発達障害があり仕事が続かない…特性に合ったはたらき方や職場選びのポイントとは?

「仕事が長続きしない」「周囲とうまくコミュニケーションが取れない」「業務が思うように進まず、自己肯定感が下がってしまう」——こうした悩みを抱える人の中には、発達障害が関係しているケースがあります。発達障害は知的能力に問題がない場合でも、社会生活や職場で特定の困難を引き起こすことがあります。

しかし、発達障害があっても、自分に合った職場や働き方を見つけることで、充実したキャリアを築くことは可能です。そのためには、自分の特性を理解し、それを活かせる環境や方法を見つけることが重要です。

本記事では、発達障害の特性や職場での課題、働き続けるための工夫、職場選びのポイントについて詳しく解説します。発達障害を持つ方が「自分らしく働く」ためのヒントをお伝えするだけでなく、ご家族や職場の方が適切なサポートを行うための参考にもなれば幸いです。

記事を執筆したのは…

車重徳さん

発達障害ラボ代表。心理士、カウンセラー、教員、保育士、介護福祉士。長年、発達障害や学習障害、精神疾患の子どもや大人のサポートや指導に従事。「WISC-Ⅳ検査」については、臨床心理士に対しての研修や指導も行っている。

目次

発達障害の種類と特性について

それでは、具体的な内容に進みましょう。まずは発達障害の種類と特性について詳しく解説します。

発達障害は、大きく分けてADHD(注意欠陥・多動性障害)、ASD(自閉スペクトラム症)、SLD(学習障害)の3つに分類されます。それぞれの特性を理解することは、自分自身や周囲の人たちとの関係を改善する第一歩です。

ADHDの特性について

ADHD(注意欠陥・多動性障害)は、以下のような特性が見られる障害です。

注意力の持続が難しい

ADHDを持つ人は、長時間同じ作業に集中することが苦手な場合があります。たとえば、会議中に話を聞き逃してしまう、仕事の手順を忘れてしまうといった問題が生じることがあります。

多動性と衝動性

多動性とは、じっとしていられない、落ち着きがないという状態を指します。また、衝動性は、深く考えずに行動してしまうことを指します。たとえば、思いついたことをすぐに口にしてしまったり、計画を立てずに行動を開始してしまったりすることが多いです。

時間管理の難しさ

ADHDを持つ人は、時間を見積もったり、計画を立てて行動することが苦手な傾向があります。そのため、締切に遅れることが多かったり、タスクの優先順位をつけられなかったりすることがあります。

ASDの特性について

ASD(自閉スペクトラム症)は、社会的なコミュニケーションや行動の柔軟性に困難を抱える障害です。以下のような特性があります。

社会的な相互作用の困難さ

ASDを持つ人は、他者とのコミュニケーションが難しいと感じることがあります。たとえば、表情や身振り手振りから相手の感情を読み取ることが苦手であったり、自分の考えを的確に伝えることが難しかったりします。

こだわりの強さ

特定の物事やルールに対して強いこだわりを持つことがあります。たとえば、同じ手順で作業を進めないと不安を感じたり、興味のある分野に深く没頭したりすることが特徴です。

感覚過敏または鈍感

ASDを持つ人は、感覚の過敏さや鈍感さを持つことがあります。たとえば、大きな音や強い光に対して過敏に反応したり、逆に痛みに鈍感であったりする場合があります。

SLDの特性について

SLD(学習障害)は、読み書きや計算といった学習に特化した困難を伴う障害です。知的能力は通常範囲内であるにもかかわらず、特定の学習分野で著しい困難を経験します。

読みの困難(ディスレクシア)

文章を正確に読んだり、理解したりすることが苦手です。たとえば、単語を間違えて読む、文章の意味を取り違えるといった問題があります。

書字の困難(ディスグラフィア)

文字を書く際に、形が崩れてしまったり、正しいスペルが書けなかったりすることがあります。これにより、文書作成に時間がかかることがあります。

計算の困難(ディスカリキュリア)

数字や計算に関する理解が苦手な場合があります。たとえば、繰り上がりや引き算の方法を忘れてしまう、数字の概念が理解しづらいといった特徴があります。

発達障害の人が仕事で抱えやすい困りごと

①コミュニケーションの困難

発達障害を持つ人の多くが、職場でのコミュニケーションに困難を感じます。特に、ASDを持つ人は相手の感情や意図を理解するのが難しい場合があり、誤解を招くことが少なくありません。また、曖昧な指示に対応することが苦手で、具体的な指示を求める傾向があります。これにより、チーム内での協力が難しくなる場合があります。

②タスク管理の難しさ

ADHDの特性を持つ人は、複数のタスクを効率よく管理することが苦手であることが多いです。ただ優先順位を付けられず、締切を守れないことが続くと、周囲からの信頼を失ってしまうこともあります。また、SLDを持つ人の場合、書類作成や計算のような特定の業務に時間がかかることが、ストレスとなることがあります。これが業務全体の進行を遅らせ、さらに自己評価を下げる原因となります。

③感覚過敏によるストレス

ASDの特性を持つ人にとって、職場環境の音や光、匂いが過剰に刺激となる場合があります。これが集中力の低下や疲労の原因となり、業務のパフォーマンスに影響を及ぼすことがあります。たとえば、職場の照明が強すぎる、周囲の雑音が気になるといった場合、短時間で疲労が蓄積することがあります。

こうした困りごとは、発達障害の特性を理解しない環境では見過ごされがちです。適切なサポートと調整を行うことで、これらの困難は大幅に軽減される可能性があります。

仕事における発達障害の二次障害

①自尊心の低下

発達障害を持つ人は、職場でのミスや周囲との摩擦を繰り返すことで、自尊心が低下することがあります。たとえば、同僚からの指摘や叱責が続くと、「自分は能力がない」と感じてしまい、自己評価が極端に下がることがあるのです。このような状況が続くと、仕事に対する意欲が失われるだけでなく、日常生活全般においても無力感を抱くようになります。

②精神的なストレスと不安障害

業務における困難が長期間続くと、慢性的なストレスが蓄積されることがあります。特に、タスクが終わらないことへの不安や、他者からの評価を過度に気にすることがその原因となります。その結果として、不安障害やうつ病といった精神的な健康問題を引き起こすこともあるのです。ストレスへの対処が難しい環境では、こうした二次障害が深刻化しやすくなります。

③体調不良と身体的な問題

精神的な負担が身体にも影響を及ぼすことがあります。たとえば、過度なストレスや睡眠不足により、頭痛、胃痛、倦怠感といった症状が現れることがあります。こういった身体的な問題は、さらに仕事のパフォーマンスを低下させる原因となり、悪循環を招くことがあります。

二次障害を防ぐためには、早期に問題を発見し、適切なサポートや環境調整を行うことが重要です。そこで次のセクションでは、発達障害の人が働き続けるための働き方のポイントについて解説します。

発達障害の人が働き続けるための働き方のポイント

①自分の特性を理解し、それに合った働き方を見つける

発達障害を持つ人にとって、まず重要なのは自分自身の特性を深く理解することです。これには、自分がどのような状況で困難を感じるのか、逆にどのような状況で能力を発揮できるのかを明確にする作業が含まれます。

たとえば、ADHDを持つ人が注意力を保つためにおすすめなこととして、短い作業時間と休憩を繰り返す「ポモドーロ・テクニック」を活用することが挙げられます。一方でASDを持つ人は、環境が整っている職場や具体的な指示がある作業に適応しやすい場合があります。自分の特性に応じた戦略を取り入れることで、日々の業務に取り組みやすくなります。

②職場での環境調整を行う

職場での環境を調整することは、発達障害を持つ人が働きやすくなるために重要なポイントです。たとえば、ASDの人にとっては、感覚過敏を軽減するために静かな作業スペースやノイズキャンセリングヘッドホンの提供が有効です。また、ADHDの人には、スケジュール管理アプリを使用してタスクを視覚化する方法が役立ちます。

環境調整には、上司や同僚とのコミュニケーションも欠かせません。自分がどのようなサポートを必要としているのかを伝えることで、周囲の理解を得ることができます。

③メンタルヘルスを重視し、適切なサポートを受ける

働き続けるためには、メンタルヘルスを健やかに保つことが不可欠です。発達障害を持つ人は、仕事での困難がストレスとなりやすいため、ストレスマネジメントの手法を学ぶことが大切になってきます。ストレスマネジメントの手法とは、たとえば定期的な運動や趣味の時間を確保すること、リラクゼーション法を取り入れる、といったことです。

また、必要に応じて専門家のサポートを受けることも検討しましょう。心理カウンセリングや発達障害に特化した支援機関を利用するなどしてみてはいかがでしょうか。

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次のセクションでは、発達障害を持つ人が転職や就職をする際の仕事や職場選びのポイントについて詳しく解説します。

発達障害をもつ人が転職、就職するときの仕事/職場選びのポイント

①自分の特性に合った職種を選ぶ

発達障害を持つ人が転職や就職を成功させるためには、自分の特性に合った職種を選ぶことが重要です。たとえば、ADHDの人は変化が多く、短期的なタスクが求められる仕事に向いている場合があります。具体的には、配送業務や接客業務、あるいはクリエイティブな分野の仕事が適していることがあります。一方、ASDの人はルーティンワークや明確な手順がある仕事に適応しやすく、事務職やIT関連の技術職が向いていることが多いです。

職種を選ぶ際には、自分が得意とするスキルや興味を考慮しつつ、実際の業務内容をよく調べることが大切です。また、適性検査やキャリアカウンセリングを利用することで、より具体的な選択肢を見つけることができます。

②職場環境を慎重に見極める

職場環境が自分に合っているかどうかを確認することも重要です。たとえば、ASDの人にとっては、静かで整理された職場が働きやすい環境となることがあります。一方、ADHDの人には、柔軟な働き方や自由度の高い職場が適している場合があります。

転職活動の際には、面接時に職場環境やチームの雰囲気について具体的な質問をしてみることをおすすめします。また、可能であれば職場見学を行い、実際の環境を自分の目で確認してみましょう。

③サポート体制が整った企業を選ぶ

発達障害を持つ人に対し、サポート体制を整えている企業を選ぶことも、転職や就職を成功させる鍵となります。たとえば、障害者雇用を積極的に行っている企業や、働き方の柔軟性を重視する企業は、発達障害を持つ人にとって働きやすい職場である可能性が高いです。

また、企業の福利厚生やサポートプログラムについて事前に調べることも重要です。たとえば、メンター制度や職場内での相談窓口がある場合、困ったときにすぐに支援を受けることができます。こうした体制が整っている企業を選ぶことで、安心して働くことができるでしょう。

次のセクションでは、この記事のまとめをお伝えします。

まとめ

この記事では、発達障害がある人が直面する課題と、それに対する解決策について詳しく解説しました。

まず、発達障害の種類とそれぞれの特性を理解することが第一歩です。ADHD、ASD、SLDなどの特性を知ることで、自分自身や周囲の人たちに対する理解を深めることができます。

次に、発達障害を持つ人が仕事で抱えやすい困りごとについても説明しました。コミュニケーションの困難やタスク管理の難しさ、感覚過敏などの問題が挙げられますが、これらは適切なサポートや環境調整によって軽減可能です。

さらに、仕事における二次障害のリスクについても触れました。自尊心の低下や精神的なストレス、身体的な不調といった問題が起こる可能性がありますが、早期の対処が重要です。

発達障害を持つ人が働き続けるためには、特性に合った働き方を見つけることが鍵です。また、転職や就職を考える際には、自分の特性やニーズに合った職場を選ぶことが成功への近道となります。企業のサポート体制を確認し、職場環境を慎重に見極めることで、より働きやすい環境を見つけることができるでしょう。

この記事を通じて、発達障害を持つ人が自分に合った働き方を見つけ、より充実したキャリアを築けるための参考になれば幸いです。

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