40代・50代になると、子育てや仕事、介護など優先すべきことが増え、若い頃のように友人と頻繁に会うのが難しくなる場合があります。気がつけば「疎遠になってしまった」という経験をしている方も多いでしょう。ライフステージの変化によって話題や価値観がズレていくのはごく自然なことですが、友人関係が変化するにつれ寂しさや不安を感じることもあります。
とはいえ、「今さら連絡を取っても大丈夫かな」「昔のような関係に戻れるのだろうか」と、行動に移せずに悩んでいる方もいるのではないでしょうか。本記事では、40代・50代が友人と疎遠になりがちな背景や、もう一度関係を取り戻すための具体的なアプローチ、そして疎遠からくる不安や寂しさを和らげる考え方のヒントについてご紹介します。
藤原美保さん
公認心理師、介護福祉士、保育士、健康運動指導士の資格保有、療育支援に携わること20年以上。
放課後等デイサービスを運営する中で発達障害児童、そのご家族の悩みも含め相談やカウンセリング対応を10年以上行う。自己肯定感が低い、親から虐待を受けた過去に悩む方からの相談なども多数対応。
これまでに、『発達障害の女の子のお母さんが、早めに知っておきたい「47のルール」』(エッセンシャル出版社)、『発達障害の女の子の「自立」のために親としてできること 』(PHP研究所)と2冊の本を執筆。現在も出版に向け本の執筆をつづけている中、子育てのポータルサイトにて発達障害の子の子育てコラムを連載中。
40代50代が友人と疎遠になってしまう理由やよくあるパターンとは?
そもそもなぜ、疎遠になったのでしょうか?おそらく何か疎遠にならざるを得ない状況が片方、もしくは両方にあったのかもしれません。どちらか、もしくは両方が相手に割く時間を自分の優先順位の中で格下げをしたのかもしれません。しかし、それはこの年代には自然なことです。
自分の限りある1日の時間をどのように配分しなくてはいけないのかを考え、優先順位をつけなくてはいけないからです。それに友達との時間より、重責を担う家族や仕事の時間を優先することは当然と言えます。そしてそれは自分だけの問題ではなく、相手のライフスタイルの問題もあるのです。
ライフステージの変化による環境のズレ
20代の青年期には趣味、恋愛や結婚など、同年代と似たような話題で会話が弾む仲間が多かったはずです。しかし年齢を重ねると、多くの場合、家族の事や、仕事でも重要なポストを任されるなど、重責を担う立場になります。
そうすると、個々の人生の進行度や価値観が多様化します。例えばキャリアを積み仕事での地位を確立している人もいれば、家庭で子どもたちのことが中心になっている人もいます。また親の介護や離婚などの問題を抱えている人もいます。
このライフステージの変化は、若い頃の共通点を薄れさせ、徐々に話題や考え方のズレを生んでしまうことがあります。
相手に合わせることが難しくなる
若い頃と異なり子の年齢になると、相手に合わせるということが疲れを感じやすくなることもあります。子どものことやライフスタイル、現在の自分との価値観の違いから段々話が合わなくなることがあります。パートナーの仕事の都合もあり転勤などで環境が変わるなど、40代以上になると仕事や収入面などでも差が生じることがあり、生活レベルが左右されるケースもあります。そうすると相手の立場を考え話題を合わせることが難しくなります。
疎遠になった友人との関係を取り戻したいときどうすればよいか
昔は仲良くしていた友人との関係をもう一度温め直したい。そんな気持ちが芽生えたとき、「疎遠になった友達に連絡してみようか」という欲求が頭をよぎることもあるでしょう。
しかし、「昔通り仲良しで頻繁に会える関係」になるとは限りません。相手にも今の生活ペースや優先順位がありますから、関係性が変わることは仕方ありません。年に数回、近況を報告し合う程度の緩い関係になることもあれば、趣味仲間として新しい接点を作るなど、新たな友情の形に落ち着く場合もあります。大切なのは、「今の二人にあった程よい距離感」を探ることです。ここでは、具体的なアプローチ方法について考えてみましょう。
まずは軽いメッセージから始める(SNS・LINEなど)
気になる相手がいる場合には昔ほどかたく考えず、まずはLINEやSNSを通じて短いメッセージを送ってみてはいかがでしょうか。手軽にメッセージを送れるのが現代の強みです。「最近どう?」といったシンプルな問いかけで十分です。相手も懐かしさを感じ、「そういえば元気かな?」と思っていた場合には、返信してくれるのではないでしょうか?
昔の思い出を呼び起こすきっかけを作る
「この間、昔一緒に行ったカフェの前を通ったら懐かしくなって連絡してみたよ」など、共通の記憶を引き合いに出すと、相手も「懐かしいな」と心をほぐしやすくなります。学生時代の部活や、若い頃によく一緒に観た映画の話など、お互いに記憶を共有できる話題がスムーズなコミュニケーションの入り口となります。
自分から誘うときは、負担にならないよう配慮する
「旧友に会いたいな」と思い立ち、再会の機会を作るときは、相手の負担を減らす工夫をしましょう。たとえば、「今度、〇〇で近くまで行くけど、もし都合が合ったらお茶しない?」など、ちょっとした軽い誘いが理想的です。わざわざ遠方や長時間を費やすような約束は、相手にも心理的ハードルが生まれやすいので、まずは短い時間で気軽に会えるプランを考えましょう。
相手の都合や価値観の変化を受け止める
昔とはお互いの状況が変わっていることを前提に、会話を進めることが大切です。相手が今忙しい生活を送っている場合もあります。すぐに会えなくても、LINEやメールで近況報告を続けるだけでも、少しずつ距離は縮まっていきます。「すぐに元に戻そう」という焦りは禁物。時間をかけて徐々にコミュニケーションの回数を増やしましょう。
40代50代の友人関係の不安を軽くする考え方のコツ
人との距離が変わるのは自然なことと頭ではわかっていても、寂しさは簡単に消えないかもしれません。ここでは、その不安を軽くするための考え方のコツをご紹介します。
「関係性は変化する」ととらえる
疎遠になったことは「関係を軽視した結果」ではなく、「人生の流れによる自然な変化」とも言えます。人間関係は、自分の環境や時間に応じて形を変えていくのが自然です。どんな相手とも一生涯変わらない関係性などありません。どんな相手とも必ずいつかは別れが来ます。そう考えると、今一緒にいられる相手との時間を大切にしようと思えるのではないでしょうか。
人生の経験値となっている
たとえ連絡を取り合わなくなっても、過去に共に過ごした時間は、あなたの人格を豊かにし、経験値として財産となっています。「もう会えないから無意味」ではなく、その人との記憶は、あなたが他者に優しく接する土台になっているなど、新しい人間関係を築くヒントになっているかもしれません。
新たな人間関係は常に生まれる可能性がある
年齢を重ねると、新しい友人関係を築く機会は減ったように感じるかもしれませんが、その年代や自分の置かれた環境から価値観の合う友人関係を築く事が出来ます。過去の友人だけが「友達」ではありません。過去の経験を活かし今の自分に合ったコミュニティを見つけることがおすすめです。
「今の自分」に合った関係性を見つける
疎遠になった友人との距離を少し縮めることはできるかもしれませんが、昔と同じような濃密な関係になることは難しいと考えておいた方がよいでしょう。長かった時間が「今の自分のかたち」を作ったように相手も同じように「今の相手のかたち」があるはずです。
それが必ずしも自分と同じとは限りません。今の自分に合った関係を新たに築くことの方が心の安定を得ることが出来ます。
まとめ
40代・50代で昔の友人と疎遠になってしまうのは、家族や仕事など優先すべき事項が増え、互いのライフステージが変化することによる自然な現象と言えます。しかし、昔とは違う距離感でも、関係を温め直すことは可能です。まずは軽いメッセージで近況を伝え合うなど、再会のきっかけを作ってみるのもいいかもしれません。
相手の価値観や生活状況に配慮し、無理のない形で交流を続けることで、新たな友情のかたちを築けるかもしれません。さらに、疎遠になった経験自体があなたの人生を豊かにし、これからの人間関係の礎になることを忘れないでください。「今の自分」に合った関係性を見つけて、友人関係を構築することはその後の自分の人生を豊かにできるのではないでしょうか。
▼当サイト「悩ミカタ」では、ミドル世代(40代50代)の悩みや不安・ストレスについて各分野の専門家/カウンセラーに相談できるオンラインカウンセリングサービス「悩ミカタ相談室」を展開し、公認心理師など国家資格を保有する専門家が多く登録しています。つらくて不安な気持ち、1人で抱え込まずにまずはお気軽に相談してみませんか?