「毎日を過ごしているけれど、なんだか心が空っぽな感じがする」「これといった楽しみがない」そんな気持ちを抱えていませんか?
生きがいが見つからないと感じる気持ちは、誰にでもある自然な感情です。この記事では、そもそも「生きがい」とは何かや持てない理由、自分なりの生きがいを見つけられる方法などをお伝えします。
「このまま毎日を過ごしていくのは不安」とお悩みの方は、ぜひゆったりとお読みください。
梅田ミズキさん
認定心理士、サービス介助士。大学で臨床心理学・産業組織心理学・発達心理学などを学び、卒業後は公的施設にて精神疾患の方のケアや介助業務、ご家族の相談対応などに従事しながら、ホームページ掲載用のコラムやミニ新聞を執筆。現在はフリーライターとして独立し、くらしにまつわるエッセイの執筆、臨床心理・発達支援・療育関連のコンテンツ制作および書籍編集に携わりながら、心理カウンセラーも務めている。趣味は読書、映画鑑賞、気まぐれで向かうプチ旅行。
生きがいとは何か
「生きがい」と聞くと、人生の壮大なテーマのように感じる方も多いでしょう。しかし、その定義は人によってさまざまです。
「生きがいがない状態」とは?
「生きがいがない」とは、日々の生活に意味や目的を見出せない心の状態を指します。具体的には「朝起きても今日一日に期待が持てない」「仕事や家事をこなすだけの毎日に充実感がない」「週末の予定を考えても特に楽しみがない」といった感覚です。
思考もネガティブになり「どうせ楽しくないだろうし…」と新しい行動を避けるようになります。次第に交友関係も狭まり「会話をする機会や刺激が減ってしまった」と体感する方も多いようです。
この状態が続くと、徐々に心が疲弊しやすくなり、場合によっては抑うつ的な気分につながるケースもあります。
生きがいの定義とは?
とはいえ、留意しておきたいのが「必ずしも生きがいを持つべき」ではないという点です。「特定の刺激やものごと=生きがい」とは限りません。なかには、刺激の少ない日常やルーティン化された毎日が心地よいと感じる人もいます。
生きがいは、必ずしも大きな目標や壮大な夢でなければならないわけではありません。家族との何気ない会話、趣味の時間、仕事での小さな達成感など、日常にある小さな喜びも立派な生きがいと呼べます。
重要なのは「その活動や関係性が自分にとって意味があるか」です。また「継続的な幸福感をもたらしてくれるものかどうか」も、生きがいだと判断するうえで一つの基準になります。
生きがいがあるメリット
「生きがいと呼べるものが見つかって、生活に張り合いが出た」と感じる方は少なくありません。人生の満足度が向上すると、新しい目標に向かって自発的に行動しやすくなるのが利点です。
また、身体面では、生きがいを持つことで免疫機能が高まって生活習慣病のリスクが低下するなど、健康上のメリットも確認されています。さらに、生きがいがある人は社会的なつながりも活発で、周囲のサポートを得やすい傾向にあるのも特徴です。
これらの要因が相互に作用し合うことで、QOL(生活の質)の向上や健康寿命の延伸にもつながっているといえます。
生きがいがないという人は多いのか
「でも、自分には生きがいがないから…」と思う方もいらっしゃいますよね。現代社会において、生きがいの喪失は珍しいことではありません。
生きがいがない人の割合
内閣府が令和5年に実施した「国民生活に関する世論調査」によると「現在の生活にやや不満だ、または不満だ」と回答した人は、40代で55%、50代で54%にのぼります。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大以降「生きがいや張り合いの喪失を感じる」「現実や将来への不安が高まった」との声が増加しているのも現状です。
特に、テレワークの増加や社会活動の制限、職場での人間関係や趣味活動の範囲が狭まったことが、生きがいの喪失感を強める要因になっていると考えられます。
年代別にみる生きがいの傾向
生きがいの見つけ方や喪失の原因は、年代ごとに特徴的な傾向が見られます。
例えば、20代では、将来への漠然とした不安や、就職活動での挫折が生きがいの喪失につながりやすいでしょう。30代では、仕事と私生活のバランスの難しさが主な要因になり得ます。
そして40~50代は、仕事での責任の増加や家庭での役割の変化により自分の時間が持てず、ストレスを感じやすい時期です。また、定年退職や両親の介護など「老後のライフイベント」が見えてくる年代でもあります。そのため「家族のあり方や自分の立ち位置を見直すなかで、生きがいを見失ってしまった」との声も少なくありません。
60代以降では、定年退職による社会的役割の喪失や健康上の不安が、生きがいの喪失感につながる場合も多いようです。いずれにしても、各年代特有の課題に対応したサポートの必要性が指摘されています。
社会環境の変化と生きがい
デジタル化や働き方改革、価値観の多様化から、従来の生きがいの形が大きく変化してきています。例えば、SNSの普及で簡単に他者との生活が比較できるようになり「見えない競争意識やプレッシャーを感じる…」と思う方もいるのではないでしょうか。
また、終身雇用制度の崩壊や転職がしやすくなった背景から「仕事」を生きがいとして捉える価値観にも変化が見られます。さらに、結婚や出産など従来の人生の節目となるイベントに対する考え方も多様化し、個人の選択の幅が広がる一方で「正解のない時代」としての不安や戸惑いを感じる人も増えているのが現状です。
生きがいがない人の特徴
生きがいを感じられない状態には、主に以下のような共通する特徴があります。自分の状況をより客観的に把握するために、ぜひチェックしてみてください。
日常生活への意欲が低下する
生きがいを感じられない人には、日常生活への意欲が低下している傾向が見られます。食事の準備や掃除などの基本的な生活行動が面倒に感じ、できるだけ省略しようとする状態です。
また、休日の過ごし方も消極的になりがちといえます。新しいことや楽しいことがあっても活発になれず、休日をただ寝て過ごしたり、特に目的もなくスマートフォンでSNSやニュースをチェックしたりなどが多くなってしまうのです。
さらに、自分の趣味だった活動も「面倒くさい」と感じるようになり、徐々に活動範囲が狭まっていきます。
人間関係が希薄化する
周囲との関係が薄くなっている状態も、生きがいがない人の特徴の一つです。職場での必要最小限のコミュニケーションは取るものの、プライベートでの交流は減少し、趣味の仲間や友人との付き合いも少なくなっていきます。
LINEやメールの返信が遅くなったり、友人からの誘いを断る回数が増えたりするのも特徴です。この状態が続くと「人と話すのが疲れる」「誰とも会いたくない」との気持ちが強くなり、さらなる孤立を招く場合があります。
将来へ漠然とした不安を感じやすくなる
明確な目標や展望がないまま日々を過ごすと、将来への不安が大きくなります。「このまま何も変わらないのでは」という思いが強くなり、それが更なる意欲の低下を招くという悪循環に陥りやすい状態です。
特に、就寝前や一人でいる時間に、将来へ強い不安を感じるケースが多いようです。
ネガティブ思考に陥りやすくなる
生きがいを見失っている人には、自分自身を否定的に捉える傾向が見られます。「自分には特別な才能がない」「どうせ私には無理」との思考パターンが強く、新しいことに挑戦する機会があっても、最初から諦めてしまいがちです。
また、過去の失敗体験を必要以上に重く受け止め、それが自己肯定感の低下につながっている場合も少なくありません。
感情が平坦化する
喜怒哀楽の感情が薄れ、何事にも「どうでもいい」という感覚が強くなるのも、生きがいがない人に共通する特徴の一つです。以前なら楽しめたはずの活動や出来事に対しても、特別な感情が湧かなくなります。
気を付けたいのが、この状態は、うつ病など精神的な問題のサインの可能性もある点です。もしも長期間続いたり日常生活に支障が出たりする場合は、専門家への相談を検討するのが望ましいでしょう。
生きがいを見つけられない理由とは?
生きがいを見つけられない背景には、さまざまな要因が絡み合っています。これから具体的な例を挙げていきますので「あぁ、私もそうかも」と感じる部分がないか、ゆっくり考えてみてください。
社会的なプレッシャー
「こうあるべき」という社会からの期待や周囲との比較が、本来の自分らしさを見失う原因の一つに挙げられます。SNSなどの影響で他者の華やかな生活と無意識に比較してしまい、自己否定的な感情につながりやすいのも現状です。
また、就職、結婚、出産などのライフイベントに対する周囲からのプレッシャーも、自分のペースを見失わせる要因になり得ます。
選択肢の多さによる迷い
現代社会では、選択肢が豊富にあるがゆえの悩みも生じています。「やりたいことが見つからない」よりも「何を選べばいいのかわからない」「自分の好きなものが特定できない」との状態に陥りやすく、それが行動の停滞を招いてしまうのです。
情報過多の時代においてさまざまな可能性が示されることで、かえって選択が難しくなっているといえます。
過去の挫折体験
過去の失敗や挫折体験が、新しい物事に挑戦する意欲を失わせている場合もあります。「また失敗するのではないか」との不安が、新たな一歩を踏み出す妨げになっているのです。
特に学生時代や若手社会人時代の挫折体験は、その後の人生に大きな影響を与える場合があります。
環境の変化への適応困難
転職、引っ越し、結婚、出産など、大きな環境の変化の経験で、それまでの生きがいが維持できなくなるケースもあります。慣れない環境に適応しようとするストレスと、以前の生活との違いに戸惑いを感じ、新しく生きがいを見つけられない状態です。
過度な完璧主義
「生きがい」に対して完璧を求めすぎることも、見つけられない原因の一つといえます。「人生を変えるような大きな目的でなければならない」「誰かの役に立つものでなければならない」などの固定観念で、身近にある小さな喜びや充実感を見過ごしてしまう状態です。
生きがいを見つけるためにできること
「じゃあ生きがいを見つけるためには具体的に何をしたらいいの…?」というところですよね。生きがいは、具体的な行動を通じて少しずつ見つけられます。例えば、以下のようなアプローチが有効です。
小さな興味からはじめる
大きな目標を立てる必要はありません。「なんとなく気になる」「ちょっと興味がある」というレベルの物事から着手してみましょう。
例えば、気になる本を読んでみる、新しい散歩コースを探してみるなど、身近なところから始められます。興味を持ったテーマについてインターネットで調べたり関連する本を読んだりするうちにその分野への理解が徐々に深まり、いつの間にか趣味に変わって新しい生きがいになっていた…そのようなケースも珍しくありません。
体験型の活動に参加する
実際に体を動かして新しい経験をするのは、思わぬ発見があるものです。地域のボランティア活動、趣味のワークショップ、スポーツイベントなど、具体的な活動を通じて自分の興味の方向性を探れます。
近年では、オンラインでもさまざまな体験型のイベントが開催されていますよね。自宅にいながら新しいことにチャレンジできる環境は、忙しい方だけではなく大人数が苦手な方や気軽に参加してみたい方にとっても心強いものです。
人との関わりを持つ
他者との交流は、新しい視点や可能性を見出すきっかけになります。同じ興味を持つ人々のコミュニティに参加したり昔の友人と再会したりすると自分の世界が広がり、生きがいを見つけるチャンスになるかもしれません。
「いきなりたくさんの人と関わるのはちょっと…」そんな方には、SNSやオンラインコミュニティを活用して、同じ興味や悩みを持つ人々と少しずつつながってみるのもおすすめです。
自分の気持ちや日々の出来事を書き留める
「今日良かったこと」「やってみたいこと」などをテーマに、定期的に記録をつけるのも有効です。自分の興味や価値観が少しずつ見え、じっくりと自己理解を深めながら生きがいを探せます。
近年では、デジタルツールを使って手軽に始められるジャーナリングアプリも多く登場しているため、自分に合うものをうまく活用してみるのもいいでしょう。
定期的な運動を心がける
体を動かすことは、心身の健康維持だけでなく、新たな生きがい作りにも効果的です。運動時に分泌されるセロトニンやドーパミンは、気分の改善や意欲の向上に役立ちます。
まずは、毎日10分程度の軽いストレッチや、近所への散歩から始めるのでも問題ありません。少しずつ歩く距離や時間を伸ばしていけば「今日は昨日より遠くまで行けた」と小さな達成感を味わえます。
ヨガやピラティスなどはオンライン講座も充実しているので、自宅で気軽に始めたい方にもおすすめです。運動を習慣化できれば、体調の改善だけではなく、新しい目標設定や仲間作りにもつながっていきます。
生きがいを見つける考え方のコツ
「つまらない生活は嫌だけど、うまく生きがいを見つけられるかわからない」「楽しみや張り合いが欲しいけど、今の生活をどう変えたらいいのか…」とお悩みの方は、次のように視点を少し変えてみるのはいかがでしょうか。
完璧を求めすぎない
繰り返しになりますが、生きがいは、決して人生を180度変えてしまうような大きなものである必要はありません。日常のちょっとした楽しみや小さな充実感も、立派な生きがいになり得ます。
例えば「朝のコーヒーの時間を大切にする」「植物の成長を見守る」「好きな音楽を聴く」など、何気ない日常にも生きがいが潜んでいます。「これくらいでは生きがいと呼べないかも」と考えすぎずに、自分が心地よさや楽しさを感じられるものを大切にしていきましょう。
完璧な生きがいを探そうとするのではなく、まずは「まあまあ楽しい」と感じられることから始めてみるイメージです。
複数の小さな生きがいを持つ
一つの大きな生きがいを見つけようとするのではなく、複数の小さな生きがいを持つように意識してみましょう。仕事、趣味、人間関係など、さまざまな場面での小さな喜びの積み重ねが、豊かな人生につながります。
例えば「平日は仕事での達成感」「休日は趣味の時間を楽しむ」「週に一度は家族との特別な時間を作る」など、生活に変化をつけると、暮らしに彩りが生まれます。
一つだけではなくいくつもの心の支えを持つと、人は孤独に対する強さが育まれるものです。自分の心を支えてくれるものが多様なほど、心が安定して、時間と上手に付き合いやすくなります。
変化を恐れない
生きがいは、年齢や環境によって自然と変化していくものです。学生時代の生きがいが社会人になって変わったり、結婚や出産を機に新しい生きがいが見つかったりするのは、ごく自然な状態だと受け止めましょう。
以前の生きがいがいまは違和感があるとしても、それは決して悪いことではありません。むしろ、その時々の自分に合った生きがいを探していく柔軟な姿勢が大切です。
変化を恐れず、新しい可能性に心を開いておくことで、思わぬ形で生きがいと出会える場合もあります。
他者と比較しない
他人の生きがいと自分の生きがいを比較する必要はまったくありません。むしろ、そのような比較が自分らしさを見失う原因になるケースもあります。
大切なのは、自分が心から楽しいと感じられる、または充実感を得られる何かを見つけることです。他人の目を気にせず、自分なりの幸せや充実を追求していく勇気を持ちましょう。
小さな達成感を大切にする
大きな目標を立てすぎると、途中で挫折してしまう可能性が高くなります。そのため、まずは小さな目標を立てて、それを達成していく積み重ねが重要です。
例えば「今日は20分散歩する」「新しいレシピに挑戦する」「読みかけの本を1章読み進める」など、具体的で達成可能な目標を設定しましょう。小さな成功体験を重ねると、自己効力感が高まり、より大きな挑戦への自信にもつながっていきます。
生きがいはあなたの暮らしを彩るもの
生きがいがないと感じている現在の状態は、悪いことではありません。それは、まだ出会っていない趣味や、自分の新しい可能性を見つけるためのチャンスともいえます。一歩一歩、あなたらしい生きがいを見つけていく過程を大切にしていきましょう。
いまこの記事を読んでいらっしゃるということは、あなたが自分の人生をより豊かにしたいと考えているサインです。「新しい生きがいを0から作らなくては」と構えてしまわず、まずは「日常にある小さな幸せを追求してみる」というイメージで、ぜひ暮らしを彩ってみてください。
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