好きな人と結婚して幸せな生活を送っていても、義母との関係性に悩んでいる人は意外と多いものです。結婚は、お互いの家族ともうまくコミュニケーションを取りながら良好な関係を築いていかなければならないため、頭を抱えている人もいるでしょう。
義母は身近な存在でありながらも他人のため、複雑な存在になります。また、うかつに周りに相談できずに悩みを抱えるケースも少なくありません。
このように、表になかなか出せない問題でもあるため、「自分に原因があるのではないか」「自分がおかしいのかもしれない」と考えてしまう場合もあるでしょう。しかし、義母を嫌いになるのには理由があることがめずらしくなく、その対処法を身につければ乗り越えられるケースもあるのです。
この記事では、義母を嫌いになってしまう理由や具体的な対処法、心の守り方などについて詳しく解説します。
心理カウンセラー
久木田(くきた)みすづさん
心理カウンセラー、精神保健福祉士、社会福祉士。現在は、フリーランスライター。
大学卒業後、カウンセリングセンターにて、メンタルヘルスに関する講座やセミナーの講師、個人カウンセリングに携わる。その後、精神科病院でソーシャルワーカー兼カウンセラーとして患者様やご家族のカウンセリング、助言や相談などの仕事に従事。
義母との関係はなぜ難しいのか?
日本では昔から難しい人間関係の代表例として挙げられる「嫁姑問題」。特に、現代の結婚生活の価値観と昔の価値観のあいだには大きな世代間ギャップがあるため、嫁姑が良好な関係を保つのは難しいと言われています。
一昔前までは、男性が外に働きに出て、女性は家を守るものという価値観が一般的でした。しかし、現代では共働きの夫婦も多くなっていますし、男性も家事を手伝うことが当たり前になりつつあります。
こうした価値観の違いは、義母の立場からすると理解するのが難しいケースがあります。また、その矛先が息子ではなく嫁になると、関係性がより悪化することに繋がってしまうのです。
時代の流れとともに、さまざまな価値観の変化を受け入れられる人もいれば、頑なに昔のやり方にこだわる人もいるため、義母との関係性は非常に難しくなるといえます。
義母に対するよくある不満と原因
では、義母に対するよくある不満と原因について見ていきましょう。義母に対してよくあるのは「過干渉」や「嫁をライバル視してくる」、「価値観を押しつけてくる」や「息子への依存が強い」、「裏表が激しい」の5つの要因が代表的です。
過干渉
結婚した夫婦は、お互いの価値観をすり合わせて意見を交換しながら、2人らしい家庭を徐々に作り上げていきます。しかし、夫婦の結婚生活や子育て方針に関して、義母が何かと細かく干渉してくるケースもあるでしょう。また、休日に突然自宅を訪問してきたり、プライベートな空間へ執拗に介入したりなども挙げられます。
義母としては、自分自身の結婚生活で経験した知識などを、良かれと思って干渉してしまっているケースもあるのですが、時代や年代の差によって結婚生活や子育て、プライベートな時間の過ごし方などは変化していきますよね。そうした変化を受け入れずに、何かと干渉されると義母に対して嫌な気持ちを抱きやすくなります。
嫁をライバル視してくる
これは、子離れができていない典型的なケースといえるでしょう。今まで手元で大切に育ててきた息子を独占したいという気持ちが強くなり、嫁に息子を取られる寂しさによってライバル視してしまう場合もあります。
また、姑によっては過去の自分と嫁を重ねてしまい、ライバル視するケースもあります。姑の中では、いつまでも自分が息子の一番の理解者でありたいという気持ちがあり、嫁を下に見て自分の思う通りにコントロールしようとする場合もあるのです。このような状態では、姑と仲良くしたいとは思えなくなりますよね。
価値観を押しつけてくる
姑の年齢にもよりますが、多くの嫁姑問題で挙げられるのは、昔ながらの家事の仕方や育児方法、親戚付き合いに対する価値観です。
たとえば、夫は外に働きに出ているのだから、家のことは嫁が責任を持って1人でこなすべきという考え方や、完全母乳で育てなければならないといった育児に対する価値観が挙げられるでしょう。また、長期の休みや節目のときなどは必ず親戚が集まり、嫁はみんなが楽しく過ごせるように食事の準備などを完璧にしなければならないという考え方もあります。
世代間の価値観のギャップが大きければ大きいほど、価値観の違いを受け入れるのが難しく、その価値観で過ごしてきた経験をそのまま嫁に押しつけてしまう場合も少なくありません。
息子への依存が強い
息子が結婚するまでは、何でも息子に頼り切っていて、何かあると息子に頼んで過ごしていたため、息子がいないと物事を処理できない義母もいます。そのため、息子が自分のコントロールできる範囲内にい続けてくれないと困るため、息子に同居を強く頼むこともあるのです。
嫁としては、義母が何でも夫に頼んできたり、息子がいないと成り立たないような言動が多かったりすると夫婦の時間が確保しづらく、夫婦仲が悪くなる原因にも繋がるので不満になりやすいでしょう。
裏表が激しい
一見すると人当たりが良く、表面上は優しく見えるタイプの義母もいます。嫁を大切にして仲良くしようとする義母を演じていますが、周囲には嫁の悪口を平気で言うなど陰湿な言動がある場合が少なくありません。
嫁の立場としては、自分の知らない所で義母が自分の悪口や陰口を言っていると分かったら、一瞬でそれまでの信頼が崩れるような心理状態になりますよね。自分の前で見せている姿と、自分以外の人に見せている言動があまりにも違うため、義母を信じることができずに嫌いになってしまうのです。
義母との距離感を掴む7つの方法
義母に対して不満がいくつかあるものの、適度な距離感を掴み、できるだけ良好な関係性を維持していかなければならないこともありますよね。ここでは、義母との距離感を掴む7つの方法を紹介していきます。
まずは冷静に、自分の気持ちを整理する
先ほど紹介したような状況に遭遇すると、どんなに温厚な人でもカッとなったり、理性を失ったりする精神状態に追い込まれる場合があります。しかし、カッとなった状態で発した言葉や態度は、その後後悔しても取り消すことができません。特に、義母という特殊な関係性の相手には、より発する言葉は気をつけるべきといえるでしょう。
そのため、感情的になる前になぜ義母を嫌いだと感じるのかの原因を具体的に書き出してみましょう。客観的になることで、頭の中でぐるぐると考えているだけでは見えなかった自分の奥底に隠れている気持ちが掴みやすくなります。
過度な期待を手放し、線引きをする
自分の育った家庭がみんなの仲が良く、バランスのいい関係性を築いている人の場合、自分も義母と良好な関係を築くことを目標にしてしまいがちです。しかし、先ほど紹介したようなタイプの義母である場合は、どんなに嫁側が歩み寄ろうとしても裏切られてしまう可能性が高いでしょう。
そのため、そのような義母とは良好な関係を築くのを目標にするのではなく、適切な距離感を保つ意識が大切です。たとえば「ここまでならば我慢できるけれど、これを言われたら我慢できない」などの線引きを明確にすると、自分の中での限界を把握することができます。
夫に間に入ってもらう
義母との関係性に悩んでいると、どうしても視野が狭くなりがちです。中には、自分に責任があるため何とかしなければ、という思いを抱えてしまう人も少なくありません。しかし、義母は夫の母親ですから、その性格は夫の方が熟知しているのが一般的でしょう。
そのため一番身近にいる夫に「自分が義母に対してどのような気持ちを抱いているのか」「どうして義母を嫌いだと感じるようになったのか」を丁寧に説明し、義母との関係性において協力してもらえるようにお願いすることも大切です。そうすることで、自分自身の精神的な負担を軽減できるかもしれません。
ただし、義母のことを夫に伝えるときには夫を責めるのではなく、あくまで相談ベースを意識しながら伝えるようにしてくださいね。夫にとっては大切な親ですので、一方的に責めるような言い方はいい結果に繋がらないので要注意です。
共通の話題を見つけて、あたりさわりなく付き合う
義母も人間なので、嫁と相性が合わないこともあります。このような場合は無理に仲良くなろうと努力するのではなく、当たり障りのない会話で済ませる方が、お互いにとってもストレスなく付き合えるでしょう。
たとえば、共通の好きなテレビ番組や俳優などがいる場合は、その話題で盛り上がることが可能ですし、お互いに料理が趣味ならば義母の得意料理を教わりつつ、適度な距離感で会話を進めることもできます。
このように、生活の中で一部分でも共通の話題が見つけられ、時々その話題で会話をすれば付き合いとしては十分だといえます。
接触頻度を減らす
義母と一緒に暮らしていない場合は、夫の実家へ訪問する頻度を減らすのも効果的です。電話なども必要最低限の頻度に抑えることで、嫌な思いをする機会を意識的に減らすことができます。
嫁といっても、必ずしも頻繁に義母に会わなければならないわけではありません。必要なとき以外は顔を合わせないのも、1つの方法として覚えておくと良いでしょう。
義母の言動に振り回されない、強い心を育てる
義母の言動に問題があるケースが多いかもしれませんが、それでも嫁側の精神状態によって受け取り方が異なる場面もありますよね。たとえば、ゆったりと自分自身の内面と向き合える瞑想や、体全体をゆっくりと伸ばして体の状態を把握できるヨガ、香りによってストレスフルになっている心身をリラックス状態へ導くアロマテラピーなどは、心身を穏やかに保つために非常に効果的な方法です。
義母と良好な関係性を保つためには、自分自身の心身の安定を最優先に考えることが何よりも大切です。
SNSとの付き合い方を見直す
SNS上には、いろいろな家庭の情報があふれています。義母との関係性に悩んでいるときに、他の嫁姑の良好な関係を描いたSNSを見てしまうと、余計に落ち込んでしまうかもしれません。
その際には「ミュートする」「見ないようにする」など、意識的にSNSから離れる期間を作ることをおすすめします。
それでもつらいときは専門家のサポートも検討しよう
ここまで、さまざまな対処法をお伝えしてきました。しかし、これらの方法を試しても改善が見られない場合は、専門家のサポートも検討することをおすすめします。
たとえばカウンセリングは、仕事上の悩みだけではなく、嫁姑問題を含め心身が疲労してしまうほどのストレスや負担があり、誰かに助けを求めたい場合にも利用が可能です。医師や臨床心理士などの資格を持ったプロが、つらい状況を客観的に観察し、心の状態の整理をつけるサポートをしてくれます。悩みの原因となっている問題を一緒に把握しながら、具体的な対処法を見つけられるように導いてくれるでしょう。
1人で悩んでいると日々の忙しさに追われてしまい、自分のつらい感情に蓋をする人も多いと思います。しかし、改善方法を実践しても前に進めないときには、プロの力を借りるのも悪いことではありません。
義母との関係性で悩んでいるときの相談先としては、「夫婦カウンセリング」や「家族相談窓口」などがおすすめです。夫婦カウンセリングは、夫婦間だけで解決するのが難しいときにカウンセラーを交えて夫婦2人で受けるカウンセリングのことをいいます。カウンセラーの意見も聞きながら、2人にとって最善だと思われる解決策を導く方法です。一方、家族相談窓口は、各自治体に設置されている場合もありますが、厚生労働省のサイトでもさまざまな相談窓口が設置されているので、調べてみましょう。
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まとめ
義母との関係性に悩んでいる人は、想像以上に多いといわれています。身近な存在でありながら、価値観や生活習慣、子育てに関する価値観まで違う他人が良好な関係性を築く必要があるのですから、嫁側だけではなく、姑側にも努力が必要なのです。
しかし、実際には嫁が姑の言うことを聞きながら、穏便に済ませるケースが多く、知らず知らずのうちに嫁側に負担がかかってしまうことが少なくありません。
今回は、義母が嫌いになる理由や具体的な対処法を詳しく紹介しましたので、義母との関係性に悩んでいる人はぜひ参考にしてみてください。