親との関係がしんどい…40代50代、大人の親子の距離感や対処を心理士が解説

「親があれこれ口を出してきて正直しんどい…過干渉な親とのちょうどいい距離感って?」「親から電話がかかってくるたびに愚痴ばかりで、話すのが辛い」このように感じることはありませんか?

自身が大人になり、年齢を重ねるにつれて、親との関係も少しずつ変化していきます。特に親が高齢になってくると、これまで気にならなかったことが負担に感じられることも。

そこでこの記事では、親との関係がしんどくなる理由や、適切な距離感を見つけるための方法について解説しますので、ぜひ参考にしてください。

執筆者

臨床心理士・公認心理師

あらいひさきさん

大学院修了後、「心穏やかに過ごせるように」という信念のもと企業にて研究員としてメンタルヘルスサービスの開発に携わる。認知行動療法を専門とし、精神科での心理相談にも従事する。うつや不安、職場でのメンタルヘルスや発達障害、不登校など幅広いケースのカウンセリングを担当。

目次

大人になってからの親子関係がしんどいと感じる要因や心理とは?

親との関係が、大人になってから急にしんどく感じられるのには、年代的な背景や心理的な要因が関係しています。ここでは以下の3つの観点からその理由を探ってみましょう。

①人生経験を積み、価値観の違いが浮き彫りになるから

子どものころや若いころは、親の意見や行動を「親の言うことだから正しい」「そういうものだ」と受け入れていたかもしれません。しかし、大人になり人生経験を積むにつれ、親の価値観や考え方が自分と大きく異なっていることに気づくことがあります。

過去の親の言動が今でも心に引っかかっているということはありませんか?

例えば、自分が子どもを持つ立場になったとき、自分の親の言動を振り返り、「こんな小さな子どもにあんな厳しいことをしていたのか」と改めて怒りや悲しみを感じることもあるかもしれません。

②親が高齢化して心身に変化が生じるから

親が年齢を重ねると、これまでのように元気ではいられなくなり、身体的な衰えや健康面での問題が目立つようになります。こうした変化に対して、子ども側はさまざまな感情を抱くものです。

通院や日常生活のサポートが必要になる場合もあります。そのような場合は子ども側も身体的・精神的な負担が大きく、これまでの親子関係が良好だったとしても「しんどい」と感じることがあります。

さらに、親自身も体力や気力の低下によって不安や寂しさを感じやすくなります。それが子どもへの依存につながることも少なくありません。このような状況が続くと、親子関係でのストレスが生じやすくなります。

③ダブルケアによって負担が増えるから

40代、50代は仕事では責任ある立場を任されることが増え、家庭では子どもの受験などで負担が大きくなる時期です。さらに自身の老いも感じるようになり、「無理がきかなくなってきた」という人も多いのではないでしょうか。

その中でさらに親の介護やサポートが必要になると、身体的にも精神的にも疲労困憊となってしまいます。育児と介護というように、複数のケア役割が重なり合う状態は「ダブルケア」と呼ばれています。

高齢の親との関係がしんどいと感じる代表的なパターン

ここでは、代表的な6つのパターンについて、それぞれ詳しく見ていきます。

①過干渉で価値観を押し付けてくる

子どもの生活や考え方に対して、親自身の価値観を押し付けてきて「しんどい」パターンです。単に過干渉なだけでなく、「良かれと思って」善意で押し付けてくるパターンもあり、しんどく感じられやすくなります。

過干渉パターン

親から、日常の行動や選択に細かく口を出されると自由が奪われているようで息苦しく感じます。特に、仕事や人間関係、結婚、子育てについては世代間でも価値観の衝突が生じやすいです。

【具体例】                                             「そんな仕事はやめたほうがいいんじゃないか?」
「私のときはこうだったから、こうした方がいい」
「早く結婚して子どもを産みなさい」

善意の押し付けパターン

親から「良かれと思って」された行動やアドバイスが、実際には子どもの負担になることも。「善意」であることから拒否することにも罪悪感を感じやすく、ストレスが溜まってしまいます。

【具体例】
「あなたのためにこれを買ってきたの」
「これが必要でしょう?」

②精神的・経済的に頼られてしまう

親から精神的・経済的に頼りにされることで、自分のキャパシティを超えてしまうと「しんどい」と感じるようになります。

精神的な依存

親が「寂しい」「あなたしか頼れない」と子どもに寄りかかるようになるパターンです。親からの小さな頼みごとを断れず、負担感が積み重なっていきます。

経済的な依存

「年金だけではやっていけない」「お金がない」と言われ、生活費や医療費などのサポートを求められる場合もあります。子ども側の経済状況が苦しくてもなかなか断りづらく、親子関係がギクシャクしてしまうことも。

③愚痴ばかりで話すのがしんどい

親との日常的なコミュニケーションがストレスの要因になるパターンもあります。

例えば、会話の内容が愚痴や不満ばかりでポジティブな言葉がほとんどないと、話すたびに気持ちが沈んでしまいます。また、親子だからといって性格が合うとは限りません。どこか話がかみ合わず、連絡を取るたびにどっと疲れてしまうということもあるでしょう。

このようなことが繰り返されると、電話やメッセージのやり取りをするのも「しんどい」と感じるようになります。

④過去のことが許せなくてしんどい

子どもに受けた親の言動が、ずっと心に残っていて「しんどい」と感じるパターンです。

【具体例】
・行きたい大学や就きたい仕事があったのに、自分の希望を尊重してくれなかった
・何をやっても完璧を求められ、褒めてくれなかった
・自分の趣味を馬鹿にされて悲しかった
・大切なものを勝手に捨てられた

このような過去に受けた心の傷は、年月が経ってもふとした時に疼き、悲しみや怒りがこみあげてしまうことがあります。

⑤親の老いに直面するのがしんどい

親が年を重ねていく姿に直面することに、「しんどさ」を感じることがあります。

かつて元気だった姿を知っているからこそ、背中が小さくなり、手足が細くなっていく様子に寂しさを覚えることもあるでしょう。
また、頼りにしてきた親が変わっていくことへの悲しみや、いつかこの世からいなくなってしまうかもしれないという心細さが押し寄せることもあります。

⑥介護が必要になってきた

親の老化や病気によって、介護や生活のサポート支援が必要になり、「しんどい」と感じるパターンもあります。

このパターンでは、精神的な負担に加えて、通院の付き添いや日常的な介護のために、時間や体力、経済的な負担も大きくなります。また、仕事や自分の家庭との両立という問題も立ちはだかります。

40代50代になってからの親とのちょうどいい距離感とは

①物理的な距離と精神的な距離を意識する

親とのちょうどいい距離感を考える際、物理的な距離と精神的な距離を分けて捉えることが大切です。

たとえば、住む場所は物理的な距離に該当します。しかし、「距離を取りたい」と思っても、近くに住んでいる場合、引っ越しをするのは簡単ではありません。費用や時間がかかるうえ、親子関係に与える影響も大きくなりがちです。

一方で、精神的な距離であれば、自分のペースで少しずつ調整していくことができます。

【具体例】
・毎日していた親との電話を、2日に1回にしてみる。
・これまで親からの頼みごとに全て応じていた場合、時には断る選択をしてみる。

もちろん、可能であれば物理的な距離を調整することも有効です。たとえば、親と会う頻度を減らしたり、会う時間帯を変更してみたりするのも良いでしょう。自分にとって無理のない「ちょうどいい距離感」を探してみることが大切です。

②完璧を目指さない

親との関係にしんどさを感じる人は、「親を悲しませてはいけない」「親は自分を頼りにしているから」といった気持ちを抱きやすい、優しい方が多いです。そのため、自分のことを後回しにし、無理をしてしまうことも少なくありません。

親子関係において、親も子も完璧に満足できる距離感を一度で見つけるのは難しいものです。そのため、「少しずつできそうなことから試してみる」という柔軟なスタンスを持つ方が、「ちょうどいい距離感」に近づきやすくなります。

まずは、「自分が無理をしていないか」を基準に、親子関係を見直してみることから始めましょう。

③無理に縁を切る必要はない

親との距離感を考える際、「距離を取る」という表現が「縁を切る」というイメージに繋がることがあります。しかし、距離を取るとは、「お互いにとってちょうどいい距離」を探ることであり、親との関係を断つこととは全く異なります。

適切な距離を保つことで、お互いが無理なく心地よい関係を築くことが可能です。たとえば、会う頻度を減らすことで、しんどさや負担感が軽減され、以前より良好な関係を築けるケースもあります。

また、距離を取ることに対して「親不孝だ」「冷たい人間だ」といった罪悪感を感じる方も多いですが、無理をして関係を続けることが、かえって親子双方にとって負担になることもあります。距離を取ることは冷たさではなく、長く良好な関係を続けるために必要な選択肢の一つだと捉えてみましょう。

親子関係のしんどさを軽くする対処法や考え方のポイント

親子関係のしんどさを軽くするには、完璧を目指さず自分ができそうなことから少しずつ始めることが大切です。ここでは対処法や考え方のポイントを6つ紹介します。

①自分の気持ちに耳を傾ける

まずは、自分の感情に向き合うことから始めましょう。「親の期待に応えなければ」「自分のために言ってくれているのだから」といった思いから、自分の本音を押し殺していませんか?

「親の要望」だけでなく、「自分はどうしたいのか」に目を向けることが大切です。

例えば、こんなふうに自問してみましょう。「親がこうしてほしいと言っているけれど、私自身はどう感じているのか?」

最終的に、親の希望を優先するのか、自分の意思を大切にするのかはその都度選べば大丈夫です。まずは自分の気持ちに耳を傾けることが、しんどさを軽くする第一歩です。

②物理的な距離を調整する

会う頻度や時間帯など、物理的な距離を調整することで、しんどさがどのように変わるかを試してみましょう。

【具体例】
・帰省を断ってみる
・毎週会っていたのを2週間に1回にしてみる
・引っ越しをして生活圏を分ける

ただし、物理的な距離を取ることが難しい場合もあるでしょう。そのようなときは、次に挙げる「精神的な距離」の調整から始めてみてください。

③精神的な距離を調整する

物理的な距離が変えられなくても、心の距離を意識的に調整することで、自分を守ることができます。

【具体例】
・毎日電話していたのを、週数回に減らす
・電話の時間を短くする
・親からの頼まれごとを、時には断るようにする

さらに、親からの愚痴や価値観の押し付けがしんどい場合には、「イメージ」を活用する方法がおすすめです。

【おすすめのイメージテクニック】
・親のネガティブな言葉をすべて受け取らず、心に「シャッター」を下ろしてブロックするイメージを持つ。
・自分の心の中に線を引き、不要な言葉や感情を入れないように意識する。

こうした視覚的なイメージを使うことで、精神的な負担を軽減することができます。

④サービスを活用する

介護や生活のサポートが必要な場合、すべてを自分で抱え込むのは危険です。さまざまな公的サービスや地域のサポートがありますので、どんどん活用するようにしてください。

例えば、介護が必要になった場合にはデイサービスや訪問ヘルパーを活用することで、自分の時間を作ることができます。

また、「どのような支援が利用できるのか分からない」と感じたら、地域包括支援センターなどに相談してみましょう。必要な手続きや利用可能なサポートについて教えてもらうことができます。

外部サービスを活用することで、自分の時間や体力を確保し、余裕を持って親と向き合うことができるようになります。

⑤罪悪感は自然な感情であることを認める

親との関係にしんどさを感じていても、「距離を取るのは親不孝では?」「冷たい人間だと思われないか」「見捨てられない」といった罪悪感に悩む方は多いです。

この罪悪感は、親子関係の中で育まれた自然な感情です。しかし、罪悪感に流されて無理を続けることは、結果的に親子関係を悪化させる可能性もあります。

罪悪感そのものを否定するのではなく、「感じても良い」と受け入れたうえで、それに支配されずに行動を起こすことが大切です。

例えば、「少し距離を取ることは、長期的に親子関係を良くするための選択肢だ。」と考えてみましょう。このように捉えることで、心が少し軽くなるはずです。

⑥「自分を守ることも親孝行」と考える

自分の健康や心の余裕を保つことは、親子関係を健全に保つためにも大切な要素です。無理をして自分が心身ともに疲弊してしまうと、結果的に親との関係が悪化することもあります。

親のために何かをすることはもちろん大切ですが、それ以上に「自分を守ることも親孝行の一つ」と考えてみてください。自分が元気でいれば、いざというときに親を支える力も湧いてきます。逆に、無理を重ねて自分が倒れてしまえば、親も安心できないのではないでしょうか。無理をせず、まずは自分を守ることが、親子双方にとって大切なことなのです。

まとめ

この記事では、大人になってからの親子関係で生じるしんどさについて解説しました。

自分もかつての親と同じような年代になると、価値観やライフステージの変化によって親との関係性も少しずつ変化していきます。

特に、大人になってからの親子関係がしんどいと感じる要因は以下の3つが挙げられます。

①人生経験を積み、価値観の違いが浮き彫りになるから
②親が高齢化して心身に変化が生じるから
③ダブルケアによって負担が増えるから

高齢の親との関係がしんどいと感じる代表的なパターンは以下の6つです。

①過干渉で価値観を押し付けてくる
②精神的・経済的に頼られてしまう
③愚痴ばかりで話すのがしんどい
④過去のことが許せなくてしんどい
⑤親の老いに直面するのがしんどい
⑥介護が必要になってきた

40代50代になってからの親とのちょうどいい距離感のポイントは以下の3つです。

①物理的な距離と精神的な距離を意識する
②完璧を目指さない
③無理に縁を切る必要はない

親子関係のしんどさを軽くする対処法や考え方のポイントは以下の6つです。

①自分の気持ちに耳を傾ける
②物理的な距離を調整する
③精神的な距離を調整する
④サービスを活用する
⑤罪悪感は自然な感情であることを認める
⑥「自分を守ることも親孝行」と考える

親と子がお互いにとってちょうどいい距離感を探すため、できることからぜひ試してみましょう。

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