょう。

睡眠の質を高める行動も大切です。特に、画面から強い光を放つスマホを寝る前に見るのは、睡眠障害を招く大きな原因といえます。21時以降は画面の明るさを暗くする、睡眠の2時間前にはスマホをベッドから遠ざけるなど、ゆるやかに入眠できるように対策してみてください。

生活リズムを整える

規則正しい生活リズムの維持は、自律神経のバランスを整え、朝の吐き気を軽減するのに役立ちます。できるだけ同じ時間に起床・就寝をするよう心がけましょう。

また、規則的な時間での食事も規則的大切です。特に夜遅くに食べるのは避け、就寝の2〜3時間前には食事を終えるようにしましょう。

さらに、適度な運動も生活リズムを整えるために効果的です。ただし、激しい運動は逆効果になる可能性があるので、ウォーキングやヨガなど、無理のない範囲で体を動かすことをおすすめします。

特にヨガは、ポーズやストレッチだけではなく、呼吸法も組み込まれています。静寂の中で目を閉じて集中力を高める瞑想もおすすめです。

これらを日常的に取り入れてストレスや緊張から緩和されると、睡眠も安定しやすくなり起床時の吐き気を予防できます。

食生活を改善する

朝の吐き気の軽減には、食生活の改善もポイントです。

まず、消化に良い食事を心がけましょう。脂っこい食べ物や刺激物は控え、消化の良い食品を中心に摂取します。例えば、バナナやクラッカー、おかゆなどは胃に優しい食品です。

また、食事の量にも注意が必要です。一度に大量の食事をとると胃に負担がかかるため、少量ずつ頻回に摂取する方がいいでしょう。

さらに忘れてはならないのが、水分補給です。特に起床後や就寝前は、ぬるま湯やハーブティーなどを少しずつ飲めば、胃の状態を整えたりリラックス効果を高めたりする効果が期待できます。

家族や友人と話をする

人と会話をすると分泌されるのが、オキシトシンと呼ばれる通称「幸せホルモン」です。そのため、家族や友人とおしゃべりすることで脳が活性化して充実感が得られ、ストレス症状が軽減される可能性があります。

さらに、悩みや不安を一人で抱え込まずに信頼できる人に相談すると、自分の状況を客観的に見つめ直すきっかけにもなり得ます。

会話は、一方的には成り立ちません。自分について話したり相手の話に相槌を打ちながら共感したりすることで脳の前頭葉が刺激され、リラックス効果が期待できます。

カウンセラーに相談する

朝の吐き気が心理的な要因によるものだと思われる場合は、専門家のカウンセリングを受けることも有効な選択肢です。日常の愚痴や悩みは一人で抱え込まず、プロの心理カウンセラーに打ち明けてみましょう。

カウンセラーは、あなたの悩みや不安を丁寧に聞き取り、問題解決のサポートをしてくれます。個人に合わせたストレス管理の方法やリラックス法などを、直接教えてもらえるのもメリットです。

カウンセリングを通じて自分自身や周囲の環境の新たな気づきを得られれば、症状の改善につながる可能性もあります。「直接クリニックへ出向くのはちょっとハードルが高い…」という方でも、オンラインで受けられるカウンセリングであれば気軽に利用できるでしょう。

医師の診断を受ける

朝の吐き気が長期間続く場合や他の症状を伴う場合は、迷わず医師の診断を受けましょう。まずは、通い慣れているかかりつけ医に相談するのがおすすめです。

症状の詳細や生活習慣について聞き取りを行い、必要に応じて検査を進めます。原因が特定できない場合は、消化器内科や心療内科などの専門医を紹介してもらう場合もあります。

診断を受ければ、適切な治療が検討可能です。また、潜在的な病気を早期に発見できるきっかけにもなります。

「出ている症状は吐き気くらいだから」「耐えられる範囲だから」と自己判断で症状を放置せず、専門家の意見を聞くのが、健康管理の基本です。

病院に行くタイミングはいつ?

「朝の吐き気が続いてるけど、どのタイミングで病院に行くべき?」と迷う方もいらっしゃることでしょう。

ストレスが溜まると、吐き気をはじめ、倦怠感や微熱、動悸、耳鳴り、頭痛など自律神経失調症が現れる場合があります。しかしこれらは、自律神経失調症に限ったものではない症状です。

「安静にしていれば治るはず」と受診を長引かせてしまった結果、深刻な精神疾患になってしまうケースもあります。早期発見・早期治療が重要な病気もあるため、症状が気になる場合は、ためらわずに医療機関へ相談しましょう。

特に「疲れているはずなのにぐっすり眠れない」「好きなことや趣味が楽しめない」との症状が1日中、毎日、1週間以上続く際は、早めに精神科または心療内科への受診がおすすめです。

なお、吐き気以外に「激しい頭痛がする」「胸が痛む」「背中や腰に激痛が走る」「ひどい嘔吐がある」「ろれつが回らない」などの症状がみられる場合は、早急に治療が必要な病気の可能性があります。すみやかに医療機関へ受診してください。

市販薬の利用はOK?

朝の吐き気に悩まされたとき、市販の胃腸薬や制吐剤を利用したいと考える方も多いでしょう。しかし、症状が「急な吐き気のみ」の場合、市販薬での対処はあまりおすすめできません。

そもそも、吐き気や嘔吐の原因は、消化管の機能障害や細菌への感染、脳や中枢神経系の疾患、糖尿病などの全身性疾患、精神疾患、異物の誤飲など多岐にわたります。それを市販薬で抑えてしまっては、身体の異常を知らせる大切なサインを見逃してしまうかもしれません。

明らかな食べ過ぎやひどい便秘など、原因が明確な場合を除いては、慎重に判断するのがよいでしょう。もしも市販薬を利用する場合は、次のことに注意が必要です。

  • 薬剤師に症状や既往歴、服用中の薬などを伝え、適切な薬を選んでもらう
  • パッケージや説明書をよく読み、指示された用法・用量を厳守する
  • 数日使用しても効果がない場合は、使用を中止する
  • 妊娠中や授乳中の方は、必ず医師や薬剤師に相談してから使用する
  • 過去に薬でアレルギー反応を起こしたことがある場合は、成分をよく確認する

市販薬は便利ですが、根本的な原因解決にはならない場合があります。繰り返しになりますが、症状が長引く場合や悪化する場合は、すみやかな医療機関への受診がおすすめです。

吐き気で目が覚める原因を探して自分に合った対処法を

朝の吐き気は、ストレスや自律神経の乱れ、さまざまな疾患など、多岐にわたる要因で引き起こされる不快な症状です。一時的な症状の場合、十分な休息や生活習慣の改善、ストレス管理などで対処できる可能性があります。

慢性的な吐き気で悩まれている方は「いつ、どんなときに吐き気が起こりやすいか」を考え、自分に適した対処法を探してみてください。

市販薬の利用は一時的な症状緩和には効果的かもしれませんが、根本的な原因解決にはならないケースがあります。自己判断での長期使用は避け、症状が改善しない場合は医療機関を受診しましょう。

健康的な生活習慣を心がけながら自分の体と向き合い、必要に応じて適切なケアや医療を受けることが、快適な朝を迎えるための第一歩です。

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