将来への不安、これって考えすぎ?心理的な原因や対処法を専門家が解説

「年金がもらえるかどうかわからない」「若いころのようにいかなくなった自分がいる」など、なんとなく将来への不安を持つ人もいるのではないでしょうか。実際、40代50代の約7割が「将来への不安」を抱えているといわれています。経済面や健康面での心配から考えすぎてしまう、モヤモヤする、気が重たくなっているなどはありませんか? この記事では、専門家の立場から40代50代が抱え込みやすい不安や考えすぎてしまう背景、そして具体的な対処法をお伝えしていきます。記事を読んで、あなたらしい日々の生活を取り戻しましょう。

執筆者

佐々木ゆりさん

公認心理師、臨床発達心理士。保育士歴は20年。現在は療育スタッフとして発達障害を持つお子さんやその家族と関わっています。発達と保育を軸に、直接支援はもちろん、webライター、保育士になりたい人の支援、保育士さん支援など幅広いキャリアを展開中です。

目次

将来への不安の要因として多いものとは?

この先が心配、これからどうしたらいいのかわからないといった将来への不安はどこからきているのでしょうか? ここでは公益財団法人 ダイヤ高齢社会研究財団が行った調査結果から主な3つの要因をとりあげてみました。自分が不安に感じていることは、もしかすると、ほとんどの人が不安なことなのかもしれません。1つずつ確認していきましょう。

定年後、安心して暮らせるかどうかわからない

年金制度がこれから続くかどうかわからない、日本の経済がよくなる感じがしないといった経済的な不安をもっている人は50代の男女ともに半数を超えています。*1 そういった背景から定年後も働き続けたいと思っている人や、貯蓄など将来に備えた準備を始めたいと思っている人が多いことが調査結果でわかっています。その一方で、正規雇用ではなかったり、退職金の見込みがないといった人も一定数おり、将来への思いと現実がうまく噛み合わない状況から、安心して暮らせるかどうかわからないと判断しているのですね。

少しずつ体の調子が変わってきているから心配

経済的な不安があるため、少しでも長く働く必要があると感じている人が多いようです。長く働くためには、健康である状態をキープしたい気持ちとは裏腹に、今までできていたことができなくなったり、やむを得ず病院にいく回数が増えてしまっている人もいらっしゃるかもしれません。体の調子が変わってきているのは、病気はもちろん加齢というこれまでなかった原因も考えられます。そういった体調の変化や様々な要因から、自分にできることへの限界を感じて、次世代の育成へ気持ちが変化していくことは成人期中期(だいたい35〜60歳)に起こること*2 とされています。40代50代で不安になるのは、ほとんどの人が持つ感情なのですね。

家族の介護や将来が不安

自分の親やパートナーの家族の介護を目の当たりにしている人も40代50代には多いのではないでしょうか。実際、働きながら介護をしている人は、仕事をしている人の5.4%にあたり、その数はますます増える見込みです。*3 また、家族で介護をしている人が離職してしまうケースも増えており、安定的に働くことが難しくなっている事実もあります。また、自分のこどもに障害などがあり、こどもだけで自立した生活が難しい場合も将来が不安になりやすいです。介護や自立支援は相手都合なので先がわからないことが多く、不安も起こりやすいのは当然かもしれません。

将来のことを考えると不安になる心理的な原因

将来に不安を感じている人が多いこと、また不安になる背景も様々であることがわかりました。将来への不安を考えすぎているのではないと思うのには、もう1つ、もともと持っている性格的な要因も考えられます。将来が不安になりやすい考え方かどうか確認してみましょう。

つねに何事もきちんとやりきりたい気持ちがある

学校も仕事も真面目にコツコツと積み重ねるタイプであると、わからない将来については道筋が見えないのではないでしょうか。やりきりたい思いがあるのに、わからないことや現時点では判断しにくいことが多すぎるとモヤモヤする気持ちが生まれやすいです。それはきちんとやりきりたい、ちゃんとありたい気持ちがあればあるほど、考えすぎてしまうかもしれません。

失敗をうまく乗り越えられていない経験を持っている

40代50代は様々な経験をしてきています。成功体験よりも、失敗体験のイメージを多く持っている人は、将来についても「どうせうまくいかないかもしれない」「もうわたしの人生は失敗しているから」と諦めのような気持ちがあるかもしれません。失敗は誰しもしていることですが、その失敗を自分の中で消化できていない部分が多ければ多いほど、不安になりやすいのではないでしょうか。

周りと比べてしまい、その結果落ち込んだり焦ったりしてしまう

同世代がまわりにたくさんいて、競争社会もある程度経験している40代50代は、今の時代よりも人と比べられる機会も多かったかもしれません。それゆえ悩んだり苦しんだりした経験もあるのではないでしょうか。誰かと比べられてきた状況から、自分自身の思考も周りと同じなのか、それとも違っているのかといった相手方の視点で判断してしまいがちな人もいらっしゃるかもしれません。また育ってきた環境において、きょうだいや周囲と常に比べられていた場合、自分の意志が持ちにくい性質になっている可能性があります。それゆえ「あの会社にいる知人よりまともな老後が送れないだろう」「隣の人は穏やかな人柄だから、きっと将来も安泰なのだろう」と想像してしまっているかもしれません。

将来への不安で考えすぎてしまうときの対処法

将来への不安で考えすぎてしまう原因は環境的なものと性格的なものがあります。では、将来への不安で考えすぎてしまう場合、どのようにしたらよいのでしょうか。ここでは3つの具体策について紹介していきます。

何が心配なのか整理してみる

心配ごとを文字に起こしたり、誰かに話したことはあるでしょうか? 頭の中だけで考えていても、1つ1つの接点や因果関係を見つけにくい場合があります。一度、何が心配なのか視覚化してみましょう。ジャーナリングやひとりブレスト(ブレーンストリーミング)とよばれる文字化して整理する方法もありますし、スマホなどの音声録音機器を使って話す方法もすっきりするかもしれません。何が心配の原因なのかわからない人は、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。

今できることを考えて少しずつ実行する

会社などの企画進行同様、まずは今できることから取り組むのが大切です。老後資金で、NISAやふるさと納税を始めたいと思っていても手を出せずにいる場合、まずオンラインで操作可能な口座を作る必要があるかもしれません。また健康について不安がある人は、1日1回のストレッチや駅の階段を使うといった体を動かす機会を作ることなら始められるかもしれません。そのためには不安をできるだけ具体的にして、細かい道筋をつくると今できることがみえてくるでしょう。

専門家への相談や第三者の意見を取り入れる

うまく言語化や具体化できない、今するべき行動が見えてこない人は、専門家や第三者と一緒に取り組んでみてはいかがでしょうか。誰かに頼ったりすることが苦手な場合、その一歩がなかなか踏み出せないかもしれませんね。    

当サイトのオンラインカウンセリングサービス「悩ミカタ相談室」では、40代50代が相談しやすい専門家が揃っていますし、オンライン完結という自分の都合に合わせやすい特徴があります。まだ続く自分自身の人生をよくしていくきっかけをつくるのは自分です。ぜひ一度話してみたい専門家を探してみてはいかがでしょうか。

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将来への不安を解消するための考え方や物事の捉え方のコツとは?

将来への不安を持ちやすい人の特徴として性格的なものが考えられます。では、一度備わってしまった考え方はもう変えられないのでしょうか。考え方のクセは、時に自分自身を苦しめるきっかけとなってしまいます。ここでは将来への不安を解消するための考え方のコツをお知らせしていきます。

「今」に焦点を当てて考えるクセをつける

不安は見えないわからないものを考えすぎている結果なのかもしれません。今の気持ちに焦点を当てることを「マインドフルネス」と呼びます。

  • 今、自分がどう思っているのか
  • 今、何がしたいのか
  • どんなことが、今楽しいのか

など、今を中心に考えたり感じたりする機会をもうけてみましょう。そのためには自分がもっている考え方のクセをしっておくとよいかもしれません。経済学者ドラッカーが説いた「コップの水理論」では、コップ全体の半分に水が入った状態を見て「もう半分しかない」「半分だけある」「半分使ってしまった」と捉えるのか「まだ半分ある」「これから半分使える」「別に何も思わない」と捉えるのか、それぞれ見る人によって異なるよねという理論です。過去や未来に焦点を当てすぎず「今わたしはどうしたいのかな」という気持ちを思い出すようにしてくださいね。

自分と周りを区別して考える

まわりと相手を比べて不安になってしまうタイプの人は、相手と自分が別の問題を抱えた別の人という認識があいまいになっているかもしれません。バウンダリーといって相手と自分との境界線を意識することが、自分自身を大切するきっかけになります。いつも自慢話をしてくる同僚や、ネガティブな問題を投げかけてくる親族について「ここまではわたしの責任で、ここから先はあなたの問題」といった視点で受け止めてみてはいかがでしょうか。

将来が不安で仕方ないときに疑われる病気とは?

これからのことを考えては常に不安である、不安が頭から離れないといった普段の生活に影響がでているとしたら、それは病気や障害の可能性があります。将来が不安で仕方がないときに考えられる病気を主に4つ取り上げてみました。

不安障害


なにごとも不安で仕方がなくなるのが不安症とされています。半年以上、特定のものが原因ではなくなんでもかんでも不安になってしまう病的な不安を抱えており、


・落ち着きのなさ
・いつもとても疲れている
・集中できない
・イライラしてしまう
・筋肉がうまく動かせない
・睡眠障害がある


これらから3つ以上の症状が当てはまる場合「全般不安症」と診断されることが多いです。診断後はお薬を飲んだり、認知行動療法と呼ばれる考え方や物事の捉え方を変えていく心理療法を受けたりしながら、生活に支障があまりでないようにコントロールしていきます。

うつ病

「何事もしたいと思わない」「今まで楽しめていた活動に何も感じなくなった」など気分の落ち込みが強く、仕事や家事で困っている場合にはうつ病の可能性があります。うつ病がなぜ発症するのか、まだはっきりとわかっていません。その一方で日本では100人中、約6人が一生のうちに経験するとも言われており、女性の方が男性よりも1.6倍多いとされています*4 うつ病がわかった後は、専門家による薬物療法や精神療法(指示的療法や対人療法など)で少しずつ回復を目指すことが多いです。

その他(認知症・心身症など)

40代50代のみなさんが気になるのは認知症でしょうか。

認知症の症状の1つに「夕方になるとそわそわして落ち着かなくなる」というものがあります。また記憶維持の難しさから繰り返し確認する場合も認知症が原因であったりします。認知症はかかりつけの医師も相談しに乗ってもらえますし、脳神経外科や精神科もサポートしてくれることでしょう。                            


また不安から下痢や頭痛がひどい場合には心身症と診断されることもあります。心身症とは「身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害の認められる病態をいう。ただし、神経症やうつ病など他の精神障害にともなう身体症状は除外する。」と日本心身医学会で定義されています。つまり、ひどい体調不良 が不安やストレスととても関係がある場合に心身症と診断されるのですね。心身症も精神科やかかりつけの内科などで相談を受け付けていることが多いです。

まとめ

将来への不安は経済状況や家族状況といったまわりの影響と、自分自身が持つ考え方のクセが影響しています。だれしも不安になる背景は持っていますが、考えすぎて日常生活に支障が出るほどの不安は、適切な対処が必要です。この記事で紹介した「今」に焦点を当てる方法など、今できることから始めてみませんか? 必要に応じて専門家への相談も検討し、将来への不安を一人で考えすぎないようにしてください。あなたの不安に寄り添える方法が、見つかることを願っています。

<参照記事>

*1 公益財団法人 ダイヤ高齢社会研究財団
  40 代・50 代正社員の退職・引退に向けた意識に関する調査 報告書より https://dia.or.jp/disperse/questionnaire/pdf/questionnaire_20170725.pdf
* 西本絹子/藤崎眞知代編著 臨床発達支援の専門性 p.276 ミネルヴァ書房
* 岡本真希子 企業は従業員の介護の実態把握を―仕事と介護の両立支援の土台として― 日本総研 https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/viewpoint/pdf

*4 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 こころの情報サイト「うつ病」より 

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