「報連相ができない…」苦手の原因は発達障害?うまくいかないときの対処法を解説

「報連相ができず職場で失敗ばかりで、自分が嫌になる」「報連相が苦手なのは、もしかして発達障害?」「どうしたら報連相ができるようになるの?」このような悩みを抱えていませんか?

この記事では、報連相がうまくいかないときの原因と対処法について、具体的なケースを紹介しながら解説します。報連相が苦手であることと発達障害の関連についても触れながら、職場で役立つ実践的なポイントを紹介しますので、日々の業務に活かしてみてください。

執筆者

臨床心理士・公認心理師

あらいひさきさん

大学院修了後、「心穏やかに過ごせるように」という信念のもと企業にて研究員としてメンタルヘルスサービスの開発に携わる。認知行動療法を専門とし、精神科での心理相談にも従事する。うつや不安、職場でのメンタルヘルスや発達障害、不登校など幅広いケースのカウンセリングを担当。

目次

仕事における報連相とは?

仕事における報連相とは、「報告・連絡・相談」の略で、職場でのコミュニケーションを円滑にし、仕事を滞りなく進めるためのスキルです。

まずは、報連相の重要性と、報連相ができない場合に生じるデメリットについて見ていきましょう。また報告、連絡、相談のそれぞれで押さえておきたいポイントも簡単に紹介します。

①報連相の重要性

業務効率が向上する

進捗を共有することで作業の重複を防ぎ、無駄を削減できます。

ミスが減る

複数人でチェックすることで、ミスに気づきやすくなります。

問題を早期に解決できる

問題を早めに相談・共有することで、大きなトラブルになる前に解決できます。

信頼関係ができる

報連相による密なコミュニケーションを通じて、チームワークや職場での信頼関係が深まります。

②報連相がうまくできない場合に生じるデメリット

業務が停滞してしまう

進捗が共有されないため、他のメンバーが次の作業に進むことができず、業務が滞ってしまいます。

トラブルが深刻化してしまう

問題があっても見過ごされやすくなり、より大きな障害や損失に発展する恐れがあります。

過労やストレスの蓄積につながってしまう

報連相がうまくできないと、周囲に相談できないために一人で問題を抱え込んでしまいます。その結果、精神的負担が増加し、健康を損なう恐れがあります。

信頼を失ってしまう

業務に関するコミュニケーションが疎かになることで「責任感がない」「孤立している」と見なされることがあります。

③報連相のポイント

報告のポイント

【途中でこまめに報告する】

結果だけでなく、進行中の状況や変化を適時報告するようにしましょう。これにより、上司やチームが迅速に次の対応を考えやすくなります。

【簡潔に伝える】

重要なポイントがどこかを意識して簡潔に伝えるようにしましょう。

どこが重要なポイントかがわかりにくい場合は「相手が知りたいこと」や「自分が伝えたいこと」を中心に整理すると、簡潔に伝えやすくなります。

業務や職場ごとに報告の内容で重視すべきポイントは異なるため、他のメンバーの報告を参考にしたり、上司に確認してみるのもおすすめです。

連絡のポイント

【正しい内容を伝える】

情報伝達の際は誤解が生じないよう、元の資料や具体的なデータを引用するなどして正確に伝えましょう。

【すぐに伝える】

連絡が遅れると対応が遅れ、トラブルが深刻化する可能性があります。問題が発生した場合は気づいた時点ですぐに伝える習慣をつけましょう。

【必要な人に伝える】

情報を共有する際は、連絡が必要な関係者を把握し、漏れがないように伝えることが重要です。

相談のポイント

【早めに相談】

小さな問題であっても、一人で抱え込まずに早い段階で相談することが大切です。初期のうちに対処する方が、解決しやすいものです。

【自分なりの考えを伝える】

相談の際には、「こうするのがよいかと考えているのですが、問題ないでしょうか?」というように自分なりの案を伝えるようにしましょう。

案が浮かばない場合は、「ここまでは調べたのですが」など、どこまで進んでいるのかや、どこで躓いたのかを伝えるようにするとよいでしょう。

報連相が苦手な場合に考えられる原因

報連相がうまくできない原因は様々です。ここでは具体的なケースをみていきましょう。

①相手の顔色を窺ってタイミングを逃してしまう

職場の空気がピリピリしている中、資料を手にして何度も上司のデスクを見つめるものの、上司が忙しそうにしている様子を見ると「今は話しかけるべきではない」と感じ、結果的に報告や相談を先延ばしにしてしまうことがあります。

②忙しくて忘れてしまう

複数の案件を同時に進めていると、他の業務の締め切りに追われて、「後でまとめて報告しよう」と思った内容をすっかり忘れてしまうことがあります。後になって上司から「これ、どうなった?」と聞かれてハッと気づくこともあるかもしれません。

③完璧主義であるために先送りにしてしまう

「もっと具体的なデータや準備が整ってから報告しよう」と考え続けてしまう完璧主義の傾向も、スムーズな報連相を妨げる原因です。

この結果、準備を万全にして相談に行き、上司から「ここは不要な情報だが、別の部分をもっと充実させるべき」と指摘され、修正を急ぐ羽目になることもあります。

④発達障害がある

発達障害がある場合、報連相に特に苦手意識を感じることがあります。特に、以下の注意欠如・多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)に起因する特性が影響することが多いです。

注意欠如・多動症(ADHD)

ADHDは、不注意や衝動性などが特徴の発達障害です。注意が散漫になりやすいため、情報の抜け漏れが生じたり、予定していた報告や連絡をうっかり忘れてしまうことがあります。

また、過集中によって他の業務に没頭している間に、報告や相談のタイミングを逃すことも少なくありません。特に、忙しい業務環境では情報の整理が苦手で、管理が難しくなる傾向があります。

自閉スペクトラム症(ASD)

ASDは、社会的なコミュニケーションの難しさや、特定の事柄へのこだわりの強さが特徴です。このため、報連相においても「何を、いつ、どのように伝えればよいか」を適切に判断することに悩む場合があります。

また、話しかけるタイミングをつかみにくかったり、伝える内容をうまく整理できず、結果として伝達の遅れや不足が発生することもあります。

発達障害の人が報連相を苦手とする理由

ADHDやASDなどの発達障害のある人が報連相を苦手とする理由には、以下のようなものがあります。

①不注意でタスクを忘れやすいから

発達障害には、不注意の特性がよく見られます。この特性によって、プロジェクト中に重要なポイントを記録し忘れたり、「後で報告しよう」と思った内容を他の業務に追われて忘れてしまうことがあります。

他にも、報告の際に必要な情報が抜けてしまったり、伝えるべき相手に情報が届いていなかったりと、小さなミスが積み重なるケースもあります。

このようなミスが続くと、自己嫌悪や自信喪失につながり報連相への苦手意識も強くなってしまいます。

②過集中している間に時間が過ぎてしまうから

発達障害の特徴として挙げられる「過集中」は、特定の作業や目の前の業務に没頭しすぎてしまう状態を指します。この特性により、報告や相談のタイミングを逃してしまうことがあります。

例えば、「後で伝えよう」と思っていたにもかかわらず、目の前の業務に集中していてふと気づいた時には、すでに終業時間を迎えていたといったケースがあります。結果として、重要な情報の伝達が遅れ、業務の流れに支障をきたす場合もあります。

③空気を読むのが苦手だから

会議や日常の雑談の中で話しかけるタイミングがつかめず、「この場面で話して良いのか」と悩んでしまいます。報告や相談のタイミングを逃してしまい、伝えたいことを後回しにしてしまうケースも多いです。

④何を報連相すれば良いかわからないから

発達障害のある人は細かい事象に注意が向きやすく、全体像を把握するのが苦手な傾向にあります。そのため、「どの情報を報告すべきか」「どこまで自分で判断して良いのか」がわからず、何を報連相すればよいかわからなくなりがちです。

その結果、上司から「こんなことを報告しなくても良い」と言われたり、逆に「なぜこんなに重要なことを今まで伝えなかったのか」と注意されることも少なくありません。

報連相が苦手な人が、報連相をするときのポイントや対処法

報連相のスキルはちょっとした工夫で高めることができます。ここでは、報連相をスムーズに行うためのポイントや対処法をいくつか紹介しますので、ぜひ試してみてください。

①事前に報連相するタイミングを決めておく

上司の顔色を窺っているうちにタイミングを逃すことがある場合は、事前に「どのタイミングで声をかけるとよいか」を相談し、決めておくとよいでしょう。

例えば、「午後の業務開始後」や「忙しそうなときはメールで」といったルールを作ることで、報連相がしやすくなります。

もし、報連相のタイミングを逃してしまう原因に「上司の機嫌がいつも悪い」「上司と合わない」などがある場合は、まず職場内で話しやすい人を探してみましょう。どうしてもその上司に話をしなければならないときに、相談できたり愚痴を言える相手がいるだけで、気持ちが楽になり、勇気が出ることがあります。

もし職場で話しやすい人が見つからない場合は、職場外の身近な人やカウンセラーに相談するのも一つの方法です。

②リマインダーや付箋を使う

過集中や不注意から連絡を忘れてしまうことがある場合、作業中に定期的に進捗を振り返るためにタイマーをセットするのがおすすめです。

例えば、午前と午後に1回ずつリマインドをセットして進捗やタスクを確認し、報連相の必要があればそのタイミングで行うようにするという方法が有効です。

リマインダーはスマホのアプリやカレンダーツールを使うのが便利です。もし、セキュリティ上の制約で特定のツールしか使用できない場合には、付箋を使うのも効果的です。デスクにノートと付箋を置き、やるべきことや覚えておきたいことを付箋に書いてノートに貼りましょう。タスクが完了したら付箋を外すことで進捗が一目でわかり、達成感を得ることもできます。この方法は、モチベーションの向上にもつながるためおすすめです。

③完璧を目指さない

無意識のうちに、「完璧な状態で報連相しなければならない」と思い込んでいませんか?
しかし、上司や一緒に働く人の立場から考えてみると、早めに相談してもらえた方が実は助かることが多いものです。完璧を目指して一人で抱え込むよりも、早めに報連相をすることで、業務効率が改善し、トラブルを未然に防ぐことができます。

しかし、頭では早めに相談した方が良いと思っていても、「もっと自分で調べてから相談すべき」「未完成のものを出されても困る」と思われるのではないかと感じることもあるかもしれません。

そのような不安がある場合には、「これはたたき台なんですが」と前置きしてみたり、仕事を頼まれた際に「途中で方向性を確認してもらえませんか?」と伝えると良いでしょう。これにより、すれ違いが生じにくくなり報連相のハードルが下がるため、よりスムーズにコミュニケーションを取ることができるでしょう。

④自己理解を深める

どういうときに報連相がうまくできないのか、自己分析してみましょう。

例えば、「忙しくて業務が立て込んでいると報告を忘れてしまう」、「悪い評価をされるのが怖くなってしまってタイミングを逃す」といった具合に、これまでに自分が困った場面を特定することが大切です。

このように報連相がうまくいかない場面を振り返ることで、必要な対策を取ることができます。さらに、周囲に相談する際にも、このような自己理解ができているとサポートをお願いしやすくなります。

⑤上司や職場の人に相談する

発達障害によって報連相が難しい場合には、自己理解した内容を職場に伝えて、サポートをお願いすることも対処法の一つです。

例えば、上司の方からできるだけ様子を見て声をかけてもらえるようにしたり、進捗報告のためのショートミーティングを定期的に設定してもらうこともできるかもしれません。

⑥医療機関を受診する

報連相がうまくできない原因が発達障害に関連している場合、医療機関を受診することも有効です。発達障害に特有の苦手さを軽減するために、薬物療法やカウンセリングを受けることができる場合があります。

自分一人では対処が難しいと感じる場合は、専門家のサポートを受けることで、職場でも自信を持って報連相を行えるようになる可能性があります。

⑦オンラインカウンセリングを利用する

専門家に話を聞いてもらいたいけれど、わざわざ外に出るのはちょっと…という方には、オンラインカウンセリングもおすすめです。

当サイト「悩ミカタ」でも、ミドル世代(40代50代)の悩みや不安・ストレスについて各分野の専門家/カウンセラーに相談できるオンラインカウンセリングサービス「悩ミカタ相談室」を展開しています。つらくて不安な気持ち、1人で抱え込まずにまずはお気軽に相談してみませんか?

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まとめ

この記事では、報連相がうまくいかないときの原因や対処法について解説しました。

仕事における報連相とは、業務をスムーズに行うために必要な「報告」「連絡」「相談」の3つを指します。

報連相が苦手な場合に考えられる原因は次の4つです。

①相手の顔色を窺ってタイミングを逃してしまう
②忙しくて忘れてしまう
③完璧主義であるために先送りにしてしまう
④発達障害がある

発達障害の人が報連相を苦手とする理由としては次の4つが挙げられます。

①不注意でタスクを忘れやすいから
②過集中している間に時間が過ぎてしまうから
③空気を読むのが苦手だから
④何を報連相すれば良いかわからないから

報連相をスムーズに行うために、以下の6つの方法があります。

①事前に報連相するタイミングを決めておく
②リマインダーや付箋を使う
③完璧を目指さない
④自己理解を深める
⑤上司や職場の人に相談する
⑥医療機関を受診する

報連相は職場でのコミュニケーションにおいて非常に重要な役割を果たします。この記事で紹介した対処法を参考に、自分に合った方法を取り入れて、報連相を実践してみてください。

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