頭の中で考えが浮かんだ瞬間に、口に出てしまったことで、周りの雰囲気が悪くなってしまったことがありませんか?後から「どうしてあんなことを言ってしまったのだろう」と後悔しても、時すでに遅しです。おそらく、全く悪気などはなく、誰かを傷つけたいわけでも悪い雰囲気にしたいわけでもないのでしょう。ただ、自分でブレーキをかけることができないままに、言うべきではない言葉が口から出てしまうという人は一定数います。悩んでいるのは、あなただけではないはずです。
また逆に思ったことを口に出してしまう人が周りにいることで、とても傷つくことが増えてしまう人もいるかもしれません。心ない言葉に、悪意がないとわかっていても傷ついてしまうものですよね。そこでこちらの記事では、思ったことをそのまま口に出すのは、どうしてなのか、原因として考えられることや自分でできる対処の方法、そして自分の身を守る方法を解説します。
臨床心理士・公認心理師
aiirococcoさん
公認心理師、臨床心理士として総合病院に勤めています。小児科外来をはじめ、緩和ケアチームやリエゾンなど幅広い年齢層の方の心理支援を行っています。また、webライターとして主に心理系の記事を執筆中。誰かに相談するほどではないけど困ったな、というときに役立つ情報を発信できるよう頑張ります。
思ったことをすぐ口に出す人の心理とは
思ったことをすぐ口に出す人は、どうしてそういうことをしてしまうのでしょうか。その時の心理状態を知ることが対処方法を探る一歩になります。
①マイペースでいたい
思ったことをすぐ口に出す人は、基本的にマイペースです。会話も自分のペースで進めたいですし、相手の話をじっくりと聞いているのは苦手でしょう。言いたいことがどんどん溜まってきてしまい、割って入るように思ったことを口に出してしまうのです。
思ったことを口に出すことで、大抵は会話がそこでストップします。そうすると、話の主導権が取れるため、無意識のうちにやってしまっている場合があります。
②言わないと忘れてしまう
思ったことをすぐ口に出す人の中には、言わないと忘れてしまうと思っている人もいるかもしれません。大事な話をしなければならないのに、忘れてしまったら困るという考えが根底にあるのでしょう。
そのため、思ったことをすぐ口に出す人というのは、たとえ時間がなくても、相手が話そうとしているタイミングであっても、自分の話をしようとします。思い出したタイミングで話さないと忘れるという不安があるからです。
ところが、それが癖になってしまっており、言わなくていいようなこともすぐ言ってしまうという問題が起こります。日常の中で、自然と思ったらすぐ口に出すということが訓練されてしまっているのでしょう。
③相手の気持ちが想像できない
思ったことをすぐ口に出す人の中には、話をするときに相手の気持ちを想像しながら話をすることが難しい人もいます。これを言われた相手がどう感じるか、というところが失念してしまっているのです。だから、雰囲気を壊すようなことを言ってしまったり、相手が傷つくようなことを言ってしまったりします。
その後の相手の反応を見て、自分が失言をしたことに気づき、慌てる人も多いでしょう。落ち着けば想像できるのですが、想像する前に言葉を発してしまっているのです。また、中にはどうして怒っているのかがわからない人もいます。自分の発言の相手への影響という部分を想像することが難しいのです。
④笑いが取れる
思ったことをすぐ口に出す人は、お調子者な性格の人が多いです。みんなを盛り上げたい、楽しませたい、笑いを取りたいという気持ちが強いため、テンポの速い会話を好みがちかもしれません。じっくり考えながらしゃべるのは面白みに欠けると感じているため、思ったらすぐ口に出してしまうのです。
それで笑いが取れることも実際あるでしょう。切り返しの速さを褒められることもあるのかもしれません。ただ、その調子で考えなしに言ってしまい、雰囲気が凍りつくこともあるでしょう。
⑤我慢ができない
思ったことをすぐ口に出す人は、基本的に我慢が苦手です。思ったら言いたくてたまらなくなってしまうのではないでしょうか。言わないほうがいいと自分でも思っていたのに、次の瞬間には我慢ができなくて口に出してしまっているということもあるでしょう。
言ってしまった後で、自分でやめておけばよかったと後悔するのですが、また同じような場面になると、ブレーキがかからなくなりがちです。衝動的になってしまうことで、時と場合を考えず、思ったことを口に出してしまうのでしょう。
⑥自分の発言に自信がある
思ったことをすぐ口に出す人の中には、自分の発言に自信があるという人もいます。こうに違いない、だから早く相手に伝えたいという気持ちで焦ってしまい、言葉を選ぶことなく思ったそのままを口に出してしまうのです。
そのため、相手や周りの人から批判されると、感情的になって怒ってしまい、喧嘩になる場合もあるでしょう。確かに正しいことを言っているのかもしれませんが、言い方に対して批判されている場合もありそうです。
⑦自分はそういうキャラだと思っている
思ったことをすぐ口に出す人の中には、自分はそういうキャラだと思っている人もいます。だから、許されると考えているのでしょう。ちょっと毒舌なことも、思った瞬間言ってしまっているという自覚はあるのですが、許されると思っているため、止めるつもりはないパターンが多いです。
実際、そういうキャラだと受け入れられている人もいるでしょう。ただ、そうは感じていない人もいるはずです。苦手意識を持たれてしまったり、距離を置かれてしまうということもあるかもしれません。
⑧考えることが面倒くさい
思ったことをすぐ口に出す人の中には、考えることが面倒くさいという人もいます。周りの人の気持ちや雰囲気など、考えること自体放棄しているため、思ったらすぐ口に出しているのです。
そういう人の場合、あまり語るようなことはせず、思ったことをパッと単語で口にしていることが多いかもしれません。それに対して相手が不快感を示しても、面倒くさいから気づかないふりをしてしまうでしょう。非難されたらテキトーに謝っておくような対処の仕方をしがちです。
思ったことをついそのまま口に出してしまう…そんな人自身の対処法とは?
おそらく、思ったことをついそのまま口に出してしまって、周りとの関係が悪くなってしまった経験があるからこそ、悩んでいるのではないでしょうか。あなた自身、全く悪気はなかったでしょうし、こんなことになるとわかっていたら、必死にブレーキをかけたのにという思いがあるはずです。
もし同じような場面になった時に、何ができるでしょうか?思ったことを口に出してしまう人が自分できる対処方法を挙げてみます。
①一呼吸置いてから言葉を発する
思ったことをすぐ口に出してしまう人は、会話中も相手の話が終わりきらないうちに話し始めていることが多いです。きちんと相手の言葉を最後まで聞いてから、さらに一呼吸置いて話すことで、今よりも少し考えて話すことができるようになります。
どうしても早く話さなければと気持ちが焦るかもしれませんが、間をあけて話し始めることで言葉の選び方なども変わってきます。最初からうまくはできないですが、ポーズだけでも一呼吸おくということを繰り返すうちに、自然とテンポ感が身についてくるはずです。
②逆の立場で考えてから言葉を発する
なかなかブレーキが効きづらく、考えてからということが難しく感じられるかもしれません。ただ、これも練習していくことで、少しずつできるようになるはずです。誰かに関することを言うときは、必ず自分が言われて嬉しい言葉なのかを考えてからにするという癖をつけるといいでしょう。
少しでも嫌かもしれないと感じるのであれば、言い方を変える必要があります。焦って伝えて関係が悪くなるくらいなら、その場で伝えないほうがいいのではないでしょうか。もう少し練ってから伝えても問題はないはずです。
③意識的にゆっくり話す
思ったことをすぐ口に出してしまう人は、早口で話すことが多いです。速いテンポで会話をすることができるのですが、その分、思ったことを口に出すリスクは高まります。そのため、あえて意識的にゆっくり話すことを心がけておくことは効果があります。
のんびりとしたテンポで会話する人をお手本にするといいでしょう。少し真似するつもりで、テンポを合わせてみると感覚が掴みやすいはずです。ゆっくり話すほうが、知的にも見えますので、一挙両得かもしれません。
④周りに伝えておく
それでも、なかなか思ったことを口に出さないというのは難しいかもしれません。周りの人に理解してもらうことも大切です。前もって、相手の気持ちや周りの雰囲気を考える間もなく思ったことをすぐ口に出してしまうところがあると伝えておくことで、傷つきを和らげる効果があります。
また、自分の発言で周りの雰囲気を悪くしたり、誰かを傷つけたときは誠心誠意謝るのが一番です。自分なりにそうならないよう努力もしていて、きちんと謝ることもできる人のことを責める人は、少ないです。勇気を出すことで関係を修復することができる可能性は高まります。
周りに思ったことをすぐ口に出す人がいる…そんな場合の対処法や接し方とは?
では逆に、周りに思ったことをすぐ口に出す人がいる時、どうしたらいいのでしょうか。ポンと傷つくことを言われてしまい、でも相手には全く悪気もない状況は、怒りのやりどころに困りますよね。家族など身近な存在になればなるほど、深刻な問題になってくる場合もあります。そういう人を前にした時に、自分でできることは何でしょうか。
①聞き流す
もし可能であれば、聞き流すのは有効です。思ったことをすぐ口に出す人は、特に何も考えずに言葉を発しています。それにいちいち反応してしまっていたら、身が保ちません。できることなら、聞き流してしまったほうがいいでしょう。
もしその言葉が、あなたを傷つけるような言葉だったとしても、それはその人がパッと思って言っただけの言葉です。周りの人がみんな同じように思っているわけではありません。よく考えて言ってくれた言葉であれば真摯に向き合う必要はありますが、思ったことを言っただけなのであれば、聞き流してもいいのではないでしょうか。
②傷ついたことを伝える
ケンカ腰ではなく、落ち着いた声で、傷ついたことを伝えることは有効です。感情的に伝えると、相手も感情的になってしまい、余計に傷つくようなことを言われる可能性が高まります。ですので、傷ついたことを伝える時は、できるだけ冷静に落ち着いて伝えることが必須です。
また、そういう時は、意識的に低めの声でゆっくりと語りかけるように伝えると良いでしょう。そうすることで相手もあなたの気持ちを聞き入れやすくなります。勇気がいることかもしれませんが、伝えることで、相手が思ったことをすぐ口に出すことで、傷つく人がいるということに気づくきっかけになるかもしれません
③通訳する
思ったことをすぐ口に出す人が言った言葉で、周りの空気が凍りついてしまったり、誰かが傷ついてしまったことに気づいた時は、通訳してあげるといいかもしれません。「こういうことが言いたいんだよね?」と、周りが受け入れやすい言葉に変換してあげることで、うまく和を保つことができます。言われた人の傷つきも抑えられるでしょう。
また、そうすることで、周りの人を不快な気持ちにしない言葉の選び方などをさりげなく伝えることができます。自分の子どもやパートナーが思ったことをすぐ口に出してしまう人なのであれば、周りの人とのトラブルを減らすためのサポートになるのではないでしょうか。
④距離を取る
どうしても聞き流すこともできず、直接伝えることもできず、心の傷ばかり増えていくのであれば、距離を取ることが必要なのかもしれません。悪意があるわけではないため、追っかけてきてまで傷つけることはしないはずです。
意識的に接点を極力減らすことで、思ったことをすぐ口に出す人と話す機会を減らすことができます。そうすれば、あなたが不必要に傷つけられることも減るのではないでしょうか。時には逃げることも大切です。
思ったことをすぐ口に出す原因が発達障害の可能性も?当てはまることはないかチェック
思ったことをすぐ口に出してしまうのは、もしかしたら発達障害だからではないかと不安に感じている人も結構いるのではないでしょうか。周りから指摘されて心配になってしまったという人もいるでしょう。
確かに、思ったことをすぐ口に出すという行動は発達障害でも見られるものです。完全にイコールになるものではないですが、可能性は捨てきれません。発達障害で、思ったことを口に出すとしたら、以下のことに当てはまる場合が多いです。参考にしてください。
①自分でブレーキがかけられない
発達障害があって、思ったことをすぐ口に出すのであれば、おそらく自分でブレーキがかけられません。思ったらすぐに言いたくなってしまい、周りの状況お構いなしに言葉を発してしまいます。
例えば、子どもの頃、授業中に挙手することなく発言してしまって、先生から何度も注意された経験がありませんか?大人になってからも、会議中に人がしゃべっているのを遮って意見してしまったりしているのであれば、ブレーキがかけられない可能性があります。
これはADHDの衝動性の高さが起こす問題です。言いたいと感じると、いてもたってもいられなくなり、ついそのまま発言してしまうのです。言われた相手の気持ちや周りの雰囲気などは後回しで、自分の言いたいという気持ちにだけフォーカスしてしまう状態になってしまうのでしょう。
②相手の気持ちがわからない
発達障害があって、思ったことをすぐ口に出すのであれば、相手の気持ちがわからないという場合があります。周りから「それを言われた相手の気持ちを考えたことがないの!?」と怒られても、よくわからないと感じてしまうのです。
例えば、思ったことをただ口に出しただけなのに、相手が泣いてしまい、びっくりした経験がありませんか?なぜ泣いているのか、なぜ怒っているのかわからず、あなた自身も困惑してしまい、周りから「謝れ」と言われて、わからないまま謝るということが起こりがちです。
これはASDの想像力の欠如がもたらす問題です。相手の表情から感情が読み取れなかったり、逆の立場に立って考えるということがどういうことなのかわからず、できなかったりします。そうなると、ただ思ったことを言っただけなのに相手が感情的になってしまい、困惑するという結果になります。
③話すことに熱中してしまっている
発達障害があって、思ったことをすぐ口に出すのであれば、話すことに熱中してしまうということがあります。相手が相槌を打つ暇も与えないくらい、延々話し続けてしまい、思ったことがどんどんそのまま口から出ていっているような状態になります。
例えば、大好きなゲームの話をしていたら気分が盛り上がってきてしまい、相手の様子も構わず話しているうちに、相手を馬鹿にするような発言をしてしまっていたというパターンがあります。話している本人は、おしゃべりに夢中で気づいていないのですが、聞いているほうはモヤモヤした気持ちを感じたまま話を聞くことになってしまうでしょう。
これはADHDにもASDにも共通して見られる過集中がもたらす問題です。ひとつのことに強い集中をしすぎてしまうことがあるのですが、それがおしゃべりに向けられることもあります。話しているうちは相手の表情などにも注意を向けられないため、後から冷ややかな態度を取られても原因がわからないことが多いです。
大人の発達障害の相談先
①メンタルクリニック、心療内科や精神科
もし思ったことをすぐ口に出してしまうことで、周りとトラブルばかり起こしてしまっているのであれば、お近くの医療機関に相談するのが一番かもしれません。確かにトラブルの原因となったのは、あなた自身の失言かもしれませんが、あなたも傷ついているはずです。
診断してもらうことで、周りの理解を得やすくなる場合があります。また、薬物治療で衝動的にしゃべってしまう部分を抑えることもできるかもしれません。人との関わり方などを、教えてくれるようなところもありますので、発達障害を専門にしているお近くの医療機関を探してみてください。
②発達障害支援センター
医療機関は少しハードルが高いと感じる方は、発達障害支援センターに相談してみるのもいいかもしれません。発達障害を専門とするいろいろな職種のスタッフがいて、実際に困る場面でどうすればいいかなど相談に乗ってくれます。
きちんと医療機関に受診した方がいいかどうかの相談にも乗ってくれる場合がありますので、不安であれば先にこういったところの相談窓口を利用するのもいいでしょう。
③オンラインカウンセリング
もう少しクッションを置きたいのであれば、オンラインのカウンセリングを受けてみるのもいいかもしれません。発達障害かどうかはわからないけれども、そうかもしれないとひとりで不安を抱えている状態はつらいものです。
大人の発達障害を専門としている方が相談に乗ってくれますし、自分で誰に相談するのかを選ぶこともできます。医療機関や発達障害支援センターのハードルが高く感じるけれども、悩んでいるのであれば、オンラインカウンセリングもおすすめです。
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まとめ
思ったことをすぐ口に出してしまうことが、対人トラブルを招くきっかけになることは多いです。どうしたらいいかを知りたくなったということは、そういう自分と向き合い、なんとかしようと頑張り始めたということでしょう。
なかなか簡単に改善できるというものではないかもしれませんが、千里の道も一歩からという言葉通り、一歩踏み出すことが何より大事です。ダメな自分と向き合うことは、とても苦しいことですが、それをやろうとしていることに自信を持ってください。少しずつ変化を実感できるでしょうし、いずれ、思ってもすぐ口に出さないような自分になれるはずです。
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