自己受容とは?できない原因や自分を認める方法、自己肯定感との違いも解説

「自分なんて…」といったネガティブな自分に悩んでいませんか? 自己受容とは、すべての自分を受け入れ、愛することというイメージがあるかと思います。完璧じゃない自分、失敗した自分、すべての自分を丸ごと肯定する考え方なんて、とてもできそうにないですよね。ましてや自己肯定感なんてとんでもない、と心の中で抱えている人は意外と多いことが調査でわかっています。

そこでこの記事では、自己受容の重要性、自己受容と自己肯定感の違い、そして自己受容を深めるための具体的な方法を解説します。ネガティブな自分から、より自分らしく輝くためのヒントを、「嫌われる勇気」で有名なアドラー心理学を中心にご紹介します。この記事がネガティブなあなたでも、自己受容に近づくきっかけとなりますように。

執筆者

佐々木ゆりさん

公認心理師、臨床発達心理士。保育士歴は20年。現在は療育スタッフとして発達障害を持つお子さんやその家族と関わっています。発達と保育を軸に、直接支援はもちろん、webライター、保育士になりたい人の支援、保育士さん支援など幅広いキャリアを展開中です。

目次

自己受容とはどういうものか

自己受容という言葉には「自分をまるごと受け止める」という意味があるように思いますよね。ここでは、心理学における「自己受容」の定義から、自己受容が必要なとき、そして正しい自己受容について解説していきます。

心理学における自己受容の定義

自己受容とは一般的に「自分をまるごと受け止めること」と解釈されていますね。心理学の世界でもいろいろな自己受容の定義があります。ここでは代表的な心理学者の定義についてご紹介していきます。

ロジャース(Rogers,C.R.)

ロジャースはクライアント中心療法(パーソン・センタード・セラピー)を始めた人になります。そのロジャースは自己受容という考えも発表していて「「クライエントが価値ある一人の人間として非難よりむしろ尊敬に値するものとして自分自身を知覚すること」であり「自分の基準を他人の態度や願望に基づいたものでなく、むしろ自分自身の経験に基づくものとして知覚すること」と定義しています。

マズロー(Abraham Maslow)

マズローは生理的欲求(最も基本的な生存に必要な欲求)の上に安全の欲求があり、そしてその上に所属と愛の欲求、承認の欲求、最後に自己実現の欲求といった欲求不満説(ヒエラルキー)の提唱した人です。マズローは「健康な人々は自分自身やその性質を無念さや不公平を感じずに、また、その問題についてあまり考えることなく受け入れることができる」と述べています。

アドラー(Alfred Adler)

ベストセラー書籍「嫌われる勇気」「幸せになる勇気」の考え方で有名なアルフレッド・アドラーは「勇気がある人は自己受容している」としています。なぜならば勇気は「自己信頼の具体的な表れであり、自分自身の能力を硬く信じることから生まれる」としているからです。

また、仏教にも自己受容につながる考え方があり、釈迦(シャカ)は「全ての生は苦しみである」と述べています。

自己受容できていない人はダメな人なのか

アドラーによると劣等感はもっていて当たり前のものですが、付き合い方が大切と述べています。劣等感があることで、人類は劣等感をバネに発展してきた生き物です。なので「自分のことなんて受け入れられない」と思うことは間違っていません。むしろ「じゃあ、どうしたら自分を受け入れられるようになるのだろう」と考えることや行動をおこすエネルギーにつながります。

その一方で同じ考え方をもっていたとしても「自分はこんなにできない人間である」と周りにひけらかして、自分の課題と向き合わない人もいます。これは過度な劣等感とされ、アドラーは「ほとんど病気」としています。自己受容ができていないなと思っても、決してがっかりしすぎず、自分と向き合っていけるといいですね。

正しい自己受容の仕方とは

自己受容の正しい方法は1つではありません。なぜならば一人ひとり自分に対する思いや環境が異なるからです。

自己受容するために「セルフコンパション」とよばれる自分自身をケアすることからスタートする人もいるかもしれませんし、「バウンダリー」といって他人と自分の問題をしっかり区別する考え方を持つこつことが必要な人もいるかもしれません。また「人には優しくせねばならない」「自分を認めてあげなければならない」と思う人も、実は世間的な価値観に縛られている可能性もあります。平日仕事を頑張って疲れているときは、週末の過ごし方についてゆったりとした時間をほとんどの人が考えるのではないでしょうか。

ですがSNSで趣味などの投稿を知り合いがアップしているのを見て「やはりゆったりすることは人生をサボっていることだ。休日もアクティブでなければよい生活は送れない」と思い、疲れているのにも関わらず行動しようとすることがあるかもしれません。それは自分がしたいこと(疲れた体をしっかり休める)ではなく、相手の価値観(休日も趣味を楽しむ)にひっぱられているように思いませんか?

このように実は自分がしたいこと、のように思っていてもまわりや世間の考え方に合わせていたりすることが割とあります。まずは自分の考え方を確認する時間があり、その価値観自体が人それぞれなので、自己受容の仕方も様々な方法があると考えてよいかもしれませんね。

自己受容と自己肯定感との違いとは?

自己受容は「ありのままの自分を受け止めること」であることがわかりました。では、最近よく耳にする自己肯定感とは何か違いはあるのでしょうか。これまでの研究などから、自己受容と自己肯定感は別物と考えられており、この2つには関係性があるとされています。ここでは自己肯定感の定義や自己受容と自己肯定感の関係性などについてご紹介していきます。

自己受容と自己肯定感の定義の違い

どちらもさまざまな定義や考え方がありますが、一般的な考え方として自己受容は「自分自身をまるごと受け入れること」、自己肯定感は「自己に対して肯定的で好ましく思うような態度や感情」が多いようです。

英語の「Self-Esteem(自尊感情)」に似た言葉で、日本では1994年に高垣忠一郎が自己肯定感という言葉を提唱しました。高垣は自己肯定感について「「他人と共にありながら自分は自分であって大丈夫」「自分自身を価値のある存在として評価し尊重する感情」などとしています。自己肯定感は自己受容(ありのままの自分を受け入れる)の先にあると考えることが多いので、自己受容と自己肯定感には関係性があるとしているのですね。

自己受容できていないと自己肯定感は育たない?

自分を受け入れていないから、自分を肯定的に思えないと思うかもしれません。たしかに自己受容と自己肯定感には関係性があると考える人が多いようです。

その一方で、自己肯定感にも「社会的自己肯定感」と「絶対的自己肯定感」があるという考え方があります。「絶対的自己肯定感」はありのままをみつめるといった自己受容が大切になってきますが、「社会的な自己肯定感」は他者からの評価で生まれるものとしています。大きなプロジェクトの後に上司から「がんばったな」と言われたことで「ああ、自分はやはり頑張ったからこの成果が出せたのだな」と実感することや、パートナーから改めて「いつもありがとう」と言われたことで自分がパートナーに対してした行動を前向きに受け取ることも自己肯定感のはじまりです。

相手から評価されることは自己受容の世界ではメインとは考えられていませんが、誰かから認めてもらうことも、大切な自己肯定感なのですね。

自己受容や自己肯定感がなくてもダメな人ではない

自己受容も自己肯定感もさまざまな形があることがわかりました。そして、セルフコンパッションと呼ばれる「他人を思いやるように自分自身をケアすること」がまず必要な人もいます。自分の声にすぐ気づける人、自分自身をすぐみつけられる人はいいのですが、育ってきた環境や自分自身が抱えている病気障害によって、自分自身を見つけることが難しい人もおり、そういう人は自分自身を見つけるためにまずは自分をいたわる作業が必要なのです。

最近よく聞かれるようになった「マインドフルネス」という状態も自分自身をみつめている状態です。「自分についてよくわからない」「考えようとするととてもモヤモヤしてしまう」という人はまずは自分自身をケアすることから始めてみるといいかもしれません。

自己受容がもたらす良い影響とは?

自己受容と自己肯定感の違いなどがわかり、自己受容にはなんだかメリットがあることがわかりました。自己受容したらどんな良いことがあるか具体的に知りたいですよね? ここでは自己受容がもたらす良い影響について主に4つを解説していきます。みなさんはどのメリットが気になるでしょうか。

メンタルが大きく崩れない


自己受容は「ありのままの自分をうけとめること」ですから、自分の考え方や感じ方がわかっている状態といえます。それゆえ、色々な出来事に対して柔軟に対応しやすいのではないでしょうか。物事について柔軟に対応できるので、激しく落ち込んだり腹が立ったりひどく不安になることが少なくなります。落ち込むことや不安になってしまうことが日々あっても、自分自身を受け止めているからこそ立ち直る方法も自分にはあるので回復も早いとされています。

またメンタルが安定していると、病気の時よりも体を動かしやすくなり、体を動かすことは身体的な健康につながります。身体的な健康は規則正しい生活を支えてくれますので、よりメンタルが安定しやすくなるという仕組みです。

健康を維持しやすい

自己受容でメンタルが安定していると、身体にも良い影響があります。思い悩むことが少ないことで、眠りやすく、また途中で起きたりすることも少ないためぐっすり眠れることでしょう。睡眠時間が確保されると、朝起きるのもそれほど苦痛ではなくなりますし、日中も活動的になります。活動的になれば、食事も美味しく感じることでしょう。食事をとると栄養につながりますので、健康な状態を維持しやすいのではないでしょうか。

みなさんも元気な時は、あれこれ思い悩まないのに、風邪などで具合が悪くなると「このまま寝ていて、仕事は大丈夫だろうか」「具合が悪くて子どもと向き合えないダメな親だ」とネガティブな思考になるのではないでしょうか。このように自己受容は心だけでなく体の健康にもつながっているのですね。

コミュニケーションがとりやすい人になる

自分自身の心と体に余裕があるので、相手が行ったことや行動について理解しよう、考えてみようといった行動が生まれやすくなります。どうしても自分がハードワークであったり、プライベートで辛い状況だと、相手のために自分が動くのはとても苦痛だったりしますよね。

仕事では相手のタスクも意識できるので、確認のメールを出すこともあるでしょうし、パートナーが疲れて帰ってくれば「今は相手の家事を少し手伝った方が良さそうだ」といった判断「今日はやっておこうか?」といったやりとりも生まれやすいです。そういったコミュニケーションは相手にとってありがたいやりとりになりますので、次のやりとりも安心できるのではないでしょうか。

また「自分は自分」といった割り切りもありますので、必要以上に相手を攻撃、非難することも少なくなります。自己受容していると、自分だけでなく、相手とのやりとりがスムーズになるのはそういった背景があるからと考えられます。

建設的な選択ができるようになる

自分がどんな人かある程度わかっているので、行動する際に自分にあった選択ができるとされています。アドラー心理学において過去のできごとはかえることができないとしていますが、過去のできごとから生まれた困難に対する自分の考え方が建設的かどうかの判断を大切にしています。

「会議で間違った発言をしてしまった」という過去のできごとがあったとします。その「間違った発言」は変えられませんが、「じゃあ間違わないように資料を読みながら発言するようにしよう」と建設的に判断できるのが自己受容できている状態です。しかし「じゃあもう会議では発言しないようにしよう」「どうせ失敗するから会議は欠席しよう」といった非建設的な考え方は前進しにくいですよね。このように自己受容はよりよい未来につながる考え方につながっているのですね。

自己受容ができない・難しい原因とは?

自己受容するとメンタルが安定するといったわかりやすいメリットから、自分らしい未来を生きるきっかけにつながることがわかりました。ですが、自己受容できていない人には一体なにが足りないのでしょうか。ここではまず自己受容ができない人や難しい原因について、多くの人が思い当たりやすい3つを取り上げてみました。

生まれ持った身体的な影響(遺伝や病気など)がある

人間は何かしらの遺伝子をもって生まれてきます。また生まれた時から足が不自由だったり、病気で思うように体が動かせなかったりする人がいるのも事実です。そういった人たちは自己受容までの道のりは一般的な人とは異なる場合があるため、もしかすると難しい場合もあるかもしれません。

ここで大切なのは身体的な影響があるからといって、自己受容できないのではなく、今自己受容できていない影響になっている可能性がある、ということです。足が不自由であってもアスリートになる人もいますし、芸術家になる人もいます。また車イスや義足を使いながら生活を送っている人が自己受容していないわけではありません。生まれ持った身体的な影響はたしかにありますが、自己受容ができない原因はもしかすると他のことが考えられるかもしれませんね。 

幼少期からの環境や経験の影響がある

こどもの頃、周囲から「ダメな子ね」「こんなんじゃいけないでしょ」とずっと言われている人は、もしかすると大人になった今でも「こうせねばならない」「自分がした行動に自信が持てない」と思っているかもしれません。それはあなた自身の問題ではなく、これまでの周りからの関わりから難しさが生まれている可能性があります。

アドラー心理学では性格のことを「ライフスタイル」という言葉を使っています。ライフスタイルはいくつかの影響をうけており、そのうちの1つが「環境」で、文化や家族布置(かぞくふち)があてはまります。特に家族布置の中でも「きょうだい関係」をアドラーは重要視しています。生まれた順番や競い合う関係であったかどうかは、ライフスタイルに強い影響があるとしています。

しかし、ここでも「きょうだい関係」は影響にすぎません。アドラーは影響するものはあるが、決めるのはあくまでも自分自身としています。幼少期からの環境や経験は自己受容できない原因と決めつけることはできないことは繰り返しお伝えしておきますね。

現在の社会的な立場からありのままでいることが難しい人

40代50代はキャリアも後半にさしかかり、部下をまとめたりプロジェクトを動かしたりする立場の人も多いかもしれません。そういった自分に相手から求められることが多い人は、自己受容することが難しい場合があります。

相手のことや状況ばかり考えるために、自分自身について考える時間的がそもそも少ないですし、周囲をまとめるために自分の意見は二の次、という思考のルーティンがあるかもしれません。すると、自分自身についての認識が薄くなってしまうので、いつも人に合わせてしまう、他者の評価ばかり気になるといった相手基準で考えているのです。

「自己受容したい」「今の自分を受け入れたい」と思っても、今までのルーティンや相手から求められない状態に不安があるため、なかなか踏み出せないのも、この社会的な立場が影響している可能性があるのです。

自分の思う「完璧」が強い人

「完璧」が強い人というと、整理整頓ができて仕事ができて見た目もよくて、といった一般的に完璧と呼ばれる様子を考えるかもしれませんね。ここでいう完璧が強い人とは、実は「自分が思っている通りに物事をしたい人」の可能性があります。

家族が畳んだ洗濯物は自分と違う畳み方なのでなんとなくイラっとしてしまう、自分が思っていた時間ではない時に会議が設定されてしまって部下に関係のない部下に強くあたってしまう、といった自分が思っている「完璧」ではない状態に、とてもストレスを感じてしまう人は、実際の自分と思考に差を持ちやすいかもしれません。それは「ありのままの自分を受け止め」ていませんよね。

せねばならない、という思考が強い人は、人生が前向きで強い人というイメージがあるかもしれませんが、実は自己受容する過程においては、少し見直す必要があるかもしれませんね。

不規則な生活を常に送っている

人間は眠らないと生きていけない生き物です。どうしても寝る時間が一定ではない、昼夜逆転しがちな生活を送っていると、睡眠不足になりやすく、睡眠不足は脳の働きに影響を与えてしまいます。

眠ることで人間は情報を整理しています。うまく眠れないと脳の働きがスムーズに行われないため、うつ病などの症状を引き起こすとされています。うつ病は抑うつ症状がある状態ですので、自分をありのままうけとめるという気持ちにはとてもなれないことは想像しやすいのではないでしょうか。

不規則な生活を送ることは、周りとのリズムが合わず趣味ができない、家族とのすれ違いが起こるといった生活上のストレスもたまりやすいとされています。ストレスを感じると、怒りや不安を引き起すホルモンが分泌され、また幸せを感じるホルモンがでにくくなってしまうので、より「ありのままの自分を受け止める」気持ちには遠くなってしまうというのですね。

病気を持っているが、治療を開始していない

アドラー心理学におけるライフスタイル(性格)をつくる影響に「生まれ持った身体的な要因」があります。生まれ持った身体的な要因もあれば、生きていく上で病気になることもあります。病気をもっているのにもかかわらず、適切な治療を受けていない状態だとしたら、いつ自分の命があやういものになるかわかりません。そういった生命そのものが不安定な状態では、自分のことを安心して考えるのは難しいことではないでしょうか。

病気を持っていても、自分の選択として治療を開始していないのは、その選択に自分の決意があるからです。ですが、お金の問題がある、誰かに治療をうけることをストップされているといった状況は、自分の意志による選択ではなく、相手都合の選択ではないでしょうか。病気があることが自己受容できない要因なのではなく、病気を持っていても自分自身をみつめられているかが大切なのですね。

自分の障害に気づいていない・考えようとしない

病気と似た状況かもしれませんが、自分の抱えている「自閉スペクトラム症」や「ADHD」「うつ病」といった障害についても同じようなことが言えます。障害そのものに気がついていない場合、自分のことをまるごと受け止めている状態とは言い難いのではないでしょうか。

障害をもった自分を受け止めようとする障害受容の最初の入口は、自分の障害に気が付くことです。また専門家に自分が障害をもっているかどうかわからない、気になっているがなかなか勇気がもてない人は、ぜひ専門家に相談する機会を設けて自己受容につながるきっかけになるとよいですね。

「自己受容できない」と感じる人の特徴

病気や障害もなく、一般的な幼少期を過ごしていることから自己受容ができない、難しいとされる原因は特に見当たらないものの、自己受容できないと感じている人もいらっしゃいます。ここではアドラー心理学でいう「ライフスタイル」、一般的には性格と呼ばれる部分や、自己受容が難しいと感じる人の特徴を取り上げてみました。

理想と現実の差が大きい人

理想を目標をもつことは大切ですが、目標はあくまでも理想なので、現実とは異なる場合がありますよね。そういったありたい、なりたいと、現状があまりにも離れていると物事もうまくいきにくいことがあるかもしれません。そういった際に「できなかった」「ダメだった」という感情を持ちやすいのではないでしょうか。理想と現実のギャップによって生まれる感情をアドラーは「劣等感」と呼んでいます。

劣等感は本人がよい能力をもっていたとしても、本人が引け目を感じてればそれは劣等感であるとしています。ほどよい劣等感は、行動力につながりますが、あまりにも差があると、自分自身の課題について避けてしまうこともあるとしています。そうなると、ありのままの自分を受け止める状態ではなくなってしまうのですね。

必要以上に相手との違いを気にする

仕事の成果や社会や相手からの評価は「社会的自己肯定感」につながると考えられていて、時に励ましや勇気につながるとされています。ですが、自分自身にとって必要以上に負担になってしまう場合は、社会的自己肯定感どころか、ますます自己受容できないと思うかもしれません。それは自分の価値基準が相手にあることに気がついていないために起こります。

あるがままを受け止めるためには、相手ではなくまず自分自身の感情や思いに気づく必要があります。それなのに、相手のことばかり考えていては、ますます自分のことを考えにくいですよね。40代50代のミドル世代は経験も豊富な分、様々な価値基準を抱えてきています。その1つ1つが自分にとっての価値なのか、相手が決めた価値なのか紐解いていく必要があるかもしれませんね。

自分をいつも否定的にとらえる

「あれもこれもできていない」「あの人はやれるのに自分ができなかった」「まだここまでしかやれていない」といつでも自分を否定的に考えやすい人は自己受容できないと思う可能性があります。物事の考え方がいつでも自分を否定する方向になっているので、自己受容についても当然「できない」と思ってしまうのですね。

ありのままを自分を受け止める自己受容とは、すなわち「いい・悪い」で判断しないということです。ですが、自分が受けてきたしつけや教育、そして求められてきた行動から否定的になりやすい人は、どうしても「いい・悪い」で判断するようになってしまっているため。自己受容できないと頭から思ってしまうかもしれませんね。次の項目で自己受容できるようになるための方法などをご紹介していますので、ぜひ参考になさってくださいね。

自己受容できるようになるための方法や考え方とは?

自己受容できない原因や特徴に当てはまったとしても、自己受容できない人ときまったわけではありません。アドラーは「過去は変えられないが捉え方は変えることができる」といった「目的論」でアプローチすることで問題を解決しようと考えました。アドラー心理学はもちろん「セルフコンパッション」や「バウンダリー」といったマインドフルネス的手法も合わせて、自己受容できるといった未来のための方法や考え方4つをご紹介していきます。

自分がもつ思考のクセを見つける

アドラー心理学で有名な「コップの水理論」があります。コップに半分の水がある状態を「あと半分もある」と建設的な考え方ができる人は物事をポジティブな見方ができます。しかし、同じようにコップに半分の水があることに対して「あと半分しかない」と非建設的な考え方をしてしまうとネガティブな見方になってしまいます。アドラーは「世界がネガティブに見えているのならメガネ(考え方)を変えること」を著書の中で説いています。

このようにコップの水だけでなく、自分が持っている思考のクセを見つけることは自分自身を知る手がかりになります。そこで自分がネガティブな思考になりがちだと気がついても、自己受容することをあきらめないでください。そんなネガティブな思考をもっている自分がありのままの自分です。

無理にポジティブな思考になろうとするのではなく、クセをまず見つけて自分で「ああ、自分ってこういう考え方をしているんだな」とぼんやり見つめることが自己受容であることを忘れないでくださいね。

今を見つめるきっかけをつくる

自己受容とは今をみつめることでもあります。今、自分が何をしていてどうなったか見つめるきっかけをつくるために、定点観測を行ってみてはいかがでしょうか? マインドフルネスと呼ばれる瞑想でもいいですし、「3行日記」など書くことで日々を振り返ってみるのもおすすめです。また今をみつめるきっかけは1つでいい人もいれば、いくつかを組み合わせる人もいらっしゃいます。「改めて今をみつめるきっかけを作る余裕なんてない」と感じている人は、普段の生活に取り入れてみてはいかがでしょうか? 

例えば、

  • 電車の中でいつもはスマホでSNSをチェックしている時間を、スマホを見ないで、ただ車窓から景色を眺めてみて自分がどういう気持ちや状態なのか振り返る。
  • お風呂の中でシャワーを浴びながら、湯船に浸かりながら自分がどう感じているのか客観的な視点で問いかけてみる。
  • 寝る前に、お腹に手を当てる。その時、お腹を温かく感じたのか、それとも手の冷たさを意識したのか自分で改めて感じてみる。

といった方法があります。ランニングやウォーキング中、子どもの習い事の待ち時間など、自分の日常生活にうまく取り入れられると続けやすいのではないでしょうか。

自分ができることと、できないことを区別する

悩んでいることや取り組んでいることが、自分ができる範囲のことなのか、それとも相手次第なのかを意識することは自己受容につながります。バウンダリー(境界線)を意識するという考え方で、アドラー心理学でも「課題の分離」と呼ばれています。自分が一生懸命行ったことに対して、相手がどう感じるかは相手の状態によります。それは相手以外の人が感じ方を変えようとおもっても難しいことはなんとなく想像がつくのではないでしょうか。

このように相手の問題(感じ方や考え方)に踏み込みすぎるのは、人間関係がこじれやすく、また自分よりも相手に意識が向いているので自己受容しにくい状況です。相手の問題を解決することで、自分も助かる場合もありますから、まったく相手の問題に踏み込まないわけではありません。「これは自分の課題かな? それとも相手の課題かな?」と見極めることが大切です。

専門家のサポートを受ける

自己受容や自己肯定感は自分自身のことだからといって、自分だけで解決しようとしていませんか? 背景に子どものころの経験や事故事件の体験がある場合は特に専門家のサポートが必要と考えられます。人間は「忘れる」という生きるために非常に有効なスキルをもっているため、辛くて苦しい経験は消去している場合があります。

しかし、自己受容するときにはそういったつらい体験を思い出すこともあるかもしれません。自分にあった専門家を見つけることは難しいこともありますので、まずは話を聞くプロに聞いてもらう経験から始めるのもよいかもしれません。

当サイト「悩ミカタ」では、ミドル世代(40代50代)の悩みや不安・ストレスについて各分野の専門家/カウンセラーに相談できるオンラインカウンセリングサービス「悩ミカタ相談室」を展開し、公認心理師など国家資格を保有する専門家が多く登録しています。つらくて不安な気持ち、1人で抱え込まずにまずはお気軽に相談してみませんか?

40代50代のお悩み” は専門家に相談しよう「悩ミカタ相談室」

ありのままの自分を認められなくて苦しい…そんな人へのメッセージ

「自己受容」とは、ありのままの自分を受け入れることです。完璧ではない自分、失敗した経験、すべての自分を受け入れることでした。
自己受容のメリットとして

  • メンタルが安定し、ストレスが軽減される。 
  • 自己肯定感につながり、心のゆとりを生み出す。
  • 自分を受け入れることで、他人に対しても寛容になり、良好な人間関係につながる

といったことがあげられます。

自己受容できない原因を抱えたとしても自己受容を深めるには

  • 自分の思考のクセを見つける
  • 日記を書いたり、瞑想をするなど、自分とじっくり向き合う時間をつくる
  • 専門家に相談する

といったことをご紹介しました。

自己受容は、自分自身を大切にする第一歩です。あなたは、すでに素晴らしい存在です。この記事がありのままの自分を愛し、より豊かな人生を送るためのきっかけとなればうれしいです。

40代50代のお悩み” は専門家に相談しよう「悩ミカタ相談室」

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