締め切りが守れないのは発達障害が原因?スケジュール管理ができない悩みの克服方法

仕事などの締め切りがあることはわかっているのに、いつもその締め切りを守ることができない、そんな悩みを抱えていませんか?自分でも、締め切りを守らないことはよくないことだとわかっているのに守れないのは、もしかしたら発達障害が原因かもしれません。

そこでこちらの記事では、「締め切りが守れない」「スケジュール管理がうまくできない」といった悩みをどうすれば克服することができるのか、そのコツを解説していきたいと思います。

執筆者

臨床心理士・公認心理師

aiirococcoさん

公認心理師、臨床心理士として総合病院に勤めています。小児科外来をはじめ、緩和ケアチームやリエゾンなど幅広い年齢層の方の心理支援を行っています。また、webライターとして主に心理系の記事を執筆中。誰かに相談するほどではないけど困ったな、というときに役立つ情報を発信できるよう頑張ります。

目次

発達障害の種類とそれぞれの特性

「締め切りが守れない」とネットで検索をすると、発達障害が原因となっているのではないかという記事が散見されます。それを見て、「自分もそうなのではないか」と不安を感じてしまうかもしれません。ですが、自分の特性をよく知った上で対策を講じることで、今起こっている問題を解決することをできる、と前向きにとらえることもできます。

そこでまずは発達障害の種類と、それぞれの特性について解説していきます。ひとつだけが当てはまる人もいれば、複数の発達障害の特性を兼ね備える人もいます。

①ADHD(注意欠如・多動症)

大人のADHDなどという言葉を最近はよく目にするようになりました。ADHDの基本的な特性としては、注意力の問題と、落ち着きのなさがあります。注意力が散漫になりやすく、かと思えばひとつのことに集中して寝食も忘れてしまうような、過集中状態になってしまいます。また、パッと思いついたらすぐに体が動いてしまう衝動性を持っている人もいるでしょう。

ADHDの人は順序立てて行動をすることが難しいという特性を持っています。通常締め切りがあれば、そこまでを逆算して作業を進めるものでしょう。ADHDの人はそれができず、目についたものから始めてしまい、時間配分がうまくいかないということが往々にしてあります。

②ASD(自閉症スペクトラム症)

ASDの基本的な特性は、対人関係構築の困難さと、こだわり行動があります。通常人は相手の表情などから、言わんとしていることを汲み取りながらコミュニケーションを取っています。ところがASDの人は相手の表情の意味がわからなかったり、言葉のニュアンスを見分けることが難しかったりするのです。

また自分なりのこだわりがあり、そのこだわりによって作業がとても遅くなってしまうことがあります。例えば、字を書くのに定規を使って直線を綺麗に書くなど、あまりみんながこだわらないような部分に対してこだわることがあります。自分がこだわる部分が適当になってしまうことが許せず、時間がなくてもこだわりをって行動してしまうところがあるのです。

③LD(学習障害)

LDの特性は、知的には問題がないのにも関わらず、読み書きや計算などを習得することに対して強い困難さが生じる、ということです。俳優のトム・クルーズや映画監督のスティーブン・スピルバーグといった有名人が、LDの中の読字障害であることで知られています。

読み書きや計算ができないわけではないのですが、習得には相当な時間を要します。ただLDの場合、大抵は就学前もしくは小学校時代に発見されるケースがほとんどです。今まで特に指摘をされずにきているのであれば、おそらく問題ないでしょう。 

発達障害の特性と締め切りが守れないことの関係とは?

発達障害にはそれぞれ特性がありますが、その特性によって締め切りが守れなくなることがあります。締め切りが守れない原因となるのは、どういった特性なのでしょうか。

①不注意により締め切りを失念している

特にADHD傾向のある人に目立つのが、締め切り自体を忘れてしまっているケースです。締め切りを耳で聞いて、その時は記憶したつもりが、いつの間にか忘れてしまっているのです。どこかにメモをしていたとしても、そのメモ自体を紛失していたり、どこに書いたのか忘れてしまう場合もあります。

締め切りを過ぎて、周りから指摘され初めて思い出す、なんてことも多いでしょう。また締め切り間際に、ふと思い出して慌てふためいてしまうことも結構あるようです。

②順序立てて行動できない

これもADHD傾向がある人に多くみられる特性ですが、先を見越して、何からどう片付けていけばいいかがわからず、時間内にタスクを終わらせることができないことがあります。目の前のことから始めてしまい、時間配分を失敗してしまうのです。

特に複数のことを期限内にやらなければならないときなどは、どうしてもキャパオーバーになりがちです。本人は一生懸命やっているつもりなのですが、効率が悪くなってしまい、締め切りまでに終わらなくなってしまうことが多いでしょう。

③うっかりミスが多く、時間がかかる

注意力に課題を抱えているADHD傾向の人は、うっかりミスが多くなりがちです。うっかりミスによって、やり直しせざるを得ないことが多く、必要以上に時間がかかってしまうのです。大事なものを忘れて作業ができなかったり、勘違いしたまま進めているということも多いでしょう。

最初から気をつけてやっていれば10分で済むことが、ミスをリカバーするのに時間がかかって、30分かかってしまう…。そういうことが日常的に起こってしまい、時間がどんどん消費されることで、締め切りを守れなくなってしまうのです。

④こだわりが強く、作業に時間がかかる

これはASD傾向のある人に多いのですが、こだわりが強いことによって、必要以上に作業に時間がかかってしまうことがあります。周りからすればこだわる必要がないような部分に強いこだわりを持ってしまい、ちょっとしたことにも時間を要してしまうのです。

そうなると、だいたいこのくらいの時間があればできるという感じで締め切りを設定しても、予想以上の時間がかかってしまい、締め切りが守れなくなってしまいます。締め切りが迫っているからこだわりを捨てるということが、どうしてもできず、結果的に締め切りを破ってしまうのです。

⑤やる気が出なくてスタートが遅れる

ADHD傾向がある人は、どうしてもやる気が出ないことがあります。特に興味が持てない、苦手だと感じていることに対しては、とても腰が上がりづらくなります。それが周りからは怠惰に思われたりするのですが、脳の器質的に「やる気が出にくい」状態になっているのです。

どうにもやる気が出ないことで、スタートが遅れてしまい、締め切りまでの時間がどんどん減ってしまうことがあります。結構スケジュール的には余裕があったはずなのに、いつも時間がないとあたふたしてしまうのは、そのせいかもしれません。

⑥融通が効かない

ASD傾向がある人は、「極力ルーティーン通りに動きたい」という気持ちが強い傾向にあります。通常は締め切りが近づいていたら、ルーティーンを少し省略するなどして時間を作って対処したりするものえdすが、それがどうしてもできないのです。

そのため時間を作り出すということが難しくなります。スケジュールに余裕がある場合はいいのですが、タイトだったり、やることが多かったりすると、途端に締め切りを守ることが難しくなっていってしまいます。

発達障害のある人が「仕事の時間管理」で直面しやすい問題とは?

締め切りを守れないこと以外でも、仕事の時間管理に関する問題は結構あったりするのではないでしょうか。そこで、発達障害のある人、もしくはその疑いがある人が「仕事の時間管理」で直面しやすい問題について紹介していきたいと思います。

①遅刻

仕事の就業時間に間に合わず、遅刻が日常化してしまうという問題は結構多いかもしれません。朝起きることができなかったり、起きたけれどもその後テキパキと準備をすることができないことが原因かもしれません。

朝起きることができないのは、翌日のことを考えずに夜更かししてしまうせいかもしれません。発達障害の人によく見られる過集中の状態になってしまい、夜中遅くまで熱中してしまうことで、朝が起きられなくなるのです。そのため、気づいたらお昼近くまで眠ってしまっており、会社から電話がたくさん入っていたなんてこともあるでしょう。

また、起きるには起きたものの、スマホを見ているうちに熱中してしまい、気づいたら遅刻ギリギリの時間になっていたということもあります。ただぼんやりしているだけで時間だけが過ぎていたという人もいるでしょう。

②集中して仕事ができない

何かに目が留まるたびに、そこに気持ちがいってしまい、なかなか集中してひとつの仕事に取り組むことができない人もいます。Aの仕事を優先してこなさなければならないのに、Bの仕事が気になって脱線してしまい、Cの仕事が目に入ったことでそっちに気を取られ…という感じで、どんどん注意が移り変わっていってしまうのです。

そうなると、仕事の効率が非常に悪くなってしまい、人の倍以上の時間をかけないと終わらなくなってしまいます。時間だけがどんどん過ぎてしまい、何も終わらせることができなかったということは起こり得ることです。

③ダブルブッキングしてしまう

うっかりミスが多いせいもあって、ダブルブッキングしてしまうということは結構あるかもしれません。同じ時間に約束をしてしまい、当日慌てふためくことになった経験を持つ人は意外と多いでしょう。この時間に約束を入れたということを失念してしまい、予定を入れてしまうことで起こる問題です。

締め切りが守れない、スケジュール管理ができない悩みへの対策や工夫とは?

締め切りが守れない、スケジュール管理ができない…それは発達障害のせいだとわかっても、そのまま放置するわけにはいかないでしょう。発達障害の特性を持つ人は苦手なことやできないことがある一方で、突出した能力も持っています。その能力をうまく活かすことができれば、社会で活躍することもできるのです。

スケジュールの管理などは発達障害の人にとって苦手とする部分ではありますが、どうやって補えばいいかをわかっていれば、うまくやっていくことはできます。それでは次に、時間管理をうまくやるための対策や工夫の仕方を紹介します。

①自分が締め切りを守れない理由を把握する

同じ締め切りが守れないという問題を抱えていても、その理由はそれぞれです。自分が締め切りを守れないのは、どういうことが理由になっているのかを分析していってみることで、どういう工夫をすればいいかが見えてきます。

集中力が続かないのか、目の前のことから始めてしまっているのか、自分なりのこだわりに縛られてしまっているのか、必ず原因となる理由があるでしょう。締め切りを守れず、叱責されたりして落ち込むかもしれませんが、きちんと理由を把握することは改善への第一歩になります。

②やるべきことを書き出す

物事を順序立ててやっていくということに困難さを持つ人は、やるべきことをまず書き出してみるといいかもしれません。頭の中でやるよりも、紙上に書き出してみることで、整理をしやすくなります。

締め切りが早いものや時間がかかりそうなものを一番上にして、順番に並べてみることで、自分が何から始めればいいかが一目瞭然となります。また、そのメモを常に見える位置に貼っておき、終わったら消す、もしくは外すというやり方は効果的です。

③スケジュール管理は一箇所にまとめる

自分が忘れやすいということを理解していることで、メモはしっかりとるという人は結構いるかもしれません。ただ、どこにメモしたのかわからなくなったり、メモ自体を失くしたりするからこそ、忘れてしまうのではないでしょうか。

スケジュール管理は、わかりやすいように、スマホのカレンダー機能など一箇所にまとめると良いでしょう。また、リマインダー機能などを使うと、より良いかもしれません。それでも不安が残る場合は、家族や同僚からも見られるようにすることで、忘れていそうな時に、声をかけてもらうことができます。

④集中できる状況をつくる

周りで音がしている方が集中できる人もいれば、静かな方が集中できる人もいます。また、何かが目についてしまうことで集中が途切れやすい人は多いでしょう。出来るだけ机の上は綺麗で何もない状態にし、自分が集中できる状況をつくることが大切です。

タイマーをセットし、その時間まではやると決めて、タスクと向き合うことで、集中できなかったり、逆に集中し過ぎたりすることを防ぐことができるでしょう。あまり長過ぎない時間設定がポイントではないでしょうか。

⑤仕事を抱えすぎない 

ADHDにしてもASDにしても、発達障害傾向のある人は、複数の仕事を同時にこなすようなマルチタスク的な動きは苦手です。どちらかというと、ひとつもしくはふたつくらいのことをじっくりとやっていく方が向いています。

仕事を抱えすぎてしまうことで、どれもが疎かになり、全てが中途半端になってしまいます。そうならないためには、仕事を抱えすぎないように最初から調整しておくことも大切でしょう。無理は禁物です。

まとめ

締め切りを守りたいという気持ちはあるのに、うまくできないことで落ち込んでしまっている人もいるでしょう。でも、自分の特性をきちんと知ることで、上手に工夫して乗り越えることはできるはずです。スマホのツールを使ったり、周りの力を借りたりすることで、苦手な部分も補うことができるでしょう。

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