疲れた脳を休める方法とは?「脳疲労」の症状や睡眠以外の回復方法も解説

現代社会において、私たちの脳は常に活発な活動を強いられています。スマートフォンやパソコンの長時間使用、ストレスの多い仕事環境、情報過多な日常生活など、さまざまな要因で「脳が疲れている」と感じる機会が増えた方も多いのではないでしょうか。

本記事では、脳疲労の原因や症状、そして日常生活に取り入れやすい脳の休め方について詳しく解説します。「脳の疲れを改善したい」「スマートフォンホやパソコンを長時間使うのがいけないの?」そう気になっている方は、ぜひ脳を上手にケアするヒントを見つけてみてください。

執筆者

梅田ミズキさん

認定心理士、サービス介助士。大学で臨床心理学・産業組織心理学・発達心理学などを学び、卒業後は公的施設にて精神疾患の方のケアや介助業務、ご家族の相談対応などに従事しながら、ホームページ掲載用のコラムやミニ新聞を執筆。現在はフリーライターとして独立し、くらしにまつわるエッセイの執筆、臨床心理・発達支援・療育関連のコンテンツ制作および書籍編集に携わりながら、心理カウンセラーも務めている。趣味は読書、映画鑑賞、気まぐれで向かうプチ旅行。

目次

脳疲労とはどういう状態か

「脳疲労」とは、日々の仕事やストレス、情報過多な環境によって脳が情報をうまく処理できていないことを指します。過度に刺激や負荷を受け続けて、正常な機能が維持できなくなった状態です。

スマートフォンの普及で情報を得る速度が急激に上がり、処理が追いつかないことで現れるものといえます。そのため、病名ではありません。

脳は、体重の2%程度しかないにもかかわらず、体全体の20%ものエネルギーを消費します。長時間の集中作業などでこのエネルギーが不足すると、いわゆる「脳疲労」に陥るのです。

脳疲労は、身体的な疲労とは異なる以下のような特徴を持っています。

  • 特定の休息だけでは回復しにくい
  • 集中力や記憶力、判断力などの認知機能に直接影響する
  • 情緒不安定やモチベーションの低下など、精神面にも影響を及ぼす

つまり、単なる眠気や一時的な集中力の低下とは異なり、より長期的で深刻な影響を及ぼす場合もあるといえます。

脳疲労の原因とは?

脳疲労の原因は多岐にわたりますが、現代社会特有の要因が多く含まれています。日々の生活習慣や環境が、知らず知らずのうちに脳に負担をかけている可能性もあるのです。

脳疲労は、主に以下のものが原因と考えられています。

長時間のデジタルデバイス使用

スマートフォンやパソコンなどのデジタルデバイスの長時間使用は、脳疲労の大きな原因の一つです。例えば、スクリーンから発するブルーライトは目の疲れを引き起こし、脳の疲労にも繋がります。

また、SNSやニュースアプリなどを通じて絶え間なく情報を取り入れた後、脳が過度に刺激を受けていると感じたことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。気になる項目を検索サイトで手軽に調べられたり第三者と気軽にコミュニケーションが取れるのは、便利な一方で入ってくる情報量が増え、脳を疲れさせる原因ともなり得るのです。

精神的なストレス

慢性的なストレスは、脳の機能にも大きな負担をかけます。例えば、ストレスにさらされる状況が続いた場合、不眠の原因になりがちです。

その結果、脳を休息させる時間が減少してしまい、脳疲労をかえって招いてしまうリスクが高まります。睡眠の質の低下は、脳の回復を妨げてしまうのです。

生活習慣の乱れ

睡眠だけではなく食生活の乱れや運動不足も、脳疲労を助長させる要因となり得ます。例えば「朝食を食べたり食べなかったりする」「1日何食にするか決めていない」「就寝の直前にも食事を摂ることがある」など食生活が乱れると、高血糖や栄養の偏りを招き、脳の疲労に影響を及ぼしかねません。

また、適度な運動も脳の健康に不可欠です。運動不足になると脳への血流が低下し、十分な酸素や栄養が供給されにくくなります。その結果、倦怠感や集中力の低下が生じやすいのです。

過度の多重タスク

現代社会では、複数の作業を同時に行う「マルチタスク」が求められがちです。しかし、一度に注意を割くべきものが多いほど、各タスクへの集中力は低下します。このような状況では、脳が働きすぎて消費するエネルギーが増加してしまい、脳疲労に繋がると考えられているのです。

マルチタスクは一見効率的に見えますが、実際には各タスクの質と効率を低下させ、結果的に脳疲労を招きやすくなります。

脳疲労のサインや症状とは?

脳疲労は、身体の疲れとは異なる独特のサインや症状で現れやすいのが特徴です。そのため、早い段階で症状を認識し、適切に対処するのが重要といえます。

脳が疲労している場合に出現しやすいのは、以下のようなサインや症状です。

認知機能が低下してミスが増える

特に顕著な脳疲労の症状は、集中力や記憶力などの認知機能の低下です。「長時間一つのタスクに集中できない」「些細な刺激に気を取られやすくなる」「日常的な約束や予定を忘れやすくなる」などの状態から、ミスも増えやすくなります。

また「複雑な問題解決に時間がかかる」「アイデアや創造的な思考が浮かびにくくなる」「意思決定に迷いが生じやすくなる」など、思考の鈍化がみられるのも特徴です。

他にも「会話や講義の内容を追いきれない」「車の運転中に注意散漫になりやすい」「マルチタスクの効率が著しく低下する」など、注意力の散漫も目立つようになります。

身体的な疲労が出現する

脳疲労は、身体にもさまざまな影響を及ぼします。例えば「慢性的な頭痛や頭重感を感じる」「前頭部や後頭部に痛みや圧迫感がある」など、脳が疲れることで頭痛を訴える方も少なくありません。

また「目が乾燥したりチカチカしたりする」「首や肩に慢性的な張りや痛みを感じる」などの疲労を訴える方もいらっしゃいます。

さらに、前述したとおり脳疲労により睡眠の質が低下し、寝つきが悪くなったり夜中に何度も目が覚めてしまったりする場合もあります。朝起きても疲れが取れていない感覚があると、結果として疲労感が蓄積してしまいやすいのです。

「日中の眠気が増した」「長く眠ったのに疲れが取れていない気がする」「以前よりも疲れやすくなった感覚がある」そんな方は、脳疲労が原因かもしれません。

感情のコントロールが難しくなる

脳が疲労すると、些細なことで苛立ちを感じやすくなったり周囲の人とのコミュニケーションにストレスを感じたりするなど、感情のコントロールが難しくなると考えられています。

「仕事や趣味への興味が薄れた気がする」「新しいことに挑戦する意欲が湧かない」など、モチベーションの低下を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。「小さな問題を過大に捉えてしまう」「自信が持てなくなった」など、不安感が増えたと感じている方も多いかもしれません。

脳疲労が蓄積すると、何事にも前向きになれなくなり、楽しいはずの活動も楽しめなくなりがちです。自然と社交的な場面を避けたくなるため、喜怒哀楽の表現が乏しくなり、周囲の出来事に無関心になったり感情的な共感が難しくなったりします。

ただし、上記で挙げた症状は、個人によって現れ方や程度が異なるものです。また、一時的なストレスや疲労でも似た症状が現れるケースがある点もご留意ください。

症状が長期間続く場合や日常生活に支障をきたす場合には、精神科へ相談するなど、適切な対処を考える必要があります。

脳疲労をそのままにしたときのリスクとは?

「脳疲労を放置する」とは、自律神経の乱れた状態が長く続くということです。つまり、単に一時的な不調にとどまらず、以下のような深刻な問題へ繋がる場合があります。

慢性的な健康問題が現れる

脳疲労が長期化すると、さまざまな健康問題を引き起こしかねません。頻繁な頭痛や偏頭痛を発症するリスクも高まります。

また、不眠症や睡眠時無呼吸症候群などの睡眠障害が悪化したり、慢性的な睡眠不足で昼夜逆転したりなど、生活リズムの乱れに繋がる危険性も否定できません。さらに、ストレスホルモンの一つ「コルチゾール」が過剰分泌されると免疫が抑制されてしまい、風邪や疾病の発症リスクも増加します。

過敏性腸症候群などストレスによる胃腸の不調が増加したり、食欲不振や過食など食行動の乱れが生じたりするケースもあるため「これくらい大丈夫」と放置してしまわない心掛けが必要です。

認知機能が長期的に低下する

脳疲労になると「浅く考える機能」を担う前頭前野の情報処理機能全体が低下しがちです。その結果、物忘れが多くなったり約束をすっぽかしてしまったりなどの症状が出現する場合があります。

また、集中力の低下が日常的になり、仕事や学業のパフォーマンスが著しく低下してしまうケースも少なくありません。マルチタスクをこなす能力も下がり、効率的な作業が困難になってしまいます。

さらに、創造性が減退してしまうリスクが高いのも、脳疲労の特徴です。新しいアイデアを生み出す・問題を解決する能力が低下したり、柔軟な思考が困難になったりする場合があります。

メンタルヘルスの悪化

長期的な脳疲労によって意欲の低下や無気力感が慢性化し、日常生活に支障をきたした場合、うつ病の発症リスクを高める要因にもなり得ます。

また、自律神経が乱れると過度の心配や恐怖感が日常的になり、パニック発作や社会不安障害などを発症する可能性もあるのが特徴です。

さらに、脳が常に疲れている状態では仕事や人間関係でも極度のストレスが蓄積しやすくなり、自己効力感の著しい低下から、燃え尽き症候群を発症する場合もあります。

社会生活への影響

「仕事の効率がどうにも上がらなくなった」「業務中のミスが増えた…」そのような悩みを持ちながら、この記事を読んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。

脳疲労の影響は、社会生活全般にも及ぶ可能性があります。仕事のパフォーマンスの低下を招くだけではなく、イライラや短気が増して周囲との関係性が悪化したり、コミュニケーション能力が下がって誤解や対立が増えてしまったりするケースも珍しくありません。

また「余暇を楽しむ余裕がなくなったり家族との時間や自己啓発の機会が減少したりすることで、自己嫌悪に陥ってしまった」との声も聞かれます。

身体的な健康リスク

脳の持続的な疲労から、血圧の上昇や動脈硬化を進行させてしまうおそれもあります。心臓病や脳卒中など、心血管疾患のリスクが増加するのです。

また、ストレスによる食行動の乱れや運動不足から、肥満や糖尿病の危険性も高まります。慢性的な姿勢の悪化や運動不足による腰痛、肩こりの悪化、関節炎や筋肉の萎縮など、筋骨格系の症状も脳疲労とは切り離せない問題です。

上記のリスクは、脳疲労を放置すると徐々に蓄積され、長期的に深刻な健康問題や生活の質の低下を招く可能性があります。そのため「脳疲労の初期症状を感じた段階でできるだけ適切な対策を取る」ことが非常に重要です。

脳を休める方法、回復方法とは?

脳疲労は、適切な休息と効果的なケアで改善が見込めます。とはいえ「具体的にどう休めればいいの?」「病院へ行くしかない…?」と気になる方もいらっしゃいますよね。

以下に挙げた脳の休め方は、日常生活のなかで実践できます。

質の高い睡眠を確保する

睡眠は、脳疲労を改善するための重要な要素の一つです。以下のことを試して、質の良い睡眠を目指してみてください。

睡眠環境の整備

  • 適切な室温(18-28℃)と湿度(40-60%)を維持する
  • 遮光カーテンや耳栓を使用し、光や音の刺激を最小限に抑える
  • 快適な寝具(マットレス、枕)を選択する

睡眠リズムの調整

  • できるだけ毎日同じ時間に起床・就寝する習慣をつける
  • 休日も平日と同じリズムを維持する
  • 昼寝をする場合は15-30分程度に留め、午後3時以降は避ける

就寝前のルーティン

  • 就寝1-2時間前からスマートフォンやパソコンの使用は控え、ブルーライトをカットする
  • 読書、瞑想、軽いストレッチなどリラックスできる活動をする
  • カフェインやアルコールの摂取を控える

マインドフルネス瞑想を実践する

マインドフルネス瞑想は、脳をリラックスさせ、ストレスを軽減する効果的な方法です。

基本的な瞑想の方法

①静かな場所で快適な姿勢をとる
②呼吸に意識を向け、ゆっくりと深呼吸を繰り返す
③思考が浮かんでも判断せず、優しく呼吸に意識を戻す
④5-10分程度から始め、徐々に時間を延ばしていく

アプリやガイド音声の活用

  • Headspace、Calmなどのマインドフルネスアプリを利用する
  • YouTubeなどのチャンネルを活用する

日常生活への取り入れ方

  • 朝起きてすぐ、または就寝前に実践する
  • 昼食後の短い時間を利用して行う
  • 仕事の合間に5分程度の「マイクロ瞑想」を行う

適度に運動をする

適度な運動は、脳の血流を改善します。ストレス解消にも効果的なため、心身ともにリラックス効果が期待できるのも魅力です。

有酸素運動

  • ウォーキング、ジョギング、サイクリングなどを週3-4回、30分程度行う
  • 高強度と低強度を交互に行う「インターバルトレーニング」を取り入れる

ヨガやピラティス

  • 身体の柔軟性を高めながら精神面もリラックスさせる
  • 呼吸法と組み合わせて、よりストレス解消効果を促す

デスクワーク中の小休憩

  • 1時間に1回、5分程度の軽い体操やストレッチを行う
  • 「立ち上がって歩く」「階段を使う」など、小さな運動を意識的に取り入れる

自然との触れ合い

以下のように自然環境に身を置くのは、脳のリフレッシュに非常に有効です。緑の葉の香りは、ストレスを解消したり疲労の回復を促したりする効果が期待できるとされています。

森林浴

  • 週末を利用して近隣の森や公園で過ごす
  • 樹木などが発する物質「フィトンチッド」を浴びてストレス軽減を目指す

ガーデニング

  • 室内外で植物を育てる
  • 植物の世話をして静かで心地よい時間と達成感を得る

自然音の活用

  • 雨音、波の音、鳥のさえずりなどの自然音を聴く
  • 作業中や睡眠時にBGMとして活用する

デジタルデトックス

テクノロジーからの一時的な離脱は、脳に休息を与える貴重な方法です。情報過多な現代だからこそ、デジタルデトックスは脳疲労に大きな効果をもたらします。

スマートフォンの使用制限

  • 「就寝前2時間「起床後1時間」など、特定の時間帯はスマートフォンを使用しない
  • 通知をオフにし、必要な場合だけ確認する習慣をつける

SNSの利用時間管理

  • SNSの利用時間を記録し、徐々に減らしていく
  • 特定の日(週末など)をSNSフリーデーに設定する

オフラインの趣味の発見

  • 読書、絵画、楽器演奏など、デジタル機器を使わない趣味を見つける
  • 友人や家族と対面でのコミュニケーションを増やす

栄養バランスの改善

食生活の乱れも関連していると前述したとおり、適切な栄養を摂取することも、脳の健康維持と回復に不可欠といえます。

脳に良い食品の摂取

  • オメガ3脂肪酸:サーモン、マグロ、亜麻仁油など
  • 抗酸化物質:ブルーベリー、ダークチョコレート、緑茶など
  • ビタミンB群:全粒穀物、豆類、緑黄色野菜など

水分補給の重要性

  • 適切な水分摂取(1日約2リットル)を心がける
  • カフェインやアルコールの過剰摂取を避ける

規則正しい食事

  • 1日3食、決まった時間に食事を摂る
  • 朝食をしっかり摂り、夜遅い食事を避ける

クリエイティブな活動の実践

脳に新しい刺激を与えられる創造的な活動も、リフレッシュ効果が期待できます。

アート活動

  • 塗り絵、スケッチ、陶芸などの手作業を楽しむ
  • 技術よりも過程を楽しむことに重点を置く

音楽活動

  • 楽器演奏や歌唱を楽しむ
  • 音楽を聴くだけでなく、能動的に音楽に関わる

創作活動

  • 日記やブログの執筆
  • 小説や詩の創作にチャレンジする

社会的つながりの維持

人との交流は脳に適度な刺激を与え、ストレス解消に効果的です。また、人と関わることで孤独感が軽減され、安心感も得られます。

対面でのコミュニケーション

  • 友人や家族との定期的な会食や活動を計画する
  • 地域のイベントやボランティア活動に参加する

オンラインコミュニティの活用

  • 趣味や関心ごとを共有するオンライングループに参加する
  • ビデオ通話を活用して遠距離の友人や家族と交流する

ペットとの触れ合い

  • ペットの世話や遊びの時間を設ける
  • 動物との触れ合いによるストレス軽減効果を活用する

大切なのは、上記の方法を組み合わせながら、自分に合ったリラックス方法や脳の休め方を見つけることです。急激な変化よりも、小さな習慣から始めて徐々に生活へ取り入れていくのをおすすめします。

脳疲労の改善には「これさえやっていればいい」という手段はありません。しかし、長年の習慣を見直してみると、意外にも「これが原因だったんだ…!」と気がつく可能性があります。

「脳を休める」習慣は自分でゆっくり作るもの

脳疲労は決して珍しいものではなく、多くの方が経験している現代社会の課題です。しかし、まずは「脳が疲れている気がする…」と自分の状態に気づいた時点で、適切なケアと生活習慣の改善を目指せる大きな一歩といえます。

睡眠の質を高めつつ適度な運動を取り入れ、ときにはデジタルデバイスから離れる時間を作ってみましょう。自然との触れ合いやクリエイティブな活動も、脳のリフレッシュに効果的です。一朝一夕には改善しないかもしれませんが、小さな変化から始めていけば新しい習慣になり、体調や心が整っていきます。

脳は、あなたの人生の大切なパートナーです。丁寧にケアして上手に付き合いながら、自分のペースで、焦らずにリラックスできる方法を実践してみてください。

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