「眠いのに寝れない」原因は?眠れない夜に試したい3つの対処法【専門家監修】

コロナ禍以降、テレワークが増大したことにより日中の外出機会が減り、太陽の光を浴びなくなり運動不足となることで、不眠症状を訴える人は増えやすくなっています。日本で睡眠障害に悩む人の数は、約5人に1人といわれています。

不眠症まで行かなくても季節の変わり目に「最近、なんだか寝つきが悪い」と感じたことのある人は多いのではないでしょうか。このように不眠症は私たちにとってとても身近な問題です。

本記事では睡眠の役割を確認し、不眠症の原因や関連する睡眠疾患を取り上げ、不眠症の改善方法や受診の目安を紹介しています。不眠症とは何か、どのようにケアしたら良いかなど、基本的な情報を確認できる記事となっていますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。

執筆者

あーちゃんさん

公認心理師、臨床心理士。指定大学院を卒業後、街のクリニックで非常勤心理士としてカウンセリングや心理検査の業務に従事する。その後、小学校や高校のスクールカウンセラー、公的機関の電話相談員、Webライターとしても活動中。

目次

睡眠の役割とは?

1日の睡眠時間が8時間だとすると、私たちは1日の3分の1の時間を睡眠に費やしていることになります。90歳まで生きるとしたら30年は眠っている計算になると考えると、莫大な時間をかけている実感が湧くかもしれません。

睡眠の役割は主に脳や体の疲れをとること、免疫力を回復すること、記憶の固定や感情の整理を行うことの3つに分類されます。

どれも生体の維持には必要不可欠で、人生の3分の1を費やすに値する理由ばかりです。早速、どんな理由があるのかみていきましょう。

①脳や体の疲れをとる

代用的な睡眠の役割は、脳や体の疲れをとることです。人間の体は、レム睡眠・ノンレム睡眠を繰り返すことでバランスよく心身の休養をとるようにできています。特に、体の疲れはレム睡眠で、脳(心)の疲れはノンレム睡眠の時に回復しやすいです。

睡眠周期は90分単位で変動します。ノンレム睡眠が60~80分に渡り出現した後に、レム睡眠が10~30分ほど出現し90分です。1サイクルを一晩のうちに4~5回繰り返すことで、1日大体6~8時間の睡眠時間となります。

②免疫力を回復する

レム・ノンレム睡眠は免疫力アップにも重要な役割を果たします。眠り始めの最初の1サイクルで深いレム・ノンレム睡眠に達するほど、体内で成長ホルモンが多く分泌され、免疫力が回復するのです。

睡眠時間と唾液中の免疫物質Igaの値の関連を調べた研究では、睡眠時間が5時間以下と短くなるにつれ、唾液中のIgaの分泌は少なくなります。6~8時間の適度な睡眠時間であればIga分泌が多くなることが確認されています。

③記憶の固定や感情の整理を行う

記憶の固定や感情整理に関係があるのはレム睡眠です。レム睡眠は、浅い眠りの状態であり、脳内の記憶や感情を整理し、固定や消去の作業を行っているといわれています。脳内で上記のような作業が行われているため、レム睡眠時には夢をみやすいのです。

質の良い睡眠が取れると、セロトニン(幸せホルモン)・メラトニン(睡眠ホルモン)などの内分泌系の働きも正常化するため、感情の波は安定しやすくなります。

「眠いのに寝られない」原因とは?

眠いのに寝られない状態となるときは、原因は1つと限らず、複数の要因が重なり生じることが多いものです。そのため何が不眠の根本理由か、自己チェックや医療機関の問診、診察を通じて明らかにすることが重要となります。

要因によっては、医療機関の治療が必要な場合もあれば、生活習慣の見直しだけで済む場合もあります。以下に、代表的な要因を3つ取り上げましたので、自分にも当てはまるものがないか、チェックしてみましょう。

①心理的要因

眠いのに寝られない1つ目の原因として考えられるのは、心理的要因です。心理的要因とは、仕事上のストレスや人間関係のストレス、経済的な不安、突然の災害や事故など、さまざまなきっかけを通じて起こりうるものです。

多くは一過性の要因で、数週間もすれば回復することが多いですが、慢性化した時は影響力が強くなるため注意が必要です。心理的要因は、眠いのに寝られなくなった際、その前後の出来事を振り返ることで気づく場合が多いでしょう。

②身体的要因

2つ目の原因として考えられるのは、身体的要因です。例えば、喘息発作やアトピー性皮膚炎、外傷、関節の痛みなどの身体疾患が関連します。身体的要因は目に見えて原因が分かりやすいためすぐに気づけるものが多く、治療やセルフケアを通して改善していきやすいところが特徴的です。

その他、睡眠時無呼吸症候群などの疾患は、高血圧や脳卒中などの他疾患との関連も深く、不眠だけでなく命に関わる場合もあります。普段いびきをかく人は、早めに治療しておくことをおすすめします。

③生理的要因

3つ目の原因として考えられるのは、生理的要因です。海外旅行や出張による時差ボケや、受験勉強や夜勤による昼夜逆転、ご近所の工事音などが該当します。極端な睡眠リズムの乱れは不眠につながりやすくなります。

生理的要因による不眠は、生活習慣の見直しや環境調整により解消していくことが基本となります。特に朝、日光を浴びることと快眠は大きく関係があるため、ある程度意識して調整する必要があります。その他、一定のタイミングで食事をとることも大切です。

日常生活の中でできる対処法とは?

不眠を解消するためには、心身の覚醒と休息のスイッチをコントロールし、切り替えることができるようになることが重要です。また、そのタイミングを自己コントロールで整えていくことがポイントとなります。

以下に、代表的な不眠の解消方法を3つ取り上げました。飲酒など、自分では良いと思っていたけれど実は間違いである場合もありますので注意してくださいね。では、早速みていきましょう。

①寝つけない時は無理せず気分転換する

寝つけないと、ベッドの中で目を閉じて時間をやり過ごそうとする人は多いです。しかし、すぐに寝つけない状況なら長時間ベッドに居ることを避けた方が良い場合もあります。「このまま眠れなかったらどうしよう」と焦りが生まれ、ベッド=眠れない場所と条件づけがされてしまい、ますます眠れなくなるケースが多いためです。

寝つけない時は一旦、ベッドを離れ、温かい飲み物を飲む、読書をするなど他のことをして開き直ってしまいましょう。その方が、いつの間にか眠れるようになることが多いものです。

②寝る前のカフェインやお酒は控える

寝る前のカフェインやお酒の摂りすぎに注意しましょう。カフェインやお酒は、覚醒作用や利尿作用により睡眠の質を悪くしたり、夜中に目覚めやすくしてしまったりするためです。

カフェインというとコーヒーを思い浮かべる人は多いです。しかし、コーラや栄養ドリンクにも含まれる場合がありますので、成分表示をよく見るようにしてください。夕方以降にどうしても飲みたくなった場合は、デカフェのコーヒーやハーブティーなどで代用するようにすることをおすすめします。

③心身ともにリラックスした状態を作る

寝る前はできるだけ、心身ともにリラックスして過ごすことを意識しましょう。人間の自律神経は、活動時に活発となる「交感神経」と、休養時に活発となる「副交感神経」に分かれます。

悩んだり、イライラしている時は脳が興奮して交感神経が有意に働きやすいです。寝る前にストレッチや深呼吸をする、読書をする、音楽を聴くなどして、心身ともにリラックスして副交感神経を有意にすることで、眠りの質は高まります。

眠いのに寝られない症状が出ることのある病気とは?

代表的な睡眠障害は、以下の3種類に分類できます。

  • 概日リズム睡眠障害:睡眠時間が不規則となる睡眠障害
  • 不眠症:寝つきが悪い、途中で目がさめるなどの睡眠障害
  • 睡眠呼吸障害:睡眠時に異常な呼吸を示す睡眠障害

睡眠障害といっても、その種類はさまざまです。早速、それぞれの睡眠障害の特徴をおさえていきましょう。

①不眠症

寝たくても寝つけない、寝ても目が覚めるといった症状が1ヶ月以上続き、日常生活に支障をきたしている場合は「不眠症」であるといえます。不眠が長引くと、頭痛や抑うつ、集中力低下といった身体症状がみられることもあります。

また、不眠症には寝つきが悪くなる「入眠障害」や夜中に目覚める「中途覚醒」、朝予定より早く目覚める「早朝覚醒」、寝足りない「熟眠障害」など4つの下位分類が存在します。

②概日リズム障害

概日リズム睡眠障害とは、体内時計が適切に時間の周期に同調できないために生じる睡眠の障害をいいます。

人間の体内時計は1日25時間周期です。そのため、体内時計と地球の24時間周期には1時間のずれが生じます。私たちは知らず知らずのうちに、このずれを朝日を浴びたり、食事をとる、運動するなどで調整しているのです。

しかし、概日リズム障害を発症し1時間のずれを修正することができなくなると、望ましい自国の入眠や覚醒が難しくなるのです。

③睡眠呼吸障害

睡眠呼吸障害とは、睡眠中に異常な呼吸をしめす睡眠の総称をいいます。

睡眠呼吸障害の中でも代表的なものが睡眠時無呼吸症候群であり、人口の3~7%、特に中年男性の罹患率が高いといわれています。睡眠中に呼吸が止まるのが特徴です。その他、日中の眠気やいびき、睡眠時の窒息感、覚醒時の倦怠感などがみられることもあります。

本人が症状を自覚することは難しいため、家族や周りの人に指摘され症状に気づくケースが多いです。

病院を受診すべきかを判断する目安とは?

数日で解消する程度の軽い不眠であれば、生活習慣や環境を変えるだけで改善する場合もあります。しかし、不眠が長期化しており、上記の対応だけでは改善しないケースもあります。その場合は、病院を受診し適切な治療を受けることが望ましいです。

医療機関では、睡眠薬による薬物療法が行われます。その他にも高照度光療法といった、日光の代わりとなる人口の光を朝浴びる治療法が実施されることもあります。

①不眠が1か月以上続く場合

不眠が数日続いているという程度であれば、後々解消する可能性もありますから、しばらく様子見で良いかもしれません。一方で、不眠が1ヶ月以上に渡り続いている場合は、長期的に心身に悪影響を及ぼす可能性が高まるため、受診を検討することをおすすめします。

受診の場合は、最寄りの内科や精神科、心療内科へ相談すると良いでしょう。心理的な要因が強い場合は精神科・心療内科を、身体的ないし生理的な要因が強い場合は内科を推奨します。医療機関によっては、個別に睡眠外来がある場合もあります。

②不眠にまつわる心身の症状が現れている場合

不眠が1ヶ月以上続いているわけではなくても、下記のような身体症状が現れている場合は、受診を検討することが望ましいです。

受診の目安にしたい身体症状

だるさや無気力、イライラ、憂鬱感、集中力の低下、頭痛、腹痛、めまい、食欲不振、風邪をよく引くなど。

上記の兆候が見られる場合、不眠により自律神経や内分泌系、免疫系のバランスが崩れている可能性が高いです。不眠状態が長引くと、うつ病や躁うつ病などの精神疾患にもかかりやすくなるため、早めの受診で心身のケアを行うことをおすすめします。

③仕事や家庭生活に支障をきたしている場合

不眠による集中力の低下が原因で、仕事上の物忘れやケアレスミスが増えている。家事の段取りができない、ベッドから起き上がれず買い物に行けないなど、明らかに仕事や家庭生活に支障をきたしている場合は早めの受診を検討しましょう。

ミスが増えることにより職場での信頼を失ってしまったり、家族関係に亀裂が走ってしまうなど、2次障害として別の新たな問題に発展する可能性が高まるためです。問題が大きくならないうちに、早めに原因を解消してしまいましょう。

また、「いきなり病院やクリニックを受診するのは、なんとなくハードルが高い」と感じる方にはオンライン相談サービスも相談先もおすすめです。

▼「悩ミカタ」は、人が抱えるさまざまな悩みやストレスについて各分野の専門家に相談できる、お悩み相談ポータルサイトです。オンラインから匿名で相談できるので、気になる症状がある場合はぜひお気軽に悩ミカタ相談室へご相談ください。

まとめ

本記事では「寝たいのに眠れない」睡眠にまつわる漠然とした不安を抱えている人に向けて、睡眠の意義をはじめ、不眠症の定義や日常生活上で実践できる改善方法、医療機関の受診が望ましい場合の判断の仕方などを紹介しました。

中年期に差し掛かると通常、基礎代謝の低下に伴い眠ることに費やすエネルギーも減るため、睡眠時間も緩やかに短くなっていくことがわかっています。

そのため、睡眠時間だけでなく熟眠感があるか、体調に問題がないかなど、状況を総合して今のままの生活スタイルで問題ないかを判断する必要があります。

もし、睡眠にまつわる悩みを抱えており、このままで良いのか判断がつかないという場合は、医師やカウンセラーなど、気軽に身近な専門家を頼って相談してみてくださいね。

▼「悩ミカタ」は、人が抱えるさまざまな悩みやストレスについて各分野の専門家に相談できる、お悩み相談ポータルサイトです。オンラインから匿名で相談できるので、気になる症状がある場合はぜひお気軽に悩ミカタ相談室へご相談ください。

<参考文献・記事>

厚生労働省 e-ヘルスネット「ノンレム睡眠」

岡村尚昌(2010).「睡眠時間は主観的健康観及び精神神経免疫学的反応と関連する」『行動医学研究』15,1,p33-40.

厚生労働省 e-ヘルスネット「不眠症」

厚生労働省e-ヘルスネット「快眠と生活習慣」

厚生労働省 e-ヘルスネット「睡眠・覚醒リズム障害」

厚生労働省 こころの耳「高照度光療法」

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