「人との関わりがどんどんめんどくさく感じている…」「SNSのアカウントを消したい…」そんな思いを抱えていませんか? 「人間関係リセット症候群」は、人間関係に疲れて突然すべての関係を断ち切ってしまう、または断ち切りたいと感じる状態とされています。完璧主義な性格やまわりにあわせすぎてしまう立ち振る舞い、病気や障害との関連など、その背景にはさまざまな要因が隠れています。
そこでこの記事では、人間関係リセット症候群の特徴や原因を解説し、具体的な対処法をご紹介します。「人間関係リセット症候群」について気になっている人、悩んでいる方はぜひ参考にしてくださいね。
佐々木ゆりさん
公認心理師、臨床発達心理士。保育士歴は20年。現在は療育スタッフとして発達障害を持つお子さんやその家族と関わっています。発達と保育を軸に、直接支援はもちろん、webライター、保育士になりたい人の支援、保育士さん支援など幅広いキャリアを展開中です。
人間関係リセット症候群とは?
人間関係リセット症候群は医学的な用語ではありませんが、みなさんも目にしている言葉かもしれませんね。ここでは人間関係リセット症候群の一般的な定義や行動について取り上げてみました。
人間関係リセット症候群の定義
誰かと常につながっている状態に疲れて、SNSのアカウントを削除してしまうなど、自分から突然、関係性を断ち切ってしまう、またはそうしたいと思う状態を人間関係リセット症候群と一般的によんでいます。医学的な用語ではありませんが、衝動的に行動してしまう背景やそうしたいと思う精神状態には病気や障害が隠れている場合があります。
人間関係リセット症候群にみられる特徴的な行動
人間関係リセット症候群にみられる特徴的な行動はいくつかあります。その代表的なものとして
・衝動的にスマホなどから友人などの連絡先を消去してしまう。
・SNSを突然退会する、退会予告をする。
・転職や引越し、離婚を繰り返す。
これら3つが多いようです。行動について「突然」「衝動的」といった特徴が書かれていますが、本人的にはあまりそう思っていない場合や「明日退会します、連絡がほしい人はDMください」と予告的な行動をする場合も人間関係リセット症候群に含まれているようです。
人間関係リセット症候群には良い面もある
人間関係リセット症候群はダメな行動、と思っている人も多いのではないでしょうか。実は人間関係リセット症候群には良い面もあるのです。連絡先やSNSを整理すると、自分の精神状態がよくなって、自分を見つめ直したり生活が立て直せる場合があるからです。
その一方で、極端なリセット行動を繰り返すと、これまでの人間関係から孤立してしまい、周りに必要以上の迷惑や心配をかけてしまいますから、あまりよい行動とは言えないかもしれません。
人間関係リセット症候群の人に共通する性格とは?
ここで、人間関係リセット症候群の人に共通しやすい性格を3つ紹介します。すべての項目に当てはまるからといって人間関係リセット症候群になる人ではありません。また1つも当てはまらなくても人間関係リセット症候群になる人もいらっしゃいます。あくまでも自分の性格を見つめるきっかけにしてくださいね。
完璧主義で周囲の評価を気にしやすい性格
完璧主義というと「物事を完璧にこなさないといけない!と考えている人だけを思いつくかもしれません。実は、これまで受けてきた家庭的な価値観や文化的背景から、ミスは許されない、相手につねに合わせなくてはいけないといった「ねばならない」思考も「完璧主義」に含まれています。自分の考え方に縛られる=完璧主義、と言ってもいいかもしれません。
また、SNSで言えば、いいねをしてもらったからいいね返しをしないといけない、フォロー数が少ないと付き合い悪いのかなと思われる、といった相手に合わせた考え方は、周囲の評価を気にしすぎているかもしれません。
物事を白黒思考で考えやすい
一般的に、物事を「まあいっか」と思いにくく、物事を「良い」「悪い」「正しい」「間違っている」と二極化して考えてしまうことが白黒思考と考えられています。例えば以下のようなことが挙げられます。
・イライラしちゃうから他人と付き合わない
・適当に切り上げることができず、 残業してでもやりきってしまう
白黒思考で考えてしまいがちだと、行動も極端になりやすいとかんがえられています。
本音を人に話せない、自分をそもそも出しにくい性格
人に本音を話せない、自分をそもそも出しにくい性格の人は、SNS上でも自分のコメントを発信しにくく、相手の様子(いいねやフォロー返し)に合わせて行動しているのではないでしょうか。自分のしたい行動ではなく、相手に合わせてばかりのため、ストレスがたまり「もう誰ともつながっていたくない」という気持ちになるかもしれません。人間関係リセット症候群は、そういった「自分を受け止めてもらえないから誰とも関わりたくない」という気持ちの末路なのかもしれませんね。
人間関係リセット症候群の原因
人間関係をリセットしたいと思う原因はどこからきているのでしょうか?ここでは性格や、環、そして病気といった人間関係リセット症候群の主な原因について取り上げてみました。
白黒思考や完璧主義が強い
物事をこれか、それか、といった二極で考えやすい人のことを白黒思考とよび、自分の思っていること以外を認めにくい考え方が完璧思考と言われています。「こうでなくてはならない」という強い気持ちから、うまくいかなった時に「まあいっか」という気持ちにはなりにくく、すべてを投げ出してしまいたい!という状況が人間関係リセット症候群の末路と言えるかもしれません。
SNSなど人間関係における疲労やストレスがある
イギリスの人類学者ロビン・ダンパーは、本来人間が安定的な関係を維持できる平均的な人数は150人程度と述べていますから、トータルして150人を超える友達登録やフォロー数は、疲労やストレスがたまりやすい状態といえるかもしれません。そもそも企業と知り合いは別の関係性ですが、現代のSNSでは気軽に企業とも繋がれるシステムになっていますので、やはり窮屈に感じる人もいるかもしれませんね。
病気や障害の影響
人間関係リセット症候群を引き起こしやすい白黒思考である背景として、病気や障害があるかもしれません。誰とも付き合いたくないといった状態はうつ病の症状から、人との付き合いがそもそも苦手なのは自閉スペクトラム症という障害があるからかもしれません。次の項目で詳しく解説していきますね。
うつ病や発達障害との関係とは?
人間関係をリセットしたいと思う背景に、病気や障害があるかもしれません。ここでは人間関係リセット症候群に見られる行動を引き起こしやすいうつ病や発達障害を取り上げてみました。
人間関係リセット症候群とうつ病との関連性
うつ病の特徴である「抑うつ状態」の1つに「誰とも会いたくない」といった状態があります。誰とも会いたくないので、連絡先を見たりSNSを見るだけで不安やイライラが起こりやすいことから、連絡先を消す行動につながってしまうと考えられています。
人間関係リセット症候群と発達障害との関係性
自閉スペクトラム症やADHDなど一般的に発達障害と呼ばれる特性を持っていると、人とやりとりする苦手さや、考え方がいわゆる白黒思考である可能性があります。
・相手の表情を読み取るのが苦手
・自分のことを話すことが難しい
・物事をあるか、なしかでしか考えられてない(グレー思考が難しい)
・はっきりといってもらえないとわからないことが多い
こういったこと子どものころからあり、生活をする上で困りごとがあれば一度、精神科や心療内科を受診してみてはいかがでしょうか?
その他の精神疾患との関連性
統合失調症や境界性パーソナリティ障害(BPD)、アルコールや薬物、買い物といった各種の依存症、躁うつ病を抱えている場合、人間関係リセット症候群に似たような行動がみられるとされています。どの病気や障害も、診断は医師が行います。自己判断せず、これらの病気や障害が気になった人は精神科や診療内科を受診、または地域の保健所や精神保険福祉センターなどの相談窓口に相談するとよいでしょうか。
人間関係をリセットしたくなったときの対処方法や治し方
人間関係をリセットしたくなる気持ちの背景には、性格や病気、ストレスといった原因がいくつかあることがわかりました。ではリセットしたくなったとき、どうしたらよいのか悩む人もいらっしゃることと思います。そこでここからは、人間関係をリセットしたくなっときの対処方法について紹介します。
自分の性格をふりかえってみる
自分が完璧主義や白黒思考であるかは、実はなかなか気づきにくいものです。自分の性格を知るためには、まずはノートに自分の良いところ、悪いところを書き出してみましょう。そして、良いところは、悪く・悪いところは良いように言い換えてみてください。書き換えが難しい場合には、ダメなものはダメ、といった白黒思考的があらわれるかもしれませんし、良いところも悪く書くことで落ち込んでしまうようでしたら「まあいっか」とは思いにくい性格なのかもしれません。
自分の性格を振り返った上で、すべてをリセットしたい!と思った時には、一旦自分の性格を思い出しながら「SNSでもちゃんとした人間でありたいと思っているんだな」「仕事が忙しくて、白黒思考が強くなっているかも」とおおらかな気持ちで自分をとらえてあげてみてくださいね。
SNSの時間を少しずつ短くする
SNSに触れている時間は、実は人間関係についてずっと考えている時間かもしれません。まずは人間関係を意識すること減らすことで、他の物事に目を向けられるとよいでしょう。ですが、今までずっとスマホをみていた人にとっては時間を短くすることは難しいと感じている人もいるかもしれません。
SNSの時間を減らす際に、もっとも難しいのは最初の数日を乗り越えることとされています(*1)。普段から1日に何回もSNSにアクセスしている人は、信号を待っている時間や、店に並んでいる時間など、スキマ時間にSNSを見ないで、景色を見たり、ぼんやりと考えてみるなど、他のことを心がけてみましょう。
ストレス解消法をいくつか持つ
他の物事に目を向けやすくするためにも、自分の好きなことやストレス解消法をいくつかもっておくとよいでしょう。おそらく、ストレス解消法はいくつかお持ちのことと思います。そのストレス解消方法は以下のように、いくつかの種類に分けられるのをご存知でしょうか。
・逃避系(カラオケ・飲酒・ゲーム・旅行など)
・自己啓発・研鑽系(本を読む・研修に参加する・趣味の会に参加する など)
・リラックス系 (マッサージ・ヨガ・瞑想・湯船につかる・アロマ・雑談をする など)
・その他(寝る・病院にいく・カウンセリングを受ける など)
みなさんのストレス解消法は同じカテゴリーにたくさんありましたか? それとも複数のカテゴリーからありましたでしょうか? 自分の心の状態に合わせて、ストレス解消法を持つとより効果が得られるかもしれませんね。
専門家に相談する
「もしかしてうつ病なのだろうか」「子どものときから人と関わるのが苦手な気がする」と病気や障害について気になっている人は、精神科や心療内科に相談するとよいでしょう。また病院にいくほどではないけれど、専門家に話を聞いてもらいたい人は、オンライン相談もおすすめです。
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まとめ
人間関係リセット症候群は、完璧主義や自分を出せないストレス、そしてうつ病や発達障害といった精神疾患と関連している場合があることがわかりました。一時的な解決策として関係をリセットしたくなる気持ちは、現代社会を生きる人にとっては珍しくないことではないでしょうか。
人間関係リセット症候群を和らげるためには、白黒思考や自分のコミュニケーションの特徴を見直し、必要に応じて専門家に相談するとよいでしょう。人間関係をリセットしたい気持ちに駆られたら、まずは一呼吸置いて、自分に合った対処法をいくつか試しながら「そういう気持ちが自分にあるんだな」という気持ちになれるといいですね。
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【参考資料】
*1 NATIONALGEOGRAPHIC 「「SNS断ち」に短期間でも驚きの効果、専門家が秘訣を伝授、研究」